昔、雨の日に傘を持って保育園まで迎えに来た女の人はとても優しそうな、だが全く知らない顔だった。しかしその頃の私は気分次第で些細なことでも激しく怒鳴り散らす母を心底嫌っていたので、もう何があろうと構わないと彼女について行った。結局家には何事もなく着いたのだが、その日から私の母は彼女にすり替わり、元の母は痕跡すら残さぬまま何処にも居なくなった。
昔、雨の日に傘を持って保育園まで迎えに来た女の人はとても優しそうな、だが全く知らない顔だった。しかしその頃の私は気分次第で些細なことでも激しく怒鳴り散らす母を心底嫌っていたので、もう何があろうと構わないと彼女について行った。結局家には何事もなく着いたのだが、その日から私の母は彼女にすり替わり、元の母は痕跡すら残さぬまま何処にも居なくなった。
たかあきは晩夏のド辺境に辿り着きました。名所は石碑、名物は肉料理だそうです。
私設古文書研究所員の父は(なお構成員は一名)長年のテーマとしている産金について調査するため、ずっと憧れだった有名な金山の跡地を訪れた。家族サービスだと言って連れて来られた母と私は当然ながら廃坑前に建つ石碑から内部を巡るのに徒歩で数時間ほど掛かる金山を目指す父をあっさり見捨て、温泉街で土産物屋をひやかしつつ地酒とジビエ料理を楽しむことに決めた。
私設古文書研究所員の父は(なお構成員は一名)長年のテーマとしている産金について調査するため、ずっと憧れだった有名な金山の跡地を訪れた。家族サービスだと言って連れて来られた母と私は当然ながら廃坑前に建つ石碑から内部を巡るのに徒歩で数時間ほど掛かる金山を目指す父をあっさり見捨て、温泉街で土産物屋をひやかしつつ地酒とジビエ料理を楽しむことに決めた。