たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』-ライブ配信

2021年01月16日 22時19分08秒 | ミュージカル・舞台・映画
 1月16日(土)17時開演、梅田芸術劇場公演、ライブ配信を視聴しました。宝塚歌劇団が全面協力、台詞も歌もほぼ同じだったと思います。キングポーの登場場面で歌っているところとエドガーの影が仮面をつけてモノクロの衣装で踊っていたところが変わったぐらい。舞台には3年という時空を超えて、まぎれもなく明日海りおエドガーが実在していました。エピローグの登場シーンでスポットライトがあたったとき、なんだか胸がいっぱいで涙でそうになりました。カーテンコールでは変わらないみりお節健在。「今日はライブ配信、あれ(パソコン・タブレット端末)の向こうでご覧のみなさまありがとうございます」と目いっぱい手を振って、キャストのみなさんに「みなさんも手を振ってください~」と。「DVDの収録日でもありました。お買い上げいただきありがとうございます」も変わらない。「23日にもライブ配信があります。おかわりしたい方は視聴料を払ってごらんください」「DVDに収録されてしまいましたがまだまだ進化し続けていきたいと思います」と座長としてあいさつする姿に、宝塚で真ん中に立ち続けてきた貫録とたのもしさを感じました。(東京宝塚劇場の前で遠巻き後ろ姿をみたことのあるみりおちゃん、誰よりも細かった、風が吹くと飛んでいきそうなぐらい細かったですが少し太れたかな)。2回目のカーテンコールにひとりで登場したあと「千葉くんアランを呼びたいと思います」と。呼ばれた千葉雄大くん、「舞台の上で千葉くんと呼ばれたの初めて」と緊張感から解き放たれた笑顔ですごく嬉しそうでした。共演できて嬉しいとリスペクトし合う姿が素敵でした。みりおちゃんエドガーの隣にアランとして存在し続けるのはものすごいプレッシャーだと思います。小顔のみりおちゃんと並んで違和感のない小顔、名乗りをあげくれてありがとうとお礼をいいたい気持ち。

 宝塚とはまた違う幻想とリアルのはざまの美しい世界観。衣装も素敵でした。お化粧の違いもあるかもしれませんが、みりおちゃんエドガーの人間だったときのかわいい少年感とバンパネラになってからの血にうえた表情の違いがよりはっきりしたように感じました。幼い日森に捨てられ、たった一人の妹メリーベルを守ろうとして守りきれなかった葛藤、メリーベルが消滅したあとの孤独感・バンパネラとして生きていこうと強さがより伝わってきました。

 あーちゃん(綺咲愛里)メリーベルとの兄妹は麗しすぎました。タカラヅカスペシャルでデュエットしたときのツーショットも麗しかったですが、不思議とより顔が似ているようにみえたのはそれぞれのなりきり度でしょうか。水車をくるくる回す、お前の目もくるくる回るの場面と、シーラとポーツネル男爵がキスした時の目隠し、あたふたが可愛すぎ兄妹。ピンク色、フリルたっぷりのドレスをまとったあーちゃんメリーベルもまた本物のフランス人形でした。可愛くて、バンパネラとなってからは本当に血を吸いそうな強さをもったメリーベル、可愛いという芸を極めたあーちゃん、納得のメリーベル。歌もダンスもより進化したかな、リアル男子にリフトされているの、不思議な感じでした。

 夢咲ねねちゃんシーラ、豪華な肩出しドレスの着こなしと美しさ、貫録は期待値をこえていました。クリフォードに「脈がない」と言われた時の、指先まで美しい腕の透明感は、真っ白で向こう側が本当に透けて見えてきそうな、血が通っていないバンパネラ感にあふれていました。ポーツネル男爵に愛されている自信と貫録、鎖骨の美しさ、さすがでございました。あーちゃんとねねちゃん、トップ娘役の実績、ここにありという感じ。

 麗しの宝塚OG3人の妖精に囲まれた小西遼生さんのポーツネル男爵のなりきり度が、タカラジェンヌではないかと思うぐらい完璧でした。ビジュアル、美しい衣装の着こなし、マントのひるがえし具合、しぐさ、ねねちゃんシーラとの並び、みりおちゃんエドガーとシーラの三人で馬車に乗っているときの美しい並び、リアルに完璧な一枚の絵のようなポーツネル男爵一家の長として存在感していました。秋に『生きる』では書生役でよれよれの着物を着ていた方が、役者さんってすごいですね。この、エドガーに歌う時の説得力が半端ないと感じました。「疑惑など打ち壊せ、ひるんではいけない」と一家を守ろうとする男爵の姿は、宝塚ファンの間で認知度がぐんぐんあがったのではないでしょうか。

「み言葉や 十字架を 恐れるな
 ただの象徴だ
 だが恐ろしいのは信仰だ
 異端を認めずに
 自分と違う者を排斥する」

 涼風真世さんのドスのきいた老ハンナは狙いを定めた相手の血を逃さずいっぱい吸って生きてきた感がすさまじかった、還暦を迎えたとは思えない若さと美しさは、永遠の妖精、永遠のオスカル様、ブラヴァツキーの怪演ぶりとの演じ分け、お見事でした。福井晶一さんのキングポーはバルジャンが歌っている?いや違う、仮面をつけたエドガーの影6人は同級生と同じキャストの方々かな、キレッキレのダンスはトートダンサーのような身体能力の高さ、線の細さを感じさせるところが違和感なくてエドガーの葛藤がよりひきたつなあと感じました。

『ポーの一族』、小池修一郎先生の手腕が光る作品、たぶん原作の台詞をかなり使った歌詞はちょっぴりの哲学と楽曲の良さ、みりおちゃんエドガーの歌声、コーラスの美しさでなんどでも聴きたい、何度聴いても飽きることのない魅力があります。またまたオンデマンド配信された宝塚の映像もまたみています。

 尽きませんが長くなったので今はこれぐらいで。

 こんな時こそ現実を忘れる時間は必要、最後にひとりで緞帳の前に登場したみりおちゃん、不便をしながら劇場に来てくれたお礼と手洗い、規制退場への呼びかけ。無事に公演が続いていきますように・・・。





2020年月組『出島小宇宙戦争』-オンデマンド配信で視聴

2021年01月16日 16時53分26秒 | 宝塚
「デジタル・マジカル・ミュージカル

『出島小宇宙戦争』
作・演出/谷 貴矢

カゲヤス    鳳月 杏
タキ/カグヤ   海乃 美月
リンゾウ      暁 千星

長崎の出島に、外国人に紛れ宇宙人が忍び込んでいる-。昨今の江戸の町では、そんな噂がまことしやかに飛び交っていた。事態を無視できなくなった幕府は、宇宙のことに誰よりも詳しい天文方、カゲヤスに潜入調査を命じる。樺太を探検し未知の文化との交流経験を持つ御庭番、リンゾウを伴って九州に乗り込んだカゲヤスであったが、そこで待っていたのは驚くべき光景であった。長崎全体が、奇妙な幻想未来都市へと変貌を遂げていたのである。出島で出会った女、タキの協力を得て調査を進めるカゲヤスは、この近代技術をもたらしたという謎の西洋人、シーボルトの正体を探っていく…。
誰が宇宙人で、誰がそうでないのか。何がリアルで、何がそうでないのか。混乱の中でカゲヤスは、ミクロでマクロなスペースオペラに巻き込まれていく。パラレルワールドの出島を舞台にコメディタッチで描く、デジタル・マジカル・ミュージカル。 」(劇団HPより)

 鳳月杏さんが花組から月組に戻ってきてからの主演作品、東京公演は2月24日から3月1日まで東京建物Brillia HALLで上演予定でしたが、劇団は29日から1日までの4公演を突然中止の決断をせざるを得ませんでした。オンデマンド配信の映像は梅田芸術劇場公演、今振り返る全日程予定通り上演できたことは奇跡でした。

 作・演出は谷貴矢さん。大劇場デビューが待たれる若手演出家のおひとりでしょうか。少人数の外箱は一本物でじっくり描くことができるので冒険がしやすいし、大劇場公演ではなかなか役がつきにくい下級生まで活躍できていいですね。面白い作品が生まれます。出島が江戸時代の長崎の出島と、ポスター画像をみたときには結びつきませんでした。暁千星さんのリンゾウは間宮林蔵、光月るうさんのタダタカは伊能忠敬、風間柚乃くんのシーボルトは文字通りシーボルト、光月組長は役名を知らされたときに伊能忠敬のお墓参りに行ったそうですがほとんど蓋を開けてみたらほとんどアレンジされていて歴史上の人物の面影はなかったと。アレンジがうまく物語の中に溶け込んでいて面白い世界観の仕上がり。今の日本を揶揄っているような挑戦的なところもあって脚本を読んでみたいと思う作品。若手演出家の発想と創造力、柔らかくて引き出しが豊かだと思いました。ベテランがそうではないとかそういうことではないですが今までにない世界観が生まれるのは外箱ならでは。海乃美月さんのカグヤは月からやってきたかぐや姫のアレンジですね、

『ピガール狂想曲』で女性が演じる男役の女装しています感がすごくて笑いをとっていた風間 柚乃くんのシーボルト、舞台役者として今後ますます目が離せない存在、かっこいい男役になりたいそうですがいかにも役者といった顔立ちと表情が個人的には大好きです。タダタカに思いを寄せていたという設定が面白い、フィナーレで娘役さんたちを率いて踊る場面、真ん中にたつ力を感じたし、美しさに惹かれました。大劇場ではなかなかみることのできないヒロイン力と芝居力。暁千星さんのリンゾウ、カゲヤスの友達かと思いきや、カゲヤスの持つ地図を狙っているという設定だったと思います。裏でにやりと笑う暁千星さんを大劇場でみることはなかなかできないのでこれも面白い。伊能忠敬、間宮林蔵の功績によって、劇中に今のかたちをなしつつある北海道(当時は蝦夷)の地図を映像で登場させる演出など、史実の取り込み方がうまいなあと思いました。関連書籍、読んでみると面白いんだろうと思います。彼らが足で歩いたことで日本のかたちで明らかになっていったのですから。鳳月杏さんが演じたカゲヤスは調べてみると、「書物奉行(ぶぎょう)兼天文方高橋作左衛門景保(かげやす)(入牢(にゅうろう)、吟味中病死)」(コトバンクより)。着流した着物にハットと銃、ほぼアレンジされていて実在の人物の面影はなく、牢獄に入れられているところから登場するなど、史実の取り込み方がほんとにうまい。


 
 ちなつさんの役の振り幅の広さがすごいですね。『月雲の皇子』ではたまきち(珠城りょうさん)の弟役だったことにびっくり。瀬奈じゅんさんが退団したとき贈られた白いカードのことばをつらくなったときに読む、墓場までもっていくつもりで誰にもみせていないと、オンデマンド配信で視聴した瀬奈じゅんさんとの対談で話しています。永遠ではない宝塚の舞台を、一回一回命がけでつとめているその姿は、妖艶な夫人もモテモテで浮気なお医者さんも髭つけた悪役もダンディパパもパワハラ夫みたいなおじさんもかっこよくて本当に美しい、明日のコンサート配信も見逃せません。