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ハリルジャパン(52) サッカーをボール奪取で観る(2)  文科系 

2016年02月17日 15時24分16秒 | スポーツ
 こんなことが分かるとサッカーがより面白くなるということで以下を続けさせていただきます。

 サッカー観戦も、野球のホームラン打者と同じように、FWばかりが観られるもの。バレーボールで言えば、エースアタッカーが注目されるのと同じ理屈である。が、そのバレーボールには、こういう格言がある。

『素人は、そのゲームで最も目立つエースアタッカーを観る。ちょっと分かってくると、常に彼に良いトスを上げるセッターに目が行く。もっと分かってくると、そのトッサーに良いサーブレシーブやパスが集まっているというチーム全体を見る』

 この格言をサッカーに当てはめれば、こういうことだろう。
 サッカーの得点、カウンター得点、ショートカウンター得点などを観る場合、それへのパッサーを、つまりアシストを観るべきというのと同じ理屈だろう。この良いアシストも含めて、サッカーにもこういう格言がある。
『良い攻撃は、良い守備から生まれる』

 さて、ここで言うサッカーの「守備」とは、「ゴールを守る」ことではない。身方ゴールを守る前に、身方ゴールからずっと前の方で敵のボールを奪ってしまえばそれに越したことはないという「積極的守備」のことを言っている。このことでサッカー革命を起こしたと言えるのが、昔はイタリアのACミラン、今はドイツのドルトムントなどである。いずれも、以下の得点戦術を前提としたチームだ。
「敵ゴールに近いところで敵ボールを奪えれば、すぐに得点に繋がりやすい」

 こうして、チームとして身方陣地から高い位置で敵ボールを奪えるところが、強いチームの一つのタイプになっている。イングランドはプレミアリーグでちょっと無い奇跡を起こしていると大騒ぎされているのが、岡崎慎司所属のレスター。ここは、正にこういうチームだ。1点差勝ちとか、同点に追いついて引き分けとかが非常に多い、負けないチームなのだが、それは以下の理由による。
 最も必要な時に良いボール奪取が出来て、そこからのカウンター得点が多いのである。岡崎慎司はそこで以下の役割を果たせるから、去年2桁得点をあげてエースを張っていた選手をベンチに押しのけて、レギュラーを張っているのである。
①エース・バーディーとともに、彼よりもちょっと後ろ目の前から敵ボールにプレスをかけ続けて、敵ボール奪取攻撃への先陣を切る。直接にボールを奪うと言うよりも、ボール保持者のパスを乱すことによって、後ろがボールを奪いやすいようにするのが彼の役割である。
②こうして後ろの身方が敵ボールを奪った瞬間に前に走り出して、出来るだけ上でそのパスを受けて周囲のバーディー、マレズらにつなぐ。

 なお、このチームのラニエリ監督がドルトムントの合宿へゲーゲンプレス練習を学びに通ったというのは、有名な話である。当時のドルトの監督、クロップが見学申し入れを認めたのだが、そんなクロップは大変偉いと思う。自分が編み出した戦術に特許権を付けず、敵監督になるかも知れない人にさらけ出したのである。
 ちなみに、今期リバプールの監督になったクロップは、先日ラニエリ・レスターに0対2だったかで敗れている。
 
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僕の世界観に関わって(1) 現代世界経済論  文科系

2016年02月17日 14時58分01秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 3回シリーズほどで、僕の世界観に関わってということで書いてみます。過去ログを改変してまとめて載せるというものですが、2回目は「ある戦争論」、3回目は「僕の9条堅持論」という予定でいます。断片的討論の他にこういう大きな視点も論じ合ってみたいとか、これをしておけばつまらない批判は少なくなろうかとか、そんな思惑もあります。


 慢性的恐慌世界

 ケインズやマルクスが恐慌を資本主義の最大問題と見て格闘したのは、株価や「景気」などよりも、定期的なように起こる失業者激増問題があったからである。失業者激増ほど、犯罪とか人心の荒廃などいろいろに社会を荒らす問題はないからだ。ヒトラーや東條の台頭も、一九二九年の世界大恐慌以来の失業問題が無ければあり得なかったこと。日本の「満蒙開拓」などの社会的機運も同じことだろう。ところが今は、銀行倒産は国が救うが、失業や不安定雇用問題はほぼ放置と言える。スペイン、ギリシャ、ポルトガル、イタリア、アイスランドや、アジア・アフリカ諸国。若者を中心に膨大な失業者を何とも出来ない国があるのだから、リーマンショック以降はもう世界恐慌である。それらの国々に世界の諸問題が特にしわ寄せされてきたわけだ。
 銀行倒産は国家が即座に救うのに、若者の失業者放置って、どういう理屈で続けられるのだろうか。失業者が多い国家が無力だから仕方ない? 否、現代の失業者は、マネーゲームによって生み出される。九七年のアジア通貨危機から、タイ、韓国、インドネシアに大失業者群が生まれ、ギリシャがゴールドマンなどの世界的金融資本に食い物にされたとかも、知る人ぞ知る有名な話だ。
これらの問題は、どうしようもないことなのだろうか。近年の世界経済について、その転換点以降現代までの推移を振り返ることを通じて、その淵源を探ってみよう。
 
 七一年にいわゆるニクソンショック。金本位体制を崩して、世界的に変動相場制に移って行くことになる措置だ。直後には、対円などでドルが世界的に値下がりし、他方、七三年原油価格暴騰が起こる。さらには、戦後世界経済理論を最も騒がせたスタグフレーション現象が強調され始めた。「景気の停滞下で物価上昇が続く」「物価上昇と失業率の上昇とは併存しない」という当時までの世界的経済理論ケインズ経済学では説明できない現象と言われたものだ。新自由主義として有名なサッチャリズムが七九年に、レーガノミックスは、八一年に始まっている。八十年代は「アジアの時代」とかジャパンマネーの時代というのが定説だ。七九年には経済協力開発機構でアジアが注目され始め、以下十国が「NIES」ともてはやされた。韓国、台湾、香港、シンガポール、ブラジル、メキシコ、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ユーゴスラビア。八十年代に入るとこのうち南欧や南米が落ちて、アジアNIESが急成長を遂げていく。以上の八十年代動向は同時に、アジア唯一の先進国・日本が、「アメリカ」をも買いあさった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代とも重なっている。
 九十年前後に起こった社会主義国崩壊から以降、民間資金が各国に流入して、様々な猛威をふるい始める。それにともなって各国に通貨危機が連続して発生していくことになる。九四年メキシコ、九七年東アジア、九八年ロシア、九九年ブラジル、〇一年にはトルコとアルゼンチンなどだ。いずれの国も、短期資金の突然の流出で資本収支の赤字から困窮しつくすという特徴を示した。ちなみに九八年世界決済銀行の四三カ国調査にこんな数字があった。市場為替取引高は一日平均一・五兆ドルで、年間五百兆ドルと。九五~六年の世界貿易高が五兆ドルであったのを考えると、もの凄い数字ではないか。「カネがモノから離れた」マネーゲームに対して識者たちから警鐘乱打が発されることになる。もちろん、こういうゲームの主人公たち自身からも破綻者が現れた。九八年にロシア通貨危機でロングタームキャピタルマネージメント、〇二年にエンロンの倒産である。いずれもデリバティブ、金融派生商品の失敗によるものだった。
 そして〇六年十二月に兆し始めたサブプライム住宅ローン・バブルの破裂。百年に一度の世界経済危機と言われたものである。

 さて、初めに提起した世界の失業・不安定雇用問題に、この簡単な世界経済史のどこが、どう繋がったか。一言で言えば、先進国のマネーゲームが世界の現物経済を支配し、人件費比率大幅カットによって、これが始まった。さらには世界の余剰資金をかき集めるべくバブルを世界に形成しては破裂させたことによって。現物経済と言っても株式だけではなく、土地、金融派生商品、さらには国債売買や為替から起こる通貨戦争までを含んだものである。この戦争の結末をば、ある学者は国際通貨基金〇八年の調査結果を使ってこう描いている。
『一九七〇年から二〇〇七年までの三八年間に、二〇八カ国で通貨危機が、一二四カ国で銀行危機が、六三カ国で国家債務危機が発生しています。金融危機は、先進国、新興工業国、開発途上国を問わず、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ、アフリカを問わず起こっていたのです。これに対し、第二次大戦後一九七〇年以前の時期には、国際金融危機や大規模な一国金融危機はほとんど発生していません』(岩波ブックレット一二年刊 伊藤正直・東京大学大学院経済学研究科教授「金融危機は再びやってくる」)
 こうして、日米など人件費が高い先進国は、貿易収支の赤字をばマネーゲームで穴埋めする状況さえ現れた。その陰には、民生に使う社会資本さえ奪われた国々。これでは、世界経済の良い需給循環など起こりようがない。よって、日米の公的累積債務もそれぞれ一千百兆円、八千兆円。この世界、一体どうなっていくのか。

 ケインズが生きていたら驚嘆して、こう叫ぶだろう。
「こんな豊かな世界に失業者、不安定雇用者がこんなに居るとは! 私には予想も出来なかった未来である」
 新自由主義経済学では、ケインズを社会主義的と言う向きもあるが、どちらが狂っているのだか。

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