あるBOX(改)

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「この世界の片隅に」生コメンタリー付き特別上映会の余韻(2)

2017年09月26日 | アニメ・特撮
「片渕須直監督は何に勝とうとしているのか?」

思い浮かぶのは、やはりロフトプラスワンの「この世界の片隅に
公開記念!ネタバレ爆発とことんトーク!」の事。



特装版BDの特典映像として見た、このイベント。
「ついに出来上がった歓喜」をステージと客席が共有した席。
「船出を迎えた映画の制作秘話」が語られた催し。

その中で語られた「今回は負ける気がしない」という言葉。
なんに対してなのか。

それは真木プロデューサーや、丸山プロデューサーが語った
「製作段階で、あらゆる所に営業を掛けたが返答は皆同じだった」
~という話に繋がっていく。

『いい作品だけど売れない』
『受け手はこんな地味な話を求めていない』

作品が出来上がったら売ってやろう…そんな話ばかりだった。
それでは製作費が捻出できない。



結局、丸山さんが貯金をはたいて会社を立ち上げた。
それでも足りずにクラウドファンディングという手に出た。

そこからの話は改めて語る必要ないだろう。

「アリーテ姫」「マイマイ新子」と良作を作ってきながら数字に
恵まれて来なかった片渕須直監督。



(その数字に貢献してきていない私が言うのもおこがましいが)
「この世界の片隅に」が売れないという声は、片渕監督自身を
「売れない」と見下したようなモノなのだ。

「いい作品だから」「いい話だから」皆んなに届けたい。
きっと届くはず。



そう思って歯を食いしばって来たのは片渕監督だけではない。
過去あらゆる創作者が闘い、通ってきた道だ。

そして、それは決して容易なものではない、茨の道でもあった。

多くのクリエーターが夢破れた。
涙を飲んできた。私も泣いた。

なぜ数字が取れないのか?数字がそれほど偉いのか?
なぜ打ち切りなんてものがあるのか?
なぜ廃刊なんてものがあるのか?

なぜ私が好きな作品が終わってしまうのか?
素晴らしい、将来性に満ちた作品だったのに!



※これは子供の頃、小室孝太郎の「アウターレック」が
 唐突に終わった時から何度も味わって来た苦汁だ!

 小室先生によると人気は大差ない作品が他にあったが、
 「アニメ化が決まっている」「大作家の連載」という事で
 「自分の連載が打ち切られた」そうだ。

言っちゃあ何だが、片渕監督も一度は敗者の烙印を押され
掛けていたのだ。
いや、実質押されていたのだ。



そして監督は復活の勝負に賭けたのだ。
素晴らしい原作と支援者という後押しを受けて。

本来持っていた監督の凄さが発揮され、それが衆知に届く機会を
得たのだ。そして、それが遂に届いた。

片渕監督は遂に勝利したのだ。

「いい話だけじゃ売れない」「地味な作品は誰も求めていない」
…という『空気』に!
訳の分からない『因習』に!



だから、これからも勝つのだ。勝って勝って勝ちまくるのだ。
日本の隅々に至るまで、世界を相手に作品を届けて…。

ファンはそんな片渕監督を応援している。
少なくとも私はそうだ。

どこまで勝つか見届けたい。
改めてそう思った。

「この世界の片隅に」生コメンタリー付き特別上映会の余韻(1)

2017年09月26日 | アニメ・特撮
ブログにあげた後も、思い出しちゃあ色々と書き足している私。
ホント、何かのきっかけでフッと思い出すから困ったもんだ。

さてさて、生コメンタリー付き特別上映の最中の事ですが



片渕監督の傾向としては、画面に飛行機や船などが出れば
直ぐさま機体名を説明してくれるトコロがあったのです。
※すごい反射神経で!

しかし、私ゃそのへん明るくないので、かなり分からない。
勉強するべきか?

いや、そこまではイイか。
でも、米軍機を紫電改が追っかけている映像を見て「小鳥が
じゃれてるようだ」とノホホンとしてるようじゃイカンか。


そんな事を考えつつ、監督の衰えぬ反応スピードには
驚かされるばかりでした。

封切りから300日を超えた映画を、まるで「始まって直ぐ」の
上映のようにプッシュし、舞台挨拶に奔走する。

今年上旬の舞台挨拶だったと思うけど、
「6年掛けて作ったものが4ヶ月で終わっちゃたまらない」と
仰っていたものですが。まだまだ、その初速は衰えない。

むしろ行脚を楽しんらっしゃるようだ。



量産型のクリエイターとは全く別の存在。

普通はね、一作作り終えて何回か舞台挨拶やったら終わりですよ。
次の作品の構想開始ですよ。

過去は振り返らず、先に突き進むんですよ。

週一モノなんて、もっと極端で。
受け手に「今回の面白かったです」と言われても、実際は2週先
くらいの作ってるから
お礼を言いつつも「え~と、何の回だっけ?」となるもんですよ。



片渕監督からすると、実在するような人物すずさんの物語を簡単に
放り投げるわけにはいかない…そんな心情なんだと思います。

ましてや、こうの史代さんから「ウチの子をよろしく」とばかりに
預かったような存在ですから。

なおさら自分だけのものでは無い。
とことん責任をまっとうしなければならない。

シネマシティさんとの話では、「それは長い長い道程」という事で。
リテイク版、長尺版と作り、さらにそれを多くの人々に知らしめて
行く、そんな旅。



もちろん、それに値する「作品」だと思いますが。

監督がロフトプラスワンの「この世界の片隅に・公開記念!ネタバレ
爆発とことんトーク!」で語っていた「今回は負ける気がしない」と
いう言葉に繋がる気もします。

なんに対してかは分からないけど。負ける気がしない。



監督は「勝ちを決定的な物にしようとしているのではないか」…と。
「勝てるだけ勝とうとしてるのではないか」
「勝ち分を可能な限り徹底的に積み上げようとしているのではないか」

そんな気がしてならないのです。
(続く)