ロンドン(の一部の人の間で)かなり話題の世界初演のオペラ『アンナ・ニコル』を見に行きました。アメリカのモデル(『プレイポーイ』誌のプレイメイト・オブ・ザ・イヤー)で、テキサスの田舎から、ウォールマート店員、ストリッパーを経て、63歳上の石油王と結婚し、39歳で薬物過剰摂取で死亡したアンナ・ニコル・スミスの一生をオペラ化したものです。
守屋さんのブログ(こちら→)で事前に聞いてはいたものの、ロイヤルオペラハウスはアンナ・二コル一色。掲示モニター、ポスター、オペラ・バレエの衣装展示のマネキン、ロイヤルオペラ縁の人の胸像などなど、顔という顔が全てアンナ・ニコルの顔(冒頭写真(ロイヤルオペラホームページより))に変わっています。劇場内の舞台カーテンは真ピンク、カーテン上部の紋章もアンナニコル、そして驚いたことに、正面の舞台上の壁にある女王様の肖像にもアンナ・ニコルの顔が前に被せてありました。「こんなのありか!?」とアンナ・ニコルづくしの先制攻撃をくらいサプライズするとともに、ディズニーキャラで一色のディズニーランドの雰囲気に似たお祭り気分で、かなり気分が高揚します。音楽は無いけど、これで十分、序曲とも言えるかも・・・。会場も話題の世界初演オペラを見に来たという期待感で、観衆もなんか楽しさ一杯の雰囲気です。
【入り口前の廊下のポスターはすべてアンナ・ニコル】
【掲示用モニターにもアンナ・二コル】
【ストール席背面にある休憩所もアンナ・二コル】
【いつもは赤の舞台カーテンは怪しいピンク色】
【カーテン上部のイギリス国章にもアンナ・二コル】
【女王様の肖像にもアンナ・ニコル】
【ランプカバーもアンナ・二コル】
【衣装展示用のマネキンにもアンナ・二コル】
で、肝心のオペラはいうと・・・
期待以上に、とっても面白いものでした。オペラと言うよりミュージカルを観ているような感じです。アンナ・ニコルの一生が、とってもテンポ良く、軽快に、愉快に進んでいきます。
取り分けプロダクションが印象的でした。舞台、照明がとっても華やかで、目を舞台から離れさせません。ジャズ風のテンポのよい音楽、風刺の効いた脚本は、会場の笑いを誘い、盛り上げます。歌手、役者さんたちの振り付けも、コミカルでうまく出来ています。演出が注目をされるようになったとはいえ、オーケストラに耳を傾け、歌を聴くのが主である通常のオペラとは違い、音楽、演出、演技、脚本などなど舞台全体が主役という印象です。これからのオペラはこうなっていくのかもと、未来を感じさせるものでもありました。
しかし、このオペラについては、主役のエヴァ=マリア・ウェストブルック(Eva-Maria Westbroek)抜きには語れないと思います。このオペラの彼女以外が演ずることが想像できないほど、はまり役でイメージぴったりでした。むしろ、彼女を通じて、アンナ・ニコル・スミスを自分の中で再構成するような気分です。音楽を中心に置かない分、かなりの演技力が求められると思うのですが、本当に役になりきっていて、彼女の上昇志向、金銭志向、息子ダニエルへの愛などを、時に愉快に楽しく、時に切実に演じていたと思います。
また、脇を固める石油王を演じたオーク(Alan Oke)、弁護士兼恋人であるスターンを演じたフィンリィ(Gerald Finley)、そしてアナの母親役のビックリィもしっかり味を出していました。あと、冒頭から笑わせてくれるコーラス陣も、コミカルな歌詞、愉快な振り付け、綺麗な歌声で、とっても印象に強く残りました。
音楽はMark-Anthony Turnageによるものをパッパーノ大将が軽快にさばきます。ジャズ風のリズムも入ったり、綺麗なメロディもありますが、繰り返しになりますが、音楽は主役という感じではありません。
とっても楽しんだ新作オペラでしたが、見終わった後は、複雑な思いもありました。このオペラが描く、アンナ・ニコルに託された、分かりやすいアメリカンドリームも今の時代にはむしろ色褪せて見えるのが不思議でした。正直、この知名度、財産至上主義には、空しさや寂しさを感じざるをえませんが、むしろこの単純さ、分かりやすさが今となってはむしろ懐かしいという気にさえなります。今を描いた現代劇ではあるものの、既に世の中の価値観は確実に変わってきていると思った次第です。
【カーテンコール】
【Eva-Maria Westbroekがすばらしい】
【監督のRichard Jones】
【パッパーノさんもうれしそう】
--------------------------
Anna Nicole
Saturday, February 26 7:30 PM
Credits
Composer: Mark-Anthony Turnage
Librettist: Richard Thomas
Director: Richard Jones
Set designs: Miriam Buether
Costume designs: Nicky Gillibrand
Co-Lighting Designers: Mimi Jordan SherinD M Wood
Choreographer: Aletta Collins
Performers
Conductor: Antonio Pappano
Anna Nicole: Eva-Maria Westbroek
Old Man Marshall: Alan Oke
The Lawyer Stern: Gerald Finley
Virgie: Susan Bickley
Cousin Shelley: Loré Lixenberg
Larry King: Peter Hoare
Aunt Kay: Rebecca de Pont Davies
Older Daniel: Dominic Rowntree
Blossom: Allison Cook
Doctor: Andrew Rees
Billy: Grant Doyle
Mayor: Wynne Evans
Runner: ZhengZhong Zhou§
Daddy Hogan: Jeremy White
Gentleman: Dominic Peckham
Trucker: Jeffrey Lloyd-Roberts
Deputy Mayor: Damian Thantrey
Four Lap Dancers: Yvonne Barclay, Amy Catt, Amanda Floyd, Katy Batho
Four Meat Rack Girls: Kiera Lyness, Marianne Cotterill, Louise Armit, Andrea Hazell
Onstage Band: John Parricelli (Guitarist),John Paul Jones (Bass Guitarist),Peter Erskine (Drummer)
守屋さんのブログ(こちら→)で事前に聞いてはいたものの、ロイヤルオペラハウスはアンナ・二コル一色。掲示モニター、ポスター、オペラ・バレエの衣装展示のマネキン、ロイヤルオペラ縁の人の胸像などなど、顔という顔が全てアンナ・ニコルの顔(冒頭写真(ロイヤルオペラホームページより))に変わっています。劇場内の舞台カーテンは真ピンク、カーテン上部の紋章もアンナニコル、そして驚いたことに、正面の舞台上の壁にある女王様の肖像にもアンナ・ニコルの顔が前に被せてありました。「こんなのありか!?」とアンナ・ニコルづくしの先制攻撃をくらいサプライズするとともに、ディズニーキャラで一色のディズニーランドの雰囲気に似たお祭り気分で、かなり気分が高揚します。音楽は無いけど、これで十分、序曲とも言えるかも・・・。会場も話題の世界初演オペラを見に来たという期待感で、観衆もなんか楽しさ一杯の雰囲気です。
【入り口前の廊下のポスターはすべてアンナ・ニコル】
【掲示用モニターにもアンナ・二コル】
【ストール席背面にある休憩所もアンナ・二コル】
【いつもは赤の舞台カーテンは怪しいピンク色】
【カーテン上部のイギリス国章にもアンナ・二コル】
【女王様の肖像にもアンナ・ニコル】
【ランプカバーもアンナ・二コル】
【衣装展示用のマネキンにもアンナ・二コル】
で、肝心のオペラはいうと・・・
期待以上に、とっても面白いものでした。オペラと言うよりミュージカルを観ているような感じです。アンナ・ニコルの一生が、とってもテンポ良く、軽快に、愉快に進んでいきます。
取り分けプロダクションが印象的でした。舞台、照明がとっても華やかで、目を舞台から離れさせません。ジャズ風のテンポのよい音楽、風刺の効いた脚本は、会場の笑いを誘い、盛り上げます。歌手、役者さんたちの振り付けも、コミカルでうまく出来ています。演出が注目をされるようになったとはいえ、オーケストラに耳を傾け、歌を聴くのが主である通常のオペラとは違い、音楽、演出、演技、脚本などなど舞台全体が主役という印象です。これからのオペラはこうなっていくのかもと、未来を感じさせるものでもありました。
しかし、このオペラについては、主役のエヴァ=マリア・ウェストブルック(Eva-Maria Westbroek)抜きには語れないと思います。このオペラの彼女以外が演ずることが想像できないほど、はまり役でイメージぴったりでした。むしろ、彼女を通じて、アンナ・ニコル・スミスを自分の中で再構成するような気分です。音楽を中心に置かない分、かなりの演技力が求められると思うのですが、本当に役になりきっていて、彼女の上昇志向、金銭志向、息子ダニエルへの愛などを、時に愉快に楽しく、時に切実に演じていたと思います。
また、脇を固める石油王を演じたオーク(Alan Oke)、弁護士兼恋人であるスターンを演じたフィンリィ(Gerald Finley)、そしてアナの母親役のビックリィもしっかり味を出していました。あと、冒頭から笑わせてくれるコーラス陣も、コミカルな歌詞、愉快な振り付け、綺麗な歌声で、とっても印象に強く残りました。
音楽はMark-Anthony Turnageによるものをパッパーノ大将が軽快にさばきます。ジャズ風のリズムも入ったり、綺麗なメロディもありますが、繰り返しになりますが、音楽は主役という感じではありません。
とっても楽しんだ新作オペラでしたが、見終わった後は、複雑な思いもありました。このオペラが描く、アンナ・ニコルに託された、分かりやすいアメリカンドリームも今の時代にはむしろ色褪せて見えるのが不思議でした。正直、この知名度、財産至上主義には、空しさや寂しさを感じざるをえませんが、むしろこの単純さ、分かりやすさが今となってはむしろ懐かしいという気にさえなります。今を描いた現代劇ではあるものの、既に世の中の価値観は確実に変わってきていると思った次第です。
【カーテンコール】
【Eva-Maria Westbroekがすばらしい】
【監督のRichard Jones】
【パッパーノさんもうれしそう】
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Anna Nicole
Saturday, February 26 7:30 PM
Credits
Composer: Mark-Anthony Turnage
Librettist: Richard Thomas
Director: Richard Jones
Set designs: Miriam Buether
Costume designs: Nicky Gillibrand
Co-Lighting Designers: Mimi Jordan SherinD M Wood
Choreographer: Aletta Collins
Performers
Conductor: Antonio Pappano
Anna Nicole: Eva-Maria Westbroek
Old Man Marshall: Alan Oke
The Lawyer Stern: Gerald Finley
Virgie: Susan Bickley
Cousin Shelley: Loré Lixenberg
Larry King: Peter Hoare
Aunt Kay: Rebecca de Pont Davies
Older Daniel: Dominic Rowntree
Blossom: Allison Cook
Doctor: Andrew Rees
Billy: Grant Doyle
Mayor: Wynne Evans
Runner: ZhengZhong Zhou§
Daddy Hogan: Jeremy White
Gentleman: Dominic Peckham
Trucker: Jeffrey Lloyd-Roberts
Deputy Mayor: Damian Thantrey
Four Lap Dancers: Yvonne Barclay, Amy Catt, Amanda Floyd, Katy Batho
Four Meat Rack Girls: Kiera Lyness, Marianne Cotterill, Louise Armit, Andrea Hazell
Onstage Band: John Parricelli (Guitarist),John Paul Jones (Bass Guitarist),Peter Erskine (Drummer)