帰国以来、初の外オケです。外オケは高くてとても手が出ないのですが、そんな中、今回のロッテルダム・フィルは比較的お手頃価格(それでも残っていた最安値のC席を購入したのですが、7000円ですので決して安くはありません。しかも、行ってみたらステージ後ろのP席でした)。そして指揮は、ロンドン・フィルの首席客演指揮者としていつも情熱的な音楽を聞かせてくれたヤニック・ネゼ=セガンの登場。(ネゼ=セガンは日本ではまだ知名度はさほどではないかもしれませんが、凄いんです)ですので、購入後、今日のこの日を指折りに待っていました。

(5年ぶりのサントリーホール)
この日は日本ツアー初日。ネゼ=セガンさんはいつもどおり、颯爽と笑顔で現れました。(私の記憶では、もう少し後頭部の髪が薄かった記憶があるのですが、なんか殖えた感じ。何か良い育毛剤があるなら教えて欲しい・・・)そしてコンサート終了まで、以前と変わらぬ情熱的な指揮ぶりで、期待通り素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
やはり一番は、休憩後のブラームス交響曲4番でしょうか。第一楽章、夏の山小屋で感じる朝の空気のような透き通った音楽がスーッとゆっくりと体の中に入ってきます。そして、第2楽章の演奏の美しさは私の筆力ではとても記述不能。装飾があるわけでなく、楽譜にある音楽そのものが再現されている感覚です。あまりの透明感ある美しさに涙が出そうになりました、そして、第3楽章から間断なく入った第4楽章は木管陣(特にフルート)の美しい調べが胸を打ちます。そして、最高潮で迎えるフィナーレ。もう、「聴かせてくれて、ありがとう」としか言いようがないです。
前半の花は、庄司紗矢香さんをソリストに迎えて、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。これも良かったです。庄司さんのヴァイオリンは何度か聴いていますが、これまでの印象は、上手だけど感情があまり高ぶらない演奏というイメージだったのですが、今日は非常に情感あふれる音楽に聴こえました。特に第2楽章の美しさは格別。真っ赤なドレスに身を包んで演奏した庄司さんでしたが、残念ながら私のP席からだと、むき出しの細い肩と背中しか見えません。この体格から良くこれだけ会場一杯に響く演奏ができるものだと感心します。熱烈拍手にこたえて、アンコールでバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調アダージョを弾いてくれましたが、これがまた天上に昇るような美しさ。私としては、プロコフィエフよりも良かったぐらいです。
私にとってはサントリーホールも5年ぶりぐらい。改めてこのホールの音響の良さに痺れました。これだけの音響のホールは、正直、ヨーロッパにもあまりないと思います。在ロンドン中、ロンドン交響楽団の人と話す機会があったのですが、「団員は、日本に行くとサントリーホールで演奏するのが楽しみなんだ」と言っていたのも良く分かります。今日のロッテルダムフィルの人もそう思ってくれたに違いありません。
ただ、今日の私の席はP席(ステージ後ろ)の一列目。ホルン舞台の直後ろで、生音がダイレクトに飛び込んできます。それはライブならではの快感である一方で、ホルンの音だけが必要以上に直撃。正直、ホルンの伴奏で、弦の音が聞こえにくく、オケ全体をバランス良く聴くことは叶いませんでした。
ロッテルダム・フィルはロイヤル・コンセルト・へボウの影に隠れて、欧州の中ではメジャーとは言えませんが、しっかりと低く安定したアンサンブルで欧州オケの実力を見せてくれました。それなのに、聴衆の入りが8割5分程度で空席がけっこうあったのと、素晴らしい演奏の割に拍手が思いのほかおとなしく感じたのは残念でした。拍手自体は大きく、長かったのですが、もっと熱烈拍手であっても良いのではと思った次第です。
ネゼ=セガンさんは昨年からフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を務めてますが、彼の明るいオーラはアメリカ人には間違いなく受けるでしょうね。ホントは、ロンドンフィルの音楽監督になって欲しかったんだけどなあ~

(アンコール曲)
日時 2013年1月31日(木) 開演/19:00
会場 サントリーホール
出演 管弦楽 :ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
指揮 :ヤニック・ネゼ=セガン
ソリスト:庄司紗矢香(ヴァイオリン)
演奏曲目 シューマン:歌劇『ゲノフェーファ』序曲 Op.81
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 Op.63 <ヴァイオリン:庄司紗矢香>
ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 Op.98