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918‐19年のウクライナのキーフ。ロシア帝政を支持しドイツの支援を受ける「白衛軍」、キーウでのソヴィエト政権樹立を目指す「ボリシェヴィキ」、ウクライナ人民共和国勢力「ペトリューラ軍」が三すくみの状態で戦う。白衛軍の高級将校であるアレクセイとその兄弟たちのトゥルビン家の人々を軸に物語は進む。戦争、民族、人間、家族愛と重厚なテーマが散りばめられた人間劇だ。
展開の巧みさや登場人物たちの緊張感あふれるやりとり、そして笑いも差し込まれる物語は、3時間近い上演時間の長さを全く感じず、描かれる世界に没入できる。政治・戦争に翻弄される人間の哀しさ、逞しさの両方を感じる。
役者は誰も熱量高く、本作品への意気込みが感じられた。トゥルビン家の末っ子ニコライ役を演じた森井良大の溌溂とした演技も印象的。
大がかりな舞台装置も中劇場ならでは。奥行きを目一杯使い立体感が演出される。
今現在、ロシアと戦争状態にあるウクライナであり、その前史となる時代でもあるので、現代との連続性は否が応でも意識する。この土地や国の複雑な成り立ち、構成を学ぶ機会にもなる。見応え一杯で、今、観る価値がある作品だろう。
唯一残念だったのは客入り。中劇場でそれなりのキャパがあるのだが、観客だけなら小劇場でも十分ではないかと思う程の客の入りは寂しかった。私が行ったのは2日目だったが、その後のお客さんの入りは気になるところである。22日が最終日、少しでも興味がある人は是非、足を運んでみて欲しい。
白衛軍 The White Guard
日本初演
文化庁劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業
公演期間:2024年12月3日[火]~22日[日]
予定上演時間:約3時間10分(第1幕 105分 休憩 20分 第2幕 65分)
スタッフ
【作】ミハイル・ブルガーコフ
【英語台本】アンドリュー・アプトン
【翻訳】小田島創志
【演出】上村聡史
【美術】乘峯雅寛
【照明】佐藤 啓
【音楽】国広和毅
【音響】加藤 温
【衣裳】半田悦子
【ヘアメイク】川端富生
【演出助手】中嶋彩乃
【舞台監督】北条 孝/加瀬幸恵
キャスト
ニコライ(士官候補生):村井良大
エレーナ:前田亜季
レオニード(副官):上山竜治
アレクセイ(大佐):大場泰正
フョードル(従僕)・マクシム(学監):大鷹明良
ラリオン:池岡亮介
ヴィクトル(大尉):石橋徹郎
アレクサンドル(大尉):内田健介
ラリオン:前田一世
タリベルク(大佐)・ボルボトゥン(大隊長):小林大介
将校3:今國雅彦
靴屋:山森大輔
将校1西原やすあき
ゲトマン:釆澤靖起
ガラニバ:駒井健介
武田知久
草彅智文
笹原翔太
松尾 諒