井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

一瞬でブラームス

2009-11-09 22:38:43 | 音楽
ピアニストのピーター・コラッジォ先生が、さる9月15日にハワイで亡くなられた。享年69才。(千香士先生と同じ年齢だ。)旅行先の客死ではない。ピーター先生は長年ハワイ大学で教鞭をとられていたのだ。

「ハワイで音楽が勉強できるの?」という質問が次に来るのは必至だが、これがどうしてどうして、かなり本格的でオーソドックスな勉強ができていた。それには、ピーター先生に負う部分も相当あったと思う。

ピーター先生はジュリアード音楽院出身。ヨーロッパを一旦客体視して整理したあと生徒に伝える、というようなやり方は、ジュリアードらしさかもしれない。それが日本人には大変ありがたく、東京から福岡からハワイ詣でをする人は後を絶たず、ピーター先生もよく来日された。私も数回、居合わせてもらえたことがあった。

その数少ない接触で、忘れられない思い出もある。 ピアノの公開レッスンで、音色の話になっていた時だったと思う。

「国際コンクールの審査をやると、いろんなことがありましてね。」 「隣にドイツ人の審査員がいて、途中まではおとなしく聞いていたんですよ。」 「ところがブラームスが始まったら、顔を真っ赤にして怒り出し、曲の途中なのに立ち上がって『違う!』って叫んだんですよ。」

そのくらい、作品の要求する音色には忠実でなくてはいけない、という文脈なのだが、その後にピーター先生の実演が付いたのがミソ。

「例えばハ長調の和音でも、ブラームスならばこうです。」 と、単なるドミソの和音を両手で弾かれたのだが…、それは見事にブラームスだった!

何故そうなるのか、までは教えてくれなかった。それが知りたかったのに…。 その後知り合いのピアニストにお伺いをたてたら、 「まあ、強さのバランスだと思うけど…。」

だから、どのバランスならブラームスになるのかが知りたいんだってば!

今は、少し見当がつくようになった。あの衝撃から考え続けた結果である。ピーター先生のおかげだ。このようにして、先生は永遠に心の中に生き続ける…。


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