ベートーヴェン生誕250周年に当たる今年、人類に偉大な遺産を遺した偉人の生涯を振り返るのも良いかと思い本書を手に取った。古典中の古典と言ってよいロマン・ロランの本作品だが、私は今まで読んだことが無かった。原著は1903年、ブックオフで見つけたこの岩波文庫版は1938年第1刷で1994年第60刷である。
本文は70頁弱の読み物であるが、その内容の濃さは格別だ。ベートーヴェンのほとばしる才能、人生への真摯な姿勢、耳の病の苦悩が直球で伝わってくる。音楽・芸術への使命感、深い信仰心、自然への敬愛も敬服するばかりだ。作者ロマンのベートーヴェンへの敬意、愛も行間に滲み出ている。
ベートーヴェンの作曲作品についてのロマンのコメントも興味深く、私が未聴の曲への興味も引きたてられる。今の世の中、本当に便利になったと思うのは、本書で触れられる楽曲はネットで検索すれば、すぐにその場で、Youtube等で聴くことができることだ。読みながら、楽曲を聴き、作曲当時のベートーヴェンの環境、思考に思いを寄せることができる。何とも、充実した読書時間だ。
一緒に収められている「ハイリゲンシュタットの遺書」「ベートーヴェンの手紙」「ベートーヴェンの思想断片」も味わい深い。週末の半日を使って読めば、満足な週末となると思う。