井財野は今

昔、ベルギーにウジェーヌ・イザイというヴァイオリニスト作曲家がいました。(英語読みでユージン・イザイ)それが語源です。

五度調弦のコントラバス

2015-11-13 08:20:24 | 音楽

コントラバス(ダブルベース)の調弦は、いくつかある。
(この段階で、すでにヴァイオリン族ではないという感を強くする。)

基本的には低い方からミ・ラ・レ・ソの4度で合わせる。(これは、いわゆるエレキベースでも踏襲されている基本型で、コントラバス奏者はエレキベースを造作なく弾く。ヴァイオリン奏者のマンドリンみたいなものだ。)

ところが、世の中は広い。ごく少数だが、5度で調弦しているベースを弾いている人がいるようだ。
先日、その数少ない奏者と出会った。

その方はアマチュア奏者だがチェロも弾かれるそうで、ベースは久しぶりとのこと。
とにかく、チェロを弾くようになると五度調弦のベースのメリットをとても感じるそうだ。

もちろん、左手のメカニズムはかなり変更が必要で、手全体を指板側に出して構え、指は4本とも使うようになる(ベースの基本は3指を使わないので)。

かなり大きな変更だと思うが、そうすることで、チェロとのアンサンブルは劇的にやりやすくなる。
特にバロックや古典派はチェロと全く同じ動きがほとんどなので、同じように動けば良い。
ベートーヴェンの運命の第三楽章などはメチャ弾きやすくなるらしい。

さらに低音のG音が開放弦なので、その方が一人パートに混じるだけでコントラバスパートのイントネーションの精度が上がる。

一人で弾くにしても、5度による倍音関係の共振を得やすく、イントネーションは取りやすいようだ。

そのようなことをG線のみ特別に注文するだけで出来てしまうのがまた良い。


弦楽器の弦のカタログを見ると、びっくりしてしまうのが、コントラバスの弦の種類の多さだ。
コントラバスにはソロチューニングと言って、通常のチューニングより一音高い調弦方がある。さらに五弦ベースという低い方のC音を出せる楽器もある。その関係で、ピッチに関してはヴァイオリンの倍以上の種類があるのだ。

それを駆使すると、G線だけ何とかすれば良い話になる。しかもコントラバスの弦は長持ちするから、プロのベーシストで年1回程度の弦交換である。
私のところの学生などは、弦の張り方を知らないというから、大学の備品は数十年弦交換は行われていないかもしれない。

話が逸れてしまった。


私が驚いたのは、コントラバスの人達がヴァイオリン族ほど倍音の共振現象をあてにはしていない、ということ。

そして、もしこれが普及してきたら、コントラバスはヴィオール族の系列だと言えるのだろうか、という疑問も生じてきた。

一般的には、ヴァイオリン族とヴィオール族の区別が問題にされることはない。しかし、私のような弦楽器全般の指導を任される場合、今までは「族が違う」という言い訳で、指導せずにやり過ごしていたので。

五度調弦でフレンチボウで演奏しようものなら、ヴィオール族のアイデンティティは楽器の輪郭のみになってしまう。

と、要らぬ心配をしてしまった。

お節介ついでに、チェロ奏者とコントラバス奏者の、仲良さそうで溝がある関係・・・一方が責められると他方のせいにする・・・が、五度調弦のコントラバスがあることで緩和されるかも、と思いもしたのである。

・・・対岸のヴァイオリン弾きですみません。


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