’07/12/31の朝刊記事から
北方領土問題 「並行協議」で打開も
ロシア次官 交渉入り示唆
【モスクワ30日藤盛一朗】ロシアのロシュコフ外務次官は30日までに、日ロ平和条約交渉について質問に答え、歯舞、色丹2島の引き渡し問題と国後、択捉の帰属問題の交渉を並行して進める「並行協議」方式について、「交渉のカバンに入っている」と述べ、同方式が領土問題の打開策になりうるとの認識を明らかにした。
日ロ間では21日、森喜朗元首相とプーチン大統領がサンクトペテルブルクで会談。
森氏は「(2001年の)イルクーツク声明を出発点とする交渉」を呼びかけ、大統領も評価した。
森氏は当時のイルクーツク首脳会談で並行協議方式を提案しており、ロシュコフ次官の発言は、従来の拒否姿勢を転換し、交渉入りを検討する姿勢を示唆したものといえる。
ロシュコフ氏は並行協議案について「われわれには良く知られた案だ」と強調。
イルクーツク声明への回帰を求めた森氏の発言は「当時の(並行協議の)提案を念頭に置いたもの」と受け止めていることを明らかにした。
並行協議は「2+2」、「車の両輪」論とも呼ばれ、歯舞、色丹2島の引き渡しを記した日ソ共同宣言に基づく両島の返還交渉と、残る国後、択捉両島の帰属問題の交渉を並行して進めることで、4島の段階的な変換を図る狙いがある。
ただ、プーチン政権は「4島に対する主権はロシアにあり、平和条約締結後の歯舞、色丹両島の引き渡しは善意に基づく」との立場で、4島は不法占拠されたとして返還を求める日本の主張とは大きな開きがある。
ロシア政府筋は「並行協議に応じるにしても、交渉で国後、択捉の日本帰属を認めることはあり得ない」と主張。
並行協議
2001年3月、ロシア・イルクーツクでの日ロ首脳会談で、森喜朗首相(当時)が提案した領土問題の交渉方式。
プーチン大統領が2000年9月の首脳会議で、歯舞、色丹2島の引き渡し方針を明記した日ソ共同宣言(1956年)の有効性の確認に踏み切ったことを受け、残る国後、択捉両島も含めた4島全体の段階的な返還を目指した。
その後、小泉政権は4島一括の帰属確認を求める原則方針に戻ったため、ロシアは02年3月、同方式による交渉を拒否した。