その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

門井慶喜 『家康、江戸を建てる』(祥伝社、2016)

2016-09-29 07:00:00 | 


 家人のお勧めで読んでみた。タイトルは「家康」で始まるが、物語の主人公は家康の江戸作りに、実際に手足を動かした人たちである。未開の地であった江戸で、治水を行い、貨幣、水道、石垣、天守閣を作り、世界の都市のインフラが整備されていくプロセスが物語で描かれる。

 読みやすし、面白い。東京居住者には、地名も思い当たり、話が身近。司馬遼太郎の歴史小説なら、「余談だが・・・」として2-3ページで描かれるであろうエピソードに一話一話が割り当てられている。当時の様子を思い浮かべながら、技術と誇りを持つ主人公達の動きを追うのは、何とも楽しい読書体験だった。

 どこまでが史実で、どこからが創作なのかはわからないところはあるが、新しい時代の前向きなエネルギーに満ちた空気を感じることが本書の一番良いところだろう。おすすめ。
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ブルオタにはなれそうにない:N響 9月定期Aプロ/ 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ/ブルックナー交響曲第2番ほか

2016-09-25 22:28:37 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 いよいよ2016-2017シーズン開幕です。とは言っても、先々週に90周年記念特別演奏会に行っているので、例年のようなオープニングならではの高揚した気分は湧いてきませんでした。客席もパーヴォアさんが振る割には、空席もそれなりに目立ち、8割弱ぐらいの入りです。

 冒頭は、ラルス・フォークトさんのピアノによるモーツァルトピアノ協奏曲第27番。有名な曲ですが、私は意外と実演で聴く機会に恵まれてない曲です。ラルス・フォークトさんのピアノは、日本やロンドンで何度も聴いていますが、いつも安心して身を委ねられる演奏をしてくれます。

 今日も一つ一つの音がクリアによく響きます。バックのN響のアンサンブルも何とも柔らかで、フォークトさんのピアノの音を引き立ててくれます。余りにも優雅な気分に浸れてしまうので、第一楽章は押し寄せる睡魔との戦いが壮絶でした。第2、3楽章ではしっかり立ち直り、王侯貴族の気分で楽しみました。アンコールは、シューベルトの楽興の時第3番ヘ短調。

 後半はブルックナーの交響曲第二番。私は、全くの未体験曲。YouTubeで予習しようと思っていたのですが、時間切れでできず仕舞でこの日を迎えています。骨格のしっかりしたブルックナーというのが第一印象でした。パーヴォさんが振ると、音楽が決して散らかることなく、構造的に聴こえるので不思議です。音楽が無理なく、無駄なくで理想的BMI(体重・体格指数)って感じがします。N響も素晴らしく、弦、管ともに緊張感ある引き締まった演奏。特に、第2楽章のホルンの音色、第三楽章のスケルツォには痺れました。

 ただ、この音楽、私には掴みどころなく、難しすぎてやや消化不良気味。演奏には拍手喝采だが、自分としての投入感は満点とは行きませんでした。会場は満員時に劣らぬ大拍手と熱烈なブラボーが飛びまくっていましたが、きっとブルオタ人たちも大満足の演奏だったのでしょう。私は、当分、ブルオタ道の入口にも立てそうにありませんが、聴き続けていきたいと思います。来週もパーヴォさん。楽しみです。


第1842回 定期公演 Aプログラム
2016年9月25日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

モーツァルト/ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595
ブルックナー/交響曲 第2番 ハ短調

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:ラルス・フォークト


No.1842 Subscription (Program A)
Sunday, September 25, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Mozart / Piano Concerto No.27 B-flat major K.595
Bruckner / Symphony No.2 c minor

Paavo Järvi, conductor
Lars Vogt, piano
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平田オリザ 『下り坂をそろそろと下る』  (講談社現代新書、2016)

2016-09-22 08:00:00 | 


 演出家の平田オリザさんによるこれからの日本論。

 内容は多岐にわたるので、私の国語力では、うまくまとめるのは難しい。一つのポイントは、リアリズム。平田さんは、3つの種類の寂しさ、即ち1)日本はもはや工業立国ではないこと、2)もはや、この国は、成長せず、長い後退戦を戦っていかなければならないのだということ、3)日本と言う国は、もはやアジア唯一の先進国で無いということ、を「卑屈なまでのリアリズム」を持って認識し、向き合う必要があるという。そして、「坂の上の雲」を求めた日本から「下り坂をそろそろと下りる」日本へ変換していかなくてはならないと説く。

 その過程においては、「自己肯定感によるまちづくり、まちおこし」(p73)が大切で、「文化資本」が重要な役割を果たす(p120)というのは、演劇による町おこしや教育を行っている筆者ならではである。

 そして、もう一つの課題意識は少子化。平田さんは、少子化、人口減少対策の本質は、都市においてはワークライフバランス、地方においては非婚化、晩婚化対策と考える。地方には、「偶然の出会いがない」(p222)ことが最大の問題と考える。筆者の目標は、「子育て中のお母さんが、昼間に、子どもを保育所に預けて芝居や映画を見に行っても、後ろ指を指されない社会を作ること」(p19)であるという。

 小豆島、但馬・豊岡、讃岐・善通寺といった具体的な地方の状況、町おこしにも触れられているので、議論は地に足がついている。東京に住む私には、なかなか地方の現状は分かりにくいのだが、筆者の経験に基づいた地方の記述は、如何に自分の見方が東京中心に偏っているかに気づかされる。

 一方で、部分・部分では首肯するが、これを世の中のシステムとして廻していくのは、相当の時間とエネルギーがかかると思うし、人々の共感が得られるのかが気になる。記述は具体的ではあるが定性的であるのも、今一つ肚落ち感に欠ける。私自身はアベノミクス支持派ではなく、張りぼての「経済政策」は少しばかりも良いとは思わないけど、筆者の説くリアリズムも元気がでない。若い人が本書を読んだらどう思うのか。

 問題提起の本として、もう少し自分なりに考えていきたいテーマだ。


【目次】
序 章 下り坂をそろそろと下る
小さな国/スキー人口はなぜ減ったか/三つの寂しさと向き合う/ちっとも分かっていない

第一章 小さな島の挑戦――瀬戸内・小豆島
島の子どもたち/キラリ科/なぜ、コミュニケーション教育なのか/人口動態の変化/Iターン者の増加/島に出会った理由/農村歌舞伎の島/町の取り組み/小豆島高校、甲子園出場

第二章 コウノトリの郷――但馬・豊岡
環境と経済の共生/城崎国際アートセンター/短期的な成果を問わない/城崎という街/アーティストのいる街/小さな世界都市/未来へ/豊岡でいいのだ

第三章 学びの広場を創る――讃岐・善通寺
四国学院大学/大学入試改革/大阪大学リーディング大学院選抜試験/三位一体改革の本質とは何か/四国学院大学の新しい試験制度/地域間格差の恐れ/変われない地域/伊佐市

第四章 復興への道――東北・女川、双葉
福島の金/女川/獅子振り/高台移転/番屋の力/ふたば未来学園/低線量被曝の時代を生きる/対話劇を創る/地域の自立再生とは何か

第五章 寂しさと向き合う――東アジア・ソウル、北京
『新・冒険王』/日韓ワールドカップと嫌韓の始まり/インターネットという空間/確証バイアス/韓国の病/ヘル朝鮮/北京へ/文明と文化の違い/新幹線はなぜ売れないのか/文明の味気なさに耐える/安全とは何か/零戦のこと/最大の中堅国家/安倍政権とは何か/二つの誤謬

終 章 寛容と包摂の社会へ
『坂の上の雲』/四国のリアリズム/人口減少問題の本質とは何か/偶然の出会いがない/何が必要か/亡びない日本へ
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アカデミア美術館所蔵 ヴェネティア・ルネッサンスの巨匠たち @国立新美術館

2016-09-17 19:43:00 | 美術展(2012.8~)
 ヴェネティアのアカデミア美術館は、ロンドン駐在時に週末の弾丸旅行で2回訪れた。ヴェネティアが誇る美術館という割には、入口が狭く、内部も全般に暗くて、作品も無造作に展示してあり、「あれっ?」と拍子抜け感があったのだが、そのコレクションはベリーニ、ティツィアーノ、ティントレットなどべネティア・ルネッサンスを代表する画家たちをもれなくカバーしていて流石と唸らされた。特に、ヴェロネーゼの『レヴィ家の饗宴』は横幅12mもある超大作には肝を抜かれた。


『レヴィ家の饗宴』※これは本展覧会での展示はありません

 そのアカデミア美術館の作品による美術展ということで、7月の開催間もない時期に国立新美術館に行ってきた。金曜夕刻時に訪れたのだが、ルノアール展はとっても混んでいたが、こちらは始まったばかりということもあってか余裕を持ってみることができた。

 入口を入るといきなりポスターにもなっているベッリーニの「聖母子(赤い智天使の聖母)」に目を奪われる。色合いが何とも艶やかだ。ヴぇネティア派は「絵画においてはデッサンを重視したフィレンツェ派とは異なり、画面を色を使って構築し、流動的で詩的な雰囲気で人間の感覚に直接訴えかける効果を追求した」というWikipediaの通りである。



 本展の目玉であるティツィアーノの《受胎告知》は410×240 cmというその大きさから来る迫力もさることながら、ダイナミックかつドラマティックな表現はクリスチャンでなくとも胸を打つ。これ以外にも、同じくティツィアーノの《聖母子(アルベルティーニの聖母)》やヴェロネーゼの《レパントの海戦の寓意》など、どれも目が釘付けにされるものばかり。


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《受胎告知》 油彩/カンヴァス 410×240 cm サン・サルヴァドール聖堂


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《聖母子(アルベルティーニの聖母)》 油彩/カンヴァス 124×96 cm


パオロ・ヴェロネーゼ(本名パオロ・カリアーリ) 《レパントの海戦の寓意》 油彩/カンヴァス 169×137 cm


 ヴェネティア・ルネッサンスに興味のある人には是非。10月10日までなのでです。


第1章 ルネサンスの黎明―15世紀の画家たち
第2章 黄金時代の幕開け―ティツィアーノとその周辺
第3章 三人の巨匠たち―ティントレット、ヴェロネーゼ、バッサーノ
第4章 ルネサンスの終焉―巨匠たちの後継者
第5章 ヴェネツィアの肖像画
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生島 淳 『エディー・ウォーズ(Sports graphic Number books) 』  (文藝春秋、2016)

2016-09-13 20:00:00 | 


 『コーチングとは愛すること』に続いて、生島氏が前ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズ氏について書いたノン・フィクション。ワールドカップ前と期間中のジャパンの動きについて、主に選手の視点で、ジョーンズ監督を描写する。

 ワールドカップ3勝(それでも決勝トーナメントに進めなかった)という、ラグビー史に新たな歴史を刻んだエディ・ジャパン。その舞台裏を垣間見ることができ、「こんなことが起きていたのか・・・」と感嘆する。世界で勝つためには何をすべきか、プロの世界の厳しさが肌感覚で伝わってくる。そのプロセスは、タイトル通り「戦争」と言っても誇張ではないだろう。

 エディ監督のリーダーシップは決して真似はできない。会社なら間違いなくパワハラで訴えられるだろう。歴史を変える・作るには、狂気が必要なのだ。間違いなくおすすめ。我が家では家族全員が読んだ。



【目次】
第1章 エディー・ジョーンズ
第2章 マインド・ゲーム
第3章 スーパーラグビー・クライシス
第4章 ボーダーライン
第5章 カウントダウン
第6章 ゲーム・デイ
第7章 ドリームズ・カム・トゥルー
第8章 ラスト・デイズ
第9章 オン・ザ・ウェイ・ホーム
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100周年はどう迎えるのか?: N響90周年記念特別演奏会|マーラー「一千人の交響曲」

2016-09-10 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 N響の90周年を記念した特別演奏会。「千人の交響曲」は6月にハーディング/新日フィルで聴いたばかりだが、パーヴォ/N響の「千人」を聴かないわけにはいかない。

 蒸し暑い小雨振る代々木公園横を小走りし、遅刻寸前でNHKホールに駆け込む。あのNHKホールが超満員。定期では完売と言えども、会員席には空席があったりするのだが、見回したところ空席が見当たらないほど。そのお蔭で、息を切らせて3階Rに入ったものの、自分の席は直ぐ見つかった。定演のマイ・シートに近く、ちょっとほっとした。

 冒頭から衝撃的。300名は超える大合唱がいきなり爆発。合唱団の座席のため、いつもより前にせり出したステージで、オケもいつもより観客席に近い。そのためか、オケも良く鳴って聴こえる。全員外国人歌手のソリストたちは、見た目もボリューミーで、人で一杯のステージがより狭く見える。相当の実力歌手陣とお見受けしたが、3階席からでは、合唱とオケに押されてるか、と思うぐらい、合唱とオケが重厚だった。NHKホールが狭く感じるぐらい。

 ただ、駆け込んだ自分のコンディションが上手く回復せず、いきなりのハイテンションに完全に乗り切れなかった。集中力を欠き、目の前で展開されている「名演」に上手く体と呼吸を合わせることができず、第一部は自分としては消化不良のまま終わってしまった。

 自分の気合を入れ直した第2部は、天にも昇る気分だった。この第2部ってこんなに美しくかつ劇的だったのかと初めて気づかされた。ソリストたちの美声が心地よく良く耳に響く。N響のアンサンブルは精緻で美しい。児童合唱を含めた3つの合唱団による合唱は、質と量を両立。そして、それらを見事に融合させるパーヴォさん。至高のパフォーマンスだった。字幕がほぼ視線に近いところにあったのも助かった。音と文字が一体となって、脳裏に、崇高な絵巻が展開された。

 充実の1時間25分。超満員のホールから、滅多に聞いたことがないほどの大拍手。ソリストやパーヴォさんも何度も呼び戻された。

 ホールを後にしながら考えがよぎる。あと10年で100周年か。100周年、記念コンサートは誰が振るのだろうか?是非、このままパーヴォさんに振って欲しい。その時、N響はどんなオケになっているだろうか。真のワールドクラスのオケになり得るんではないか?夢は膨らむばかりだった。


N響90周年記念特別演奏会|マーラー「一千人の交響曲」
2016年9月8日(木) 開場 6:00pm 開演 7:00pm
NHKホール

マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調「一千人の交響曲」

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ソプラノ:エリン・ウォール
ソプラノ:アンジェラ・ミード
ソプラノ:クラウディア・ボイル
アルト:カタリーナ・ダライマン
アルト:アンネリー・ペーボ
テノール:ミヒャエル・シャーデ
バリトン:ミヒャエル・ナジ
バス:アイン・アンガー

合唱:新国立劇場合唱団
合唱:栗友会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団

NHK Symphony Orchestra 90th Anniversary Special Concert | Mahler “Symphonie der Tausend”

Thursday, September 8, 2016 7:00p.m. (doors open at 6:00p.m.)
NHK Hall

Mahler / Symphony No.8 E-flat major “Symphonie der Tausend”

Paavo Järvi, conductor
Erin Wall, soprano
Angela Meade, soprano
Claudia Boyle, soprano
Katarina Dalayman, alto
Annely Peebo, alto
Michael Schade, tenor
Michael Nagy, baritone
Ain Anger, bass
New National Theatre Chorus, chorus
Ritsuyukai Choir, chorus
NHK Tokyo Children Chorus, children chorus
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エンタメ小説のように読めるが、次につながらない一冊: 日本経済新聞社『シャープ崩壊』(2016、日本経済新聞社)

2016-09-07 20:00:00 | 


 シャープの転落を役員間の人事抗争・権力抗争にあるとし、その内幕をレポートした一冊。新聞社らしい書きっぷりで、ドラマティックなドキュメントに仕立てており、リアリティ一杯だ。

 一方で、人事抗争はあったかもしれないが、「企業経営ってそこまで単純化できないだろう」、「本質論ではないだろ」、という思いが読んでいて終始よぎる。経営戦略の「教科書」通りに液晶ビジネスに「選択と集中」をしたシャープの戦略はどこが間違っていたのか?強みであった垂直統合モデルがなぜ弱みに変わったのか?ダントツ競争優位であったはずのシャープの液晶は、韓国、台湾メーカの後塵を拝すようになった、デジタル化・モジュール化の流れに対してどう戦おうとしたのか?こういった、シャープ崩壊の本質的・戦略的な問いに本書は全く答えてない。

 よって、企業小説張りにエンターテイメントとしてはスラスラ読めるが、教訓としては読者に何も残らない一冊となっている。人事抗争がなければ、シャープは転落しなかったのか?明らかに否でしょう。

 読んでいて参考になったのは、改めて経営を預かる人の責任は重さ。一つ一つの決断に従業員の生活、人生がかかっている。経営者の決断一つで、何千、家族も含めれば何万もの人の人生・生活に影響を与えるのだ。

 それを踏まえずにシャープの経営陣が権力抗争に明け暮れていたというのであれば、それは大問題だが、彼らもそれほど阿呆じゃないだろう。シャープの経営陣が、様々な制約条件や社内の政治的力学の中で、一つ一つ決断をどう下していったのか、それが結果として誤ってしまったのはどうしてか?そこがポイントのはずだ。それに触れてない本書は実に「軽い」一冊だ。日本の製造業の歴史に残る失敗事例を、こうしたエンタメ読み物に仕立ててしまう記者や編集者のレベル感に疑問を持たざる得ない。
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期待の若手指揮者 ロレンツォ・ヴィオッティ指揮/ 東京交響楽団/ ベートーヴェン:交響曲 第4番ほか

2016-09-05 06:51:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
夏の間、コンサートは封印していたので、2か月ぶりの演奏会です。
今シーズンから会員になっている東京交響楽団の東京オペラシティ・シリーズ。

ロレンツォ・ヴィオッティは初めて聴く指揮者。登場した本人はホント若かった。まだ20代半ばとのこと。指揮ぶりは実に堂々として、不安を感じさせないどころか、安定感ある豊かな音楽を聴かせてくれました。

冒頭のベートーヴェンの交響曲第4番を生で聴くのは久しぶりでした。暗譜で振るヴィオッティは、変に奇をてらうことは無く正統的な印象。音楽は自然かつ雄弁で、豊かな包容力に包まれ、とっても幸せ気分でした。

後半の「ばらの騎士」組曲は音楽が良いですね。オペラでは1度しか実演に接してませんが、数年前に見た舞台が、瞼に思い起こされます。大管弦楽をフルに使って、東響の皆さんも前のめりで演奏してました。舞台近くの3階席の私には、大音響の音楽は響きすぎて、時々聞き取りずらい時があり、今回も例外ではなかったところはありましたが、大いに楽しみました。最後の「ラヴァルス」も曲の暗い中での明るさが浮き出ていて、曲自体のオーケストレーションの面白さと相まって、聴き応えのある一曲でした。

ホールはパッと見7割ほどの入りでしたが、盛大な拍手とブラボーを貰ってました。確かに、プログラムも面白いし、演奏もエキサイティングで、やっぱり生音は素晴らしいと再確認した次第でした。


2016年09月03日(土)14:00 開演

指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
曲目
ベートーヴェン:交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
R.シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲
ラヴェル:ラ・ヴァルス

Title
Tokyo Opera City Series No.93
Date
Sat. 3rd September 2016, 2:00p.m.
Hall
Tokyo Opera City Concert Hall
Artist
Conductor = Lorenzo Viotti
Program
L.v.Beethoven : Symphony No.4 in B flat major, op.60
R.Strauss : “Der Rosenkavalier” Suite, op.59
M.Ravel : La Valse
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2016夏 2つの台風にぶつかった道東旅行 5日目(最終日)@網走~サロマ湖

2016-09-03 12:38:01 | 旅行 日本
 中盤まで雨に祟られたこの道東旅行もいよいよ最終日。朝起きると、また雨が降っている。ここまで徹底してもらうとむしろ割り切れて、すがすがしい気分。

【釧網線乗車】
 最終日ということで、朝食前から活動開始。今回は、ずーっとドライブ旅行だったけど、私は本来、鉄道派。少しでもその香りを嗅ごうと、オホーツ海沿いを走る釧網線に乗ることに。6:41網走発釧路駅行きの始発列車をターゲット。
 
 網走駅はまだ眠っている感じ。改札口近くのKioskには「5月で閉店しました」の張り紙がしてあり、寂しさを掻き立てる。列車は既に入線済みで、一両車両。車両内はエアコン無しで、扇風機付き。乗客もパッと見、地元と思しき人と大きなリュックやキャスターバックと一緒の旅行客で計10名ぐらいで、ローカル色たっぷり。



 重心低く、低音立てて走り出すディーゼル車の乗車感が何とも心地よい。網走駅を出て市街を抜けると、まもなく左手にオホーツク海をみながら、線路は知床斜里方面に向かって真っ直ぐ伸びる風景が現れる。いつの間にか雨も止み、薄日が差してきた。



 20分ほど乗って、前日に車で立ち寄った清水町の原生花園駅で下車。昨日は観光客がぼちぼちいた原生花園も、朝の7:00では一人占め。








 10分ほどで逆向きの網走行き列車がやって来たので、それに乗って網走へ。復路は、この日から新学期が始まっているらしい網走の中高校生に通う学生さんらで車内は満員。自然に耳に入ってくる女学生たちのおしゃべりをBGMに、帰りの車窓を楽しむ。7:30過ぎに網走着。1時間足らずの、急ぎ足の釧網線体験となった。








【サロマ湖 ワッカ原生花園】
 ホテルに戻って、朝食を済ませ、チェックアウト。午前中をどう過ごすかは少々悩んだけど、結局、網走の名所、網走監獄の博物館やオホーツク流氷館らのアトラクション系ではなく、天気も上向き加減なので足を延ばしてサロマ湖方面へ。

 サロマ湖の東端までは網走から約50キロ弱。サロマ湖とオホーツク海に挟まれた、日本最大の海岸草原と言われるワッカ原生花園に。



 ネイチャーセンターで自転車を借りて、南にサロマ湖、北にオホーツク海を従える通称「龍宮街道」を往復9キロのサイクリング。草原のどこかにいるであろう虫の鳴き声と風の音ぐらいしか耳にはいってこない静けさは、すごく久しぶりの感覚。龍宮街道には観光馬車も乗ることができ、私は乗らなかったけど、雄大な風景の中を観光馬車がゆっくりゆっくり動くさまは、東京の時間感覚とは別世界。









 時間が許せば、ここに丸1日ぐらいぼーっと過ごしていたいと思うほど気に入ったのだけど、残念ながら、お尻が区切られているので午前中いっぱいで、退出。

【アドヴィックス常呂カーリングホール】
 ワッカ原生花園のある常呂町ってどっかで聞いたことあるなあ~と思ったら、カーリングの聖地ということを思い出した。カーリングは、長野オリンピックで生で観戦した、私にとって縁あるスポーツ。これは、一度、伺わなければと思い、聖地中の聖地、アドヴィックス常呂カーリングホールへ。
 お盆明けだしまだ閉館中かなと思ったら、とんでもない。6つもレーンがある大カーリング場では、平昌オリンピックに向けた強化合宿中。北海道内はもちろん、軽井沢や中国長春などからも選手たちが集い、真剣かつ熱い戦いが展開中。館内には、日本のカーリングの歩みといったパネル展示もしてあって、面白かった。





 常呂カーリングホールで、今夏の道東旅行は終了。女満別空港で車を返し、東京便に乗り込んだ。天候には恵まれなかったけど、それでも初めての道東の自然、風景、食事を十分に楽しむことができた。総走行距離540キロは、私の通常の運転距離の半年分以上。かなり余裕を持って、スケジューリングしたつもりだったけど、それでも毎日、移動があって、宿泊地が変わるのは、中年旅行者には少々かったるい。まあ、目一杯遊ばせてもらった夏休みだった。

 次回は多少不便でも、鉄道やバスなどの公共交通機関で、ゆっくり回りたいなあ~。


《もうすぐ羽田空港》

 2016年8月19日 


 ※今回は「雨に祟られた」と書きつつ、北海道在住の方にとっては、翌週以降の更なる台風直撃で大きな被害や影響を受けられたことと思います。謹んで、一刻も早い復興を祈念しております。
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