たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

花組地方公演『仮面のロマネスク』

2017年04月08日 23時35分56秒 | 宝塚
2017年4月1日投稿、なつかしの雪組『仮面のロマネスク』    http://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/dcc4c16239307073f2864dc19f9c86f5

 メルトゥイユ『ジャン・ピエール、生きているの? 死んでしまったの?
私は愛にまで仮面をつけてしまった。でもそうしなければ、私は生きてこられなかった。
形を崩さず、心を弱めず、この世界で位置を占めるために……私も戦っていたの、
時にはあなたとさえも。ごめんなさいね、パリが崩れようとしている今、やっとあなたに
仮面がはずせます」

『女を真剣に 恋したことがありますか
疑いも不安もなく 恋したことがありますか
憎しみに震え 希望もなく 争いの中で ただひたすらに
フルル フルルー 恋したことがありますか』

歌の途中、上手踊り場にヴァルモンが現れ、ゆっくりと下りてくる。
上手袖から出たアゾランに、マントとサーベルを渡す。

ヴァルモン「やっぱり、まだいたね」

メルトゥイユ「あなたも……決闘は?」

ヴァルモン(微笑んで首を横に振ると アゾラン「 (不審気なメルトゥイユに)
旦那さまは空をお撃ちになりましたし、それを一早く目に止められたのか、
ダンスニー男爵も外してお撃ちになったようでございます。
折から 町が慌しくなり、そのままお別れに ・ ・ ・ ・」


メルトゥイユ「そう、ありがとう」 アゾランは一礼して、上手へ入る。

メルトゥイユ「あなたはやはり戦いに行くんでしょう、王宮へ国王を守るために」

ヴァルモン「そう、これでも僕は近衛連隊に軍籍があるんでね」

メルトゥイユ「負けることが明らかでも?」

ヴァルモン「そうだね。僕は宮廷と社交界の中で、僕自身の立身のために、
また恋心のおもむくままに、ひたすら生きてきた。その宮廷と国王の運命が傾いている
今、負けると分っても戦いに行く。それが僕の行くべき道だろう。そしていずれ消えてい
く貴族の運命かもしれない。この屋敷を出てどこへ行くの?」

メルトゥイユ「こうなった時にはと考えていたように、この国を出るわ」

ヴァルモン「では急ぐだろう」

メルトゥイユ「ううん、あなたもいなくなる今日、私の命も終わるのよ」

ヴァルモン「フランソワーズ……」

メルトゥイユ「こうしてあなたを待っていたのは、最後に二人だけの舞踏会をしたかったから」

ヴァルモン「こんな別れが来るとは思いもしなかった」

メルトゥイユ「あなたが好きだったわ」

ヴァルモン「僕も、君がいたから生きていられた」

メルトゥイユ「ジャン・ ピエール」

ヴァルモン「楽しかった」

どちらからともなく相擁して、長い激しい口づけ―。

ヴァルモン『あなたがいたから 苦しくて あなたがいたから哀しくて』

メルトゥイユ『あなたがいたから 恋しくて』

二人『あなたがいたから 生きていられた』

下手からロベールが出る。

 ロベール「奥さま、そろそろお出かけになりませんと……」

メルトゥイユ「そうっとしていて、私たちの時間よ」

ヴァルモン「もうしばらくで、僕もお暇するよ」

ロベール、一礼して入る。 二人、改めてダンスに入る前の一礼。そして大きく華やかに
舞台いっぱい踊っていく。ヴァルモンの歌がコ ーラスで拡がって―。照明が変化して、い
つの間にか舞台上奥にミモザの花が浮び上って、幻想的な時空を造る。二人の踊る姿は楽
しげに、また切なく、あるいはうっとりと、次第に弾んでいく―。

カゲソロ『あなたがいたから苦しくて あなたがいたから哀しくて あなたがいたから恋し
くて あなたがいたから生きていられた』

コーラス『Uh』
二人の上に緞帳が下りはじめる。 その後に、砲声が聞こえ、ホリゾントが赤く染まってく
る。アゾランが上奥から出るが、声もなく佇む。ものともせずに踊り続ける二人に、緞帳
がかぶる。 ―幕―


 1997年雪組公演プログラムから、最後の「ふたりだけの舞踏会」の場面を引用しました。かつて宝塚のプログラムには脚本が掲載されていたんですね。いつしか掲載されなくなりました。著作権とかあるからかな。

 3月31日神奈川県民ホール、18時開演の花組地方公演。10数年ぶりに生で宝塚を観劇しました。忙しさで数年間観劇からすっかり足が遠のいて、復活してからもヅカは遠のいたままだったのが最近復活。やっぱり楽しくて、見逃してしまっては人生勿体なあと思う次第。チケット難の公演、運よくネットがつながって時にはまだチケットが残っていたの奇跡だったみたいです。週末、仕事帰りのふらふら状態でしたが振り返ると楽しさがよみがえってきます。生オケと銀橋ないのがさみしかったけど、エネルギーがそのまんま伝わってくるので、生で観劇するのはいいもんです。

 ジャン・ピエール・ヴァルモン子爵:明日海(あすみ)りお

 フランソワーズ・メルトゥイユ侯爵夫人:仙名彩世(せんなあやせ)

 初演の高嶺ふぶきさんと花總まりさんの「ふたりだけの舞踏会」がよみがえってきました。耳に残りやすいメロディラインと歌詞、トップコンビの信頼関係があって成り立つ二人だけの世界が今も心に残っています。花總さん演じるメルトゥイユ侯爵夫人「そっとしていて、わたしたちの時間よ」っていう時の声の響きに、仮面の下にかくし続けてきた素直な心をようやく表現している感がこもっていました。高嶺さん演じるヴァルモン子爵の「もうしばらくで、僕もお暇するよ」の抑えた声、日本で初めてフランツを演じきった人らしい、引き際の潔さ、退団公演への想いがこもった響きでした。「二人だけの時だけ「フランソワーズ」「ジャン・ピエール」って呼び合う。お互いがお互いの存在があったから今日まで生きてこられた、最後にようやくたどり着いた二人だけの時間、なんとも染み入る場面。

 20年の時を経て、誰を愛することもできずにいるわたしですが、仙名さん演じるメルトゥイユ侯爵夫人の、ようやく心の仮面を外すときの「仮面をつけなければ生きてこれなかった、私も戦っていたの、形を崩さず、心を弱めず」がリアルに迫ってきて共感。享楽に興じているような貴族社会の中を生き抜くために一人の女性が戦ってきたという心情が身近に感じられたのでした。

 仙名さん、明日海さんの三代目のコンビ娘役さんのトップお披露目公演。入団10年目ということで話題になったようですが舞台全体と相手役をがっちりと支えつつ自分の芝居をしっかりできる安定感でした。明日海さんとの声の重なりも美しかったです。一人ヴァルモンの行方を案じながら佇む姿に紫ともちゃんと渚あきちゃんの雰囲気をあわせもついい娘役さんの雰囲気を感じました。「もうしばらくで、僕もお暇するよ」と言った時の明日海さんヴァルモン子爵の声の響きにはすべてを仙名さんメルトゥイユ侯爵夫人に委ねたような安心感と信頼感がこもっていると感じました。二人のコンビで長くやってほししい、脚本のいい作品で魅せてほしい。劇団さん、大事にしてくださいね。ツィッターでつぶやいている方がいらっしゃいましたが『あかねさす紫の花』の再演なんて似合いそうですがどうでしょうか。

 
ショーの『EXCITER2017』はコンサートのように客席がのりのりの舞台でした。のっけからエネルギーにあふれていて楽しかったあ。客席降りも多かったので目が足りなかったです。まだまだ書き足りませんが今日はここまでにしておきます。宝塚をご存知ない方にはなんのことやらさっぱりわからないブログでした。

 
 終演後にプログラムを買ったので、五峰亜希さんが出演されていたとは知らず、芝居ではヴァルモン子爵の叔母、ショーでは秀逸なダンスシーンを魅せてくれていたのが五峰さんだったとあとで知り納得。大浦みずきさんが創り上げたダンスの花組が受け継がれているのもうれしかったです。