筆者が生まれた頃に建設された佐世保市民会館が、先月で閉鎖された。
そこで育っていない私でも、様々な思い出があるホールである。
長崎市に住んでいた高校生の頃、NHKの合唱コンクールをわざわざ「聞きに」行ったのが多分初めて。これは、同級生からの誘いで出身中学校の応援をしようということになったから。結果は見事に県予選で最優秀校に選ばれた。
ちなみに、私が出場したその前年は優秀校で九州大会へは進めなかった。
次に行ったのはNHKの公開収録だったと思うけれど、海野義雄ヴァイオリンリサイタル。
長崎市と佐世保市は7、80キロ離れており、行くだけで結構大変。
それでも覚悟して行った。そして「音響がいいなぁ」とため息をついて帰るのである。そう、このホールは多目的にもかかわらず、響きが悪くないのであった。
次にはもう大学生になっていた。NHK交響楽団のエキストラ奏者として、ここで初めて演奏した。あいにく雨がずっと降り続き、メンバーもかなり疲れていた。メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、第3楽章の再現部でソリストのTTさんが、ついに1フレーズ弾き忘れてしまったのが忘れられない。
その後、東京アーティスツ合奏団等、演奏の機会はいろいろ増えてきたので省略するが、もう一つ紹介したいのは内装のデザインである。
これは1月、私が最後に使わせてもらった集会室の写真。佐世保市民管弦楽団の練習風景である。
この天井に注目していただきたい。
通常の蛍光灯の間に、機能美あふれる照明器具があるのがわかるだろうか。
言って見れば、高度経済成長期のモダンシャンデリアとでも表現できそうなもの。この、ちょっとした贅沢感が、私にはたまらない魅力である。
入った瞬間に「うわあっ」と感動すること、建物というのは、すべからくそうであってほしい。
ちなみに長崎市民会館の練習室には、感動するものが何もない。
一方、今世紀に同じ佐世保市にできた「アルカス佐世保」にはそれがある。
そして同じ頃長崎市にできた「長崎ブリックホール」には、あまりない。
こういうことも、何故か受け継がれていくようだ。
良い伝統を持つ佐世保は恵まれている。
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