「ピアノと日本人」(斎藤信哉著)という本を読みました。まー、私がいかにも買いそうな本ですが。
←調律に関するところとかはまぁまぁおもしろいですが
この中身、書かれていることというか主張点はまぁ妥当な事柄なのですが…たとえば
・文化の違いからくるリズム感の違い
・ピアノを響かせる弾き方(アタック後、振動を止めない)
・ピアノをもっと身近に、気軽に楽しむ(たとえば、コード弾き)
というようなことです。
ただ、そのそれぞれを「説得」するために引き合いに出している諸々の例が、この著者自身のよく知らないところから出してあってそれがハバを取っているので、なんか中身が薄い感じの本になってしまっているのです。
たとえば、「ピアノを響かせる弾き方(アタック後、振動を止めない)」で、西洋人はアタックのあと脱力して響かせる弾き方、日本人はぐっと叩いて弾まない弾き方をしていることが多いという文化的背景を説明したいために、西洋の太鼓と日本の太鼓を引き合いに出しています。
ティンパニのバチ(マレット)は、柄が細く、先に丸いのがついています。
和太鼓のバチは太くて重く、頑丈な棒状です。
ティンパニのバチは、叩いたあといち早く戻り、皮の振動を妨げないように、「しなる」(弾む)ようにできている。
和太鼓のバチは、強く叩きつけて大きな音を出すために太い(弾まない)。
…という説明になっています。
おそらく、著者は、和太鼓を(あんまり)叩いたことがないのでしょう。叩いてみれば、和太鼓を上手に叩いている人は、決して叩いたあとの振動を殺すような叩き方をしていないことがすぐわかると思います。初心者で、ガタイが良くて力自慢で、それこそ叩きつけるように太鼓を叩いている人もいますが、そういう人の音はなんというか…「べちっ」に近いです。音は、まぁ大きいのですが意外に大きくないんです。動作のでかさの割に。
子どもだったりして非力でも、うまい人はよく響くきれいな音を出します。腕の振りもつかって大きな運動にすると先端はかなりのスピードになりますし、それをしっかりした太い、重さのある棒で伝えますから、別に力任せというほどでなくても相当なインパクトがあります。あとは上手な脱力で弾んでやることができれば、急速に皮から離脱します。棒がしならないにしても、コツは同じです。
むしろ、ピアノでつい叩きつけちゃっていい音が出せない(弾めない)人は、和太鼓を練習してみたらどうだろうかと思うくらいです(^^;;
よい耳を持っている人ならば、ピアノそのものを練習しても、だんだんきれいな音を出せるようになってくると思いますが、和太鼓はなにせやることがシンプルで、ほかのことに気を取られようがないですし、叩くところが剥き出しで見えてますので、いい音で叩こうと工夫することに専念できます。っつか、せざるをえない。
だから、西洋と日本で、ピアノのタッチ(の傾向)に差があるとしても、別段、和太鼓のせいじゃないと思うんですがね。
それとか、日本のピアノ教育についての話をするときに、よく知らないのに英語教育の話を引き合いに出さないほうがいいと思います。逆に説得力がなくなっちゃいます。
あと、最終章に出てくるコード弾きの話も、これは別にこの筆者がコード演奏の達人であるわけでも、コード演奏の指導の経験があるわけでもないので、ここで読む意味はイマイチはっきりしないんです。この本のメインテーマ「歩き方ひとつで日本人のピアノの弾き方が劇的に変わる!!」ともあんまり関係ないですし。
というわけでこの本はどうも気に入らなかったのですが、ピアノの振動を生かす弾き方を工夫することについてはまるっと賛成です。和太鼓だって、「音色」が悪い演奏ってそりゃ残念感が漂うもんです。ピアノだってバイオリンだってやっぱりまずは音色がきちゃなくないことが「快」の元かと。
そういえば、バイオリンは打楽器ではないわけですが(あたりまえだ)、先日、aniaさんといったバイオリンカルテットでは、現代曲の中でひんぱんに、バイオリンの胴を叩く演奏が出てきました。四人全員、叩きまくりって曲です。珍しいですね。それで気になったのが、バイオリンの人って、叩くのがヘタなんじゃないかってことです。というか四人均等ではなく、ヘタな人がいたということなのですが、バイオリンそのものは、めちゃくちゃ(私が形容することは不可能なほど)うまくてプロ中のプロの人ばっかりなのですから、そこから考えると「え?」というくらい。リズムのタテ線がきちっとしてないし、叩く音もきれいじゃない(人がいた)。
ふつうはバイオリンの人って叩く練習しませんもんね。不思議じゃないことなのかもしれません。
もちろん、バイオリンをふつうに弾く場合、プロならタテ線きっちり合わせてますけど、初心者がバイオリンのみを習う場合は、リズムというかアタック(っていいませんね)、音の立ち上がりを意識しにくいような気がします。バイオリンがかなりうまくなっても、リズムはなんとなくあいまい、ゆるゆるに刻まれているという場合があるように感じます。私の場合、バイオリンが下手すぎて、弓のコントロールがうまくないために、思ったリズムが実際には刻めてないわけですが。つまり、私と同じくらい下手なうちには、なかなか正確なリズムで弾く練習がしにくいということにもなります。バイオリンを弾くにも、叩く楽器を経験したら何かいいことがあるんじゃないかな。
(たぶん、逆に、ピアノを弾くにも、バイオリンを経験したことで何かいいことがあるんじゃないかと思うんだけど。まだよくわからない。)
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この中身、書かれていることというか主張点はまぁ妥当な事柄なのですが…たとえば
・文化の違いからくるリズム感の違い
・ピアノを響かせる弾き方(アタック後、振動を止めない)
・ピアノをもっと身近に、気軽に楽しむ(たとえば、コード弾き)
というようなことです。
ただ、そのそれぞれを「説得」するために引き合いに出している諸々の例が、この著者自身のよく知らないところから出してあってそれがハバを取っているので、なんか中身が薄い感じの本になってしまっているのです。
たとえば、「ピアノを響かせる弾き方(アタック後、振動を止めない)」で、西洋人はアタックのあと脱力して響かせる弾き方、日本人はぐっと叩いて弾まない弾き方をしていることが多いという文化的背景を説明したいために、西洋の太鼓と日本の太鼓を引き合いに出しています。
ティンパニのバチ(マレット)は、柄が細く、先に丸いのがついています。
和太鼓のバチは太くて重く、頑丈な棒状です。
ティンパニのバチは、叩いたあといち早く戻り、皮の振動を妨げないように、「しなる」(弾む)ようにできている。
和太鼓のバチは、強く叩きつけて大きな音を出すために太い(弾まない)。
…という説明になっています。
おそらく、著者は、和太鼓を(あんまり)叩いたことがないのでしょう。叩いてみれば、和太鼓を上手に叩いている人は、決して叩いたあとの振動を殺すような叩き方をしていないことがすぐわかると思います。初心者で、ガタイが良くて力自慢で、それこそ叩きつけるように太鼓を叩いている人もいますが、そういう人の音はなんというか…「べちっ」に近いです。音は、まぁ大きいのですが意外に大きくないんです。動作のでかさの割に。
子どもだったりして非力でも、うまい人はよく響くきれいな音を出します。腕の振りもつかって大きな運動にすると先端はかなりのスピードになりますし、それをしっかりした太い、重さのある棒で伝えますから、別に力任せというほどでなくても相当なインパクトがあります。あとは上手な脱力で弾んでやることができれば、急速に皮から離脱します。棒がしならないにしても、コツは同じです。
むしろ、ピアノでつい叩きつけちゃっていい音が出せない(弾めない)人は、和太鼓を練習してみたらどうだろうかと思うくらいです(^^;;
よい耳を持っている人ならば、ピアノそのものを練習しても、だんだんきれいな音を出せるようになってくると思いますが、和太鼓はなにせやることがシンプルで、ほかのことに気を取られようがないですし、叩くところが剥き出しで見えてますので、いい音で叩こうと工夫することに専念できます。っつか、せざるをえない。
だから、西洋と日本で、ピアノのタッチ(の傾向)に差があるとしても、別段、和太鼓のせいじゃないと思うんですがね。
それとか、日本のピアノ教育についての話をするときに、よく知らないのに英語教育の話を引き合いに出さないほうがいいと思います。逆に説得力がなくなっちゃいます。
あと、最終章に出てくるコード弾きの話も、これは別にこの筆者がコード演奏の達人であるわけでも、コード演奏の指導の経験があるわけでもないので、ここで読む意味はイマイチはっきりしないんです。この本のメインテーマ「歩き方ひとつで日本人のピアノの弾き方が劇的に変わる!!」ともあんまり関係ないですし。
というわけでこの本はどうも気に入らなかったのですが、ピアノの振動を生かす弾き方を工夫することについてはまるっと賛成です。和太鼓だって、「音色」が悪い演奏ってそりゃ残念感が漂うもんです。ピアノだってバイオリンだってやっぱりまずは音色がきちゃなくないことが「快」の元かと。
そういえば、バイオリンは打楽器ではないわけですが(あたりまえだ)、先日、aniaさんといったバイオリンカルテットでは、現代曲の中でひんぱんに、バイオリンの胴を叩く演奏が出てきました。四人全員、叩きまくりって曲です。珍しいですね。それで気になったのが、バイオリンの人って、叩くのがヘタなんじゃないかってことです。というか四人均等ではなく、ヘタな人がいたということなのですが、バイオリンそのものは、めちゃくちゃ(私が形容することは不可能なほど)うまくてプロ中のプロの人ばっかりなのですから、そこから考えると「え?」というくらい。リズムのタテ線がきちっとしてないし、叩く音もきれいじゃない(人がいた)。
ふつうはバイオリンの人って叩く練習しませんもんね。不思議じゃないことなのかもしれません。
もちろん、バイオリンをふつうに弾く場合、プロならタテ線きっちり合わせてますけど、初心者がバイオリンのみを習う場合は、リズムというかアタック(っていいませんね)、音の立ち上がりを意識しにくいような気がします。バイオリンがかなりうまくなっても、リズムはなんとなくあいまい、ゆるゆるに刻まれているという場合があるように感じます。私の場合、バイオリンが下手すぎて、弓のコントロールがうまくないために、思ったリズムが実際には刻めてないわけですが。つまり、私と同じくらい下手なうちには、なかなか正確なリズムで弾く練習がしにくいということにもなります。バイオリンを弾くにも、叩く楽器を経験したら何かいいことがあるんじゃないかな。
(たぶん、逆に、ピアノを弾くにも、バイオリンを経験したことで何かいいことがあるんじゃないかと思うんだけど。まだよくわからない。)
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