いよいよ、今回の主要目的のひとつ花咲線の鉄旅です。
日本最東路線のこの列車に乗るのは、鉄道好きの私(いわゆる「鉄」には程遠いですが)には憧れの一つ。この日の釧路~根室の片道2時間半、往復5時間の乗車体験を楽しみにしてきました。胸躍らせて、8時21分発に乗るべく釧路駅へ。
なんと1両編成。しかも、列車の側面には「ルパン三世」のキャラクターたちがプリントされています。どうやら、路線途中の浜中駅が「ルパン三世」の原作者モンキーパンチの故郷と言うことで、ルパンを使った村おこしの一環のようです。いいじゃないですか~。
【往路:釧路~根室】
社内の座席は8割ほど一杯で、ぱっと見、観光客が7割弱といったところでしょうか。本格的なビデオ器具とマイク一式を持った若者もいます。北海道旅行中とお見受けするシニアご夫婦やアジアからの若者旅行者など、いろんな取り合わせ。私のようなソロ旅行者の方が多いですね。
海側となる進行方向右サイドの席はすでに埋まっていたので、左サイドの窓側席を確保。有難かったのは、シートが思いのほか大きくてクッションもよく効いていること。中央本線の各駅停車のボックス席シートよりも格段に心地よいです。
釧路の市街地を抜けると林の中を走ります。時折、昨夕の列車と同様、汽笛が鳴りスピードが急に落ちるので、鹿がウロウロしているようです。窓側座席は確保しているものの、運転手さんの斜め背後から、どこまでも続く線路と前方景色を見ながら乗っているのが楽しく、童心に返って景色を追いました。この日、朝から小雨模様なのが残念です。
厚岸(あっけし)に近づくと、いよいよ海が右手に見えてきました。浜辺では多くの人が出て、昆布干しのため昆布を広げる作業をしていました。潮の香りと昆布の匂いが車内にも強烈に入り込んできます。
厚岸駅で団体旅行と思しきシニア層のグループが乗車。どうも観光バスと鉄道旅行を組み合わせた道東周遊プランの様子。駅を発って彼らが乗ってきた理由が分かりました。右手に海と別寒辺牛湿原が見渡せる絶景ポイントに入るのです。運転手さんもここが見せ場とばかりに列車のスピードを落として、お客さんサービス。小雨の暗めの空なのでいささか残念ですが、湿原の脇を走る鉄道に乗っているのは、さながら湿原の上を走っているような感覚です。
東へ東へと向かいながら、段々と雲が薄くなり、薄日も差すようになってきました。陽の光を受け始めると、風景の表情が瞬く間に変わって、輝きを増していくのが驚きです。落石海岸沿いでは、風力発電用の大きな風車が所々立っていているのは、単に旅行目的の観点からすると、ちょっと周囲の風景と不釣り合いでやや興ざめなところはありますが、これは我儘と言うものでしょう。。
根室に近づくにつれて、人や家の気配がしてきます。そして、2時間半の鉄旅もあっという間に終了し、終点。到着は10時53分。フォームに降りて、駅を見渡します。この先は線路無し、本当の意味でのターミナル駅に何とも風情を感じるのは私だけでしょうか。「日本最東端有人の駅」とあるプレートを見て首を傾げていたのですが、最東端の駅は手前の東根室ということを知りました。
さあ、戻りの列車を16時8分発に定め、5時間の根室観光にでます。
(根室観光については次エントリーで)
【復路:根室~釧路】
復路は往路のリベンジで海側シートをゲット。この晴天なら午前中よりも更に良い車窓が期待できます。レンタカーを返却したので、もう車に乗ることも無いので復路は呑み鉄です。
さあ、復路のスタート。まずは、隣駅の東釧路で最東端の印を確認。
駅名は忘れましたが、根室駅の近隣の駅でも駅周辺に蝦夷鹿が普通にいます。奈良のようです。
快晴だった根室でしたが、復路も西に向かうにつれ、雲が暑さを増し、厚岸では小雨となりました。まあ、それでもビールをちびちびやりながら車窓を追うのは最高です。ホテルから鞄に文庫本を2冊忍ばせてましたが、結局1冊も触ることすらありませんでした。
復路でのアクシデントと言えば、厚岸付近と上尾幌近辺で列車が鹿と2回衝突したこと。都度、運転手さんが車両を止め、衝突した鹿の除去、車両確認をしたうえで、出発となります。各回10分は止まっていますので、必然的に列車の運行も遅れます。幸運にも、私は衝突の現場には立ち会わずに済みましたが、車両の直前を横切る鹿を何頭か目撃しましたので、動きの予測がつきにくく、集団で異動している鹿を避けるのがいかに難しいかが実感として理解できました。鹿も可哀そうですが、運転手さんの技術もメンタルも本当に大変なことで、頭が下がります。
20分近く遅れて、釧路には19時前に到着。最後、若い運転手さんに「おつかれさまでした」と一声かけてましたが、やはり同じことを思ったご婦人も「大変ですね。ありがとうございました」と声をかけていらっしゃいました。
(19時前の釧路川)
林、海岸、湿原、平原と次々に表情を変える車窓、ディーゼル車独特の乗車感覚、のんびりとした空間。これらを味わえる花咲線の鉄旅は強くお勧めできます。
(2日目)