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『問題は英国ではない、EUなのだ』 書評②  文科系

2017年02月13日 08時13分50秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
この本の目次はこうなっている。
『 「日本の読者へ 新たな歴史的転換をどう見るか?」
1 なぜ英国はEU離脱を選んだのか?
2 「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」
3 トッドの歴史の方法・・・「予言」はいかにして可能なのか?
4 人口学から見た2030年の世界
5 中国の未来を「予言」する・・・幻想の大国を恐れるな
6 パリ同時多発テロについて・・・世界の敵はイスラム恐怖症だ
7 宗教的危機とヨーロッパの近代史・・・自己解説「シャルリとは誰か?」 』

 さて、この7本それぞれが独立した、インタビューとか講演とかをまとめて紹介したものであって、全体としてまとまった著作というわけではない。また、重複も多く、要約は至難だ。いろいろ考えて、こんな要約をすることにした。最初にはじめにを要約し、上の目次で1~2回までを一つ、次にトッドの一風変わった「方法論」ということで3~4回めを一つ、最後5~7回目を四つ目として、都合4回にわたってここにまとめていくつもりだ。

 さて、今回ははじめにだけを要約する。

 第二次大戦後三つの歴史的時期があった。80年までが経済成長・消費社会期、その後2010年までが英米先導の経済グローバリゼーション期、そして2010年からはグローバリゼーションの終わりの始まりである。これを導いた英米がすでにそうなっている。それが英国のEU離脱であり、米国では例えば白人死亡率の上昇が起こっているという資料などがあげられる。

 これは「グローバリゼーション疲労」から先進国がばらばらになっていく過程を示しており、ユーロも間違いなく崩れて、不一致も多くなり、ばらばらになっていく。
 英仏の出生率は安定しているが、高齢化ドイツは移民で、同じく日本は移民ではなくロボットで補う方向だし、中国経済は内向き米とユーロ崩壊から続かなくなるだろう。

 これらの国それぞれの未来予想は難しい。経済よりもネオリベラリズム思想がこれまで前に出過ぎて来たことによって、社会科学、歴史思考が荒廃しているからである。なお、経済主義は知的ニヒリズムの一つの形態である。ちなみに、現下世界史の以上のような新たな転換は、経済転換である前に、家族、人口、宗教、教育などの転換になるだろう。

(あと3回続きます)

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