今年は全然読書のペースが遅い。最近まで、会社指定のとある検定試験のお勉強をしていたし、図書館でリクエストした本がどれも廻ってこないとかの理由なのだが、久しぶりの一冊。
高橋俊介氏の人的資源管理(HRM)の書籍は殆ど読んでいる。氏の著作の多くは、「理論と実践」、「個人と企業」のバランスが上手に取れているのが特徴だ。私のような実務家にとって、実務を客観化・理論化し、その理論を実務に活用するサイクルをまわすことができる点において、読んでためになるところが多い。
本書の内容は、最近の流行言葉ともいえる「ブラック企業」に相対する「ホワイト企業」というタイトルがキャッチーで目を引いた。内容は、「日本におけるサービス業の健全な発展のためのHRMはどうあるべきか」を考えることを通じ、製造業中心の日本のHRM理論から一皮むけた、今後の日本企業のHRMについて考察するというものである。
サービス業という切り口でHRMを考察した視点は著者ならではだと思う。非正規雇用社員中心の人材使い捨てのイメージが強い「サービス業」において、どういうHRMが望ましいのか?
筆者は、サービス業の職種を「個別性」「専門性」の2軸の高低で分類し、「個別性・高×専門性・高」のプロフェッショナル業務(弁護士、医師・・・)、「個別性・高×専門性・低」の顧客接点サービス業務(看護師、宿泊業・・・)、「個別性・低×専門性・低」のオペレーション業務(鉄道乗務員・・・)、「個別性・中×専門性・中」の職人的業務に分類し(もちろん色んな中間形態はありうる)、求められる人材育成やマネジメントを考察している。これは、サービス業という業種・職種における切り口として有用なだけでなく、会社の中の様々な職種を考える上でも参考になる。
また、筆者が沖縄での実践を通じて、現場と向き合っている姿勢も好感が持てる。やや自画自賛的なところもあるものの、一企業のHRMに留まらず、それをコミュニティや自治体のレベルにまで視点や施策を引き上げて、政策的に展開するところまで提言をしているところは流石だと思った。
人事に関連する人、興味を持つ人にはぜひ読んで欲しい一冊だ。
★★★★☆
(いくつか抜粋)
・顧客接点での心理的付加価値や感受性に基づく個別性対応を求めない小売りは、インターネット販売に変わっていくだろう(p70)
・意思決定における「情報、能力、権限の一致」の法則(p96)
・日本的発想からの脱却:①分業発想からの脱却、②精神主義からの脱却、③序列概念から役割概念への転換、④人物評価固定化というジェネラリスト発想からの脱却(p108)
・変にモチベーションをアップさせるような短期の研修はモチベーションでなくテンションをアップしているだけに過ぎない(p114)
・個別性が高く変化の激しいサービス業の現場では、上司の指導よりも現場にいる同僚からの学びの方がずっと効果が大きい。管理者の仕事は、学びのファシリテーターに徹すること。教える以上に学びあう職場を整備すること。(p182)
・個別性、専門性の高い職場の経営人材には現場経験が必要。工場長は現場経験がなくてもできるが、病院長は医師の経験がないとできない。