カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

四十八冊目・『甘き裁きの正義』

2018-05-17 18:57:59 | サスペンスはお好きですか?
たかあきは『甘き裁きの正義』事件を解説してください。

 罪を憎んで人を憎まずが信条の弁護士は己の弁護人の罪をなるべく軽くすることに精力を傾け、そのような態度は結果として彼に莫大な報酬をもたらしてきた。ある日、通り魔によって何人もの女性と子供が刺される事件が発生したが、被害者の中に妻と幼い娘が含まれているのを知った彼は、通り魔に対して厳罰の適用を望んだ。
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四十七冊目・『白き追憶の虐殺』

2018-05-15 19:29:44 | サスペンスはお好きですか?
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 昔から見渡す限りの氷原を進んでいる夢を頻繁に見る。厳寒の地は余りに厳しく、老若男女を取り混ぜた数えきれないほどの人数だった筈の同胞は次々と吹雪と寒波に斃れ、その場で凍り付いてしまった。程なくして私も死者の列に加わると夢は終わるのだが、百年ほど前のロシアで二十五万人が同じように死んでいたと知ったのは、つい最近になったからだった。
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四十六冊目・『昏き復讐の楽器』

2018-05-14 21:51:50 | サスペンスはお好きですか?
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 あいつの奏でる笛の音のせいで夜も眠れないとぼやいていた友人は、やがて電車に飛び込んだ。今度は俺の番だと怯えていた友人も、間を置かずビルの屋上から身を投げた。やがて、生前のあいつを面白半分で苛めていた最後の一人である俺にも聞こるようになったのは、喉の奥から吹き鳴らされるような、あいつが奏でる笛の音によく似た自分自身の呼吸音だった。
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四十五冊目・『去りゆく裏切りの誘拐』

2018-05-12 10:25:31 | サスペンスはお好きですか?
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 ずいぶん前から両親の仲が険悪になっていたことは知っていたし、それが私のせいだと言うことも気づいていたが、その頃の私は二人が同じくらい好きだったので何も言わなかった。そんなある日、父は私を連れて遠くの街に引っ越したが、いつまで待っても母は新居に現れなかった。
 そして両親が離婚したことも父が親権を失ったことも知らされないまま、私の生活の悉くを父に束縛される生活が始まった。

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四十四冊目・『遠き白昼堂々の虐殺』

2018-05-10 21:27:54 | サスペンスはお好きですか?
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 母は、僕がまだ小さかった頃、一緒に街を歩いていた最中に目の前で通り魔に殺された。犯人は捕まったが死刑にはならず、刑務所で模範囚として過ごして出所することになった。僕は考えた末に出所した犯人を遠くから眺めながら指鉄砲でその心臓を撃ち抜く。これで犯人は僕の中で「始末した」相手となり、もう僕には関係ない存在となっだ。
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四十三冊目・『沈める札束の凶行』

2018-05-09 22:35:03 | サスペンスはお好きですか?
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 四人組の銀行強盗が強奪に成功して湖底に隠した現金は、最終的に一人を撃ち殺し、一人を溺死させ、一人を絞殺する原因となった。そして最後に残った筈の一人が何故現金に手を付けることがなかったのか、その理由は現金の行方と共に、この世界に生きる人間の誰ひとりとして知ることがなかった。
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四十二冊目・朱き白昼堂々の正義』

2018-05-08 20:47:00 | サスペンスはお好きですか?
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 自分の妻と娘を惨たらしく殺した男は現行の法で裁くことができなかったので、その罪を知らしめる為に大勢の人前で刺したのだと男は嘯いた。例え、そのために自分が罪を犯そうが、地獄に堕ちることになろうが構いはしないと。
 ただ、最大の問題は、男が刺した相手が彼の妻子を殺した犯人と全くの別人だという現実だった。
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四十一冊目・『切り裂かれし孤独のクロニクル』

2018-05-07 23:29:16 | サスペンスはお好きですか?
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 学生時代という人生で最も貴重な時代を、虐めという形で他人に謂われなく切り裂かれた僕は、自分の持つもの全てを使って彼らへの復讐を果たした。あるものは離婚し、あるものは職を失い、あるものは子供に背かれた彼らは、結局その原因が自分でも覚えていない相手に対する虐めだったと、誰ひとり気付くことはなかった。
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花屋にて

2018-05-06 21:46:21 | 憧れのお店屋さん
 鮮やかな色彩とふくよかな香りに誘われて近づくと、そこは花屋だった。

 店先に並ぶ薔薇、チューリップ、パンジー、ガーベラの花束に見惚れてから店内に入ると、切り花だけでなく鉢植えや観葉植物、サボテンや多肉植物など様々な植物が並んでいた。そのいずれもきちんと手入れされ、整然とした美しさは見事としか言いようがない。

 さすがに生花は買えないのでガラス製の小さな一輪挿しを購入する際、どうやって春のチューリップやフリージアと初夏の紫陽花、更には色付いた紅葉と冬の雪割草を同時に咲かせて店に並べているのかと尋ねたが、曖昧な微笑みで誤魔化された。

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喫茶店にて

2018-05-05 20:10:03 | 憧れのお店屋さん
 そろそろ食事を摂ろうと、屋根からアイビーの枝が垂れ下がり入口脇の棚に食品サンプルが並んだ、どこか懐かしい雰囲気の喫茶店に入る。

 
 テーブルクロスはギンガムチェックと白の二枚重ね、カウンターに並んだ木製の椅子は背もたれの部が四角く抜かれている可愛らしいデザイン。これだけで何となく太り気味でお人好しのマスターを想像してしまったが、「いらっしゃいませ」と声をかけてきたマスターはまさに想像通りの外見をした男性だったので、一瞬だがどうしてくれようと悩んだ。
 マスターによると本当はコーヒー専門店にしたかったのだが、常連客のリクエストで軽食を導入したら好評で、やめるにやめられなくなったという。それならばとパスタを注文すると、出てきたのは昔懐かしい、ソーセージとピーマンが具材の『スパゲティ』としか呼びようのない代物だった。オムレツかパンケーキを頼むべきだっただろうかと悩みながらフォークで一巻きして口に運ぶと、これが意外にも懐かしい記憶を呼び覚ます味で非常に満足した。

 ちなみにコーヒーの味は微妙で、この店が食堂扱いされる理由が何となくわかった。
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