その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

小規模ながら興味深い企画展 「実録 桜田門外の変」@日比谷図書文化館

2025-03-21 07:30:41 | 美術展(2012.8~)

日比谷公園内にある日比谷図書文化館では、小規模ではあるものの、しばしば興味深い展示が企画されている。今回は安政7年3月3日(新暦:1860年3月24日)に、水戸藩出身の浪人らを中心に徳川幕府の大老井伊直弼を襲撃し、暗殺した桜田門外の変についての展示。絵や文献などの史料をもとに事件を振り返る。

幕末の重要な事件の一つであるので、様々な小説や時代劇などで触れている出来事だが、こうした史料ベースにこの事件を見ると、よりリアリティを持って歴史を感じることができる。皇居ランで月に数度は桜田門をくぐっている私には、165年前の過去と現代がつながる感覚だった。事件当日、襲撃団は愛宕神社に集まったという。愛宕神社も職場で新年祈願に参っているところでもあり、こんなつながりもあった。

事件後、幕府の対応(暫くの間、秘密の扱いにしていた)、彦根藩の対応(お家取り潰し回避のために急遽跡継ぎを決めたる)、襲撃団の事件後の足取り、市中・全国への事件模様の拡散、など未知だった情報も多く楽しめた。

会期は事件のあった3月24日まで。30分程度でも一通りは鑑賞できるので、幕末に興味のあるかたにお勧めです。

(構成)

プロローグ
第1章 大老暗殺に至るまで
第2章 安政七年三月三日、雪降る上巳の節句
第3章 「実録」桜田門外の変
 (1)”描かれた”桜田門外の変
 (2)”伝えられた”桜田門外の変
エピローグー影響とその後

 

 

 

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圧倒的な名演! セバスティアン・ヴァイグレ、読響、 ベルグ 歌劇<ヴォツェック>

2025-03-16 08:30:43 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私にとっては、今年前半の目玉演奏会の一つ。もともと題名役をゲルネが出演ということで購入したのだが、数カ月前にキーンリーサイドが代役というお知らせがあり、がっかりどころか逆に狂喜。ロンドン在住時にキーンリーサイドは最も印象的だったイギリス人歌手の一人であり、今でもロイヤルオペラでのマクベスは記憶に深く刻まれている。まさかその彼のヴォツェックが聴けるとは・・・

公演は事前の期待を更に上回るものであった。物語は救いようのない悲惨なものだが、キーンリーサイドはもちろんのこと、外国・日本人による歌唱陣、合唱、読響と各出演者がヴァイグレの棒のもと完璧な仕事をして、圧倒的な名演となった。

久しぶりに見るキーンリーサイドは流石に年齢を重ねた感はあるけども、相変わらずの格好良さ。第1幕前半とかは、精神病を患ったヴォツェックとしてはちょっとスマートすぎないかとの気もしなくもなかったが、劇が進むにつれて狂度が重くなっていくヴォツェックを表情、所作で見事に演じ、演奏会方式ながら歌唱だけでなく演技でも深みある人物像を表現していた。彫と深みあふれるバリトンの表情の豊かさ、美しさは相変わらずで、身体に沁み入る。

そして不貞の妻マリー役のオークスのソプラノはホールを揺るがすような声量。大きいだけでなく、マリーの揺れる女心を丁寧に歌い上げる。高音の緊張感は背筋がぞくぞくする迫力だった。

その他の歌手陣も外国人、日本人ともに、それぞれ存在感が十分ある歌唱。これだけの歌手陣とレベル感はなかなか出会えないと感嘆しきりだった。

舞台後方のP席に陣取った新国立劇場合唱団、フィナーレで舞台前方に現れたTOKYO FM 少年合唱団ともに美しいハーモニーを披露してくれた。

ヴァイグレの手腕なのだろう。読響も豪華歌手陣に全く引けを取らない。かといって目立ちすぎることもなく、歌・合唱とのバランスが見事。ヴァイオリンやチェロのなどの弦のソロや木管の調べなど感泣ものの美しさもあれば、響き渡る金管やこの救いようのない物語を更に悲惨さを加えるような重々しい合奏など、目まぐるしい変幻変化を見せた。ちょっと私の席(9列目)からでは、管楽器奏者を見渡せなかったのは残念。

終演後、大拍手がホール一杯に響き渡る。圧倒的な名演に触れて、我を忘れて、私も手が痛くなるほど拍手を寄せた。隣席の男性は私の右耳が壊れんばかりに「ブラボー」を連発。感動と興奮に包まれたサントリーホールだった。

 

(余談1)今回は単券でS席購入したが、やはり値段に相応しい音の聞こえようで、素晴らしい音楽体験だった。普段のN響、都響は定期会員のシリーズ券なので席は最安ランク。ご贔屓オケの演奏会は最安でそれなりに、非会員の演奏会は上席で満喫というのも、本末転倒の複雑な気分。N響、都響の会員にランクアップサービスとかあれば嬉しいのだが・・・

(余談2)なぜか上演中の途中退席の方が多く、私の視野に入る範囲で5名ほど。私の直前の列ではお二方が出られた。途中休憩なしということを知らずに来られたのかな?

第646回定期演奏会

2025 3.12〈水〉 19:00  サントリーホール

指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
ヴォツェック=サイモン・キーンリーサイド(バリトン)
鼓手長=ベンヤミン・ブルンス(テノール)
アンドレス=伊藤達人(テノール)
大尉=イェルク・シュナイダー(テノール)
医者=ファルク・シュトルックマン(バス)
マリー=アリソン・オークス(ソプラノ)
第一の徒弟職人=加藤宏隆(バス) 
第二の徒弟職人=萩原潤(バリトン) 
白痴=大槻孝志(テノール)
マルグレート=杉山由紀(メゾ・ソプラノ)

合唱= 新国立劇場合唱団
TOKYO FM 少年合唱団
音楽総合助手・合唱指揮= 冨平恭平

ベルク:歌劇「ヴォツェック」作品7(演奏会形式)

 

Subscription Concerts No. 646

Wednesday, 12 March 2025, 19:00 Suntory Hall

Conductor= SEBASTIAN WEIGLE

Wozzeck= Sir Simon Keenlyside
Tambourmajor= Benjamin Bruns
Andres= Tatsundo Ito
Hauptmann= Jörg Schneider
Doktor= Falk Struckmann
1. Handwerksbursche= Hirotaka Kato
2. Handwerksbursche= Jun Hagiwara
Der Narr= Takashi Otsuki
Marie= Allison Oakes
Margret= Yuki Sugiyama

Chorus= New National Theatre Chorus
TOKYO FM Boys Choir
Musical Assistant & Chorus Master= Kyohei Tomihira
*Part of the cast has been changed from the initially scheduled cast.

BERG: Wozzeck, op. 7 (Concert style)

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初めてカーチュン・ウォンと日フィルのコンビを聴く! マーラー交響曲第2番<復活>

2025-03-09 07:33:23 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

巷で評判高く気になっていたカーチュン・ウォン/日フィルによる、私の好きなマーラー交響曲第2番というプログラム。昨年、一般販売日の初日に気合を入れてチケット取り、この日が来るのを心待ちにしていました。

感想を正直に言うと、(期待値が高すぎたところもあるのかもしれませんが、)素直に感動したところと、何とも表現し難いもやもや感が共存した演奏でありました。

まず、オケ、合唱、独唱の熱量・集中度高いパフォーマンスが素晴らしかった。日フィルは聴き慣れたオーケストラではありませんが、ウォンの指揮に食らいつき、各奏者のほとばしる集中力が、1階席後部の私にも痛い程伝わってきました。第1楽章の冒頭の弦の低音の響きなどは、ハッとさせられ、これからの1時間半への期待がぐっと高まる合奏に始まり、全楽章を通じて金管もホール一杯に響き渡ります。要所要所での木管の調べも美しい。普段聴いているN響・都響と比較しても全く遜色ないものでした。

オケと並んで、合唱・独唱の素晴らしさも、この日の好演を支えていました。大学の合唱団だからか若いメンバーが目立ちますが、若々しい張りと透明感ある美しさに溢れた合唱でした。独唱の二人もしっかり仕事。メゾソプラノの清水華澄の歌唱が入ると、会場の空気が更に張り詰めたものに変わった印象です。

一方で、まだ私には咀嚼できずもやもや感が残ったのはカーチュン・ウォン。小柄な体を目一杯使って、明確な指示を与えながら、オーケストラをドライブする力は、「さすが今評判の指揮者」と十分納得しました。音楽もしばしばアクセントを置き、テンポも揺らします。そうして紡がれる音楽は、日フィルの献身的な貢献と合わさって、丁寧で濁りが無く、整えられた音楽でした。

ただ私には、特に前半が、不思議に響いてこないところもありました。第2楽章もとっても美しいアンサンブルでうっとりさせられるのですが、なぜか演奏の素晴らしさほど自分の中で刺さらない。「なぜだろう」「何なのか」と言った不思議な自分との対話がありました。

頻繁に現れるテンポの揺らしも、なにか計算されつくした仕掛けのような感覚をもってしまい、日フィルの奮闘には感心する一方で、整いすぎて純粋にその変化に投入できない。マーラーのこの交響曲は宇宙的な響きを感じるのが個人的なツボの1つなのですが、オケは良く鳴っているのだけど、そこまでのスケールある響きには聴こえてこない。そんな印象を持った前中盤でした(これは私の1階深部の座席位置の問題かもしれません)。

ただ第4,第5楽章と進むにつれて、ドライブ感・緊張感が更に増し、特に第5楽章後半はウォンの指揮で、オケ・独唱・合唱が一体となった素晴らしい演奏。荘厳なフィナーレは、もうこんな音楽を残してくれたマーラーにひたすら感謝、感謝です。

終演後は、完売の客席から猛烈な拍手とブラボー。オケも完全燃焼感が伺える表情です。私も大きな拍手を寄せました。

今回、お初のカーチュン・ウォンは、オケの統率や音楽の作り上げる手腕に、口をはさむ余地ない大器ぶりが感じました。この日感じた微妙なもやもや感は、単なる相性のような気もするので、今後の演奏会の中で確認していきたいと思います。







 

第768回東京定期演奏会

2025年3月7日 (金)19:00 開演
サントリーホール


指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]

ソプラノ:吉田珠代
メゾソプラノ:清水華澄
合唱:東京音楽大学

マーラー:交響曲第2番《復活》 ハ短調

Fri, March 07, 2025
Start 19:00( Doors Open 18:20 )
Suntory Hall

Conductor: Kahchun WONG, Chief Conductor
Soprano: YOSHIDA Tamayo
Mezzosoprano: SHIMIZU Kasumi
Chorus: Tokyo College of Music

Gustav MAHLER: Symphony No.2 "Auferstehung" in C-minor

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映画「殿、利息でござる」(監督 中村義洋、2016年)

2025-03-07 07:43:32 | 映画

Amazonプライムで視聴。タイトルや主演の阿部サダヲのキャラから、どたばた時代劇コメディと思い込んでいたのだが、コメディ要素はあるものの、史実に基づいた「贈与の連鎖」が描かれる美談で、胸熱くなるドラマであった。

江戸時代の藩からの伝馬役の負担に苦しむ仙台藩内吉岡宿の商人・農民(庄屋)たちが、資金を募り・集め、それを藩に貸し出し、その利子で税の一部を免じてもらう計を立て、実現に向け奔走する。官僚主義の壁、周囲の傍観やねたみ、資金調達などなど様々な困難が襲うが、村人たちの知恵と連帯で乗りこえる。私財を投げうって村のために尽くすのは、「利他」/「贈与」の精神そのもので、映画の中でさまざまな「利他」「贈与」の要素が描かれている。

例えば、『世界は贈与でできている』で記された「アンサングヒーロー」。「評価されることも褒められることもなく、人知れず社会の最悪を取り除く人。アンサングヒーローは、想像力を持つ人にしか見えない。アンサングヒーローの仕事にはインセンティブ(報酬)とサンクションが機能しない。アンサングヒーローは自分が差し出す贈与が気づかれなくても構わないと思うことができる。」村人たちからは守銭奴と思われつつも、村のために資金を蓄積することを始めた先代・浅野屋甚内(山崎努)はまさにアンサングヒーローそのものだった。そして、その思いは二人の子、養子に出された長男・穀田屋十三郎(阿部サダヲ)と本家を継いだ次男・浅野屋甚内(妻夫木聡)に引き継がれる。

「利他」「贈与」のケーススタディに最適の作品であるし、そんな難しいことを考えずとも、純粋に人間の強さを感じる良い映画だ。勇気を貰い、人が生きる価値について考えさせられる一本だ。

PS 役者陣も実力者揃い見応えあります。プラスしてサプライズも。ラストシーンで仙台藩主役として羽生結弦選手が登場。

 

殿、利息でござる!

監督       中村義洋
脚本       中村義洋 鈴木謙一
原作       磯田道史「穀田屋十三郎」(『無私の日本人』所収)
製作       池田史嗣
ナレーター          濱田岳

出演者  

阿部サダヲ
瑛太
妻夫木聡
竹内結子
千葉雄大
羽生結弦
松田龍平
草笛光子
山﨑努
音楽       安川午朗

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中島岳志『思いがけず利他』ミシマ社、2021年

2025-03-02 08:27:05 | 

昨秋の読書会をきっかけに、興味を持った「利他」をテーマにした本をもう1冊読んでみた。この前の『利他とは何か』の共同執筆者でもあった中島岳志氏が、思考のウイングを更に広げた一冊。エッセイ的な文体なので読み易い。

個人的には、立川談志による落語「文七元結」を題材に利他について考察した第1章が最も興味深かった。私自身、長兵衛がなぜ娘を救うために借り受けたお金を丸ごと吾妻橋から身を投げようとした文七に渡してしまうのかは、あの落語の肚落ちしない最大ポイントだったので、利他を軸に読み解くことで、多少なりとも落語の理解や見方が深まった気がする。

「文七元結」以外にも、ヒンズー語における与格構文(自分の行為や感情が不可抗力によって作動する際に使われる構文)、親鸞の他力思想、(『世界は贈与でできている』でも指摘されていた)受取人の重要性、偶然と運命の関係といった「利他」について考えるヒントが散りばめられている。

ただ、「利他」というのは、読めば読むほど、捉えどころなく難しいこともわかってきた。常に意識して行動するのも窮屈だし無理がある。自然体で生きながらも、社会や人間関係のたるみのようなものとして意識し大切にしていくことを心がけよう。

 

(自分のための抜書)

・ポイントは、長兵衛が文七に五十両を渡すことが「業の力」だということだとおもいます。ここに「人間の業」と「仏の業」が同時に働いていると考えています。凡夫の「どうしようもなさ」という「業」が、「利他の本質」へと反転する構造こそ、「文七元結」の要だと思います。(p49)

・利他は事故を超えた力の働きによって動き出す。利他はオートマティカルなもの。利他はやってくるもの。利他は受け手によって起動する。そして、利他の根底には偶然性の問題がある。(p174)

・「他力本願」・・大切なのは自分の限りを尽くすこと。自力で頑張れるところまで頑張ると、能力の限界にぶつかり、自己の絶対的な無力に出会う。重要なのはそのことを認識した時に。「他力」が働く。これが偶然の瞬間。重要なのは、私たちが偶然を呼び込む器になること。偶然をコントロールすることはできないが、偶然が宿る器になることは可能。そして、この器にやってくるものが「利他」。器に盛られた不定形の「利他」は、いずれ誰かの手に取られる。受け手の潜在的な力が引き出されたとき、「利他」は姿をあわらし、起動し始める。(pp176-177)。

コメント (2)
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下野竜也、N響、オッフェンバック(ロザンタール編)/バレエ音楽「パリの喜び」(抜粋)

2025-02-27 07:56:44 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

遅ればせながら、土曜日のN響定期の感想です。

冬季シリーズの最後を飾るのは正指揮者の下野達也さんによる、オペレッタやバレエの楽曲を中心としたプログラム。

実演にはあまり接しない曲が並ぶプログラムで、私の行動パターンでは1回券ではなかなか購入までは至らないであろうプログラムですが、経験値を広げる機会にであえるのは定期会員ならではの有難さだと思います。

冒頭のスッペの「軽騎兵」序曲。小学校低学年の頃、親が「こどものためのクラシック」的なレコードセットを買ってきて、ちっとも好きでなかったのだけど、この曲が入った盤は子供ながらに曲の格好良さに魅かれ、好んで聴いていました。ただ、大人となってからは、録音は持ってないし、意外と実演に接する機会も無いんですよね。なので、突き抜けるような金管の美音で始まった演奏は、懐かしさとそのスケール大きさに爽快感一杯に満たされました。

続いては、三浦文彰ソロによるサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。この曲のライブは2度目、三浦さんのソロを聴くのは3度目だと思います。奇をてらわずに音楽の美しさを自ずと語らせるような自然体の演奏がとっても素敵でした。第ニ楽章の優しい抒情的なメロディには体がとろけるようです。

アンコールはアンリ・ヴュータン:アメリカの思い出「ヤンキー・デゥードゥル(Yankee Doodle)」(「アルプス一万尺」の原曲と初めて知った!)。ヴァイオリン技をこれでもかという程ご披露いただき、聴衆も大喜びの演奏。

後半の滑り出しは、オペレッタとバレエ音楽から。「詩人と農夫」は辻本さんのチェロの音がホール一杯に響き、うっとり。

そして、ラストはオッフェンバック(ロザンタール編)のバレエ音楽「パリの喜び」(抜粋)。「地獄のオルフェ(天国と地獄)」など、N響のシンフォニックなサウンドが炸裂してとっても爽快。肩ひじ張らず、難しいことも考えず(普段も考えてないけど)気軽に音楽や演奏を楽しむことができるのも良いですね。フィナーレの「舟歌」を聴いて「ホフマン物語」がまた見たくなりました。

3月は定演はお休み月。日フィル、読響など普段なかなか行けてないオーケストラを聴きに行く予定です。

(トロンボーンの吉川さんが3月末で退団でこの日が最後の定演とのこと。お疲れ様でした!)

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2033回 定期公演 Cプログラム
2025年2月22日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

スッペ/喜歌劇「軽騎兵」序曲
サン・サーンス/ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 作品61
スッペ/喜歌劇「詩人と農夫」序曲
オッフェンバック(ロザンタール編)/バレエ音楽「パリの喜び」(抜粋)

指揮:下野竜也
ヴァイオリン:三浦文彰

 

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2033 Subscription (Program C)
Saturday, February 22, 2025 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Suppè / Leichte Kavallerie, operetta―Overture (Light Cavalry)
Saint-Saëns / Violin Concerto No. 3 B Minor Op. 61
Suppè / Dichter und Bauer, operetta―Overture (Poet and Peasant)
Offenbach / Rosenthal / Gaîté Parisienne, ballet (Parisian Gaiety) (Excerpts)

Artists
Conductor:Tatsuya Shimono
Violin:Fumiaki Miura

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東京二期会、ビゼー<カルメン> (指揮 沖澤のどか、読響)

2025-02-25 07:30:22 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

たまに無性に見たくなる定番オペラの1つが「カルメン」。登場人物にはあまり共感できない(ミハエラ除く)が、ビゼーの音楽が素晴らしい。今回は沖澤のどかさんと読響による演奏に魅かれ、4年ぶりに観劇(初日)。主要歌手陣、合唱団、オケ、演出がしっかりまとまった好演でした。

歌手陣は突出した方は居ませんでしたが、皆さんそれぞれ持ち味を出して、いい仕事をされてました。

題名役の加藤のぞみさんは初めて聴く方ですが、力強い芯のあるメゾソプラノの歌声は、カルメンの強さととってもマッチしてます。演技も堂々たるもの。ドン・ホセ役の城宏憲も美声のテナーで優男ぶりを発揮。声は素晴らしいのですが、ちょっと一本調子のところも感じられ、表現にもっと変化があればもっと良い気がしました。ミカエラの宮地江奈さんは純度の高い美しいソプラノで役柄にぴったり(小学生の遠足のような衣装は首をかしげましたが)。印象深かったのは、エスカミーリョの今井俊輔さんで、立派な体躯(着膨れかどうかは?)から歌われる声は迫力満点で、コミカルな演技も個人的に好み。カルメンはエスカミーリョが良いと、上演の厚みが増すので嬉しかった。

児童合唱も含めた合唱団も素晴らしいハーモニーでした。多くの人数を揃えたロマの一団による合唱は迫力たっぷりで、ホール一杯に響く合唱はとっても心地よいです。

今回1番のお目当てであった沖澤のどかさんが振る読響は、期待に応えた見事なタイムリーヒット。沖澤さんの指揮は、演奏会で2度聴いていますがオペラは初めて。小柄な体格を倍以上に感じさせる大きな指揮ぶりから繰り出される音楽は、とっても自然体で癖がなく体に素直に染み込んでいきます。読響との息もぴったりで、カルメンの躍動感、疾走感を存分に味わいました。作品の良さをしみじみ感じられる嬉しい演奏です。

舞台造形は、第1幕がセビリアのたばこ工場にはとても見えない荒野の設定になっていて、ずっこけて始まりました。2、3幕の間違いではと思ったり、その後も3幕も現代風のネオンセットがあったりして、時空の違和感があったのですが、プログラムには場所・時間を特定しない近未来設定との解説があるようです。ただ舞台設定が音楽や物語の進行を妨げるようなものではなかったし、照明等は美しく舞台が照らされていましたので、違和感はあったものの大きく気にはなりません。むしろ、闘牛場外の場面でダンスチームによるダンスを活用したのが、私としてはとっても好みでした。

終演後は、9割方は埋まった観客席から大きな拍手が寄せられました。演出家がカーテンコールに登場した際は、多少のブーイングも混じっていましたが、ブーイングってほどじゃないよねとの個人的感想です。昨年の同じ二期会公演の「影のない女」にはやられましたが、今回は定番オペラを定番ならではの良さをしっかり味わえる公演で、満足感一杯でホールを後にしました。

※カーテンコールの写真撮影がOKなのもとっても嬉しかった。

カルメン

<新制作>

オペラ全4幕 日本語および英語字幕付原語(フランス語)上演

2025年2月20日(木)

原作:プロスペル・メリメ 小説『カルメン』
台本:リュドヴィック・アレヴィー及アンリ・メイヤック
作曲:ジョルジュ・ビゼー

staff

指揮:沖澤のどか
演出・衣裳:イリーナ・ブルック
装置:レスリー・トラバース
照明:喜多村 貴
振付:マルティン・ブツコ
衣裳補:武田園子
合唱指揮:河原哲也
演出助手:彌六
舞台監督:村田健輔
技術監督:大平久美、村田健輔
公演監督:永井和子
公演監督補:大野徹也

Cast

カルメン:加藤のぞみ
ドン・ホセ:城 宏憲
エスカミーリョ  :今井俊輔
ミカエラ:宮地江奈
スニガ   :ジョン ハオ
モラレス:室岡大輝
ダンカイロ:北川辰彦
レメンダード:高田正人
フラスキータ:三井清夏
メルセデス:杉山由紀

合唱:二期会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団

 

CARMEN

[New Production]
Opera in four acts
Sung in the original language (French) with Japanese and English supertitles
Libretto by Henri Meilhac and Ludovic Halévy, Adapted from the novel by Prosper Mérimée
Music by GEORGES BIZET

Performance Schedule

Thu,20Feb,2025 17:00 Open/18:00 Star

Conductor: Nodoka OKISAWA
Stage Director & Costume Designer: Irina BROOK
Set Designer: Leslie TRAVERS
Lighting Designer: Takashi KITAMURA
Choreographer: Martin BUCZKO
Costume Associate: Sonoko TAKEDA
Chorus Master: Tetsuya KAWAHARA
Assistant Stage Director: Miroku
Stage Manager: Kensuke MURATA
Technical Directors: Kumi ODAIRA, Kensuke MURATA
Production Director: Kazuko NAGAI
Associate Production Director: Tetsuya ONO

Carmen: Nozomi KATO
Don José: Hironori JO
Escamillo: Shunsuke IMAI
Micaëla: Ena MIYACHI
Zuniga: Hao ZHONG
Moralès: Taiki MUROOKA
Le Dancaïro: Tatsuhiko KITAGAWA
Remendado: Masato TAKADA
Frasquita: Sayaka MITSUI
Mercédès:Yuki SUGIYAMA

Chorus: Nikikai Chorus Group
Children Chorus: NHK Tokyo children chorus
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra

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2024年度 公推協杯 全国若手落語家選手権に行ってきた!

2025-02-23 07:30:50 | 落語

昨年に引き続き公推協杯全国若手落語家選手権の本選を鑑賞。個人的に春風亭一花さん応援のつもりでチケット買ったのだけど、一花さんがまさかの予選で姿を消し、著しくモチベーション落として会場へ。

この選手権、観客にも投票権が与えられる。なので会場入口で投票用紙が入った資料一式を頂くと、一転して当事者意識がモリモリ上がって着席。

4人の本選出場者の若手はいずれも私にはお初の人たち。若いという共通項以外は、江戸(東京)ベースで活動される方、上方で活動される方が半々。演目も古典、新作、講談風とバラエティに飛んでいて、一人20分の持ち時間、それぞれ個性あふれる芸が披露された。大会特有の緊張化はあるものの、落語通と思しきお客様さんも多数交じっていそうな中、温かい笑いに会場は包まれた。

4名の落語終了後は投票の集計の時間に、昇太師匠のいつもの緩い笑いの一席が聞けたのも嬉しい。

大賞には、4名の中で圧倒的に会場の笑いを取ったごはんつぶさんが選ばれた。「これ落語なの?」とまで思わせる、紙資料多数付きの一人語りの新作ものだったが、話はとっても良く練られたもので、グイグイと観客に迫り会場を笑いの渦に巻き込む力量はさすが。私も少々首を傾げつつも、笑い続け、寄り切られた感じだった。どうも一花さんは予選で彼に勝てなかったようだ。確かに、良くも悪くも一花さんには、このはみ出し感は感じないから(ただ私には、そこが一花さん推しの理由でもある)ごはんつぶさんは、是非、次回は古典も聴いてみたい。

昇太師匠がまくらの中でしみじみと、師匠らがデビュー当時の落語界の不人気を語っていた。昨年から見に来ている本大会だが、ここで聞いた若手達がこれからどんな落語界を作っていくのか、とっても楽しみである。

2月21日(金)19時〜  渋谷 伝承ホール

『公推協杯全国若手落語家選手権』
昇ちく「弥次郎」

柳家小ふね「磯の鮑」
笑福亭茶光「手水廻し」
桂源太「山内一豊と千代」
三遊亭ごはんつぶ「落語業界の真実」

春風亭昇太「人生が二度あれば」

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伊藤 亜紗(編著) 中島 岳志 若松 英輔 國分 功一郎 磯崎 憲一郎『「利他」とは何か』 集英社新書、2021年

2025-02-21 07:30:58 | 

5名の論者が夫々の視点で語ることで、「利他」について多角的に俯瞰しようとする一冊。

伊藤亜紗氏は合理的利他主義の自己起点や効果的利他主義の持つ数値化への違和感に触れつつ、「相手への信頼」、「結果のコントロール不可」、「他人へのケア(距離と敬意をもって他者を気遣うこと)」に利他の本質を見る。それは「うつわ」のようなものであり、「余白」なのだ。

中嶋岳志氏は志賀直哉の『小僧の神様』、モース『贈与論』やインドでの研究体験をもとに贈与や利他を考える。人間の意思を超えた交換システムとしての「ハウ」という現象であり、直接互恵・間接互恵といった「利己的な利他」ではなく、自分の個を超えた力で生きている「業」から利他に迫る。その結果が間接互恵につながる(目的ではない)という。

若松氏英輔氏は柳宗悦の民藝の中に利他を見る。柳は「美」そのものに利他のはたらきを見て取った。そしてその「美」は人が作るものでは無くて、生まれてくるものなのだ。

國分浩一郎氏は中動態は能動態(意志がある)と対立する概念(受動は中動態の意味の一つ)として、中動態の中に利他を見る。そして、意思には責任が生じるという一般的な理解を排し、中動態における応答としての責任であり、「義」のなかに利他の本質を考える。

磯崎憲一郎氏は設計図なしに書かれる小説の中に利他を見る。

各章の中で語られる考えは奥深く、利他といったいどう繋がるのか迷子になる章もあるのだが、頭の体操にもなる。共通しているのは、私達が日常生活において、常識として考えているような数値化管理や意志と言ったものではなく、運命・他力と言ったコントトールできない大きな力の中で考えるという思考姿勢であり行動指針だ。必ずしもこれだけで前に進むとも思えないところもあるが、自分の思考や行動の立ち位置の確認になるし、世界観が広がる気になった。

 

 

【目次】
はじめに――コロナと利他           伊藤亜紗
第1章:「うつわ」的利他――ケアの現場から  伊藤亜紗
第2章:利他はどこからやってくるのか     中島岳志
第3章:美と奉仕と利他            若松英輔
第4章:中動態から考える利他――責任と帰責性 國分功一郎 
第5章:作家、作品に先行する、小説の歴史   磯崎憲一郎
おわりに――利他が宿る構造          中島岳志

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さすが伝統の青梅マラソン!

2025-02-18 07:28:54 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)

4月のフルマラソン出走に向けた練習レースとして青梅マラソンに初めて参加した。青梅マラソンは距離こそ30kだが、今回で第57回を数える伝統の大会である。

この日は、2月とは思えない温かさで、スタート時は13℃で風なし、快晴。持参したネックウォーマーの着用は止めにしたほど。スタートエリアがAからRまであり5百メートルは優に超え、多数のランナーが参加する大会。スタート前は町一杯にランナーが居る印象だ。私も昨年10月の水戸以来の大会出場だったこともあり、気分も高揚する。長いスタートエリアの先頭のスターターのデッキには高橋尚子さん(Qチャン)と高橋大輔さんが立ち、(私の位置からでは見えないが)、応援メッセージを送ってくれた。Qちゃんは「私の良いタイムが出る気温は13℃。今日は皆さん、いい走りができますよ」といつも元気がもらえるメッセージがうれしい。


(長~いスタートエリア)


(スタート台の高橋尚子さんと高橋大輔さんに送れれスタート)

今回は事情によりスマートウオッチがなくて、簡易ストップウオッチのみ持参。前週の練習中に転倒し膝を深く擦り剝いた傷がまだ治ってないので、とにかく転倒せずに完走することを第一目標にした。アップダウン激しいコースでタフなレースが予想されるので、キロ6分のペースを心掛けスタートを切る。


(5k地点過ぎ)

多くの人の声援、大太鼓隊、合唱団などの応援を受けて、奥多摩街道をひたすら西北に向かう。最初の2キロは平坦だが市街地を抜けると、アップダウンを繰り返しながら徐々に上っていく。坂で脚を消耗しないように、上りはしっかり前傾姿勢を、下りでは歩幅を小さくして衝撃を抑えるように走る。往路はお正月に試走したので、大体のコースイメージはついているのがよかった。最初の5キロは27分後半で上出来。


(勇壮な大太鼓の連打)


(ボランティアの皆さん)

左に多摩川の清流と渓谷、正面に奥多摩の山々を見ながらの走りは爽やかで気持ちがよい。都心や多摩東部とは違った新鮮で爽やかな空気を吸い込みながら気分良く走れる。繰り返されるアップダウンや徐々に上るコースは楽ではないが、皇居ランや山中湖のママの森で坂にはある程度慣れているので、走りがいがある。前半は1キロ5分30~45秒ペースを維持して折り返した。

後半は下り基調だが、22キロぐらいの軍畑駅前過ぎから1キロほど続くきつい上りが、このコースの最大の難所。前傾を保ち、視線は落としてひたすら脚を前に出す。ちょうど坂の2/3ぐらいに来たところで、「頑張ってください!」と声をかけながらランナーとハイタッチをしている高橋尚子さんがいきなり視界に入る。私もあわてて手を出してハイタッチ。彼女とのハイタッチの記憶は今回で4回目だが、いつも一人一人のランナーに気持ちのこもった声をかけてくれるQチャンは素晴らしい。

このハイタッチパワーに加えて、復路では多くの地元の人がキャンディーや水分など、様々な捕食・給水を提供してくれながら声をかけてくれる。中学生のグループとのハイタッチも嬉しい。25キロを過ぎると脚だけでなく内臓も弱ってきたが、応援に背中を押してもらった。何とかペースも落とさず、2時間44分台でフィニッシュ。タイムも上出来だ。


(あと200m)


(あと100m)

 

今回はスマートウオッチが無かったのだが、逆に細かいタイムやペース配分に気を取られずによかったかも。写真撮影も5キロごとと決めて、走りに集中するようにしたのもペース保持に役立った。フルマラソンは30キロ以降が勝負なので、今日の走りで十分とはとても思えないが、まだ2か月弱あるので、しっかり練習を積み上げていきたい。

それにしても、青梅マラソン、雰囲気といいコースといい運営といい、流石、歴史ある素晴らしい大会だ。トイレと給水所がやや少ない気がするが、自宅から1時間半かからずに来られるので、調整も難しくはない。これは毎年、出てみたいと思った。

2025年2月16日 11:30スタート

 

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