今月は土曜日公演を金曜日に振り替え。金曜夜の演奏会は一週間の疲れが一挙に噴き出すので、鬼門なのだがしょうがない。強い冷たい雨が降る中、NHKホールへ。
前半はモーツァルトの交響曲第36番リンツ。室内楽的な優しく繊細な音楽がホールに響く。そして、第2楽章からは想定通り、完全に意識喪失。ごめんなさい。
後半はモーツァルトのミサ曲。〈レクイエム〉は何度か生で聴いたことがあるが、ミサ曲は初めて。終始、独唱・合唱・オケが絶妙に組み合わさった崇高な音楽空間だった。独唱は、昨年N響に初登場したアンナ・ルチア・リヒターが映える紫色のドレスでうれしい再登場。透明感と色彩が両立した歌唱が印象的だった。彼女が歌うと、宗教曲がオペラのような色合いと表情を持つ。60名ほどで構成された新国立劇場合唱団のコーラスも、天上の世界に導く至高の美しさ。オケは決して前に出ることはないが、かといって伴奏に徹しているわけではない。引き締まった、美しいアンサンブルを聞かせてくれた。NHKホールに居ながら、この曲が初演されたザルツブルグのセントペーター教会(2012年8月に訪れた)に居るような感覚となった。
今回にて今シーズンの私のブロム翁祭りはおしまい。翁が振るN響は、パーヴォのN響とも違った音あいになるので面白いし、毎回新しい発見と感動をもたらしてくれる。あんな風に年齢を重ねたいものだ。来年の来日時は93歳だと思うが、100歳までは毎シーズン来て欲しいなあ。元気にお願いします。
第1926回 NHK交響楽団定期演奏会 Cプログラム
NHKホール
11/22 金 7:00pm
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ソプラノ I:クリスティーナ・ランツハマー
ソプラノ II:アンナ・ルチア・リヒター
テノール:ティルマン・リヒディ
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)
コンサートマスター:伊藤亮太郎
モーツァルト 交響曲 第36番 ハ長調 K. 425「リンツ」[26 ′]
モーツァルト ミサ曲 ハ短調 K. 427[55′]