ドヴォルザークのユモレスク、ヴァイオリン曲として有名だが、本来はピアノ曲である。まず、この事実が知られていない。
そして、知られているのは「第7番」である。これも知られていない。
私はドヴォルザークの作品が割と好きな方だ。しかし、この曲はあまり好きになれない。なぜならば、ユモレスクの語源である「ユーモア」を感じるのが非常に困難だからだ。
なぜこれがユモレスクなのかと思い、20代の頃、原曲のピアノ曲をあたったことがある。
するとわかった。
まず、この8曲あるユモレスク集は、言ってみればスラヴ舞曲の小型版のような雰囲気で、第1曲目などはかなりダイナミックな曲想である。
そういったスラヴ風味がずっと続き、最後の方に黒鍵主体で弾けるお茶目な曲を配置し、かわいらしく終わる、というのが作曲家の意図、と読めた。
そうだ!エルマンのようにネットリやるからユーモアを感じないのであって、オリジナルの指定通り!にかなり速く演奏すればユモレスクになる!
と、勇んで快速テンポでやったことがある。
ところが、舞台袖で聞いていた後輩共に大不評。
曰く「せっかくの美音があれでは台無し」云々。
口うるさい後輩に恵まれたものである。
だって、作曲家の意図はこうでああで、というアカデミックな説明は後輩共には全く通用しなかった。
世間の好みを変えるのは、ことほどさように難しいことを思い知った。