その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(監督・脚本:アレックス・ガーランド)

2024-10-09 07:30:53 | 映画

久しぶりに映画館で映画鑑賞。アメリカ内戦を描いたということで、公開前から話題に上ってたので、気になっていた。

米国内で起こった内戦の取材で、前線に入って取材しようとするフォト・ジャーナリスト達を描く。

う~ん、私的には消化不良。分断のアメリカを描く社会派映画かと勝手に想像していたら、戦争アクションのようでもあり、ロードムービーのようでもあり、どっちつかずで中途半端な印象。宣伝では、意味不明だが「ディストピア・アクション」映画。

長い戦闘シーンや人が簡単に殺されていくのも、緊張を強いられ、観ていてつらかった。世界では、国家間、内戦問わず、これに近いことが行われていると思うと胸も痛む。

映画の作りはつらかったが、俳優陣は主演のキルステン・ダンストを始め好演。映像もスケール感、臨場感が素晴らしく映画ならでは映像体験ができる。

 

監督 アレックス・ガーランド
製作 アンドリュー・マクドナルド アロン・ライヒ グレゴリー・グッドマン
製作総指揮 ティモ・アルジランダー エリーサ・アルバレス

キャスト:
リー・スミス: キルステン・ダンスト
ジョエル: ワグネル・モウラ
ジェシー・カレン: ケイリー・スピーニー
サミー: スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン

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映画 「ノマドランド」(監督クロエ・ジャオ、2020年)

2024-09-11 07:28:19 | 映画

「移動は人類の本能である」という話を聞いたことがある。アフリカで誕生したホモ・サピエンスは移動に移動を重ねて南アメリカ大陸まで到達したし、日本を含め古今東西の世界を見渡しても移動する人類はいつもどこかに存在している。

「ノマドランド」は現代米国でのノマド(意味は遊牧民)であり、老齢期に入る女性ファーンを描いた映画。今どきのITを駆使して、場所を問わず自由に働くノマド・ワーカーとは正反対で、自家用車のヴァンで移動し、必要最低限の仕事(クリスマス商戦でのアマゾン配送センターでの時季アルバイトや町の食堂のキッチン担当など)で移動生活の糧を得る生活だ。

移動を通じて、宇宙や自然への畏怖・共生、人との相互援助・共感に触れつつ、最後は自分次第という個の自立の精神を貫く。ドキュメンタリータッチなロードムービーの趣がある。

主演のフランシス・マクドーマンドが強い個を持った女性を好演。台詞よりも表情、仕草でファーンの生き様を表現する。ネバダ、アリゾナと言ったアメリカの広大な砂漠、荒野を舞台にスケール大きく美しい映像も印象的だ。このスケール感は映画館で観てこそと思われ、ロードショウの際に劇場に見に行かなかったことが今更のように悔やまれる。

ファーンは、もとはネバダのエンパイアという田舎町(実在の町らしい)で、夫を病気で失いながらも、夫との想い出とともにエンパイアに定住を選んだはずだった。「移動」を通じて、ファーンは価値観・自己を拡げて成長する。

「コスパ」、「安心・安全」、「健康」などの現代社会の価値観の中では説明できない生き方であるし、個人的にも真似をしたいとは思わない。それでも、ファーンの生き方に魅かれるのは、私の中にも人類の本能が隠れているということなのだろうか。

"See you down the road!" (また(どこかで)会おう!) 味わい深い映画である。 

(2024年8月30日 Amazon Primeにて視聴)

 

監督
クロエ・ジャオ
製作
フランシス・マクドーマンド ピーター・スピアーズ モリー・アッシャー ダン・ジャンビー クロエ・ジャオ
原作
ジェシカ・ブルーダー
脚本
クロエ・ジャオ
撮影
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ
美術
ジョシュア・ジェームズ・リチャーズ
編集
クロエ・ジャオ
音楽
ルドビコ・エイナウディ

CAST
ファーン:フランシス・マクドーマンド
デイブ:デビッド・ストラザーン
リンダ:リンダ・メイ
スワンキー:スワンキー
ボブ:ボブ・ウェルズ

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映画 「ティファニーで朝食を」(監督 ブレイク・エドワーズ、1961年)

2024-04-09 07:34:29 | 映画

(過去メモの蔵出し投稿です)

機内の映画リストから選んで視聴。学生時代にカポーティの小説は読んだ記憶がある(書棚にも残っている)が、全く忘れてしまっている。映画も若かりしときに一度観た気がするが、記憶には残っていなかった。

感想は、「オードリーヘップバーンの、オードリーヘップバーンによる、オードリーヘップバーンのための映画」ということにつきる。。

数十年前の映画ではあるが、表情豊かで、チャーミングな所作はまさに可愛い綺麗。モニターに釘付けとなった。凄まじい吸引力だ。BGMとしてゆったりと流れる、アカデミー賞主題歌部門を受賞した「ムーン・リバー」もなんとも物悲しい。

主人公の逞しさには魅かれるが、ストーリーは至ってシンプル。親父目線で恥ずかしいが、ただただ、ヘップバーンの魅力を味わうだけで、十二分に観賞価値あると感じた作品だった。

(2023.11.14)

 

監督       ブレイク・エドワーズ
脚本       ジョージ・アクセルロッド(英語版)
原作       トルーマン・カポーティ
製作       マーティン・ジュロウ(英語版)
リチャード・シェファード

出演者   オードリー・ヘプバーン
ジョージ・ペパード
パトリシア・ニール

音楽       ヘンリー・マンシーニ
主題歌   ヘンリー・マンシーニ(作曲)
ジョニー・マーサー(作詞)
「ムーン・リバー」
撮影       フランツ・プラナー(英語版)
フィリップ・H・ラスロップ

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ナショナル・シアター・ライブ/デヴィッド・ヘアー作「スカイライト」

2024-01-09 07:49:22 | 映画

5、6年前、新国立劇場の演劇で蒼井優さんらが演じるデヴィッド・ヘア作『スカイライト』を観て、大いに感銘受けた。過去に不倫関係にあったと男女のその後から現在に至るまでの時間軸と英国特有の社会階級に関連する価値観軸の2軸が交差する中で交わされる緊張感あふれる会話劇が圧倒的だった。

今回、ナショナル・シアター・ライヴのリバイバル企画として、2014年にロンドンでスティーヴン・ダルドリー演出で上演されたものが上映されるというので迷わず観に行った。さすが、本場モン。ビル・ナイとキャリー・マリガンの会話の中身の濃さと熱演に圧倒される。社会観、人生観のすれ違いと相互の愛が織りなす感情の複雑さ。改めて味わい深い作品だと再認識した。

このリバイバル企画、シェイクスピア作品を初め、観たい作品ばかりなのだが、年末年始の非常に限定された時間に各作品2回ほどしか上映されない。もっと、頻繁に開催して頂けないものか。

 

上映時間:2時間42分(休憩あり)
演出:スティーヴン・ダルドリー
作:デヴィッド・ヘアー
出演:キャリー・マリガン、ビル・ナイ、マシュー・ビアード

 

 

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誰もが楽しめるファンタジー映画:「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」

2024-01-06 07:30:43 | 映画

久しぶりに映画館に足を運んだ。ジョニー・ディップ主演の「チャーリーとチョコレート工場」の前日談(ウォンカがチョコレート工場を立ち上げるまでの話)を描いた映画が公開されたと聞き及び、これは行かねばと思った次第。

「チャーリーとチョコレート工場」は秘密帝国のような怪しげなチョコレート工場内部を舞台に、謎めいた主人公のウオンカ社の経営者ウォンカと人間の欲丸出しの工場見学招待客が織りなす模様が実にシュールで、そのブラックな笑いが私のツボにはまった。今回もそうしたテイストかと勝手に想像していたら、勇気と知恵と愛をテーマにした直球ど真ん中のファンタジー映画だった。

私の想定とはずいぶん違った作風だったが、映画としてはとっても楽しめた。ディズニーランドに居るような夢の世界がスクリーンに広がる。よだれが湧き出すようなチョコレートが溜まらない。ヒューグラントが演じる小人ウンパルンパも最高におかしい。話の展開はシンプルな勧善懲悪と夢の実現。全編にわたって、歌がちりばめられた半ミュージカル映画で楽しい。年末年始にファミリーで楽しむのにはぴったりだ。

やっぱり映画館で観る映画は良いね。久しく映画館から遠ざかっていたので、今年はちょくちょく足を運んでみよう。

 

【監督】ポール・キング
【脚本】サイモン・ファーナビー、 ポール・キング
【撮影】チョン・ジョンフン
【音楽】ジョビー・タルボット

【出演】ティモシー・シャラメ/ヒュー・グラント/オリヴィア・コールマン/サリー・ホーキンス/ローワン・アトキンソン ほか

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映画「Winny」(監督:松本優作、2023)

2023-11-29 07:30:59 | 映画

飛行機の中で視聴。

2002年に端を発したWinny事件(P2P技術を活用したファイル共有ソフトを開発した金子勇氏が著作権侵害行為幇助の疑いで逮捕されるなどした)扱ったノンフィクション。事件とその一審裁判の過程が、プログラム開発者金子勇氏とその弁護団視点で描かれる。メディアで断片的な知識はあったものの、事件の背景や性格が理解できる社会派ドラマ。

派手さはないが俳優陣が好演。特に主人公の金子勇を演じる東出昌大は、天才的なプログラミングセンス、スキルを持つものの、世間一般常識には乏しい主人公を、人間味あふれる人物として好演。ラストに当時のリアル映像が流されるが、そこに登場する金子勇氏本人と雰囲気を含めてそっくりで感服した。

実際の事件を扱っているだけに綺麗な整理、物語ありきではない。警察・検察の「結論ありき」捜査、金子氏個人のテクノロジーへの情熱と葛藤、法廷での検察と弁護団との対決、法秩序の維持者であるはず警察自身の組織内不正、技術開発の促進と責任の境界など、様々なテーマが入り交じっている。なので、映画としては焦点がわかりにくいところはあるものの、見応えある作品だった。

 

スタッフ・キャスト

監督:松本優作
原案:渡辺淳基
脚本:松本優作、 岸建太朗

東出昌大:金子勇
三浦貴大:壇俊光
皆川猿時
和田正人

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映画「市民ケーン」(監督:オーソン・ウェルズ、1941年)

2023-09-09 07:57:53 | 映画

映画史上高く評価されている作品で、いろんな映画ランキングにもいつも上位にランクされている。昔、米国でメディア論を履修した際にも、参考映画として挙げられたのも覚えている。以前より一度観たいものだと思っていたが、AmazonPrimeにあることを見つけ視聴。

アメリカの新聞王ケーンの生涯(新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストがモデル)を死後から遡って追い、富と名声をなした人物の孤独が描かれる。オーソン・ウェルズの監督デビュー作である。 

Dying Words(臨終時の言葉)であった「バラのつぼみ(rosebudd)」の謎解きをベースに進む物語はスリリングで引き込まれる。ローアングル、アップ画像を多用した撮影も白黒映画ならではの効果も掛け合わせて映像も迫力満点だ。

自信家で傲慢な実業家ケーンを演ずる若きオーソン・ウェルズの演技も溌剌としていて、世界の覇権国となろうとする伸び盛りのアメリカの野心多き青年実業家ぶりを存分に見せつける。

ただ、正直言うと、十二分に引き込まれた映画だったが、映画素人の私にはなぜ史上ナンバー1アメリカ映画とまで評されるのかは分かりかねた。

 

スタッフ

監督・製作:オーソン・ウェルズ
脚本:オーソン・ウェルズ、ハーマン・J・マンキーウィッツ
撮影:グレッグ・トーランド
音楽:バーナード・ハーマン
編集:ロバート・ワイズ

キャスト

チャールズ・フォスター・ケーン: オーソン・ウェルズ
ジェデッドアイア・リーランド: ジョゼフ・コットン
スーザン・アレクサンダー: ドロシー・カミンゴア
バーンステイン: エヴェレット・スローン

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おもろい!: 新春ドラマスペシャル「タイガー&ドラゴン」(演出:金子文紀、2005)

2023-09-06 07:28:48 | 映画

絶賛落語勉強中ということもあり、落語に関連するものならダボハゼ的に食らいついている。AmazonPrimeで15年以上前の落語関連ドラマを見つけた。

子供の時から笑ったことのない「つまらない」ヤクザ虎児が落語の面白さを知り、組からお金を借りている落語家へ入門する。その師匠とのやりとりや、家を出てアパレルショップを始めた師匠の息子、「面白い」竜二との交流が描かれる。偶然発見のドラマだったが、期待以上に大いに笑った。

まず、設定が面白い。落語家とヤクザという、全く違う世界が交わる非日常的な設定。「あり得んだろう~」と思うところもあるが、その非日常があたかも日常の環境でドラマが展開していくのが何ともユニーク。

役者陣も良い。主役の長瀬、岡田が随分若くて笑ったが、二人とも活き活き、ドラマにリズムや勢いをつけている。そして、やっぱり凄いのは西田敏行。力が抜けた、円熟の存在感だ。若い二人をしっかり支え、ドラマの中心軸になっている。

そして、ストーリー展開が見事。ドラマで主人公のヤクザ虎(長瀬)が弟子入りする林屋亭 どん兵衛(西田)から習う「三枚起請」がアレンジされて、ドラマのプロットとして再現されているのである。良くできていて感心した。

本作は2時間ドラマだが、この後、シリーズものとして継続したようなので、そちらも観る予定。

 

脚本 - 宮藤官九郎

音楽 - 仲西匡

演出 - 金子文紀

出演

長瀬智也, 岡田准一, 西田敏行, 伊東美咲

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これはお勧め: 映画「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」

2023-07-19 07:30:35 | 映画

職場の同僚2人が劇場で見て激賛していたのを昼飯時に聞いていた。

久しぶりにPrime Videoを覗いたらもう上がっていて、早速視聴。

ワールドベースボールクラッシックにおける日本チームの選手選びから優勝までの舞台裏を追ったドキュメント。改めて軌跡を追うとこの大会、筋書きのないドラマそのものだ。また、映像がベンチ目線なので、TVカメラのアングルとも異なり、リアルな臨場感が凄まじい。これは劇場で見るべきだったと思う。

大谷翔平をはじめとして、プロフェッショナル中のプロフェッショナルの、野球に向き合うスタンスや生き様が伝わってくる。緊張と期待を背負って、自分の記録よりもなにしろチームの勝利を優先して戦うプロフェッショナルたち。チームスポーツの最高レベルの世界がある。

個人的に印象的だったのは、栗山監督のリーダーシップ。熱い思いはもちろんのこと、あえてキャプテンを置かないチーム創り、各球団から預かった選手たちへの気遣い、正直で謙虚なコメント。ワールドカップサッカーの森保監督にも感じたが、時代とともに求められるリーダーシップが大きく変わってきているのを実感する。マッチョでカリスマなリーダーから、選手をリスペクト、信頼し、その力を引き出すリーダー。もちろん、こうしたリーダーが機能するのは、自律したプロのフォロワー(選手)が必要だと思うが、リーダーとフォロワーのあるべき関係性を見る気がした。

 

監督:三木慎太郎
撮影:三木慎太郎
主題歌:あいみょん
ナレーション:窪田等

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2022年感想書き漏れの映画(備忘メモ)

2022-12-30 08:00:30 | 映画

読んだり見たりした本や映画は記事にアップするようしているのですが、ずるずると放置しているものもあるので、記録のため簡単にメモを書き残しておきます。まずは映画から。

1度も映画館に足を運んでないという近年まれにみる1年でした。DVDやAmazonでも鑑賞機会少なく、なんか余裕ない年でした。そんな中で、Amazonで観て、記事エントリーできてなかったのは3本。

「東京物語」(監督:小津安二郎、1952年)

  言わずと知れた小津安二郎の代表作の一つ。10年以上前に観た切りだったので再視聴。家族、人生を真正面から捉えたテーマは今も色あせない。朴訥な台詞回しやのんびり流れる映像が時代を感じさせるが、情報量が豊かで味わい深い。

 

「お茶漬けの味」(監督:小津安二郎、1953年)

  初見。昭和の上流階級の人たちの生態の知識も理解も無いので、上流階級での有閑マダムってこんな感じなのか~と、あまり投入できず。主演男優の佐分利信が演じた佐竹茂吉の大きな心は見習いたい。

 

「天気の子」(監督:新海誠)

  初見。新海監督のヒット作品の一つ。大人や社会との葛藤、異性への愛を通じた少年の成長物語。雨が降り続く東京が舞台で、未来のディストピア的な要素も含む。私自身はあまり深読みしてないが、色んな隠れメッセージがありそう。エンターテイメント作品としても楽しめた。

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映画「銀の匙 Sliver Spoon」(監督:吉田恵輔、2014)

2022-08-31 07:30:12 | 映画

夏の北海道旅行での帯広畜産大学訪問時に、ここのキャンパスが主たるロケ地であったということを知り、旅行後にAmazonで視聴。

原作は人気漫画とのこと。北海道の畜産高校を舞台にした高校生の成長物語である。まさに数週間前に訪れた畜大がロケ舞台で、懐かしく親近感を覚える。牧畜業で働く人々、経済動物として飼育され食される動物たち、産業としての牧畜、北海道の自然と歴史、若者の成長と友情・愛などが織り込まれた良質の映画であった。

夏の旅行で観戦したばんえい競馬も物語の大事な素材になっている。レース観戦では馬に対する厳しさに目をそむけたくなるようなところもあったが、この映画を見ると、より北海道牧畜業に根付いた文化としての側面が理解できる。観戦前にこの映画を見ていれば、レースの見方も多少違っていたかもしれない。

Yahoo映画のコメントを見ると、漫画にのめりこんだ人には映画の出来には不満もあるようだが、映画を入口として作品に触れた私には違和感はなかった。中島健人、広瀬アリスらの若手の主演陣の演技も好感持てるし、中村獅童、上島竜兵らの実力派脇役陣がしっかり脇を固めている。ちょっと黒木華のキャラが浮いてた感はあったけど。

今度は原作の漫画の方を読んでみたい。

 

(スタッフ・キャスト)

監督:吉田恵輔
原作:荒川弘
脚本:吉田恵輔,高田亮
音楽:羽毛田丈史

中島健人:八軒勇吾
広瀬アリス:御影アキ
市川知宏:駒場一郎
黒木華:南九条あやめ
矢本悠馬:常盤恵次
安田カナ:稲田多摩子
岸井ゆきの:吉野まゆみ

ほか

コメント (2)
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映画 「新聞記者」(監督 藤井道人、2019)

2021-09-10 07:30:45 | 映画


官邸の不正疑惑を巡って、内閣情報調査室に出向中の若きエリート外務官僚と疑惑を追いかける女性新聞記者のやり取りが描かれる社会派ドラマ。安倍内閣のモリ・カケ問題を彷彿させるタイムリーな題材だ。

第43回日本アカデミー賞において、作品賞、主演男優賞、主演女優賞を獲得した作品でもあり、業界での評価は高かったようだが、残念ながら私のストライクゾーンからは外れていた。善人、悪人が明確な人物設定、リアリティに欠ける内閣情報室のオフィス、メッセージがあいまいなラストシーンを初め、コンセプト・ディテールの両方で気になってしまうところが多々あった。ストーリー自体には引き込まれるところあるのだが、いろんなところが気になってしまい、投入しきれない欲求不満が終始残った。現実は、人はもっと複雑だし、社会も泥臭いのだが、その点が表現しきれてない印象である。

秀逸だと思ったのは、若手エリート官僚を演じる松坂桃李の演技。先日観た「蜜蜂と遠雷」でも良かったと思ったが、表情、仕草で語り表現できる役者だ。

多くの支持を受けている映画なので、単に私の好みと違っていたということだと思う。


新聞記者
監督 藤井道人
脚本 詩森ろば、高石明彦、藤井道人
原案 望月衣塑子「新聞記者」、河村光庸
製作 高石明彦
製作総指揮 河村光庸、岡本東郎
出演者 松坂桃李
シム・ウンギョン
本田翼
岡山天音
郭智博
長田成哉 ほか
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映画:『最高の人生のつくり方』(ロブ・ライナー監督、2014年)

2021-08-21 07:30:03 | 映画



 監督は「スタンドバイミー」のロブ・ライナー監督。明るい気持ちで、くすっと笑えるライトタッチなシニア男女のラブ・ストーリーだ。

 オーラが画面からこぼれんばかりの2人の大俳優、マイケル・ダクラスとダイアン・キートンの圧倒的存在感に畏れいる。とりわけ、ダイアン・キートンは、どうしたらこんなに素敵に歳を重ねることができるのかと、ため息が出るほどチャーミングで魅力的だ。

 原題は And So It Goes(「しょうがない」/「これが人生さ」みたいな感じ)。私世代にはビリー・ジョエルの歌のタイトルだし、若い人には「テイラー・スウィフトの歌だよ」となるのだろうが、これが何故『最高の人生のつくり方』という邦訳になるのかは理解に苦しむ。作品を的確に言い表しているとも思えない。同じロブ・ライナー監督の『最高の人生の見つけ方」(2007年)にあやかったのかもしれないが、逆にタイトルで損している気がする。

ただ、作品は外れなしだ。見ていて心地よい、良心的なアメリカ映画である。


監督 ロブ・ライナー
脚本 マーク・アンドラス
製作 ロブ・ライナー
アラン・グライスマン
マーク・ダモン

出演者 マイケル・ダグラス
ダイアン・キートン
スターリング・ジェリンズ
音楽 マーク・シャイマン
撮影 リード・モラーノ
編集 ドリアン・ハリス

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映画 『バイス』(監督:アダム・マッケイ、2018)

2021-06-28 07:30:26 | 映画


ブッシュ政権時の副大統領を務めたディック・チェイニーを描いた伝記映画。リーマンショック時に逆張りして大儲けした投資家たちを描いた「マネーショート」のスタッフが制作。

この手の政界の表裏を描いたアメリカの政治映画はよくできた作品が多いが、本作もとっても面白い。私のみならず、ラムズフェルドと並んで「ネオコン」の悪者イメージがあると思うが、本作はそうしたステレロタイプ的な善人・悪人の色分けを超えて、人間ディックを描いている。

本作でゴールデングローブ賞主演男優賞を獲得したクリスチャン・ベールの演技が、ホンモノそっくり(とはいっても私もテレビでしか本人を見たことないが)かつ迫力が凄まじい。主人公のリーダーシップ、野心などが痛いほどに迫ってくる。

こうした米国の政界周りの権力闘争やエリートの権力意欲は、私のような日本の小市民には理解の範疇を大いに超えるが、政治にせよビジネスにせよ、グローバルの世界では、こうした肉食系の連中とやりあうのだから、日本人もっとしっかりせねばと思ってしまう。今の五輪のすったんもんだも、結局IOCとかの白人連中にやりたい放題言われているだけのように見えるし、G7会合での菅さんのぼっち姿はやりあう以前であまりにも哀れ。

こういう政治映画が邦画にはないのが残念。


監督・脚本
アダム・マッケイ
撮影
グレイグ・フレイザー
美術
パトリス・バーメット
衣装
スーザン・マシスン
出演
クリスチャン・ベール:ディック・チェイニー
エイミー・アダムス:リン・チェイニー
スティーブ・カレル:ドナルド・ラムズフェルド
サム・ロックウェル:ジョージ・W・ブッシュ
タイラー・ペリー:コリン・パウエル

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本と映画のセット経験がおすすめ:映画〈蜜蜂と遠雷〉(監督:石川慶)

2021-05-26 07:30:00 | 映画


直木賞を受賞した恩田睦の同名小説の映画化。国際ピアノコンクールを舞台にコンテスタント達の音楽への情熱、人間的成長が描かれます。原作が素晴らしかったので、どう映像化されるのか期待半分、不安半分でしたが、原作の良さを損なわない佳作に仕上がっていました。
ストーリーは、本選の指揮者小野寺の人物設定やリハーサル場面など細かいところで原作と異なるところがありますが、大筋は原作に準じています。良いのは、コンテスタントのキャスティング。原作のイメージとぴったりで、原作を読んだ人にも、違和感なく入っていくことが出来ます。松岡茉優は相変わらず可愛いし、自然体の演技が良い。松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士の男優陣も登場人物のキャラを的確に演じていて好感度高いです。
ただ、難しいところですが、1頁2段組みで500頁ある単行本と2時間の映画では必然的に情報量が圧倒的に違ってきます。原作ではコンテスタントそれぞれの視点で、音楽やコンテストに向き合う心情が描かれますが、俳優の演技、ストーリー展開、演出だけで描き切るのは限界があるのはしょうがないですね。コンテスタントの深堀という点においては、物足りなさは残ります。
一方で、原作では言葉で描写される音楽が、映画の中でリアルに聴くことができるのは嬉しいです。河村尚子、福間洸太朗、金子三勇士、藤田真央という当代きっての日本人ピアニストが起用されているので聴きごたえもたっぷり。これは映画ならではですね。
観てから読むか、読んでから見るか、どちらも楽しめると思いますが、是非、両方を体験されることをお勧めします。


スタッフ・キャスト
監督:石川慶
原作:恩田陸
脚本:石川慶
製作:市川南
ピアノ演奏
河村尚子 福間洸太朗 金子三勇士 藤田真央
オーケストラ演奏
東京フィルハーモニー交響楽団

松岡茉優:栄伝亜夜
松坂桃李:高島明石
森崎ウィン:マサル・カルロス・レヴィ・アナトール
鈴鹿央士:風間塵
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