数カ月前になるが、大学は水産学部を出て水産関係の研究所に就職し、鯛やヒラメを育てていたような立場だった人が、紆余曲折を経て、現在オイリュトミーの専門家で舞い踊っているという、かなり数奇な人生を歩んでいる方の話を聞いた。
鯛やヒラメの舞い踊り、でなくて「鯛やヒラメから舞い踊り」ですね。
と、驚くやら感心するやらでひとしきりだったのだが、それからしばらくして「そう言えば、鯛やヒラメの舞い踊りなんて久しぶりに聞いたな」と思った。「若い人たちは知っているだろうか?」
それから手当たり次第に訊いてみた結果、知っているのは50代以上、40代半ばで既にあやしく40代後半がグレーゾーンであった。え?若い人って40代?
これは文部省唱歌「浦島太郎」の2番の歌詞である。
乙姫様のごちそうに 鯛やヒラメの舞い踊り
というのがあるのだ。私だって3番になったら歌えないので五十歩百歩と言われればそれまでだが。
ちなみに1番は子供でも知っていたので、今のところ伝承が途切れる心配はない。
なんて、伝承が続くか途切れるかばかり心配していることが多い今日この頃。
これはひとえに、日本に元気が足りないからである。
元気があれば伝承の代わりに新しいものが生まれる。浦島太郎の歌なんてせいぜい明治の歌だ。江戸時代の歌を駆逐して生まれたものである。
新しく生まれたものがマルマル・モリモリ程度ではなぁ。もう今年は誰も歌っていないでしょ。
「マルモの掟」は我々の世代で言えば「ニッキ・ニャッキ」だと思っている。
「ニッキ・ニャッキ」それこそ「鯛やヒラメの舞い踊り」を知っている世代の若い方10年くらい限定で知っている歌。
「ニッキ・ニャッキ」は到底「浦島太郎」に及ぶべくもなく消え去った。今日44年ぶりに思い出した方がほとんどだと思う。
ところで「ニッキ・ニャッキ」はEPレコードのB面曲。ひっくり返してA面曲はというと
「黒猫のタンゴ」
こうなると、先ほどの条件だった「若い方10年くらい限定」が外れる。当時の老若男女、全てに普及した。不朽の名作、かどうかは分からないが、これは後世に伝えて良い歌だと思う。チャップリンの、ある映画音楽に似ているけれど、題名わからないし…。(知りたい方はこちらの4'43"以降を聴いてください。)
この44年前、由紀さおりがその年の歌だけでアルバムを出すほどの元気のあった1969年なのである。こういった「力」のある歌が次々と生まれ、人々の生活を元気づけていた時代。これが完全に昔話になっている平成男女に、別の形でいいから何か元気づけたい。
伝承は、その模索の方法だ。与作はヘイヘイホーだ。(これは40代以上かな)
30代以下の皆さん、これじゃ元気が出ないと思いましたよね。話が難しくてごめんなさい。
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