街の高台を繋ぐ陸橋のたもとにある時計屋は、巨大な絡繰り時計と古風な回転ドアが目印だ。
人形付き置時計、古風なベル型目覚まし時計、時間ごとにメロディーの流れる壁掛け時計、そして腕時計に懐中時計などなど、所狭しと並んだ時計は何故か一つとして同じ時間を指していない。もちろん購入時にはきちんとした時間に合わせてくれるのだが、一体どうして最初から合わせていないのかと尋ねると、この時間は時計自身の時間なんだよという良く解らない答えが返ってきた。更に詳しく聞いてみると、時計が刻んでいる時間は、その時計が完成して動き出した時間であり、時計にとっては自分の過ごしてきた歳月そのものなのだそうだ。
「お客さんが買う時計は自分自身の時間を刻むのを止めて、お客さんの為の時間を刻むようになるんだ。ずっと大事にしてほしいね」
眼鏡をかけた小太りの店長は、そう言って微笑んだ。
人形付き置時計、古風なベル型目覚まし時計、時間ごとにメロディーの流れる壁掛け時計、そして腕時計に懐中時計などなど、所狭しと並んだ時計は何故か一つとして同じ時間を指していない。もちろん購入時にはきちんとした時間に合わせてくれるのだが、一体どうして最初から合わせていないのかと尋ねると、この時間は時計自身の時間なんだよという良く解らない答えが返ってきた。更に詳しく聞いてみると、時計が刻んでいる時間は、その時計が完成して動き出した時間であり、時計にとっては自分の過ごしてきた歳月そのものなのだそうだ。
「お客さんが買う時計は自分自身の時間を刻むのを止めて、お客さんの為の時間を刻むようになるんだ。ずっと大事にしてほしいね」
眼鏡をかけた小太りの店長は、そう言って微笑んだ。