アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

またろうの三題噺

2012年02月24日 | ピアノ
またろうが、進級できるかどうかはおいとくとして、ともかく、春休みにはなった。

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ということで、よしぞう企画の「春休み小説講座(?)」がスタート。またろうに三題噺を作らせるというもの。初回のお題は、
「笑顔」「告白」「iPod」
だそうで…しかも、「ラブコメ」縛りという(またろうにとっては)難題である。

さて、それでは早速、またろう作品のご紹介。


-----ここから
 僕がそれを見たのは授業中、教師の話がつまらず眠気覚ましにiPodでネットサーフィンをしている時だった。
“笑顔の作り方を教えてください”
 2チャンネルの投稿だった。
 いつもなら気にかけはしない。しかし、なぜだか理由を聞かれても答えられないのだがそのスレは気になったのだった。
 以下、そのスレの内容。


――――――――
1、
笑顔の作り方を教えて欲しいんです。
どなたか知ってる人はいませんか?

2、
1よ、それはネタか?

3、
ちょwwwイミフwww

4、
1は笑顔を作ることができないということか?
詳細キボンヌ

5、
 というか、笑顔を作れないんだとして、どうして笑顔を作ろうと思ったん?
――――――――


 出だしはこんなところだ。もう少しだけ続きがある。


――――――――
6、(→1)
 自分は笑顔を作ることができません。
 今まで、それを不便だと思ったことは無かったのですが、少し前に好きな人ができました。
 その人に告白したいと思っているのですがその時に笑顔じゃないのはどうかと思って。

7、
 うはwwww純情wwww

8、
 笑顔の作り方教えるにしても1の顔が知りたいよな1あげてみてくれよ

9、(→1)
http//……………………………jpg
――――――――


「えぇぇぇぇ!」
 思わず立ち上がってしまい、椅子がガタンと音を立てて倒れる。
「長谷。どうした」
「あ、いえ、なんでもありません」
 教師に言われて席に座りなおす。
 それにしても驚いた。いや、1が顔写真を上げたことではなく。
 まあ、上げたことも驚いたのだが、何より驚いたのはその顔写真が――――

――――僕も知るクラスの女子のものだったからである。

 授業が終了し、教師が教室から出ていく。
 僕は席を立ち、さっきの顔写真の女子の席の前へと歩を進める。
「高橋さん。少し話があるから来てくれないかな」
 周りからおぉ、と感嘆の声が上がり、やじうまの視線が僕と例の女子、高橋さんに集中する。
「どうしたの?」
「いいから来て」
 少し強引に高橋さんを引っ張って教室から出ていき、屋上に連れてくる。
「それで、何?」
 確かに彼女がネットで言ったとおり少しも表情に変化が見られない。いや、書かれていたのは笑顔が作れないだったか。
 だから、聞いた。
「笑顔作りたいの?」
 その時、初めて彼女の表情に変化があった。彼女の顔がみるみると赤くなって行ったのだ。
 畜生、少し可愛いじゃねえか。
「み、見たの?」
「…………見た」
 しばらくの間、沈黙が続く。
「で、長谷君は何をするために私を呼んだの?」
 そういう彼女の表情はもう元の無表情に戻っていた。
 むう、少し残念でもある。
「いやぁ、えっとさあ。笑顔を作る手伝いができたらなぁなんて思……い……まし……て」
 そうだ、なぜ僕は彼女を呼んだのだろう。急に分からなくなってきた。
「ありがとう」
 彼女の方を見るとそこにはいつもの無表情。
「あ、いや。手伝うと言っても具体的に何をしたらいいのか、よくわからないし」
「いい。協力してくれるだけでも嬉しい」
 なんだか、少しほっとしている自分がいる。
「それで、僕は何をしたらいいんだろうか」
「長谷君はいつもどうやって笑っているの? それを教えて」
「えっと……」
 いきなり言われると困る質問だ。
「頬の筋肉を引っ張って目尻を少し下げて…………」
「なるほど」
 高橋さんの顔が泣きそうな感じに歪む。
 どうやらさっき言った笑顔の作り方を実践したらしい。
「あ――。何か違うなぁ」
 そうだ何か違う。いや、笑顔の作り方ではなく。
 笑顔って作るものなのか? 違うだろう。自然にできるものだろう。できるはずのことだろう。
 確か、幼少時に笑顔を見てないと笑顔をうまく作れないといった話を聞いたことがある。
 彼女は、そうなのだろうか。そうなのならば――――
「高橋さん」
 そして僕は自分の出来る精一杯の笑顔を向ける。
「笑顔はさ。作るものじゃなくて、できるようになるものなんだ。だからさ――――」
――――まずは告白してみようよ。
「……? どういうこと?」
「君が笑顔になれないのは笑顔をあまり向けられてなかったからだと思うんだ。だからまず告白してみてその人からいっぱい笑顔を向けられるようになりなよ」
「……もし断られたら?」
 その言葉を言う高橋さんは少し泣きそうな表情だった。
「その時は――――また僕が手伝う。君にたくさん笑顔を向けるから」
 だから、頑張って。

 そうして次の日の朝になった。
 昨日、高橋さんに「明日の朝一にでもしなよ」と言って、少し逃げるようにして教室に戻ってきてしまった。
 なんで逃げてしまったのだろうか。我ながら不思議である。
「今頃、高橋さんは告白の最中だろうか…………」
 なぜだろう。胸が少し痛む。
 そうやって机に突っ伏している僕の前に影が一つ落ちる。
 その影はいつもの無表情、だが少し頬を上気させ、口を開いた。
-----ここまで

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コメント (4)
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