軍事評論家の「田岡俊次」氏が【 間違いだらけの“中国脅威論”】というタイトルで次のようなコメントを今年最初の『週刊金曜日』で述べている。曰く、無知からか、あるいは意図的にか、ここ数年タカ派ならぬ「バカ派」が論じている「中国脅威」は国際常識と軍事的視点から見てこっけいだ。しかし自衛隊も悪乗りして、予算獲得の名目にしている、と。
そこでこの内容の詳細について3回に分けて紹介したい。
終戦しばらくブラジルの日本人に「勝ち組」と呼ばれる人々がいた。第二次世界大戦が終わってもまだ「日本が米国に負けるはずがない。戦争はまだ続いている」と信じ、敗北の事実を認めるべきだとする「負け組」との間に対立抗争事件まで起きた。
現在冷戦がとっくに終わったにもかかわらずいまだに「中国脅威論」や新冷戦説を唱えている論者たちは、現実を見ることを拒否し、冷戦型思考から脱却できないという点で「勝ち組」に似ている。
彼らのおかしさは、いまだに「中国は共産主義だ」と思い込んでいる点にある。中国は憲法を改正して私有財産保護をうたい、上海と深圳には証券取引所がある。実態は「共産主義」どころか、露骨な資本主義だ。
その結果腐敗が蔓延したため、是正するためにかって批判された儒教が奨励されている。中国政府が日・米・西欧・アジアの大学と連携し54カ国に156校も開いている中国文化センターは「孔子学院」と名付けている。江沢民前国家主席は1999年に孔子廟に参拝している。こんな「共産主義」があるのか。
冷戦期には、米国を中心とした西側と、旧ソ連や東欧が対立したが、有力資本主義国の1つとなった中国が米国と対立しているのか。
中国には米国から進出した企業が2万2千社あり、中国の対米貿易黒字の大半はそれが貢献している。また中国は日本に次ぐ米国債の保有国で50兆円以上ある。保有している1兆3千億ドル以上の外貨はゴールドマン・サックスやメリルリンチといったウオールストリートの巨大金融機関に運用を任し、米国にとっては最大の顧客だ。
米国の軍事企業の中核を占める航空機産業を見ると、中国はボーイングの旅客機を年150機も買っている。ウォールマートをはじめとする巨大流通産業は、安価な中国製品に支えられている。
米国経済の主流である金融も軍需産業も流通も、中国と密接な関係にあるのだ。
さらに中国からエリート大学生を中心に年20万人も米国に留学し、工科の博士号を取るのが2,000人以上いる。しかもその多くが帰国せず米国の企業に就職しているから、結局ヒト・モノ・カネで中国は米国を支えていると言っていい。
一方、中国にしてみれば、輸出依存度が37%と日本に比べて2.5倍以上高く、輸出総額の21.4%を占める米国の巨大市場に頼らざるをえない。
いまや米中は共存共栄関係にあり、軍の関係にも反映している。両国の海軍は、初歩的レベルだが共同軍事演習もやっている。米太平洋軍司令官のティモシー・キーティング海軍大将は、2007年5月に訪中した際、「中国が空母を保有しようとするのは当然。できるだけお手伝いしたい」とまで発言している。
六者協議でも、米国は議長国の役割を中国に委ねた。アジアの盟主として中国を認めたに等しく、対立関係にあるなら米国は決してそのようなことはしない。
ところが日本はいまだ冷戦思考のままで「日米韓が連携し北朝鮮に圧力をかける」といった構図にとらわれ、孤立化して失敗したのは記憶に新しい。
(続く)
そこでこの内容の詳細について3回に分けて紹介したい。
終戦しばらくブラジルの日本人に「勝ち組」と呼ばれる人々がいた。第二次世界大戦が終わってもまだ「日本が米国に負けるはずがない。戦争はまだ続いている」と信じ、敗北の事実を認めるべきだとする「負け組」との間に対立抗争事件まで起きた。
現在冷戦がとっくに終わったにもかかわらずいまだに「中国脅威論」や新冷戦説を唱えている論者たちは、現実を見ることを拒否し、冷戦型思考から脱却できないという点で「勝ち組」に似ている。
彼らのおかしさは、いまだに「中国は共産主義だ」と思い込んでいる点にある。中国は憲法を改正して私有財産保護をうたい、上海と深圳には証券取引所がある。実態は「共産主義」どころか、露骨な資本主義だ。
その結果腐敗が蔓延したため、是正するためにかって批判された儒教が奨励されている。中国政府が日・米・西欧・アジアの大学と連携し54カ国に156校も開いている中国文化センターは「孔子学院」と名付けている。江沢民前国家主席は1999年に孔子廟に参拝している。こんな「共産主義」があるのか。
冷戦期には、米国を中心とした西側と、旧ソ連や東欧が対立したが、有力資本主義国の1つとなった中国が米国と対立しているのか。
中国には米国から進出した企業が2万2千社あり、中国の対米貿易黒字の大半はそれが貢献している。また中国は日本に次ぐ米国債の保有国で50兆円以上ある。保有している1兆3千億ドル以上の外貨はゴールドマン・サックスやメリルリンチといったウオールストリートの巨大金融機関に運用を任し、米国にとっては最大の顧客だ。
米国の軍事企業の中核を占める航空機産業を見ると、中国はボーイングの旅客機を年150機も買っている。ウォールマートをはじめとする巨大流通産業は、安価な中国製品に支えられている。
米国経済の主流である金融も軍需産業も流通も、中国と密接な関係にあるのだ。
さらに中国からエリート大学生を中心に年20万人も米国に留学し、工科の博士号を取るのが2,000人以上いる。しかもその多くが帰国せず米国の企業に就職しているから、結局ヒト・モノ・カネで中国は米国を支えていると言っていい。
一方、中国にしてみれば、輸出依存度が37%と日本に比べて2.5倍以上高く、輸出総額の21.4%を占める米国の巨大市場に頼らざるをえない。
いまや米中は共存共栄関係にあり、軍の関係にも反映している。両国の海軍は、初歩的レベルだが共同軍事演習もやっている。米太平洋軍司令官のティモシー・キーティング海軍大将は、2007年5月に訪中した際、「中国が空母を保有しようとするのは当然。できるだけお手伝いしたい」とまで発言している。
六者協議でも、米国は議長国の役割を中国に委ねた。アジアの盟主として中国を認めたに等しく、対立関係にあるなら米国は決してそのようなことはしない。
ところが日本はいまだ冷戦思考のままで「日米韓が連携し北朝鮮に圧力をかける」といった構図にとらわれ、孤立化して失敗したのは記憶に新しい。
(続く)