井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

続・ヴァイオリンの価値と音色

2012-01-23 23:50:43 | ヴァイオリン

早い時期から一流のものに触れる方が良い、と様々な状況において一般的に言われる。

楽器も同じで、早いうちから一級品の楽器で練習した方が良い、と言えそうな気がするが・・・。

ヴァイオリンの場合は、半分本当で半分間違い。

以前にも書いたが、ヴァイオリンには機械製品と手工品とある。これは出てくる音がまるで違う。だから初心者といえども手工品の方が良い。

問題は「半手工品」と呼ばれるものだが、これは作り方に差があって、中には手工品とほとんど変わらない音を持って価格が安いというものもあるから、その場合はお勧めになる。

では、初心者はなるべく良い楽器を持ってスタートした方が良いのか?

1/8未満の楽器は鈴木しか作っていないので選択の余地はない。ここで問題になる初心者は中学生以上を含む大人の場合だ。

初心者は弾きやすい楽器にしないと確実に上達が遅れる。だから数万円のものではなくて、やはり2,30万円程度の手工品、あるいは半手工品を手にいれていただきたいものだ。

それでは、初心者でもストラディバリを持つ方が上達が早いのか?

答は「否」・・・らしい。

そんな初心者はいないから、わからないと言えるが、数千万円クラスの楽器を初心者が使った例があるそうだ。結果は惨憺たるものだったようで、かえって全然弾けないままで終ったらしい。

期せずして、チェロの斎藤秀雄先生とヴァイオリンの江藤俊哉先生が同じことをおっしゃっている。

最初の楽器は「鳴れば」いいんです。音色は本人が作るものだから。

言い方を変えると、音色が作れる程度に鳴る楽器でないとダメ、ということにもなる。これが最初に述べた「半分本当で半分間違い」の論拠である。

ついでに、億単位の名器は何が違うか?

数年前、時価7億円!のグァルネリ・デル・ジェスを何分間か弾かせてもらった。私の持てる力はこの程度ですよ、というのをさらけ出された思いだった。

どんな細かい要求でも応じてくれる楽器だった。段々自分が出来の悪い生徒になってしまった気分とでも言おうか。「あの、すみません、ここまでしかやっていないんですけれど・・・」と、楽器に向かって言い訳している私がいた。

このような楽器に立ち向かうには、もっと勉強しておかないと、と思ったものだ。

つまり、実力に見合った楽器というのがあるということだ。楽器のグレードは本人のグレードに合わせて徐々に上げていくものなのである。その楽器の力の9割まで出せるようになった時が、楽器の買い替え時だ。残りの1割は、グレード上の楽器を手にして練習した時、初めて引き出せる能力で、その楽器を弾き続けるだけでは、その残り1割の能力を引き出すのはかなり難しい。

そして、楽器のグレードが上がると、弾けるようになる事項も多くなる。うまくなった、と言われることもある。

そう、楽器を買いかえると「うまくなった」と言われることが結構ある。

しかし、楽器を変える以上に音が変わるのは、人が変わった時。他の楽器も同じだか、楽器を変えるより弾く人を変えた方が音は変わる。

という次第で、良い音が出せる弾き手を目指してがんばりましょう!