N響、4月の定期公演の最後を飾るのは、エッシェンバッハさん指揮によるオール・シューマン・プログラム。3曲夫々素晴らしかったのですが、中でも後半の交響曲第2番が圧巻。音のレンジの広さ、表情の豊かさ、堂々たるスケール感を感じた名演でした。
とりわけ、第2,4楽章での弦陣の気迫あふれる演奏が印象的です。第2楽章は畳み込むように加速がどんどんつき、途中で遠心力働き過ぎてどっかに飛んでいってしまうのではないかと心配した程です。弦パートは各パートリーダーの気魄溢れる演奏に引っ張られ、厚みを持ちつつ、かつ個々の音が春の光が反射する川面のように、キラキラと輝いていました。また、第3楽章のオーボエ、フルート、クラリネットなど木管陣のとろけるような甘美な調べにも痺れました。歌っていましたね。
自席はP席なのでエッシェンバッハさんの表情や動きが良く見えます。ヤノフスキさんにも驚かされましたが、エッシェンバッハさんも今年84歳とはとても思えない姿勢や統率ぶりです。正直、あの指揮棒からどうしてこの音楽が生まれてくるのか全く不思議なのですが、間違いなくN響メンバーは、指揮者とこの作品のイメージを共有して、それに一途に向かっているように感じ取れました。本当にオーケストラって、不思議です。
交響曲2番は、私は今まで殆どマークしてなかった曲です。プログラムにあるように「幻聴に悩まされていた」時に作曲され、「メランコリックな耳鳴りのごとき半音階パッセージの旋回」(第1楽章)、「深い内面に沈んでいく」(第3楽章)ところはあるのですが、私には、この日の演奏は、苦しみながらも、若い前向きのエネルギーを感じるところが大でした。聴きながら、これは明るい「運命」交響曲ではないか、と思ったぐらいです。この日をもって、私の好きな楽曲リスト入りとなりました。
前半のキアン・ソルターニさんソロのチェロ協奏曲は、聴き易い上に情感に訴えるような音楽と演奏でしたが、私の体調が落ち着かず、時折睡魔が襲ってきたりして、非常に集中力を欠いたままでの鑑賞。ゴメンナサイでした。ただ、協奏曲後のアンコールはしっかり聴けました。ペルシャ民謡からで、民族性豊かなしみじみとした音楽で、聴けて良かったピースでした。
終演時の拍手は非常に大きく、暖かいものでした。エッシェンバッハさんは指揮台に上がっている時は全く年齢感じませんが、ステージ出入りの足取りはゆっくりと84歳仕様。私たちの感動を拍手で表し本人にお返ししたい、という気持ちと、あまり無理をお願いするのもどうか、という背反の気持ちが交差します。強面のマエストロもこの大拍手にはとっても嬉しそうな様子。最後はソロカーテンコール付きとなりました。N響とエッシェンバッハさんの演奏会は過去から何度か来ていますが、ここまでの熱と気持ちの入った拍手が続くのは初めての気がします。
またの来日を是非ともお願いしたいと思います。
定期公演 2023-2024シーズンBプログラム
第2009回 定期公演 Bプログラム
2024年4月25日(木) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]
サントリーホール
シューマン/歌劇「ゲノヴェーヴァ」 序曲
シューマン/チェロ協奏曲 イ短調 作品129
シューマン/交響曲 第2番 ハ長調 作品61
[アンコール曲]
4/25:ペルシア民謡/シーラーズの娘
チェロ:キアン・ソルターニ
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
チェロ:キアン・ソルターニ
Subscription Concerts 2023-2024Program B
No. 2009 Subscription (Program B)
Thursday, April 25, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall
Schumann / Genoveva, opera Op. 81—Overture
Schumann /A Minor Op. 129
Schumann / Symphony No. 2 C Major Op. 61
[Encore]
Arpril 25: Persian Folk Song / The girl from Shiraz
Cello: Kian Soltani
Artists
Conductor:Christoph Eschenbach
Cello:Kian Soltani