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時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

知の巨匠、稲村公望氏のエッセイに大納得、魅力的なお人柄でもある。/「討論」菅政権と世界外交戦

2020年09月27日 | 政治
 日本が誇る「知の巨匠」稲村公望氏のエッセイをご許可を得てお知らせします。


 電電公社の民営化があって、上場した株式の配当を使って、基盤技術の先導的な研究開発を進めようと、新しく設立された京阪奈の研究所が作成した、だまし絵のような図形が書かれた資料を見たことがある。
光を上から当てると突起に見え、光を下から当てると窪みに見える黒白の円の図形が書かれた一枚の紙だった。
人間の脳に着目して、コミュニケーションの基礎技術を進展させようtとの試みであったから、人間の脳が、周辺情報の前提によって、錯誤したり、騙されることの一例として、研究所視察の訪問客に配っていた。
さて、池谷裕二著「自分では気づかない、ココロの盲点」は、認知バイアス、つまり、無意識のうちの勘違いや判断ミスを引き起こす錯覚について、いわば人間の「脳の取扱説明書」として判りやすくまとめており、コミュニケーション論としても読める。 
イギリスの小説家、イブリン・ウォーによれば、人間は自分を完璧に知ることは難しく、自分を知ることで完全を求めれば狂気に至ると警告しているが、他人が自分をみるように自分が自分を見る能力を持つことはありえないし、願いの叶わない神頼みの典型にしかならない。
スーパーマンは、クリプトンという星に生まれたとされるが、クリプトとは、ギリシア語で不可知という意味であり、本質的に人間は自分が何時生まれたかを知ることはないことを意味し、墓地のことをクリプトと言うが、これまた人間が死についてからの赴く先を知ることが出来ないと示しているラテン語である。生と死の問題、始まりと終わりの後先が不可知であるという状態のままで、人間の肉体は、手足のパーツを意識せずに自動的に動くようにして、素早く行動できるようにして、人生を効率よく生きられるように直感の回路を組み込んでいることが、人間の肉体の成長となっていることは間違いない。
ネルソン・マンデラの至言であるが、人類に、赤ん坊の時には人種差別はないとされるが、人間は成長するにつれ、つまり経験が豊富になるにつれて、脳による反射的な解釈が迅速に行われるようになるが、反面、いつもとは違う状況や、特別の条件下では、勘違いや判断ミスが起きて、事実と認識に差が生じることになる。
人種交差効果というが、人種が異なると個人が識別しづらくなる、例えば外国映画では登場人物の見分けがつきにくくなることがある。ウォーの言うように、多くの人間は、自分が何者であるかを知ろうともしないから、本当の自分の姿に気がつかないのが普通であり、狂気に至ることは希であるが、この本では、80の人間の錯誤の事例を選定して、狂気に至らずに理解できるように判りやすく人間の脳の錯誤の事例を説明している。
巻末には、225もの代表的な認識バイアス表にしてまとめているのは有用である。
 デパートの食品売り場でジャムを売りました、①6種類を売るブースト、②24種類を売るブースとではどちらのブースの売り上げが多かったかとの設問には、正解は①であることを、脳が同時に処理できる情報量は有限であるから、許容量をこえると選択することすらやめてしまうと解説している。もうひとつの事例として、士官学校の候補生に志望動機を聞き、十年後に昇進出世したのは、①技能や教養を身に付け将来は将校になって国の為に貢献したい、②軍隊そのものが楽しそうだったから、と、どちらの回答をした者かを調べると ②が正解で、理由はひとつ、好きだからやっている、だから昇進・出世したと結論づけている。もうひとつの事例を挙げると、 禁煙エリアで煙草を吸っている人がいるので、①周りの人が迷惑になりますからお控え下さい、というのと、②こちらは禁煙エリアです、と言うのと、どちらが素直に喫煙をやめて貰えるかとの質問には、正解は②であるとして、①の場合には、反発することが予想され、一方「規則で決まっている」という表現は、命令が人ではなく社会的合意であるから重用されやすい、だから、禁煙席や禁煙区域をあらかじめ設けていることは、争いやトラブルを減らすことが出来ると指摘している。筆者は、山手線の電車内で携帯電話で大声を張り上げているイタリア人とおぼしき外国人に注意したが、やめろというのではなく、規則できまっていると注意した方がより効果的で説得力があったかと反省することであった。そのイタリア人は、何をいうかとくってかかってきたし、筆者もつい「ここは日本だ」と捨て台詞を吐いてけんか腰になったことがあったからだ。最近のことであるが、「自分で気づかないココロの盲点」を読んでおけばよかったことであり、もっと穏便にことははこんだことだろう。社会心理学、色彩心理学など、色々な呼び方があるが、時間をかけて執筆された本格的な入門書で、ストーンとおちてきて理解できるような、読後感が抜群にいい本であった。
筆者が坐右の書として、長い間重用している、社会変動論のバイブルとでも言うべき「リーヴィの法則」を、各位に紹介して、書評に加えて結語としたい。

 リーヴィの法則とは、簡潔に言えば明晰で誠実な思考の薦めであり、現実を根本で把握しようとする理論的な試みの背後にある、心理的な基本原理を11の原則に要約したものだ。その点で、池谷氏の著書と軌を同じくするところがある。リーヴィとは、プリンストン大学はプリンストン大学の教授であった故マリオン・リーヴィ先生のことであり、1986年に、筆者とその友人のロナルド・モースによって「リーヴィの法則」は邦訳されている。

① 世の中のことは大体においてなるようにしかならず、変えようもないことが多い
男が女になることは出来ないし、月が太陽になることもない。カフカのメタモルフォーセスは、困難至極である。歴史や文化の積み重ねは保守的である。本当に革命か?と言うときには、眉に唾をして考えなければならない。英語では、Large numbers of things are determined, and therefore not subject to change..
② 予測の上でのことが期待通りに運ばれることはありえない。事実予測などあたらないし、期待はするが、そのシナリオにはならない。時代のキャッチフレーズは、願いを充足することはない。Anticipated events never live up to expectations.

③ 進歩派が最も共感を寄せる部分が決まって、その社会のうちで最も狭量で偏見にとらわれた部分になってしまうーー遅れてくる奴は、かっこわるい。共産主義社会が、急に超資本主義になることがある。世の中は揺れ動きが多いが、世の中にはものの道理がある。That segment of the community with which one have the greatest sympathyas a liberal inevitably turns out to be one of the most narrow-minded segments of the community. Last guys don’t finishi nice.

④ 反対派が狡猾であることは願ってもないことだ。狡猾であれば合理性を強く求める。だから建前としては狡猾な人は理屈で打ち負かすことが必ずできる筈だ。自明。Always pray that opposition be wicked. In wickedness there is astorng strain toward rationality. Thereore there is always the possibility in theory of handling the wicdked by outthinking them.

満場一致とは勇気と批判思考のなさを言う。全体主義社会の満場一致とか、マスゲームもよく分析すると中で泣いている人もいる。無投票当選なども、不満のないことではない。中ソ対立前の一枚岩の団結の嘘。In unanimity, there is always cowardice and uncritical thinking.

⑥ ユーモアのセンスを持つ、にっこりする。形式的なことばかりであれば、笑い飛ばす。チャーリーチャプリンの独裁者の映画は、全体主義への挑戦にもなった。心からニコニコする。To have a sense of humor is to be a tragic figure.
自分の実力を知ることがもっとも友好な攻撃になる。To know thyself is the ultimate form of aggression.
⑧ いくら天才であっても細目にとらわれるとそれを克服することが出来なくなる。細かいことにとらわれると駄目になる。大局で情勢判断をちゃんとやる。過去の成功は将来の成功の保証はない。失敗の経験がないと、うまい成功もないし、楽しみもない。失敗して50点、2回失敗して100点の楽観主義。No amount of genius can overcome a preoccupation with detail.

⑨ 無作為選択ができるのはただ神のみ。全てには人間の意図がある。公平は非常に難しい。Only God can make a random selection.

⑩ 限りなく退屈なことは寝ずの番のように注意深いことの代償作用である。準備万端であれば、あわてることは一切ない。天命をまつ。Eternal boredom is the price of vigilance.

他人の幸福・利益の増進を行為の目的とすべきであるという考え方ほど疑わしいものはない。「親切は人のためならず、情けは人の為ならず」Nothing is so suspect as altruism/

 日本の智者、稲村公望氏の文は何度も何度も読みながら「あの場面、この場面」とあてはめて考えることもできるし、これからの予想も可能だ。キラキラした宝石のような知から学び、未来の為におおいに(それが自分自身には至らぬことと知りながらも)学びたいものだ。
昨年、稲村氏の講演を聴きに行ってその限りない知性と不思議なほど共存する破天荒さ、聴き手に対する優しさとユーモア、そして
堂々と歌われる歌唱など、度肝を抜いたものだった。

注・・・稲村氏は「先生」と呼ばれることを嫌われるので、私はイタリア語でmaestro(巨匠)稲村、とお呼びしている。



稲村公望氏のプロフィール

昭和22(1947)年生まれ。奄美・徳之島出身。東京大学法学部卒。1972年、郵政省入省、フレッチャースクール修士、八女郵便局長、1980年、在タイ王国日本大使館一等書記官。通信政策局国際協力課長、郵務局国際課長、総務省政策統括官(情報通信担当)、日本郵政公社常務理事を歴任。2012年10月1日「日本郵便」副会長、2014年3月、同社を辞任。中央大学大学院公共政策研究科客員教授等を歴任。現在『月刊日本』客員編集委員、岡崎研究所特別研究員
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



【討論】菅政権と世界外交戦[桜R2/9/26]



パネリスト:  
河添恵子(ノンフィクション作家)  
古森義久(産経新聞ワシントン駐在客員特派員・麗澤大学特別教授)  
石平(評論家)※スカイプ出演  
長尾たかし(衆議院議員)  
西岡力(「救う会」全国協議会会長・モラロジー研究所歴史研究室室長)  
山岡鉄秀(情報戦略アナリスト)  
山田宏(参議院議員)
司会:水島総



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