昨年のNHK大河ドラマ「真田丸」の家康役を見て、その演技力に感嘆させられた内野聖陽がハムレットを演じるというので行ってみた。ミュージカル「レ・ミゼラブル」オリジナル版の演出を行った有名演出家ジョン・ケアードの舞台ということでも評判になっていた公演である。
この舞台、役者陣が凄い。内野聖陽以外にも軒並みテレビや映画でも見たことのある有名人ばかりなのである。國村隼、村井國夫、北村有起哉、浅野ゆう子、貫地谷しほりなど、芸能界には疎い私でも知っている人で、私にとっては常に向こう側の人たちだ。
そして、彼らは伊達に有名なわけではないのだなと感じ入った。各人が放つオーラが凄い。それが舞台でぶつかり合って一つの作品を形作っていく。ぶつかりつつも、舞台全体が地に着いた安定感があったのも印象的だった。
内野聖陽は悩める青年ハムレットを好演。ハムレット役は、内野が持つちょっとインテリっぽい雰囲気にも合う。國村隼のクローディアスはまさに舞台全体を重心深く抑え込む重しの役割。浅野ゆう子のガートルードも、その貫禄から女王様はぴったりのはまり役だった。
演出は、舞台セットのようなものは殆どなく柔道場ぐらいの舞台があるだけで、あとは照明でアクセントをつけるぐらいだが、登場人物と役者の個性でひときわなので、余計なものはない方が良い。
尺八(?)を利用しての音楽が、物語の緩急をつけるのにとても効果的で感心した。和風の音楽に加えて、衣装が日本風の着物とも西洋の洋服ともとれる無国籍なものだったので、シェイクスピア作品のグローバル性がアピールされた。
あと、本作の特徴は、多くの俳優がマルチキャストであること。内野がハムレットと最終的にデンマーク王となるフォーティンブラスを演じたり、國村隼がクローディアスとその彼に殺されたハムレットの父の亡霊を演じるところなどは、ダブルキャストとしての意味合いが持たされていて、その一捻りに感嘆した。
私が読んだ新聞のレビューは、「台詞が聞きづらい」「内野はXXX」など結構、辛口だったが、私にはそのレビュー自体が全く意味不明。日本語のシェイクスピア劇をこれだけ楽しめたのは、今回が一番である。
《舞台の模型》
2017年4月23日13:00
会場:東京劇術劇場 プレイハウス
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳 松岡和子
上演台本 ジョン・ケアード、今井麻緒子
演出:ジョン・ケアード
出演
内野聖陽:ハムレット/フォーティンブラス
貫地谷しほり:オフィーリア/オズリック
北村有起哉:ホレイショー
加藤和樹:レアティーズ/役者たち
山口馬木也:ローゼングランツ/バナードー
今 拓哉;キルデンスターン/マーセラス
大重わたる・村岡哲至・内堀律子・深見由真
壤 晴彦:ポローニアス
村井國夫:墓堀,座長
浅野ゆう子:ガートルード
國村 隼:クローディアス/亡霊
【スタッフ】
美術:堀尾幸男
照明:中川隆一
音響:井上正弘
衣裳:宮本宣子
ヘアメイク:宮内宏明
振付:井手茂太
アクションムーブメント:山口馬木也
演出助手:田中麻衣子
舞台監督:今野健一 徳永泰子
音楽:藤原道山
演奏:長谷川道将
◆◇上演時間◇◆
第一幕 95分
休憩 15分
第二幕 90分
上演時間 3時間20分