「ばらの騎士」を実演で観るのは2回目ですが、改めてこの作品の素晴らしさが堪能できたパフォーマンスでした。
まずは、元帥夫人の林さん、オックス男爵の妻屋さん、オクタヴィアンの小林さんらの主要歌手陣の安定したパフォーマンスが印象的。林さんの元帥夫人は、落ち着いた大人の女性で、この物語の隠れ主役であることが滲み出ています。小林さんのズボン役も動きが軽快で実にお似合いでした。妻屋さんの下種貴族ぶりははまり役で、彼の動きで舞台が動的で活力あるものになっていたと言っていいでしょう。
有名な第3幕最後の、元帥夫人、オクタヴィアン、ソフィーの三重奏の美しさは、胸を打たれます。隣席の年配の男性は涙が溢れ出ていたようで、しきりに鼻をすすっていましたが、共感します。
指揮のヴァイグレさんと読響の洗練された演奏も、ウイーンの雰囲気が香ってくるような、この音楽の素晴らしさを引き立てていました。
演出はどっかで観たことあるような芸風の舞台だなあっと思ってプログラムを見たら、何とリチャード・ジョーンズさん。イギリスで、「賭博師」(プロコフィエフ)、「三部作」(プッチーニ)、「アンナニコル」(タネジ)、「マクベス」(ヴェルディ)、「ホフマン物語」(オッフェンバック)と5本の作品を見ていますが、どれも一捻りも二捻りもある演出で、楽しませてくれました。今回は、らしさは3幕に凝縮されていたと思います。現代風の造りにして、派手な色彩と照明で舞台を浮かび上がらせたり、現代風のダンスっぽい動きを入れるなどちょっと変わった趣向を織り込んだり、ディテールに拘った演出は、いかにもジョーンズ。私は好きですが、ここは好みが分かれるでしょう。
丁度、秋に新国立劇場でジョナサン・ミラー演出でやるようでうすから、見比べが面白いでしょうね。ジョナサン・ミラーの方はきっと正統派でしょうが、見ものです。
全体を通じて、改めてこの作品の完成度の高さに感嘆します。美しい音楽、奥深い人間ドラマに加えて「笑い」。休憩も入れて4時間かかる長いオペラですが、あっという間に終わってしまいました。
ばらの騎士〈東京公演〉
グラインドボーン音楽祭との提携公演
オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本:フーゴー・フォン・ホフマンスタール
作曲:リヒャルト・シュトラウス
会場:東京文化会館 大ホール
公演日:2017年7月29日(土) 14:00
スタッフ
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:リチャード・ジョーンズ
装置:ポール・スタインバーグ
演出補・振付:サラ・フェイ
衣裳:ニッキー・ギリブランド
照明:ミミ・ジョーダン・シェリン
音楽アシスタント: 森内 剛
合唱指揮:大島義彰
演出助手:エレイン・キッド
家田 淳
太田麻衣子
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:多田羅迪夫
セバスティアン・ヴァイグレ
リチャード・ジョーンズ
キャスト
元帥夫人:林 正子
オックス男爵:妻屋秀和
オクタヴィアン:小林由佳
ファーニナル:加賀清孝
ゾフィー:幸田浩子
マリアンネ:栄 千賀
ヴァルツァッキ:大野光彦
アンニーナ:石井 藍
警部:斉木健詞
元帥夫人家執事:吉田 連
公証人:畠山 茂
料理屋の主人:竹内公一
テノール歌手:菅野 敦
3人の孤児:大網かおり、松本真代、和田朝妃
帽子屋:藤井玲南
動物売り:芹澤佳通
ファーニナル家執事:大川信之
合唱:二期会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
DER ROSENKAVALIER
Opera in three acts
In German language with Japanese supertitles
Libretto by Hugo von Hofmannsthal
Music by RICHARD STRAUSS
[Performances in Tokyo]
SAT. 29. 14:00 30. 14:00 July 2017
at Tokyo Bunka Kaikan (Japan)
DER ROSENKAVALIER is a Glyndebourne Festival Opera production,
originally performed in the Glyndebourne Festival 2014
Sponsored by
Menicon Co., Ltd.
Mizuho Securities Co., Ltd.
CLASSICA JAPAN
STAFF
Conductor:Sebastian WEIGLE
Stage Director:Richard JONES
Set Designer:Paul STEINBERG
Moving Director: Sarah FAHIE
Costume Designer:Nicky GILLIBRAND
Lighting Designer:Mimi Jordan SHERIN
Musical Assistant:MORIUCHI, Takeshi
Chorus Master: ÔSHIMA, Yoshiaki
Assistant Stage Director:Elaine KIDD IYEDA, June ÔTA, Maiko
Stage Manager:KOIZUMI, Hiroshi
Production Director:TATARA, Michio
CAST
Die Feldmarschallin Fürstin Werdenberg:HAYASHI, Masako
Der Baron Ochs auf Lerchenau:TSUMAYA, Hidekazu
Octavian:KOBAYASHI, Yuka
Herr von Faninal:KAGA, Kiyotaka
Sophie:KOUDA, Hiroko
Jungfer Marianne Leitmetzerin:SAKAE, Chika
Valzacchi:ÔNO, Mitsuhiko
Annina:ISHII, Ai
Ein Polizeikommissar:SAIKI, Kenji
SHIMIZU, Nayuta
Der Haushofmeister bei der Feldmarschallin:HAJI, Masato
Der Haushofmeister bei Faninal: ÔKAWA, Nobuyuki
Ein Notar:HATAKEYAMA, Shigeru
Ein Wirt:TAKEUCHI, Kôichi
Ein Sänger:KANNO, Atsushi
Drei adelige Waisen:ÔAMI, Kaori
MATSUMOTO, Mayo
WADA, Asahi
Eine Modistin:FUJII, Rena
Ein Tierhändler:SERIZAWA, Yoshimichi
Chorus:Nikikai Chorus Group
Orchestra:Yomiuri Nippon Symphony Orchestra