ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

イタリアオペラ「トロヴァトーレ」

2009年04月19日 | オペラ
そして2年後、イタリアオペラがまた来日しました。
デル・モナコ、ステッラ、シミオナート、バスティアニー二でヴェルディ「トロヴァトーレ」でオープニングです。

この「トロヴァトーレ」はその前年、トランジスタラジオで、ザルツブルグにてカラヤン指揮、プライス、コレッリ、シミオナート、バスティアニー二で聴いていました。
コレッリにはシビレました。プライスも魅力的な声、この二人は知らない歌手だったのですが、素晴らしかったです。バスティアニー二はプロッティのような劇的なバリトンというより、優雅な声でした。シミオナートがコレッリと仲良く歌っているようでちょっと嫉妬しましたが、まあ親子という設定なら、とほっとしました。
これはライヴだったのです。また聴きたいと思うオペラでした。

「テバルディが来ない!なぜだ!トゥッチも来ないではないか!」と不満たらたら書店でいつもの立ち読みをしていますと「音楽の友」で、カラス、テバルディと肩を並べるプリマでスカラの開幕はステッラにとってかわっている、と書かれていました。写真は大変な美人です。
「きっと若いころの写真だな、実際に見たらギャーといういつもの手だ」と、悪態をついていましたが、ステッラ・・・きいたことあるな、そうだ、昔ラジオで聴いた「アイーダ」だ、あれはすごい声だったな、と思い出しました。

イタリアオペラ初日はテレビで実況放送されました。
どうでもいいフェランドが昔話をコーラスの兵士たちに語り、不気味な雰囲気満載のなか、紗幕が上がり、貴族の館の美しい庭園、何と美しい女性が現れたではありませんか。今まで「一応美人という設定だな」と悪態をついていた私も、その楚々たる姿に釘付けになってしまいました。侍女イネスはあの「リゴレット」で美人だと思ったアンナ・ディ・スタジオです。確かに彼女は美人、でもレオノーラを歌うアントニエッタ・ステッラの美しさは貴婦人の気品をたたえ、百合のような清楚な美しさです。そして声はビロードのようで角度によって光の陰影が違ってきこえるような、微妙な響き、音色の変化を持ち、テノールのリマリッリやバリトンのバスティアニー二とユニゾンや絡みになっても、力強さは一歩もひけをとらず、立体的で壮麗な「声の饗宴」で魅了しました。
シミオナートは老婆の役でしたが、このキーロールとなるだけに見事な歌でした。
バスティアニー二はベン・ケーシーも真っ青、というほどのハンサムで、歌も気品に満ち、今まで聴いたプロッティとは違うタイプでした。

カーテンコールでは若きテノール、リマリッリが大御所シミオナートの手をうやうやしくとっていました。
ステッラは盟友バスティアニー二と微笑み、スカラの今のプリマとして君臨している実力をみせびらかせるのでなく、優雅でした。

ところが、ステッラはプッチーニ「西部の娘」のミニーで、貴族の姫から<アニーよ銃をとれ>のような勇ましくもぶっちぎりの女丈夫を演じ、あっといわせたのです。
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はじめてのイタリアオペラを聴いたとき

2009年04月19日 | オペラ
はじめてオペラをテレビで見たのは、祖母の家に泊まった時に通った銭湯でした。
高い変な声で全部歌ばっかりで・・・「この人たち変だな」と思っていました。
貴族の服装で、たぶん室内オペラだったように思えます。

海の家のテレビで、シフラというピアニストが弾いているリストやショパンは、海に入るのも忘れて釘付けになったものですが、このはじめて見るオペラなるものは奇異としか思えませんでした。

そのころ我が家はラジオだけでした。そのラジオで素晴らしい声が聴こえてきました。そして凱旋の場、日本初公演であるイタリアオペラの初日の放送でした。
エチオピアの姫がエジプトの奴隷になり、ラダメスという敵の将軍と恋を・・・

アナウンサーが何度もステッラと言っていました。興奮していたようです。
何度も「イタリア」とくリかえしていました。
音響の良い押入れにはいって聴きました。
ラジオはもらったばかりのトランジスタでした。

それからなんとなくオペラが気になりました。
そして、教育テレビで、柴田喜代子さん、大谷さん、砂原さん、伊藤京子さん、戸田政子さんたちが出演するオペラや歌曲を鑑賞しました。
細くて高い声で、砂原さんは蝶々さんで「日本一」とか・・・。

オペラに興味を持ってから、新聞でイタリアオペラが来日、とありました。
「世界最高のふたり」というのがデル・モナコ、テバルディで、テバルディは美人とは程遠いおばさんタイプ、なんだかガッカリしましたが、テレビを見ることにしました。

「うわ~、これが本場のオペラか。すごいなあ~。」デル・モナコは美男子、テバルディは全くのオバサンなのに、オペラでは「美人」と歌われている・・・ここで
オペラでは「一応、美人という設定なんだな」と頭を切り替えました。
私はデル・モナコに一目ぼれ、ハンサムで声も素晴らしく・・・。
二日目はヴェルディ「リゴレット」、バリトンのプロッティの歌と演技が素晴らしいこと、テバルディより若いが、肥ったオバサンには違いないトゥッチのジルダ、
コーラスが「なんという美人」と歌いますが「一応、美人という設定なんだな」と
騙されることにして鑑賞。殺し屋の妹マッダレーナの美しいこと、アンナ・ディ・スタジオです。姿も声もいい・・・。
プレイボーイのマントヴァ公爵はジャンニ・ポッジ、声はいいが、容姿はあんまりだ、肥っていて短足、ジルダは「美しいかた」とうっとり歌う!
「もう勝手にしてよ!わかったわかった、一応ハンサムなんだな」と自分にいいきかせながら・・・。

3日目はヴェルディ「アイーダ」、凛とした姿のジュリエッタ・シミオナートの美しいこと、あたりをはらうような威厳も、そして美しい高音から豊かに響く低音まで、聴いていてドキドキしました。将軍ラダメスはデル・モナコ、素敵!!
そして「清きアイーダ、麗しの姿」とラダメスが歌っていたアイーダは、あのジルダを歌っていたトゥッチではないか、アナウンサーは「この若いソプラノは・・」と紹介していたけれど、オバサンには違いない。ところどころ美しいところもあるけれど、高音を歯をむき出して歌うところなど・・・ちょっとね。
でも、確かに声はいい・・・日本人ソプラノの「キャー」という甲高い声ではない。それに見ているとなれてきて、「一応美人なんだな」と思えるようになってきました。でも、シミオナートの女優顔負けのような立居振る舞いの優雅なこと、
「アムネリスの勝ちだな」・・・でも、ラダメスにアイーダをあきらめるように言い渡すところや、僧たちに「呪われろ!」と歌うところなんか、何度も見たくなって再放送や再々放送も見てゾクゾクしました。

最後の演目はマスカー二「カヴァレリア・ルスティカーナ」でシミオナート、「道化師」でデル・モナコ、トゥッチ、プロッティらの豪華メンバー。
シミオナートのせつせつと歌う姿に心奪われ、デル・モナコの歌舞伎役者顔負けの「超演技」と新聞が書いていた「恐るべき声」に打たれました。

それから学校へ行ってもふらふらして勉強はうわの空、耳に残るメロディーやイタリア語の目立った単語ばかり頭にあって、変な自分だと思うようになりました。

レコードも買えず、テープレコーダーもない我が家では、イタリアオペラの名旋律の数々は覚えるしかなく、頭の中で何度も繰り返し名場面を堪能、おかげでなにもかもうわの空、という日々でした。
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