井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

マイナー(短調)は教えなくてもま、いいなー

2016-05-19 18:17:16 | 音楽

小学校の先生になる人の為の授業で、長調数種類を教えた後、本当は短調も教えることになっている。

短調の音階=短音階には自然、和声的、旋律的の3種類があって、と教科書(大学生用の)に書いてあって、説明しようとしたけれど、長調の説明で学生達は頭が飽和状態、時間もなく、とりあえず後回しにした。

しかし、例えば文部省唱歌に短調の曲は1曲もない。教える必要があるのだろうか。

「ある」ということになっている。

学習指導要領では小学校5,6年生に、歌唱の活動として「範唱を聴いたり、ハ長調及びイ短調の楽譜を見たりして歌うこと」と書いてある。器楽の活動にも同内容の記述がある。

一体何を歌うのか、手許の教科書、ある一社のものをざっと見たところ「小さい秋みつけた」、これ一曲のみ載っていた。

この曲で使われている短音階は自然か和声的か旋律的か・・・

ここで驚いたのは第6音が一カ所しか出てこない、ということ。「めかくしおにさん」の「おーにさ」のところのみで、そこはホ短調のハ(c)音。第7音が常にニ(d)音なので、和声的ではない。音階で出現するなら判断がしやすいが「呼んでる口笛」の「ぶ」のみニ(d)音で前後がロ(h)音というのは自然短音階、だろうな・・・。

断定しがたいのは、そこが転調しているともとれるからだ。

この「ほのかな」自然短音階の使用のお陰で、この曲は全体として欧米的でなく「ほのかな」日本風になっている訳だ。それに気付くのに私は半世紀かかったことになる。中田義直はすばらしい!

しかし、この曲はホ短調で、この教科書では指導要領にあるイ短調は一曲も載っていない。

音楽の教科書なんて、その程度だ・・・と言いたいところだが、どちらかと言えば、そこまでして教えるべきと書いてある指導要領の方が変ではないだろうか。

と言いたいところもあるが、そもそも「旋律的短音階」って、どの程度使われているか、よく考えると疑問が出てくる。

生々しく出てくる曲は、なかなかお目にかかれないことに気付いた。チャイコフスキーの交響曲第5番の第1楽章の推移部、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番の第1主題あたりだろうか。モーツァルト、あるいはバッハになるとさすがに用例はあるものの、やはり、どちらかと言うと珍しい動きになる。

一体、誰が整理した「楽典」なのだろうか。楽典で短調は3種類と整理されているから、指導要領もそれに従っているだけの話で、指導要領が悪いとは言いがたい。(できれば、要領作成者も楽典にあまりとらわれないでいただきたかったが。)

今まで何の疑いもなく、短調は3種類と思っていたが、今日は突然「短調は一種類、第7音は時々半音上がり、まれに第6音も半音上がることもある」くらいで良いのではないか、と思ってしまった。