カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

作品その81・秘伝書以前

2018-11-19 22:23:04 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『瑠璃』と『朝告鳥の卵』を材料に『巨大極意秘伝書』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 ところでココに秘伝書とかないの?などと寝ぼけたことを尋ねてきた妹弟子に、僕は錬金術の伝達は特殊な言語や意匠によって示されるものであり、例え秘伝書があっても簡単には読めないと言って聞かせたが、それでも見たいと言うので望み通りに見せてやった。ちなみに師匠の字は凄まじい悪筆と癖字で、どうかすると弟子の僕にも解読不能だ。
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骨董品に関する物語・ブロンズの灌水棒

2018-11-19 21:42:19 | 突発お題

 聖水を振り撒くことで対象物や周囲の浄化が出来るのは、心理的な効果としては対象物の消毒に当たるのだろうかとキリスト教徒の知り合いに問うたら罰当たり扱いを受けた。しかし迷信と科学が混沌としていた時代に手品に良く似た奇跡と呼ばれる技を示すことで神の威光を信じた人々の病を治していたのは、神の子を名乗る男ではなかったか。
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骨董品に関する物語・星座カード

2018-11-19 18:21:57 | 突発お題

 そのおまけカードは各星座に一枚だけ「当たり」があって、覗き込むと広大な星の海で瞬く星座を見る事が出来るという噂がある。もちろん紙のカードにそんな効果が出せる筈もなく、顔を押し付けてもほろ苦いコーヒーの香りが鼻をくすぐるだけなのだが、それでも覗き込んでしまう。
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骨董品に関する物語・牡牛の角の花器

2018-11-18 17:18:26 | 突発お題

 よもや夫の遺品とこんな所で再会出来るとは思いませんでした、有難うございます。上品な老婦人はそう言って角製の花器を大事そうに購入して行った。和やかな気分になりつつ彼女の伴侶はどんな男性なのだろうと想像しかけたが、何故か緑豊かな牧場でのんびりと草を食む牡牛の姿が鮮明に頭に浮かんだ時点で考えるのを止めた。
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骨董品に関する物語・ホーリーカード

2018-11-18 17:15:19 | 突発お題

 キリスト教において占い師は地獄行きと言うことになっているが、奴は神を身近に感じる為に教会で配られたカードを使ってその日の運勢を読むそうだ。そのうち神罰が下されるぞと茶化すと、これは人心を惑わす占いではなく神から授けられた託宣だと断言された。なるほど、ものは言いようだ。
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作品その80・新しい獣

2018-11-17 19:11:13 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『鋼玉』と『三つ首獣の牙』を材料に『果てしない一角獣』を錬成しました。用途は滋養強壮です。

 僕が絡繰り犬をペットにしているのに、自分にペットがいないのは不公平だと言い出した妹弟子が小振りの一角獣を錬成した。絡繰りが得意と言うだけあって外見は見事な出来だったが、機能的には番犬にもならない役立たずの獣がもう一頭増えただけの結果となった。というか絡繰り犬は元々師匠の犬だったはずなのだが。
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骨董品に関する物語・宇宙時計

2018-11-17 13:37:11 | 突発お題

 ガラスの風防に封じ込められた地球と周囲を回る月と星の細工を見ながら、彼はひょっとしたら自分たちが暮らす世界もこんな風に機械仕掛けの封じられた空間なのかもしれないなと呟いた。そうだとしたら世界を造り上げた創造者は偉大な技術と不動の論理体系を併せ持ち、愛に満ち溢れていながら無慈悲極まりないクリエイター以外の何者でもないだろう。
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作品その79・苦味と甘味

2018-11-16 21:24:16 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『琥珀』と『水砂糖』を材料に『終末の苦味飴玉』を錬成しました。用途は秘密です。

 絡繰り犬が恐ろしく不機嫌になっていたので何故かと思ったら、妹弟子が面白がって与えたおやつがよりにもよって苦味飴玉だったらしい。仕方がないので好物のケーキを焼いてやったら今度は妹弟子が不公平だと文句を言ってきたので、苦味飴玉を食べた後でならこのケーキを食べていいと宣言したら黙った。
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骨董品に関する物語・イベント開催

2018-11-16 18:42:10 | 突発お題

「神保町の骨董品イベントで欲しかった義眼買ってきたよ。ヘイゼルアイって言う光に当てると緑、青、茶色に黒と色々な色になる瞳でさ、セットでアンリ・マチスが描いたポーカーチップのウインクする義眼(複製品)が付いてなんとお値段……」
「貴様は何処でどんな買い物をしてきたんだ」
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骨董品に関する物語・祈祷書に挟まったビオラの押し花

2018-11-16 18:15:35 | 突発お題

 かつて信州松本に「菫の君」と呼ばれた学生がいた。姿のたおやかさからではなく、近隣の山に登っては熱心に菫の標本を採集する姿からそう呼ばれた彼は、やがて不幸な戦争の行く先を憂いて自ら志願し、空に散った。だが、彼の故国が敵に回した国にもまた菫を愛する人は住んでいて、それがどうしようもなく哀しいのだ。
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