その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

これは圧巻! 「ミュシャ展」 @国立新美術館

2017-05-31 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


 またしても巨大美術マーケット東京の恩恵に預かった。アルフォンス・ミュシャによる6メートル×8メートル級のキャンバスに描かれた《スラヴ叙事詩》全20点がまとめて展示されるのは、チェコ国外では世界で初めてという。

 入り口を抜けると、広い空間を取り囲んで《スラヴ叙事詩》の絵が展示してある。実に大きい。「原故郷のスラヴ民族」から始まって「スラヴ民族の賛歌」にいたるまで、スラブ民族の歴史が1枚一枚描かれる。まさに歴史絵巻。民族の自立、ドイツやトルコなど他民族との抗争、宗教改革と戦争、ロシア農奴制廃止など欧州大陸の中央で、厳しい歴史を歩んできた民族であることが実感できる。民族の苦難と誇りを感じる大作は、見る者の胸を撃たないわけがない。

 平日の午前中というのに、会場は大混雑だった。ただ、絵が大きく、展示区間を自由に動けるおかげか、あまり混雑は感じない。自分のペースで鑑賞することができる。スラブ叙事詩に加えて、展示の後半では、ミュシャらしいアール・ヌーヴォーのポスターやリトグラフなども見ることができる。

 あと閉幕まで1週間を切ってしまったが、間違いなくこれは必見の展覧会。まだの人は急いで!


写真撮影可のエリアがあります。


《ロシアの農奴制廃止》


《スラブ民族の賛歌》


《イヴァンチェの兄弟団学校》の一部。聖書を盲人の老人に読み聞かせているのはミュシャ少年らしい。


《構成》
スラブ叙事詩
I ミュシャとアール・ヌーヴォー
II 世紀末の祝祭
III 独立のための闘い
IV 習作と出版物
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フェドセーエフ・N響のロシアプログラム @NHKホール

2017-05-30 23:47:24 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
フェドセーエフさんでもう一度N響を聴きたく「N響水曜夜のクラシック」に足を運ぶ。今宵もロシアプログラムを堪能。チャイコのP協奏曲一番のペドロフスキーの堂々たる独奏に痺れる。後半も初めて聴いた「フランチェスカ・ダ・リミニ」は劇的で迫力一杯。しかもアンコール付き。聴衆も定演より若め。

N響 水曜夜のクラシック(第二夜/3回シリーズ)
2017年5月24日(水) 開場 6:00pm  開演 7:00pm
NHKホール  

巨匠フェドセーエフのロシア音楽をたっぷりと

ショスタコーヴィチ/祝典序曲 作品96
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
リムスキー・コルサコフ/スペイン奇想曲 作品34
チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32
  
指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ
ピアノ:ボリス・ベレゾフスキー


NHKSO Wednesday Night Classic Series
Wednesday, May 24, 2017  7:00p.m.
NHK Hall   Access   Seating chart

Shostakovich / Festive Overture op.96
Tchaikovsky / Piano Concerto No.1 b-flat minor op.23
Rimsky-Korsakov / Capriccio espagnol op.34
Tchaikovsky / “Francesca da Rimini”, fantasy op.32

Vladimir Fedoseyev, conductor
Boris Berezovsky, piano
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尾高忠明/読響 ブラームス交響曲第1番ほか(第5回パルテノン名曲シリーズ)

2017-05-29 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

《駅からホールに延びるペデストリアン》

 友人からチケットを譲り受け、久しぶりに読響の演奏会に足を運びました。会場は、新宿から京王線で40分近く行く(小田急でも行けます)多摩センターにあるパルテノン多摩。初めて訪れるホールです。1階席のみですが1414席もあり、両サイドが石造りで堅牢な雰囲気を醸し出しています。いつものN響定期では3階席から遠くステージを眺めてますが、今回はステージから18列目と言う超良席。大感謝です。

 プログラムの中では、2曲目のロドリーゴ〈アランフェス協奏曲〉(ハープ版)が最も印象的でした。今年1月にN響でギター版を聴いていますが、ハーブ版はまた違った味があります。ギター版と比較すると、赤焼けた乾いた土地をイメージするようなスペインぽさは薄まりますが、メストレのハープの柔らかい音が優しくホールに響きます。男性ハープ奏者を聴くのは初めてで、当たり前ですが、男性も女性もないですね。アンコールで〈アルハンブラの思い出〉をやってくれたのも嬉しかった。

 あと、有名な第2楽章では、イングリッシュホルンの北村貴子さんのソロも秀逸でした。哀愁たっぷりで耳をそばだてて聴きました。

 後半のメインはブラームス交響曲第一番。尾高さんは暗譜で、堂々たる指揮ぶり。骨太の王道を行く1番を聴かせてくれました。近年まれな良席のおかげもあって、音が「良く」聴こえます。やっぱり音って、距離に応じて、届くのに時間がかかることを身を持って体験。すぐに聴こえます。読響も尾高さんの情熱的な棒に応える熱い演奏でした。地方の消化公演だったらどうしようと来る前にちょっと心配した自分が恥ずかしい。

 この日の会場は満員。平均年齢はN響定演並みに高めだったようにお見受けしましたが、聴衆も熱かったです。N響定演では珍しくない居眠りシニアがいない!私の周囲の皆さんは、前のめりで聴いてました。客席の集中がステージにも伝わっているような気配を感じるくらいです。こういう演奏会は気持ちがいいですね(拍手はフライングがあったのが残念でしたが)。演奏会場まで都心の混雑に巻き込まれることもなく、リラックスでき、しかも上質の音楽を聴けて、とっても満足な日曜の午後でした。


《メストレさんのアンコール曲》



読響第5回パルテノン名曲シリーズ

2017年5月28日(日) 15:00開演
会場:パルテノン多摩大ホール
指揮=尾高 忠明
ハープ=グザヴィエ・ドゥ・メストレ

芥川也寸志:弦楽のための三楽章「トリプティーク」
ロドリーゴ:アランフェス協奏曲(ハープ版)
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

Parthenon Popular Series No. 5
Sunday, 28 May 2017, 15:00
Venue:Parthenon Tama
Conductor=Tadaaki Otaka
Harp=Xavier de Maistre

Akutagawa: "Triptyque" for String Orchestra
Rodrigo: Concierto de Aranjuez (ver. Harp)
Brahms: Symphony No. 1 in C minor, op. 68
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山田 敏弘 『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』 (文藝春秋、2017)

2017-05-27 07:14:00 | 


 時機を得た本である。偶然だが、読んだタイミングも、先日、身代金要求型のウイルスによる世界規模の大規模サイバー攻撃が発生したばかりであり、絶妙だった。

 ゼロディ脆弱性とは、対策が講じられていないソフトウエアの脆弱性のこと。修正プログラム提供前だから、攻撃者は標的の中に容易に入るこむことができる。米国では地下でそうした情報が売買されたり、米国家安全保障局(NSA)が買い漁り、敵対国に対して攻撃を仕掛ける。まさにサイバー戦争である。

 本書は、ゼロディ攻撃のほかにも、核燃料施設などのインフラを破壊するマルウエアであるスタックスネットなども紹介している。国家間や民間も巻き込んだ、有象無象の陰謀や謀略がグローバルにうごめいている。スノーデンの暴露により、こうしたNSAのスパイ行為は白日のもとにさらされたので、今となってはここで報告されるサイバー戦争が単なるトンデモ情報として笑う人はいないだろう。そして、今や米国だけでなく、ロシア、中国、イスラエル、北朝鮮にサイバー世界での覇権を争っている。

 テクニカルで専門的になりがちなITやネットワークセキュリティのテーマを、難しい言葉はほとんど使わずに、わかりやすく書かれている。読み物として抜群に面白い。断片的にネット等で読む内容もあるが、こうして1冊にわたって書かれたものを読むと、その脅威が良くわかる。悪用されるかどうかは別として、インターネット上で秘密を守るということはまず不可能と思って方がよさそうだ。

 暴力的な兵器は使わずとも、この世の中の機能を停めることができる。恐ろしい世の中になったものである。



目次

二〇××年末、東京
ナタンズの姿なき攻撃者
スタックスネットを見破った男
二一世紀のマンハッタン計画
「デジタル・パールハーバー」が起こる日
「ムーンライト・メイズ」と「タイタン・レイン」
アメリカが誇る世界最強のサイバー軍団
インフラを狙え!
暗躍するNSAと「サイバー兵器」
「ゼロデイ」が生んだ、新しい死の商人
小さなサイバー大国イスラエル
サイバー空間の新世界秩序
ロシアがトランプ大統領を誕生させた
二〇一七年、そのとき日本は…
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第78回優駿牝馬(オークス)を観に行く @東京競馬場

2017-05-23 08:00:00 | 日記 (2012.8~)
 ぽっかり週末の午後の時間が空いたので、演奏会に行くか、美術展に行くか、演劇にしようか・・・と思案した結果、久しぶりに競馬を見に行くことにした。この季節の競馬場って、芝がとっても綺麗で、開放感も抜群。


《出走馬が馬場へ入場》

 丁度、優駿牝馬(オークス)の日でもあり、翌週に控えたダービーほどではないにしても、府中競馬場はとっても盛り上がってた。30度にもなろうとしていた東京の多摩地方だけど、競馬場は広くて風通しが良く、スタンドには屋根もあって日陰で、思いのほか涼しく快適。適当な見当で馬券を買い、ビールを飲みながら、太陽の光をまぶしく反射するサラブレッドが駆ける姿を見るのは、何とも気分が良い。イギリスの競馬場のような優雅さはないけど、若い人も多く、明るい雰囲気は、子供の頃、親父に連れられて来た競馬場の赤鉛筆の空気とはエライ違いだ。


《最後の直線!》


《ラスト200メートル!!》

 メインレースのオークスは、本命のソウルスターリングが圧勝。力の差を見せつけた。たまにしか来ないのに、本命を買いでは面白くないという発想で買った馬券は、当然、大きく外す羽目に。それでも、入場料200円と少しばかりの馬券代とビール代で、この空間は結構お買い得かも。


《優勝したソウルスターリング。黒い馬体が美しい》
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N響5月定期Cプロ/ 指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ/チャイコフスキー交響曲 第4番 ほか

2017-05-21 07:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 緑の色が日増しに濃くなるNHKホール前。先週はタイ・フェスティバルでしたが、今週は沖縄フェスタ。先週ほどの人出はありませんが、賑わってました。

 今回は、フェドセーエフさんのロシアものプログラム。否が応でも期待値は上がります。完売とまでは行かなかったようですが、自由席は売切れで、会場内は大相撲なら十分、満員御礼レベルです。

 演奏はその期待と熱気に十分答えてくれるものでした。前半の2曲は私は初めて聴く曲したが、ロシアの民族音楽を取り入れたもので、耳にも馴染みやすい音楽。一曲目「カマリンスカヤ」(「この曲の主題に引用されている2つのロシア民謡を指している」とのこと:プログラムより)は当初は「婚礼歌と舞踏歌」だったということもあってか、聴いていて、地域こそ違えど、ピーテル・ブリューゲルの「婚礼の踊り」の絵が生き生きと動いているような感覚に襲われます。


ピーテル・ブリューゲル《婚礼の踊り》

 後半は、チャイコフスキーの交響曲4番。実演で聞くのは5年ぶりでしたが、N響の弦と管のバランスが取れた演奏を堪能しました。冒頭の「運命のファンファーレ」から金管陣がストレス抜ける演奏。第2楽章の緩徐楽章は、オーボエ、フルート、ファゴット、クラリネットらの木管陣の音色が何とも美しい。第3楽章では、弦楽器のピチカートがとても抑えたものだったのが驚きでした。耳をそばだてて聴きます。そして、それが第4楽章での爆発につながっていきます。フェド翁の計算された強弱と全体の統制で、ロシア・ロシアした音楽というよりも、美しく洗練された音楽を聴かせてもらったという印象です。

 終演後は大きく暖かい拍手に包まれました。フェド翁もとっても満足なご様子。1932年生まれということで、85歳になるかならないかというお年頃ですが、指揮台には飛び乗るし(これは見ている方は冷や冷やモノですが・・・)、全く年齢を感じさせませんね。N響定演の魅力は、N響の演奏もさることながら、毎回、こうした個性的で実力ある指揮者の方が、登場することにもあることを実感しました。

(終演後、大きな拍手の中で、そそくさと出ていく人も目立ったのは、どうも川崎ミューザでノット/東響のブルックナーや、池袋芸劇でサロネン/フィルハーモニア管との梯子をされているかたのようでした。私の近くにも、「終わったらすぐ、川崎行かなきゃ」と仰っている方が居ましたが、皆さん精力的です)



第1861回 定期公演 Cプログラム 
2017年5月20日(土) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール 
 
グリンカ/幻想曲「カマリンスカヤ」
ボロディン/交響曲 第2番 ロ短調
チャイコフスキー/交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ

No.1861 Subscription (Program C)
Saturday, May 20, 2017  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Glinka / “Kamarinskaya”, scherzo/fantasia on two Russian Themes
Borodin / Symphony No.2 b minor
Tchaikovsky / Symphony No.4 f minor op.36

Vladimir Fedoseyev, conductor
 
 
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中野 晴啓 『退職金バカ 50歳から資産を殖やす人、沈む人』 (講談社+α新書、2016)

2017-05-19 08:00:00 | 



 50歳を超えてからの資産形成についての入門書。要は、信頼できる投資信託を長期で持ちなさいというのが要旨なのだけど、単なる資産運用に止まらず、ライフスタイルへのアドバイスが多く含まれる。

 「見栄を捨てて、生活をリセットする」「会社でなく仕事にロイヤリティを持つ」「50代は金融資産と人的資産の充実が課題」など、どこぞやの本や雑誌で見たことがあるようなアドバイスが多いが、生きてくこと、お金を貯めることにはこうした基本がやっぱり大事ということなんだろう。

 では、その信頼できる投資信託を6000本の商品の中からどう選ぶか?ポイントは次の6つと言う。(1)継続的に資金が流入していること、(2)信託期間が無期限であること、(3)幅広く分散投資されていること、(4)積立投資ができること、(5)分配回数は年1回で、かつ再投資型であること、(6)販売手数料がノーロードで、信託報酬がリーズナブルであること。きっとこの条件で絞っても6000本が数百本になるぐらいでは?という気もしないではないが、ここでもやっぱり基本が大事ということだろう。

 ただ、ちょっと首を傾げるような説明もある。積み立て投資を勧めるのは良いとしても、その一番のメリットは「1年、2年と買い付けていくうちに、自分がいくらで買ったかわからなくなる」(p166)ことと言う。これはちょっと読者を馬鹿にしてないか?いくらで買ったか分からなくなったら、上がっているのか、下がっているのかもわからないということで、これじゃ運用にならんではないか。本気で言ってるんだろうか?

 まあ、そういったことは差し置いても、運用入門としては悪くないと思った。

目次
第1章 50代のリアル
第2章 これが新しい「50歳からの生き方」
第3章 50代の資産運用法
第4章 生活をリセットすれば、老後資金は捻出できる
第5章 老後の資産運用に適した投資信託の選び方
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スタインバーグ/N響: スメタナ 交響詩「わが祖国」(全曲)

2017-05-17 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 代々木公園のタイ・フェスティバルの人混みをかき分け、NHKホールへ。

 スメタナの「わが祖国」は、1年半前のNHK音楽祭でビエロフラーヴェクさん指揮、チェコフィルの演奏で聴いて以来です。今回の指揮スタインバーグさんは、以前は頻繁にN響に登場していたようなのですが、私には記録も記憶も無いので、きっと初めて。とっても長身でがっちりされた体格で、3階席からも不思議なオーラを感じる方でした。

 この日もN響は好調で、熱くかつ安定した演奏でした。既に、多くの方がツイッターなどで仰ってますが、ボヘミアの香りがプンプン匂うと言うよりも、洗練された美しい音楽作り。ダイナミックかつ美しい音楽そのものを十分に味わうような演奏でした。

 それでも音楽からチェコの歴史的重みが感じられるのが、この楽曲の凄さなのでしょう。先日、「ミュシャ展」で観た《スラブ叙事詩》の絵と「わが祖国」の音楽がダブり、脳の中で結合されて、壮大な歴史絵巻を見るようです。冒頭のハープの調べは、まさに絵巻の始まりに相応しい。プラハ近郊の王城の盛衰を描いた第1曲〈高い城(ヴィシェフラド)〉やフス戦争でのチェコの反乱軍「ターボル派」を描いた第5曲〈ターボル〉などは、《スラブ叙事詩》でも描かれており、音楽に乗って絵が動き出すような感覚でした。チェコの困難な歴史を、書籍などの文字情報として左脳で学ぶのではなく、右脳で受け止めたという感じです。

 終演後の大きな拍手で、スタインバーグさんは何度も呼び戻され、満足な表情。私も一杯に拍手を送りました。

 ただ、やっぱりNHKホールは鬼門ですね。終演後の満ち足りた雰囲気もタイフェスティバルでの演舞の音楽、スピーカーから弾けるMCの声、はたまた代々木公園でのロックンロールの爆音と、決してそれら自体は悪いわけではないのですが、余韻を100%吹き飛ばすのには十分です。こちら都合ではありますが、参りますね~。こういう日は、どうやって帰ればいいのだろう?放送センターからのバスに乗るしかないのかな。


第1860回 定期公演 Aプログラム
2017年5月14日(日) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール

スメタナ/交響詩「わが祖国」(全曲)
 
指揮:ピンカス・スタインバーグ

No.1860 Subscription (Program A)
Sunday, May 14, 2017  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Smetana / “Má vlast”, cycle of sym. poems (complete)

Pinchas Steinberg, conductor
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こういうプログラムをもっと聴きたい: ノット/東響: ベートーヴェン 交響曲 第8番ほか

2017-05-15 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 いつもユニークなプログラムを提供してくれるノットさんですが、今回も珍しいカップリングです。前半は、アルトサックスやドラムが入ってジャズ風の香りが漂う現代曲。後半はクラシックの王道とも言えるベートーヴェンの交響曲。演奏会が終わっても、この組み合わせの意図は、私にはわからずじまいでしたが、満足感の高いコンサートでした。

 冒頭の「タクシードライバー」は懐かしさが一杯。中高生の時に、上映される名画座を見つけては観に行き、デ・ニーロの渋さに痺れてた思い出が詰まってます。もう久しく観てないけど、サックスの調べを聴いて無性に見たくなりました。

 2曲目の「パニック」は、弦楽器抜きのオーケストラとサックス、ドラムで繰り広げられる大宴会。正直、私の理解を超えた音楽でしたが、嫌いでないです。普段の演奏会でも、こういう曲がもっと取り上げられて良いのにと思います。

 休憩後はベートーヴェン交響曲第8番。こちらは、王道の演奏。ノットさんの8番は、明るく、色彩に富んだ音楽。造形が明快で、聴いていて気持ちが良い。東響もノットさんの激しい指示にしっかり応えてました。

 1時間半強で終わりとなり、「軽め」のコンサートとなりましたが、中身は充実してました。ただ、このオペラシティシリーズはいつも聴衆が7割程度しか埋まりません。この日は、結構な雨ということもあってか、6割強ぐらいの入りに見受けられ残念です。それでも、拍手や歓声はいつもの通り暖かく大きなものでした。アットホームないい雰囲気のシリーズですので、お勧めですよ。



東京オペラシティシリーズ 第97回

2017年05月13日(土)14:00 開演
東京オペラシティコンサートホール

出演
指揮:ジョナサン・ノット
アルト・サクソフォン:波多江史朗
ドラムス:萱谷亮一

曲目
ハーマン/パーマー編:「タクシードライバー」〜オーケストラのための夜の調べ
バートウィッスル:「パニック」〜アルト・サクソフォン、ジャズ・ドラムと管打楽器のための酒神讃歌
ベートーヴェン:交響曲 第8番 ヘ長調 作品93

Title
Tokyo Opera City Series No.97
Date: Sat. 13th May 2017, 2:00p.m.
Hall: Tokyo Opera City Concert Hall

Artist
Conductor: Jonathan Nott
Alto saxophone: Shiro Hatae
Drums: Ryoichi Kayatani

Program
B.Herrmann/C.Palmer : "Taxi Driver" A Night Piece for Orchestra
H.Birtwistle : "Panic" a dithyramb for alto saxophone, jazz drummer, wind, brass and percussion
L.v.Beethoven : Symphony No.8 in F major, op.93
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「残念な一冊」入り・・・桐野夏生 『猿の見る夢』(講談社、2016)

2017-05-13 08:00:00 | 


 桐野夏生さんのミステリーは、現代の社会問題を取り上げた興味深いものが多く、時折手に取って読んでいる。昨年夏に新聞の新刊案内で紹介されていたので、地元図書館でリクエストしたのだが、8か月経ってようやく回ってきた。

 今回のテーマは、「高年サラリーマン」、「熟年離婚」、「遺産争続」と言ったところだろうか。「週刊現代」に連載されていたそうなので、まさに週刊現代の読者にはぴったりのテーマなのだろう。

 読後感としては、小説としての出来栄えは、まったく感心しなかった。ストーリー展開にワクワクするわけでもなく、登場人物に感情移入することもなく、何度も途中で止めようかと思った。

 元大手銀行勤務で現在は転籍した会社で取締役を務める主人公・薄井正明の人物や描写がとっても浅い。日和見で小心な俗物だから、これ以上の描写はしようがないのかもしれないが、それにしてもどうしようもない人物で、読んでいて嫌悪感を覚えるぐらい。そして、彼の周囲にいる会社関係人々、家族・親戚たち、愛人も、何かステレオタイプ的な人物で、人間の複雑性を滲ませる描写もない。

 アマゾンのレビューポイントはそこそこなのが、全く理解できない。私には貴重なゴールデンウイークのひと時を浪費した残念な一冊となった。
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内田 和俊 『仕事耳を鍛える―「ビジネス傾聴」入門』  (ちくま新書、2009)

2017-05-10 08:00:00 | 



 図書館の「返却本」トローリーに置いてあったので何気なく手に取った一冊だったけど、わかりやすく、良心的で、気づきにつながる本だった。

 「傾聴」の重要性というのは、評価者研修、メンタルヘルスのラインケア研修、自己啓発セミナーなどなど、会社組織にいると否が応でも聞かされるのだが、毎回なんとなくわかった気になるものの、研修と共に去りぬとなってしまう。本書は、ビジネスのシチュエーションで「聴く」ということがどういうことなのか、どう聴けばいいのかを具体的に記述してあり、思い当たるところズバズバで腹落ち感が半端ない。相手が発したキーワードに過剰に反応し、相手の話をさえぎって自分が喋り始めてしまう「自動反応」の解説なんて、穴があったら入りたい気分だった。

 筆者は、「聞く」(言葉から伝わる事実を理解する)を5つのレベル分けをする。まずは、レベルI:聴く意思を持っていない、レベルII:聴いているつもり、レベルIII:都合のいいように聞く、レベルIV:自分本位の目的で聞く、という段階がある。そしてその上のレベルVでは、「相手の立場となり、相手の個性に共感しながら話を聴く。相手を理解しようとして、耳と目と心を総動員して、隠れた感情、相手の真意、肯定的意図をつかむ」というレベルがあるという。言葉で書くと当たり前と言えば当たり前でつまらないのだが、具体的事例が秀逸で、納得感ある。

 常にレベルVで聴けと言っているわけでもない。ビジネスの場面場面で必要な「聴き方」があって、レベルは使い分けることが大事という。くだらないダジャレを繰り返す年配社員にはレベルⅠで聞けばいいということだ。なるほど。

 後段にも参考になった下りがある。「できていないことは何か」を聞くときに、「なぜ、それができないのですか」と聞くのと「何が、その障害になっていますか」と聞くのでは、聞かれる立場の印象が全然違う。whyの質問は具体的な解決策よりもできない理由が浮き彫りにされやすく、Whatに置き換え、「何をしたかったのか」に焦点を当てると発展的な会話になる。

 理解することとできることは違うことだが、今回は、頑張って、読了と共に去りぬにならないようにしたい。


目次
第1章 ビジネスリーダーの現状
第2章 コミュニケーションの実態
第3章 私たちは普段どんなふうに人の話を聞いているのか
第4章 どう聴けばいいのか
第5章 相手の本音をどう引き出すか(質問編)
第6章 相手の本音をどう引き出すか(レスポンス編)
第7章 何が聴けなくしているのか
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ユネスコ無形文化遺産のある町 千葉の佐原へ小旅行

2017-05-08 08:00:00 | 旅行 日本
 今年のGWは広島・宮島旅行を計画してホテルまで予約していたのだけど、事情によりキャンセル。近場でゆっくり楽しむことにしました。今回、日帰りで訪れたのは千葉県東部の香取・佐原エリアです。

 朝早く東京を出発したら、思いのほか道も空いていて、朝の7時半には香取神宮へ到着してしまいました。香取神宮は、創建は神武天皇の時代で、経津主大神(ふつぬしのおおかみ)を祭ってあります。明治以前は、日本で神宮を名乗れたのは、伊勢神宮、鹿島神宮と香取神宮の三社だけという由緒正しい神社とのこと。朝の神社は、静かで空気も澄んでいて、厳かな雰囲気が倍増します。早起きは三文の得を実感。


《入口の鳥居》


《石灯篭の参道。もみじの木が多かったので、秋は紅葉が綺麗そう》


《楼門(重要文化財だそうです)》


《本殿(これも重要文化財)》

 続いて、佐原地区へ。江戸時代に利根川の水運で栄えた佐原は、江戸優りというぐらいだったとのことですが、今も重要伝統的建造物保存地区として、歴史的町並みを残しています。まだ、町自体は眠っている中、そぞろ歩き開始。


《小野川の周辺に古い屋敷が軒を並べています》


《馬場本店酒造。江戸時代の天和年間創業。煙突は明治31年の建築》


《馬場本店に残る、樽などへ商標を刻印する品々》

 景観に加えて、この町の自慢(売り)は2つ。ユネスコ無形文化遺産(国指定重要無形民俗文化財)指定を受けた日本の「山・鉾・屋台行事」を構成する「佐原の山車行事」「佐原囃子」と日本で初めて実測による日本地図を完成させた伊能忠敬。

 山車祭りの方は、恥ずかしながら私は全く知らなかったのですが、観光案内所で係のおじさんがかなり詳しく解説して頂きました。「日本一の」大人形を載せた山車が街を練り歩くそうです。そして、お勧めにより、実物の2機が展示されている水郷佐原山車会館を訪れました。実物を間近で見るとその迫力に圧倒されます。人形はリアルで怖いぐらい。定時で、山車祭りを紹介したビデオもシアターで鑑賞し、佐原囃しの響きと合わせて、祭りを疑似体験。これで、これらの山車が登場する夏祭り、秋祭りに来ねばならないと決意。


《各地区ごとに山車を持ちます》


《神武天皇を載せた山車》


《人形の迫力が凄い》


《山車の彫り物も見事》

 続いて、小野川の舟めぐり。あやめ、菖蒲の時期にはやや早いですが、春の日差しの中ゆっくりと川を行くのは、旅行気分が高まります。


《樋橋(じゃあじゃあ橋):小野川にかかる橋ですが、中央に水がじゃあじゃあ流れ落ちているのが分かりますでしょうか。もとは江戸時代の前期につくられた佐原村用水を、小野川の東岸から対岸の水田に送るための大樋だったとのこと》


《手漕ぎ舟ではありませんが、静かにゆっくり舟は進みます。おじさんの観光案内付きです》


《まったりとした雰囲気》

 そして、伊能忠敬の住居跡を見て、記念館へ。失礼ながら郷土資料館みたいなものかと想像していたら大違いで、立派で本格的なものでした。生い立ち、測量旅行、測量に使った道具、実際に作成した地図(国宝のホンモノが展示されてました)、そして忠敬の半生のビデオなど、1-2時間は平気で経ってしまいます。50歳を過ぎてから、日本中を測量に旅するなんて、やっぱり人間は熱意ですね。



 街自体はこじんまりしたものですが、結局5時間近く滞在し、十二分に楽しみました。本当は足を延ばして、潮来や鹿島神宮とかにまで訪れたかったのですが、それは次回に取っておきます。


《道の駅・川の駅水の郷さわらから望む利根川》
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西永 良成 『「レ・ミゼラブル」の世界』 (岩波新書、2017)

2017-05-06 08:00:00 | 


 「今日のフランスでも、聖書の次に読まれている」というヴィクトール・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』について、あらすじ、物語の時代設定、執筆時のユゴーの状況、作者の思想などを解説した一冊。

 小説は学生時代に1回読んだきりだが、ミュージカルや映画では何度も見ている「レ・ミゼラブル」について理解が深まり、世界史と物語がつながるなど、知的な好奇心をくすぐられる。

 私としては、物語のクライマックスに、1832年のパリの民衆蜂起という歴史の教科書ではメジャーとは言えない事件が取り上げられているのかがいつも不思議だったのだが、その疑問も解けた。共和制主義者ユゴーは、32年の6月蜂起に共和制の理想を見たのだ。

 また、ジャン・ヴァルジャンの誕生年がナポレオン1世と同じであり、両ナポレオン(ナポレオン1世と3世)との関係性が物語の形成に大きな影響を与えていること、自らの青年時代をマリウスに投影させていることなども初めて知った。巻末に、当時の実世界での出来事、ユゴーの人生、物語の出来事が並列して年表で整理してあるのはとっても嬉しい。

 近年にちくま書房から新訳を発表した著者ならではの知見、見識が披露されており、レ・ミゼ好きにはたまらない一冊だ。

《目次》
第1章 『レ・ミゼラブル』とはどんな小説か
第2章 ふたりのナポレオンと『レ・ミゼラブル』
第3章 再執筆とナポレオンとの訣別
第4章 ジャン・ヴァルジャンとはどういう人物か
第5章 「哲学的な部分」とユゴーの思想
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第4回 UP RUN稲毛海浜公園マラソンを走ってきた

2017-05-04 08:00:00 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 個人的な事情で長野マラソンに出走できず、無念の思いで一杯だったのですが、4月15日段階で申し込めるフルマラソンの大会を探したら、まだあった!おかげで1月からのトレーニングを無駄にせず済みました(ホッ)。

 会場は千葉県美浜区の海沿いにある稲毛海浜公園。訪れるのは初めてでしたが、海と野原を備えた広々とした美しい公園。好天に恵まれ、朝日で新緑が輝き、眩しいぐらいです。


《スタート地点の前には人工砂浜が広がり、その先には東京湾》

 まだ第4回という新しい大会のためか、手作り感満載でした。フルマラソンのエントリーは50名弱、ハーフなど他の種目はもう少し多いようでしたが、1000名を超えるランナーが集結する都市型、地域型の大会とは雰囲気が全然違って、アットホームな感じ。それが、これからフルを走るという緊張感を和らげてくれました。


《大会本部》


《フルマラソンスタート地点》

 フルマラソンは、スタート直後に端数の2.195キロを走った後、1周5kの園内と外周を走る周回ジョギングコースを8周(!)します。いきなり端数を走るので、通常のキロごとに走行距離を積み重ねて、ラップを確認していくペース配分と異なり戸惑いましたが、走っているうちにこちらの方が走りやすいことに気づきました。端数分を走った後は、純粋に5kごとのラップを確認すればよく、目標とするサブ4への貯金や遅れ具合がとっても分かりやすいのです。いつもは、残りの2.195kを何分で走ればサブ4になるのか、もうろうとした頭で計算するのですが、それが省けました。


《外周コース》

 この日の最大の難関は「暑さ」。予報では24度まで上がるとのことで、下手すれば熱中症で救急車行き。なので、テーマは暑さ対策に絞り、目標は4時間切りよりも、完走に置いて、水分補給と体の熱さましに最大の注意を払いました。5kの周回コースに、2か所の給水所があったのは助かりましたし、公園なのでコース脇にいくつも水飲み場があったのも精神的に楽でした。給水所の給食で供された干しイモが美味しかった!


《給水・給食所》

 唯一の難点は、美しい公園とはいえ、同じ園内を8周するというのは正直飽きました。ただ、海浜公園と言うことで、アップダウンは全くないこと、周回なので1,2周走れば自分がどの位の位置に居て、あとどのくらいで1周が終わることが分かることで、一定のペースで淡々と走ることができました。ラスト10kはさすがにペースが落ちましたが、周回コースのおかげで、あの暑さ(結局、最高気温は22度だった模様)の中、3時間56分で走り切ることができました。

 これで、長野マラソンの欲求不満はとりあえず解消して、満足。今シーズンのレースもこれで終わり。しばらくお休みです。

2017年4月30日
コメント (2)
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7年ぶりの中村恵理さんは・・・ オペラ「フィガロの結婚」/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト @新国立劇場

2017-05-02 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 今回は、大好きな「フィガロの結婚」ということもあったけど、一番のお目当ては中村絵里さん。私がロンドン駐在時に、ロイヤル・オペラハウスのYoung Artist Programに参加されていて、私の手元の記録だけでも4作品(「愛の妙薬」、「カルメン」、「ドン・カルロ」、「フィガロの結婚」)に出演されたのを観に行っています。パワーでは叶わなくとも、清らかなソプラノは西洋の女性歌手陣にも決して引けを取らず、いつも一定の存在感を発揮してました。時折、聴衆として劇場に見に来ておられる時もあって、一度、少しお話ししたこともあります(本人はちょっと迷惑そうでしたが・・・)。

 その後バイエルン州立歌劇場の専属になり、最近になって拠点を日本に移されたと聞きました。是非、また聴く機会があればなあと思っていたところに、今回スザンナ役で「フィガロの結婚」に出演されると耳にし、これは行くしかないでしょう〜。

 ロイヤルオペラでもスザンナを演じたのを聴いています(2010年6月)が、相変わらず、中村さんの声は、良く通りますね。澄んだ美声は、声量で押すタイプではなく、しっかり芯があって、響く声。私の中で、7年前がフラッシュバックして、胸が熱くなりました。溌剌とした演技も相変わらずです。表情、動き、お茶目で機転がきいたスザンナにぴったりで、この日も舞台を盛り上げてくれました。

 変わったところと言えば、当時から7年が経ち、世界の檜舞台で経験を積まれたこともあって、大人の貫録が表れていたところでしょうか。ロイヤルオペラ当時は、見る方も「今日はどうだろうか」と、同じ日本人として(勝手に)ドキドキしながら観ていたものですが、それとは全然違っていて、ベテラン的な安定感すら感じたのは、彼女の7年間の研鑽・努力・苦労の重みでしょう。

 さて公演の方ですが、中村さん以外の歌手陣も、レベル高かったです。私としては、伯爵夫人のアガ・ミコライさんとケルビーノのヤナ・クルコヴァさんが特に良かったです。伯爵夫人は、失礼ながら、見た目よりも発せられる声がとってもデリケートで驚きました。ケルビーノは見た目も小柄で雰囲気がいかにもケルビーノ。声も美しく、私的にはかなりポイント高しでした。題名役のフィガロはちょっと存在感が薄かった気がしますが、伯爵は劇場いっぱいに響く声で、演技も好演。

 コンスタンティン・トリンクスさんの指揮による東フィルの演奏は、前半は軽快さに欠けるんではないかと、やや不満ありでしたが、休憩後の後半はぐっと勢いを増し、最後はしっかり締めてくれました。演出は新国立劇場では随分前から使われているものらしく、白を基調としたモノトーンで、段ボール箱を利用して場面設定をするものです。節約感が滲み出ますが、私的には不可ではありません。

 中村さん目当ての公演でしたが、中村さんに加え、他の出演者や作品の楽しさを楽しめた公演でした。



2017年4月29日 14:00開演
2016/2017シーズン
オペラ「フィガロの結婚」/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
Le Nozze di Figaro / Wolfgang Amadeus MOZART
全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス

スタッフ
指 揮:コンスタンティン・トリンクス
演 出:アンドレアス・ホモキ
美 術:フランク・フィリップ・シュレスマン
衣 裳:メヒトヒルト・ザイペル
照 明:フランク・エヴァン
再演演出:三浦安浩
舞台監督:高橋尚史

アルマヴィーヴァ伯爵:ピエトロ・スパニョーリ
伯爵夫人:アガ・ミコライ
フィガロ:アダム・パルカ
スザンナ:中村恵理
ケルビーノ:ヤナ・クルコヴァ
マルチェッリーナ:竹本節子
バルトロ:久保田真澄
バジリオ:小山陽二郎
ドン・クルツィオ:糸賀修平
アントーニオ:晴 雅彦
バルバリーナ:吉原圭子
二人の娘:岩本麻里、小林昌代

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

2016/2017 Season

Music by Wolfgang Amadeus MOZART
Opera in 4 Acts
Sung in Italian with Japanese surtitles
OPERA HOUSE

Staff
Conductor Constantin TRINKS
Production Andreas HOMOKI
Set Design Frank Philipp SCHLÖSSMANN
Costume Design Mechthild SEIPEL
Lighting Design Franck EVIN

Cast
Il Conte Almaviva Pietro SPAGNOLI
La Contessa Aga MIKOLAJ
Figaro Adam PALKA
Susanna NAKAMURA Eri
Cherubino Jana KURUCOVÁ
Marcellina TAKEMOTO Setsuko
Bartolo KUBOTA Masumi
Basilio OYAMA Yojiro
Don Curzio ITOGA Shuhei
Antonio HARE Masahiko
Barbarina YOSHIHARA Keiko
Due Fanciulle IWAMOTO Mari, KOBAYASHI Masayo

Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra
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