今回は、大好きな「フィガロの結婚」ということもあったけど、一番のお目当ては中村絵里さん。私がロンドン駐在時に、ロイヤル・オペラハウスのYoung Artist Programに参加されていて、私の手元の記録だけでも4作品(「愛の妙薬」、「カルメン」、「ドン・カルロ」、「フィガロの結婚」)に出演されたのを観に行っています。パワーでは叶わなくとも、清らかなソプラノは西洋の女性歌手陣にも決して引けを取らず、いつも一定の存在感を発揮してました。時折、聴衆として劇場に見に来ておられる時もあって、一度、少しお話ししたこともあります(本人はちょっと迷惑そうでしたが・・・)。
その後バイエルン州立歌劇場の専属になり、最近になって拠点を日本に移されたと聞きました。是非、また聴く機会があればなあと思っていたところに、今回スザンナ役で「フィガロの結婚」に出演されると耳にし、これは行くしかないでしょう〜。
ロイヤルオペラでもスザンナを演じたのを聴いています(2010年6月)が、相変わらず、中村さんの声は、良く通りますね。澄んだ美声は、声量で押すタイプではなく、しっかり芯があって、響く声。私の中で、7年前がフラッシュバックして、胸が熱くなりました。溌剌とした演技も相変わらずです。表情、動き、お茶目で機転がきいたスザンナにぴったりで、この日も舞台を盛り上げてくれました。
変わったところと言えば、当時から7年が経ち、世界の檜舞台で経験を積まれたこともあって、大人の貫録が表れていたところでしょうか。ロイヤルオペラ当時は、見る方も「今日はどうだろうか」と、同じ日本人として(勝手に)ドキドキしながら観ていたものですが、それとは全然違っていて、ベテラン的な安定感すら感じたのは、彼女の7年間の研鑽・努力・苦労の重みでしょう。
さて公演の方ですが、中村さん以外の歌手陣も、レベル高かったです。私としては、伯爵夫人のアガ・ミコライさんとケルビーノのヤナ・クルコヴァさんが特に良かったです。伯爵夫人は、失礼ながら、見た目よりも発せられる声がとってもデリケートで驚きました。ケルビーノは見た目も小柄で雰囲気がいかにもケルビーノ。声も美しく、私的にはかなりポイント高しでした。題名役のフィガロはちょっと存在感が薄かった気がしますが、伯爵は劇場いっぱいに響く声で、演技も好演。
コンスタンティン・トリンクスさんの指揮による東フィルの演奏は、前半は軽快さに欠けるんではないかと、やや不満ありでしたが、休憩後の後半はぐっと勢いを増し、最後はしっかり締めてくれました。演出は新国立劇場では随分前から使われているものらしく、白を基調としたモノトーンで、段ボール箱を利用して場面設定をするものです。節約感が滲み出ますが、私的には不可ではありません。
中村さん目当ての公演でしたが、中村さんに加え、他の出演者や作品の楽しさを楽しめた公演でした。
2017年4月29日 14:00開演
2016/2017シーズン
オペラ「フィガロの結婚」/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
Le Nozze di Figaro / Wolfgang Amadeus MOZART
全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス
スタッフ
指 揮:コンスタンティン・トリンクス
演 出:アンドレアス・ホモキ
美 術:フランク・フィリップ・シュレスマン
衣 裳:メヒトヒルト・ザイペル
照 明:フランク・エヴァン
再演演出:三浦安浩
舞台監督:高橋尚史
アルマヴィーヴァ伯爵:ピエトロ・スパニョーリ
伯爵夫人:アガ・ミコライ
フィガロ:アダム・パルカ
スザンナ:中村恵理
ケルビーノ:ヤナ・クルコヴァ
マルチェッリーナ:竹本節子
バルトロ:久保田真澄
バジリオ:小山陽二郎
ドン・クルツィオ:糸賀修平
アントーニオ:晴 雅彦
バルバリーナ:吉原圭子
二人の娘:岩本麻里、小林昌代
合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
2016/2017 Season
Music by Wolfgang Amadeus MOZART
Opera in 4 Acts
Sung in Italian with Japanese surtitles
OPERA HOUSE
Staff
Conductor Constantin TRINKS
Production Andreas HOMOKI
Set Design Frank Philipp SCHLÖSSMANN
Costume Design Mechthild SEIPEL
Lighting Design Franck EVIN
Cast
Il Conte Almaviva Pietro SPAGNOLI
La Contessa Aga MIKOLAJ
Figaro Adam PALKA
Susanna NAKAMURA Eri
Cherubino Jana KURUCOVÁ
Marcellina TAKEMOTO Setsuko
Bartolo KUBOTA Masumi
Basilio OYAMA Yojiro
Don Curzio ITOGA Shuhei
Antonio HARE Masahiko
Barbarina YOSHIHARA Keiko
Due Fanciulle IWAMOTO Mari, KOBAYASHI Masayo
Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra