その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

出口 保夫 『物語 大英博物館―二五〇年の軌跡 』 (中公新書)

2011-06-30 23:30:08 | 
 1753年の設立の決定、1759年の開館から250年にわたる大英博物館の歩みを、携わった人々、時代背景を軸に、解説した本です。

 さすが、250年の歴史には、様々な浮き沈みがあり、大英博物館の歴史はイギリスの近現代史そのものであると言って過言でないことが良くわかります。

 筆者は40年余り毎年のように渡英の度に大英博物館に通ってきたそうです。本書からは、筆者のこの博物館に対する愛着が痛いほど伝わってきます。その分、一般読者には、やや細かいのではと思われるほどの人物記述等があり、いかにも学識溢れる学者さんの本だなあと思うところも正直あります。

 しかし、そうした特別な思い入れがある人による著作ならではの大英博物館の重みを感じることができるのも、本書ならではです。 もっと、大英博物館に行かなくては・・・
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とある職場の風景 「若いね~」

2011-06-29 23:11:53 | ロンドン日記 (日常)
 先日、ドイツの拠点長(ドイツ人)と一緒にランチを取った。仕事の話から始まって、夏休みや家族の話などを一とおりしていると・・・

「X-san(私のこと)は(歳は)幾つ?」と聞かれた。

(また、この話題か・・・。もう3つ先まで会話が見えるんだよなあ~)と思いつつも、

「4X歳だよ」としょうがなく答えた。

「ホント~。若く見えるね~。私の方が下とは思わなかった」

(そりゃあ、そうでしょ。でもそれは俺のせいじゃない。俺だって、初めて会った時、まさか貴方が自分より年下なんて信じられなかったよ。要はあんたが老けてるのさ)と思いつつ・・・

「う~ん、若いって言ってもらえて、喜んでいいのかどうかは複雑だよ・・・。ところでさあ・・・」

と、無理やり話題を変えた。

 正直言って、西洋人にそう言われるのは、複雑どころか癪なのである。私が、「若いですね~」と言われて嬉しいのは、若い日本人女性から言われた時だけだ。東洋人は西洋人から若く見られるのは珍しくないが、若く見られるのはビジネスの世界では決して良いことじゃない。要は、舐められるからである。「若いねえ~」と言った際の相手の表情やトーンで、何を考えているぐらいは、英語は出来なくても非言語コミュニケーションで簡単に分かるのである。こちらに来て以来、何度同じ会話を繰り返したことか・・・。社内はともかく、社外の人に実年齢以上に若いと思われるのは、英語のハンデもあるのに、これ以上ハンデを重くしたくない。

 西洋人も、意外と年齢を気にするというのが私の実感だ。うちのある英人シニアマネジャーは、彼よりも年齢が3つほど若い上司(英人)のことを、「彼は、俺より年も下で、経験もスキルも大して変わらないのに、何故か彼が上なんだ」と、日本人は中立だと勝手に思っているらしく、私にたまに愚痴ってくる。

どうにかして、年相応に見えて、舐められない方法はないものだろうか?

 もっと、眉間に皺寄せて、いつも気難しそうな顔をしてようか・・・
 髭でも伸ばしてみようか・・・
 髪形ももっとオヤジ臭くするか・・・

 きっと話す英語の成熟度のせいもあると思うのだが、何とかして、年相応に見られて、同じ土俵で相撲を始めら得るようにしたいのだが、なかなか簡単ではない。なんか、良いアイディアないだろうか?
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暑いよ~ @ロンドン

2011-06-28 22:07:26 | ロンドン日記 (日常)
 日曜日、月曜日は、天気が良く、30度を超えの本当に暑い日でした。東京の7,8月に比べれば全然大したことないのですが、オフィスのエアコンはいつもどおり故障中で地下鉄にエアコンは無いので、ワイシャツの下は汗でべっとりです。家に帰っても、当然エアコンはないので、窓を全開。今日はガクッと下がりましたが、この寒暖の差も体にはこたえます。

 そんな中、日曜日には、久しぶりに週末にハイドパーク/ケンジントンガーデンまで走ったので、そのスナップを数枚ご紹介します。まだこの午前中までは暑さの中にもさわやかさが残る夏日でした。

(抜けるような青空と濃くなった緑)


(ケンジントンガーデンの庭園)


(ケンジントンガーデンのいつもの定点観測地点から)


(ハイドパークの池)


 2011年6月26日 午前10時ごろ撮影

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ウインブルドンで日本選手を応援する/ クルム伊達公子選手の巻

2011-06-27 22:11:12 | ロンドン日記(イベント、観光、スポーツ)
 土居選手の試合が終わるや否や、伊達選手の試合が行われる第6コートへ。まだ、前の試合がやっていますが、伊達選手の試合で良い観戦ポジションを得るために、待機します。第6コートは、第14コートよりも更に観戦エリアが狭く、複数の隣り合ったコートの通路にベンチが一列に少し置いてあるだけ。基本的に立ち見なのです。それでも、早期待機が功を奏し、そのベンチシートの一角を確保することができました。

 試合は18:15から。ダブルスのコンビは中国の張帥選手、そして対戦相手はイタリアのフラビア・ペンネッタ、フランチェスカ・スキアボーネ組です。この日は午前中は厚い曇りで肌寒い程の天気、そして午後になってから段々と雲が薄くなり薄日もさすようになりました。そして、この試合が始まるころには、空は真っ青に冴え、西日がまぶしいぐらいに差し込みます。芝生の緑、ウインブルドンの会場の基本カラーであるブルー、空の青色、西日を受けて輝くコートの後ろ彼方に見える丘の上の教会の尖塔、そして選手の白のウエア、全て色が絶妙に入り交り、なんとも美しい風景です。

 会場入りした伊達選手のその若々しさと風格にまず驚きました。(失礼ながら)40歳にはとても見えない引きしまり、かつ均整のとれた体です。日に焼けた肌が引きしまった筋肉に支えられ、夕日に照らせれ美しい。そして、にこやかな笑顔と時に見せる厳しい目つきは、これまでの経験の深さと自分への自信、そしてテニスそのものへの愛情、これからプレイすることの喜びを体現しているものでした。スター選手のオーラを体全体から感じます。ホント、姿を見ただけで、感動してしまいました。

(コート入りしたクルム伊達公子選手と張帥選手)


 試合が始まると、これまた伊達選手の正確なストローク、ボレーに魅せられます。相手も相当強い選手のようなのですが、一歩も引きません。前半はペアの張帥選手の調子が今一つで、伊達選手がなんとかカバーするケースが多かったです。しかし、常に張帥選手とコミュニケーションをとり、指示や確認をするペアの姿は、まさに伊達選手が良きリーダーとして張帥選手からの信頼を得ていることが、良く分かります。

 

 試合は、緊迫したラリーが続く、緊張感あふれるものでした。第1セットを6-3で撮ったものの、第2セットは2-6で逆に取られ、最終セットにもつれます。伊達選手も第2セット後半ぐらいからミスも出始めましたが、逆に張帥選手が調子を取り戻します。相手は、この日2人ともシングルスの試合があったようなのですが、なかなかの試合巧者で、かつフランチェスカ・スキアボーネは男性張りの力強い叫びと闘争心丸出しのプレイスタイルで、会場を大いに盛り上げます。イタリア人のファンからも多くコールが懸っていました。日本人の応援もとっても多く、日本人皆、手に汗握る展開です。

 

 結局、第3セットを6-4で取り、ゲーム終了。苦しい展開でしたが、勝って良かった。ゲーム自体も面白かったですが、やっぱり結果が見ている方にも大切です。嬉しかった。

 

 ウインブルンドンの素晴らしいのは、選手が本当に近いこと。特に、今日見たグラウンド・コートでは特に選手用の通路があるわけではありませんから、観客と一緒に通路を出たり入ったりします。わざわざ「出待ち」する必要もなく、サイン用のテニスボールを持って、選手にサインをねだるファンの要望にも、多くの選手が快く応じています。試合が終わって8時頃、西日がかなり傾いた会場を後にする前に、ショップで幾つかのみやげものを購入したのですが、そこには買い物かごに沢山グッズを詰め込んだ土居選手をお見かけました。他の買い物客は知ってから知らずかは、わかりませんが、特に土居選手に話しかけるわけでもなく、土居選手も淡々とお土産を買ってました。

(コートから引き上げる伊達選手)


(がっかりのフランチェスカ・スキアボーネ)


 職場の同僚と長くかつ充実した1日を振り返りながら、暗くなり始めたウインブルドンの町を歩きながら、帰路に着きました。自分の中にも、自分にとっての夏の最大イベントの一つが終わり、満足しながらも、寂しさが漂いました。

 2011年6月25日 観戦

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ウインブルドンで日本選手を応援する/土居美咲選手の巻

2011-06-26 17:05:24 | ロンドン日記(イベント、観光、スポーツ)
 今年も行きました。テニスの「聖地」ウインブルドンで行わるテニスの選手権大会。

 今年も例によって、当日券狙い。ただ、今年は少し「ずる」をさせてもらいました。朝一番でどうしても行かなくてはいけないところがあったので、名物「Queuing」は同僚達にお願いし、私は数時間遅れて、途中から合流。昨年の反省を踏まえ、始発で6時頃に到着した同僚が確保してくれたQueuカード(整理券)の番号は3000番台、昨年は6000番台でしたから、凄い進歩です。

(列は続くよ、どこまでも・・・)


※昨年のQueuingの様子はこちら→

※昨年の観戦記はこちら→

 11時過ぎにいよいよ入場。相変わらずの、世界中からテニスファンが集まる会場内はお祭り雰囲気満載です。

(会場の一部の様子)
 

 そして、この日は、昨年と違って大きな幸運がありました。何と、2人の日本人の選手が応援できるのです。しかも、そのうちの一人は、生きる伝説伊達公子さん。つい先日、ヴィーナス・ウィリアムズを最後まで苦しめて、職場の何人の英人から、「あのゲームはとっても良かった。Dateは本当に惜しかった」と言われた程です。伊達さんの女子ダブルスの試合は金曜日に予定されていたのですが、雨のため一日順延されたそうです。そして、もう一人は女子シングルスを予選から3回戦に勝ちあがってきた土居美咲さん。まだ20歳の若手です。2人もの日本人選手を応援できる機会と言うのはそうはありません。

 まず、土居選手の試合が15:00過ぎから第14コートで始まりました。14コートは両サイドに5列ぐらいの観客用ベンチシートが並んでいるだけのコートですが、本当に目の前で選手のプレイを見ることができます。観客席はロンドン在住日本人で一杯になるのかと思ったら、想像したほど多くはありませんでした。

 相手は、ドイツのザビーネ・リシキ選手。2回戦で今年の全仏オープン優勝のナ・リーを破っています。コートに現れた土居選手は、小柄ながらもスポーツウーマンらしいしっかりした体格で、童顔の面影が残る顔立ちながらも、とっても落ち着いて見えました。

(土居選手)
 

(ザビーネ・リシキ選手。年齢は土居選手とそんなにかわらないらしいのですが・・・)


 日本ではテレビ放映もされるということだったので、日本の家族にVIDEO録画をメールで依頼。幸い、ゲーム前半で1列目の席に座ることが出来、手の届きそうなところに選手がいます。世界トップクラスの先週のプレイをこんな近くで、スピード感、パワーを感じことができるのもウインブルドンならではでしょう。

 試合の方は、リシキの高速サーブにも押され、なかなかペースをつかむことができません。第1セットは何とかサービスゲームはキープしていたのですが、後半ブレイクされ4-6で落としてしまいました。そして、第2ゲームは、完全に相手ペースで進み、2-6で落とし、残念ながらストレート負け。一度もブレークを取ることが出来なかったのは残念でした。

 



 でも、予選からここまで上がってきた土居選手は本当に素晴らしい。また、是非、来年も戻ってきてほしいです。

(試合後、悔しい中でもファンのサインに応える)


 (つづく)

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初めてNHSに行く

2011-06-25 07:20:56 | ロンドン日記 (日常)
海外で暮らす日本人の心配事の一つは健康にあると思います。ロンドンには日系のクリニックがいくつもありますので、通常は民間の海外旅行保険を使って、日系クリニックを利用することが多いようです。日本人の先生に診てもらえるのは、やっぱり安心です。

一方で、イギリスにはNHS(National Health Service)という国民医療制度があって、病気や事故の際は無料で医療サービスが受けられる仕組みがあります。今、予算削減議論の中、このNHSの費用は大いに議論になっていますし、昨年の首相選の時もそもそもNHSは良いのか?米国のように民営化するべきではないかというような議論もあったと記憶しています。ただ、全般的にはサービス品質の優劣はあるにしろ、万人が無料で基本医療サービスを受けられるNHSの仕組みは、英国民の中では理解と評価を得られている感じがします。

私は日系クリニックのお世話になっているのですが、ちょっと長期にわたって投薬が必要なものがあり、近々、海外旅行保険カバーの枠(最大半年の継続医療)を超えてしまうということで、初めてNHSのクリニックに行ってきました。イギリスの独特な医療の仕組みであるNHSって、いったいどんな感じなのか?という興味もありました。

NHSのクリニックを受けるにはまず地元の一般医(GP)に登録が必要です。インターネットで地元のGPを探して、パスポートや居住証明を持ってクリニックに出向き、登録します。登録すれば、直ぐに見てもらえるのかと思ったら、「登録作業に2日かかるので、診療や予約ができるのは3日後から」だということでした。なので、急病の時は困るので、イギリスに住みはじめたら、健康なうちに早めに登録をしたほうが良いようです。

言われた通り、3日後に予約を入れようと電話を入れたら、「電話での予約だと診てもらうのに1週間ぐらいかかる。直ぐ診てもらいたかったら、その日の朝に来た方が良い」と意味が良く分からないことを言われました。まあ、とりあえず行ってみるかということで、翌々日の朝一番ででかけてみると、受付で「2人先着がいるから貴方は3番目で9:20からね。」とあっさり診てもらえることになりました。

完全予約制のようなので、待合室はさほど混みあってはいませんが、入れ替わり、立ち替わりで子供を連れたお母さんやお父さんがはいってきたりするのは、日本のクリニックと変わりません。診ていただいた先生は若いインド系の男性の先生。第一印象はとっても感じのいい方でした。日系クリニックの先生に書いてもらった紹介状を渡して、基本的な診察をしてもらい、今後の治療の方針とかの相談をしました。所要時間10分。

診察が終わるとそのままさようなら。会計とかはありません。処方箋を持って近くの薬局に行って、薬はお金を出して購入します。これは、何割負担なのか良く分かりませんが、7ポンドでしたので、日本の薬代の感覚と同じぐらいでした。

慣れれば、このNHSを通じての受診が当たり前になるのでしょうけど、初めての体験としては、なかなか新鮮なものがありました。私のような外国人まで無料と言うのは確かに素晴らしいけど、受付の人の対応は多少なりとも事務的なところを感じたし(まあ、これはどこの国でもそうでしょうが)、なんか担当医が自動的に振り分けられるというのも、当たり外れがある気もします。なので、まだ、初経験ではこの仕組みの良し悪しはよく分からないというのが、正直な感想でした。まあ、いずれにしても、あまり厄介にはならないことにこしたことはないのですが・・・
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ロンドン レストラン Galvin at Windows

2011-06-23 22:50:57 | レストラン・パブ (in 欧州)
 東京からの渡英されたお客様と、プライベートでは行かないようなプチ高級レストランへ行きました。

 ハイドパークの向かいに建つヒルトンホテル(パークレーン)の28階にあるGalvin at Windowsというモダン・フレンチ・レストランです。

 何が凄いって、レストランからの展望です。高いビルがあまりないロンドンで、私がこれまで行った一番高いところと言えば、テムズ川沿いの巨大観覧車ロンドンアイ。それ以外は、訪問したお客様のオフィスが10階でその展望の良さに驚いたぐらいなのですが、何とここは28階。南向きに面した景色は、夕暮れの美しさと相まって、うっとりするほどでした。東京で28階はそんな珍しくないですが、ロンドンで28階のレストランはそれだけで希少価値があります。

 2010年のミシェランにも載っているというだけあって、味のほうもお上品で、全く申し分ありません。まあ、食事と言っても仕事なので、あんまり味わっている余裕はないのですが・・・。サービスも凄くしっかりしていて、注文や料理が出てくるタイミングもばっちりでした。

 値段はもちろん安くは無いですが、とっておきの時は個人で来ても良いかなと言う範囲です。レパートリーに入れておいても良いかもしれません。

 ※レストランのホームページ(景色も載ってます)
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ハンブルグ国立歌劇場/ チェレネントラ (Humburg State Opera/La Cenerentola)

2011-06-22 23:59:58 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 だらだらと5月末のドイツ旅行のことを書いてきましたが、最終回です。ハンブルグはオペラよりもジョン・ノイマイヤー率いるバレエの方が有名だと思いますが、オペラも1678年にドイツで最初の市民のための歌劇場として開場した歴史ある歌劇場らしいです(石戸谷結子『ひとりでも行けるオペラ極楽ツアー』より)。

 現在の劇場そのものは、街の中心部にはあるもののあまり目立ちません。現代風のコンクリートの建物で外観はそっけないぐらいです。劇場内は、広すぎず、狭すぎずといったところです。受けた感じは、良く言えば質実剛健、悪く言えば無味乾燥です。正直、あんまり、これと言った特徴はありません。

(劇場の外観)
 

(ホール内)


 この日の演目はロッシーニの「チェレネントラ」。いわゆるシンデレラのオペラバージョンですが、賑やかで楽しいので、好きなオペラです。そして、公演自体も、この劇場のチームワーク、総合力を感じるとっても質の高い公演で、ホンワカ心が暖かくなる素適な舞台でした。

 一番の特徴はプロダクションです。ドイツの歌劇場の現代風演出には、さんざん痛い目に合わされたのですが、ユニークな演出もここまで徹底していると脱帽という感じでした。鉄腕アトム風の近未来に舞台を設定し、衣装も鉄腕アトムやスーパージェッタ―からそのまま持って来たような、ぶっ飛んだコミカルなもの。昔風のロボットやローラーブレーダーを自在に操るお姉さんたち、近未来のはずだが60年台風のピカピカに七三分けの男性コーラス陣、60年台風のテレビなど妙なちぐはぐさもあって、可笑しさを誘います。これは完全にわたしのツボにはまったものでした。

 歌手陣は歌唱こそやや小粒だったものの、ヒロインのMaite Beaumont(マイテ・ボーモン?)がはまり役でとってもチャーミング。意地悪なお姉さんたちやお父さんも役作りがとっても良かった。

 演奏も美しいアンサンブルで文句なし。ロッシーニの軽快さとロマンティックさを、緩急の効いたテンポでうまく表現していました。

 ドイツはちょっとした町ならどこにでもレベルの高い歌劇場があるのはさすがです。

(すごいステージでしょ)




(※以下、ハンブルグ国立歌劇場のHより拝借)
 



 2011年5月29日

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La Cenerentola

Musikalische Leitung
Antonello Allemandi

Chor Florian Csizmadia
Don Ramiro; Maxim Mironov
Dandini; Viktor Rud
Don Magnifico; Enzo Capuano
Tisbe; Renate Spingler
Clorinda; Gabriele Rossmanith
Angelina; Maite Beaumont
Alidoro: Tigran Martirossian
Orchester: Philharmoniker Hamburg
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学びing 『図解Q&Aクラウド事典』 (秀和システム)

2011-06-21 23:24:58 | 
 世の中のクラウド流行りも多少落ち着いた感じもしますが、今さらのようにクラウドの入門書を手に取ってみました。

 この手の「1時間で読める図解xxx」の類いの本は、得てして、上っ面をなぞるだけになりがちなのですが、本書はちょっと違います。図が入って分かりやすいでけでなく、クラウドの導入前と導入後を比較することでクラウドの特徴を解説したり、筆者達の導入事例を紹介しその効果を説明するなど、本質が良く解るように記述してあり、優れ物の入門書です。

 新聞などのメディアで目にするけど、一体クラウドって何なの?と言う人にとってもお薦めです。
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ロイヤル・オペラ・ハウス/ トスカ

2011-06-19 20:14:33 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ロイヤルオペラにトスカを観にいきました。基本的にこのオペラ、話が、大げさかつあまり品がよろしくないのであんまり好きではありません。どうも警視総監スカルピアを観ていると、水戸黄門に出てくる越後屋とグルになる悪代官を思い出してしまって・・・。日本でセミステージ方式の公演を一度観ましたが、「もうこの作品はいいやあ」と思ってました。しかし、今回のロイヤルオペラの公演はとても素晴らしいものでした。


 この日の席は4階席の舞台真正面。まるで自分の為にこの舞台があるように錯覚するほどの好位置でした。足元に仕切り板があって足の置き場が狭いので、隣の席は150ポンド近くするはずなのですが、この席は60ポンドそこそこ。とってもお買い得席なのです。

 その真正面から、オーケストラピットを見下ろすと、まずそのオーケストラの大編成に驚かされました。見える範囲だけでも、トロンボーンが4名もいて(これが普通なのかしらん?)、他の楽器もピット一杯にオーケストラが詰め込まれていました。そして、この日の立役者の一人は、間違いなく指揮者パッパーノとオケの怒濤の演奏でした。とにかく、大編成にふさわしい重厚感あふれる目茶濃~い演奏で、トスカの愛と情熱、スカルピアの悪、カヴァラドッシの絶望を演奏してくれました。もう、音楽が強烈な引力で、聴く者を舞台に引き込む感じです。

 歌手の皆さんも総じて好かったです。私はトスカの恋人、カヴァラドッシ役のMarcello Giordaniのテノールが美しくて気に入りました。トスカ役のMartina Serafin
も表現がやや一本調子な感じはありましたが、歌声は素晴らしいものでした。あえて言うと、悪代官のJuha Uusitaloはちょっと迫力不足だったかな?

 舞台はスタンダードなものだと思います。暗くて歌手の表情が見にくい難点はありましたが、教会や総監室、そして城の処刑場の雰囲気はよく表れていました。

 しかし、それにしてもピッチーニはホント泣かせますね。言っちゃ悪いですが、トスカなんて、話はしょうもないメロドラマじゃないか、というのが私の受け止めなのですが、この素材を音楽を使って、これほど感動的にしてしまう料理のうまさは感嘆せざる得ません。万人受け狙いの、小説で言えば純文学というより大衆文学風なのですが、私のような庶民の喜怒哀楽のつぼにはまって、コロッといってしまうのです。開演2時間半たったあとには、プッチーニとロイヤルオペラに見事にしてやれらてしまった私がおりました。




※以下ROHのFaceBookページから借用









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Tosca

June 17 7:30 PM

Credits
Director Jonathan Kent
Designer Paul Brown
Lighting design Mark Henderson

Performers
Conductor Antonio Pappano
Tosca Martina Serafin
Cavaradossi Marcello Giordani
Baron Scarpia Juha Uusitalo
Spoletta Hubert Francis
Angelotti Lukas Jakobski§
Sacristan Jeremy White
Sciarrone ZhengZhong Zhou§
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百田 尚樹 『永遠の0 (ゼロ)』

2011-06-18 21:42:08 | 
同僚のお薦め本として、借りて読んだ。575ページの厚めの文庫本だが、読み始めたら止まらない。

成人した姉と弟が母の依頼により、特攻隊で無くなった祖父について調べていくうちに、これまで明らかにされていなかった、祖父の家族への愛、信念、行動が浮かび上がるという展開。

海軍の同僚からのヒヤリングにより、次々と祖父像が浮かび上がるストーリー展開、海軍有数のパイロットでありながら徹底的に生き抜くことにこだわった祖父、調査のプロセスを通じて自己発見、成長していく姉弟、そして明らかになる当時の海軍の無謀さ、これらの要素が噛み合い、面白く、感動し、勉強にもなるという点で強く私も薦めたい一冊だ。

家族への愛という個人の思いと組織の論理との葛藤を、当時の関係者の証言で浮かぶ上がらせる手法は、浅田次郎の「壬生義士伝」と似ている。ちょっと、話が出来すぎ感はあるが、浅田本同様、この本も涙なしでは読めない。

それにしても、当時の海軍(きっと海軍だけの話ではないのだろうが)というのはどうしようもない組織だということが良く解る。日本軍のダメさ加減は、太平洋戦史で歴史としてはそれないりに知っているつもりだが、小説とはいえ、兵士の視点で戦争を見るのは、迫力が違うと感じた。

しかし、同様に今の震災対応、原子力事故対応をみていると果たして日本のリーダー達は、過去からどれだけ学んでいるのかと、首を傾げたくなる。 あまり日本の組織の本質はかわっていないのではないか?
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ベルリン・ハンブルグ訪問記 (その4)

2011-06-18 00:41:53 | 旅行 海外
 今回のハンブルグ訪問の一番の目玉は、ハンブルグから1時間ちょっとで行けるナチス時代のノイエンガンメ強制収容所を訪ねることでした。我ながらもの好きと思いますが、4月にアウシュビッツを訪れて、その生の歴史遺産が放つ強い力に魅せられ、別の強制収容所も見てみたいと思っていました。

 ハンブルグの中央駅から電車(Sバーンの21番)で20分程乗り、Bergedorf駅で下車、そこからバスで更に40分程乗ります。このバスルートは、予期せぬ美しい田園風景でした。

 その田園風景のど真ん中に、ノイエンガンメ強制収容所があります。ノイエンガンメ強制収容所はアウシュビッツのような絶滅収容所とは異なり、ドイツ軍占領地域からの捕虜、政治犯、思想犯などを収容し、強制労働に駆り立てていた収容所です。ガイドブックによると、1938年に創設され、男女合計21万名もの人が収容されました。そして、42900名もの人がここで亡くなっています。

(収容所入口とその反対側)
 

 戦後は2006年まで収容所の跡地の一部が刑務所として使われていたということもあり、アウシュビッツのように当時のものがそのまま残っているというわけではありません。それでも、博物館の展示史料、ブロック製造に使われていた工場、記念碑などを訪ね歩くのは、当時を偲ばせるに十分のものがあります。

(収容所バラックの跡地)


(収容所の中央にある博物館)
 

(収容者が記憶をもとに描いた当時の様子)
  

(ブロック工場)
  

 この旧収容所跡地を旧収容所としてこのように公開するのには、ハンブルグでも多くの議論があったようです。刑務所の隣接地に細々と記念碑を建てることから始まって、今のような形で一般公開できるようになったのは2007年から。歴史を冷静に振り返ることができるようになるには、それだけの時間がかかったということでしょうか。

(亡くなった人の碑)


(慰霊碑)
 

(収容者を運んだ貨物)


 先月のアウシュビッツの訪問の時もそうでしたが、この日も快晴。ピクニックに来たと言っていいぐらいの穏やかでのんびりした風景の中に身を置くと、つい70年前にこの地で悲惨なことが行われていたとは信じがたいものがありました。敷地はとても広いので、ブラブラ見ているだけであっという間に3時間たってしまいました。アウシュビッツと違って、見学者も高校生の社会科見学と思われる一団が賑やかに見学しているほかは、一般の見学客はたまに見かける程度です。そんな中、結局、4時間近く見学し、ハンブルグに戻りました。



 2011年5月30日 訪問

※ノイエンガンメ強制収容所訪問にあたっては、SATO TOMOKOさんのブログがとっても参考になりました。この場を借りて、お礼申し上げます。いろんな収容所巡りをされています。(→こちら
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ベルリン・ハンブルグ訪問記 (その3)

2011-06-15 23:27:47 | 旅行 海外
翌日、ベルリンからドイツ第2の都市ハンブルグへ。特急列車で1時間40分で着いてしまいます。

(格好いい列車と快適な車内)
 

(ハンブルグ中央駅)


 ハンブルグの主目的は次回に譲るとして、当日は街歩きを楽しみました。ハンブルグは北ドイツの港町ですので、これまで訪れたどのドイツの町とも雰囲気が違っていました。一般的にドイツの町は、緑が多く、人が少なくゆったりした空気が流れている気がするのですが、ハンブルグは、人が多く活気があり、港街ならではの開放的な雰囲気で、如何にも都会です。

(市庁舎と街を流れる運河)
市庁舎兼州議会議事堂です。とにかく大きい。




(ハンブルグ港)
河川港ですが、桟橋沿いに遊歩道があり、ぶらつくだけで楽しいところです。
 

【ハンブルグ市立美術館】
中世から現代に至るまでのドイツ絵画を初めとした西欧絵画が展示してあります。非常に充実した展示で、楽しめました。
 

 

2011年5月29日





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ENO/ A Midsummer Night's Dream (Britten)

2011-06-13 20:35:25 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ドイツ旅行記の途中ですが、週末にとっても面白いオペラを観たので、こちらを先にご紹介します。

 最近、ENO(イングリッシュ・ナショナル・オペラ)が面白いです。ギリアム監督の初オペラ「ファウストの劫罰」をもう一度行こうかと思いチケットを買ったのですが、案の定、仕事の関係で行けなくなったので、ブリテンの「真夏の夜の夢」と交換しました。そしたら、趣向は全く違うものの「ファウスト」に負けない斬新な舞台作りで、こちらも大当たりでした。

 「真夏の夜の夢」はシェイクスピア原作の、森の中で妖精と人間が繰り広げる有名な喜劇ですが、何とこの舞台では、「森」のはずの場が学校に設定されています。どこにでもあるようなグレーの無機質な校舎と校舎に囲まれた狭い校庭という、万物の生命が息吹き鳥が歌うという一般的な森のイメージとは全くの反対の世界です。妖精たちはブレザーの制服を着た少年達、妖精の王、女王は先生、ライサンダ‐、ヘレナたち人間の若者達も、高校生ぐらいの設定になってます。この「森」を「学校」に読み替える隠喩は何なのかは正直良くわからなかったのですが、効果的な照明や舞台上の歌手の動きも合わさって、不気味ながらも、とても神秘的な世界を作り上げていました。

 これはオペラと言うよりも楽劇ですね。独唱があるわけでもなく、台詞が音楽に載っているという感じです。妖精の王様オーべロン役Iestyn Davies のカウンターテナーは美しく、ボトン役Willard Whiteの存在感もさすがでしたが、歌手たちもこの舞台では、むしろ役者でした。歌に耳を傾けるというより、一挙一動が目を離せないです。Leo Hussain指揮の音楽も幻想的で美しかったですが、それでも、舞台の方が主で音楽は従と感じてしまうほど、舞台の印象が強く残りました。

スタンダードな演出で、このオペラも見てみたい気がしますが、十二分に楽しんだ3時間でした。ENOの本拠地コロセウムはあまり好きではないけど、今シーズンはホントあたりが多く、来シーズンはENO通いをしようかと思い始めてます。

(舞台)


(ENOのHPから借用:Iestyn DaviesとAnna Christy)


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11 June, 2011
A Midsummer Night's Dream
Britten

Credits
A co-production with K.S.Stanislavsky & Vl.I.Nemirovich-Danchenko Moscow Academic Music Theatre

New production supported by Deirdre and Thomas Lynch and the English Opera Group

The Britten-Pears Foundation is supporting ENO’s programme of Britten operas leading up to the Centenary of his birth

Conductor Leo Hussain
Director Christopher Alden
Set Designer Charles Edwards
Costume Designer Sue Willmington
Lighting Designer Adam Silverman

Cast includes:
Oberon Iestyn Davies
Bottom Willard White
Tytania Anna Christy
Lysander Allan Clayton
Demetrius Benedict Nelson
Theseus Paul Whelan
Helena Kate Valentine
Hermia Tamara Gura
Flute Michael Colvin
Snug Graeme Danby
Snout Peter van Hulle
Starveling Simon Butteriss

コメント (2)
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ベルリン・ハンブルグ訪問記 (その2)

2011-06-12 04:38:46 | 旅行 海外
 ベルリンは他の欧州諸国の首都と異なり、中世の街並みや王政時代の王宮があるわけではない、とっても近代的な街並みであるところが、むしろ東京に似ている気がします。しかし、東京と大いに異なるのが、人口密度の低さと緑の多さ。そのため、街全体がとってゆったりしていて、大らかな空気が漂っていて、私はこのベルリンの雰囲気がとても好きです。

(ポツダム広場横にあるソニープラザ内)
 

(ちょっと、お昼休憩)


【ユダヤ博物館】
 美術館・博物館訪問の最後は、ユダヤ博物館に足を運びました。ベルリンの中心部からは南に行った地下鉄の1番もしくは6番のHalleschesTorから歩いて7分程です。



 紀元前にローマ人の侵攻に伴って、ユダヤ人がドイツに住むようになってから現在に至るまでの、ドイツのユダヤ人の生活や文化を中心にした展示です。大まかな時代区分に沿って、その時代・時代のテーマを設定して展示がまとめてあるのでとても分かりやすいです。細かく展示を追っていくと相当の情報量がありますが、時間の関係もあり、なぞる程度の見学で済ませました。それでも1時間半はたっぷりかかります。

 

(ユダヤ人作家たち)


 ひとつの民族で博物館ができてしまうということに驚きます。生まれながらにして日本人としてしか民族の自意識がない自分には、ユダヤ人のメンタリティを理解するのは正直かなり難しいです。 古代からずっと差別をされつつも、金融界では絶大な影響力を持ち、文化・芸術分野でも数多くの偉人・賢人を輩出したこの民族は、本当に不思議です。ユダヤ人がこの博物館を訪れる時、またユダヤ人でないドイツ人がこの博物館を訪れると、どんな感想を持つのでしょうか?私には、そこまで想像力が及ばないことを考えると、厚く、高い壁を感じました。

 2011年5月28日
コメント
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