小さい頃の僕は家にあった小振りのデミタスカップを小人さんのカップと呼んで、小人さんが淹れた東洋のお茶を肉桂の香りがする丸いお菓子と一緒に頂くのが楽しみだった。小人さんは体のわりに小さな足をした女性だったが、何故家にそんな人がいたのか理由は知らないし、僕が学校に上がる事にはいつの間にかいなくなっていた。
小さい頃の僕は家にあった小振りのデミタスカップを小人さんのカップと呼んで、小人さんが淹れた東洋のお茶を肉桂の香りがする丸いお菓子と一緒に頂くのが楽しみだった。小人さんは体のわりに小さな足をした女性だったが、何故家にそんな人がいたのか理由は知らないし、僕が学校に上がる事にはいつの間にかいなくなっていた。
切れ味を保ちたいなら刃物は、特に鋏は素人が研ぐべきではないと彼は言った。例えば裏刃に研ぎを入れた時点で、その鋏は刃物としての機能を終了するのだと。今考えると、それは些細な無知が取り返しのつかない結果を招く場合もあるという意味だったのだろう。やがて私は彼と些細な無知が原因で他人となった。