井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

新・クラリネットよごしちゃった

2012-04-05 23:56:45 | アート・文化

かれこれ5年以上前に、以下のようなことを書いた。

 昨日TVを観て「日本のオーケストラもレヴェル上がったなぁ」と感心することしきりだった。

 しかし,どうしても気になることがある。ある部分の途中で「さぁ吹き終わった」とばかりに首席クラリネット奏者が楽器を急いで掃除するのである。つられたように2番奏者も,急いで管に布を通していた。掃除のタイミングまでピッタリの二重奏!首席奏者としては,この2番奏者のサポートは嬉しいものかもしれない。でも目前のフルートやオーボエは熱演の最中なのだ。曲の途中にどうしても掃除をしなければならないものなのだろうか?

 フルートの後ろだから,あまり目立たないだろう,と思っているからか?そうではないようなのである。数年前,グルダのチェロ協奏曲が放映された時のこと。この曲は,オーケストラが管楽器とリズム・セクションなので,クラリネットは最前列に座っていた。チェロが休んで,管楽器が中心になるところがあった。重要なクラリネット・ソロが大変美しく演奏された。すばらしい緊張の時間!無事終了して,他のパートへ音楽は推移,聴き手も演奏者もホッとした次の瞬間,クラリネット奏者は掃除を始めた!

 実はこれが気になったのはオーケストラが始めてではない。その昔,モーツァルトのクラリネット五重奏曲を演奏した時にさかのぼる。第3楽章のトリオで,クラリネットが休みになり弦楽四重奏だけになる部分がある。ここは第1ヴァイオリン奏者として,大変気合いのはいる部分である。ずっと主役然としていたクラリネットから,突如主役を譲られる場所だからである。神経もかなり使う。一方,クラリネットはつかの間の休息,なのだろう。それはそうなのだが,そこで「お掃除おじさん」に変身されると,ヴァイオリン側としてはとにかくやりにくいのである。余計に集中力を要するのである。
 リハーサルの間のことかと思いきや,本番でもお客さんの前で「お掃除タイム」は繰り広げられていた…。

 思い起こすと,フルートやオーボエでお掃除するのは見た事がない。演奏者が一流であろうと,関係なく繰り広げられるのは,クラリネット界特有の何かがあるに違い無い。しないとリードミスが増えるとか・・・。あれは黒子のようなもの,見えていても「見えないと思うこと」ということなのだろうか?

 ひょっとして指摘してはいけなかった?でも目の前で掃除されながら演奏するヴァイオリンも辛いのだよ。

そして、その後クラリネット奏者から通達があったのである。曰く「タンポ水害」で、いち早く水を吹きとらないと、肝心のところで鳴らない危険性があるとのことだった。

そう言われると、我慢せざるを得ない。

しかし、また「見てしまった」のだ。練習ではあったが…。ベートーヴェンの第九の終楽章でホルンがポポー、ポポーとやった後、盛大に「歓喜の歌」を歌うところで。

とても奇妙なことに、あれだけ盛大に盛り上がるところで、なぜかクラリネットはお休みなのだ。みんなフォルティッシモで自分のパートに夢中になっているから、クラリネットのことなんて全く気にしていない。絶好のお掃除タイムだ。それでクラリネットのお二人が盛大に掃除を始めた。

しかし、私はその時、指揮者だった。真正面からその現場を見てしまった。うーん、やっぱり気になるよぉ・・・。

前述のグルダのチェロ協奏曲、最近どなたかがアップされたようだ。チェロのカデンツァが終ってからの部分(第4楽章「メヌエット」)、皆さんは気になりませんか?