その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ソヒエフ祭り最終日:トゥガン・ソヒエフ、N響 1月Bプロ

2025-02-02 07:38:14 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ソヒエフ祭り定演最終回はBプログラムで東欧・ロシアの作曲家の作品です。

冒頭のムソルグスキー(リャードフ編)/歌劇「ソロチンツィの市」からの2曲は、軽快で明るい音楽でしたが、こちらの準備が整わず、直ぐに睡魔に襲われ、朦朧状態。ごめんなさいでした。

続く、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番は全く初めて聴く曲で、ソリストはN響のコンサートマスターの郷古さん。マイシートがP席なので、後ろ姿ではありますが積極的な攻めの姿勢が感じられ、切れ良く、しかも美しいヴィオリンの音が響いてきました。一方で、楽曲がちょっと私には難易度高く、何をどう聴いていいのか分からないままで終わってしまいました。せっかくの郷古さんがソロなのだし、しっかり予習すべきだったと、後悔しきり。

アンコールでは、マロさんに代わってコンサートマスターに就任される長原さんとコンマスコンビでバルトークの「44のヴァイオリン二重奏曲」から第28番「悲しみ」。新しいN響の幕開けを予感させるフレッシュさが良かったです。

白眉は後半のドヴォルザーク交響曲第8番。私にもなじみのあるこの楽曲をソヒエフさんがN響から素晴らしい音を引き出していました。まずの全体の印象は、本当にN響が良く鳴っている。各パーツのリーダーの方の演奏はもちろんなのですが、各楽器からの音が隅々から明瞭に聴こえてきます。音の情報量が半端ないです。

そしてソヒエフさんが紡ぐ音は、とっても表情豊か。決して何かの情景を描いた音楽では無いとは思うのですが、印象派の画家が広い野原を描いたような、何か色のついた情景が目に浮かぶような気にさせられます。この曲はN響ではマリナーさん、広上さん、ブロム翁など、名だたる名指揮者の棒で聴いていますが、ソヒエフさんならでは重層的で味わい深く、暖かい感じのする演奏でした。

もちろん終演後は大拍手。N響メンバーの表情を観ていても、ソヒエフさんへの信頼感、一緒に音楽を創造する喜びに満ちているのが伝わってきます。これからも継続的な登壇をお願いします。





(P席にもご挨拶いただき嬉しい!)

定期公演 2024-2025シーズンBプログラム
第2030回 定期公演 Bプログラム
2025年1月31日(金) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]

サントリーホール

指揮 : トゥガン・ソヒエフ
ヴァイオリン : 郷古 廉(N響第1コンサートマスター)

ムソルグスキー(リャードフ編)/歌劇「ソロチンツィの市」─「序曲」「ゴパック」
バルトーク/ヴァイオリン協奏曲 第2番
ドヴォルザーク/交響曲 第8番 ト長調 作品88

Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2030 Subscription (Program B)
Friday, January 31, 2025 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]

Suntory Hall

Mussorgsky / Liadov / The Fair at Sorochyntsi, opera―Introduction, Gopak
Bartók / Violin Concerto No. 2
Dvořák / Symphony No. 8 G Major Op. 88

Conductor
Tugan Sokhiev
Violin
Sunao Goko (First Concertmaster, NHKSO)

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マロさん最後のコンマスの定演:ソヒエフ、N響、ブラームス交響曲第1番ほか

2025-01-27 08:31:42 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

今月はソヒエフ祭り月間なのだが、先週のAプロは行けなかったので、Cプロから参加。当日券売切の盛況ぶりである。

ホールでプログラム読んで、この日がマロさんこそ篠崎史紀氏のN響定期でのコンサーマスターとしての最後の出番であることを知った。なんてこった !

個人的に面識があるわけではないが、その風格、オーラは威厳たっぷりでまさにミスターN響。その剛毅でダンディな外見と共にとっても知的で自由な雰囲気も纏っている。そして、繊細で緊張感あふれるヴァイオリンの音色にいつも魅了されてきた。そのマロさんのコンマス姿もこの定演が最後かと思うと何とも感慨深い。
 
そんな心の動揺が収まらないまま、楽員さん達が入場を始める。マロさんへはソヒエフにも劣らないほどの大きな拍手が満員の聴衆から寄せられた。
 
前半のストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」は初めて聴く楽曲で、その古典的な旋律や雰囲気の音楽にびっくり。各楽器のソロが引き立つ曲でN響ソロ奏者達が創り出す音色が美しい。マロさんのヴァイオリンもいつも通り、切れ味鋭く3階席まで飛んできた。
 
後半のブラームス交響曲第1番は、ソヒエフの熱い指揮にN響が目一杯に応えた爆演。全体的にゆったりとしたペース(X上では「速め」、「標準的」というポストが殆どだったので、少数派の感想のよう)で、丁寧に音を引き出すソヒエフの指揮のもと、情報量多く、解像度が高い。様々な表情を見せつつ、温かさを感じる演奏だった。
 
重層的な弦の合奏や吉村さんのオーボエを初めとした管楽器の美しい音が耳に響く。第2楽章のマロさんの研ぎ澄まされたヴィオリンソロもさすが。第4楽章は、N響メンバーのマロさんへの惜別の想いがこもってるか如くの入魂の演奏。聴いている方も自然と前のめりになる。フィナーレの畳み込む迫力は通常の「良い」演奏とは別次元のものだった。
 
終演後は会場から割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。何度も呼び戻されるソヒエフだが、途中、ソヒエフ自身がマロさんに記念の花束を持参しプレゼント。指揮者、楽員、聴衆らみんなの感謝の気持ちが表れていたホールだった。
 
マロさん去るのは寂しいが、また新しい人も含めて、伝統が革新とともに綿々と引き継がれて行くのだろう。貴重なN響の歴史的1ページの瞬間に立ち会うことができたことも含めて、大感謝の演奏会となった。マロさん、お疲れさまでした。ありがとうございました!
 

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2029回 定期公演 Cプログラム
2025年1月25日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

曲目
ストラヴィンスキー/組曲「プルチネッラ」
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68
指揮トゥガン・ソヒエフ

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2029 Subscription (Program C)
Saturday, January 25, 2025 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]
NHK Hall

Program
Stravinsky / Pulcinella, suite
Brahms / Symphony No. 1 C Minor Op. 68

Conductor Tugan Sokhiev

 
 
 
 
 
 
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堅実でとっても満足感高い演奏会:小泉和裕/都響 ドビュッシー 交響詩〈海〉ほか

2025-01-25 07:59:26 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

今年の演奏会初めです。昨年最後の演奏会から1月以上空いて、随分お久し振りな感覚です。この日のプログラムはフォーレとドビュッシーというフランス人作曲家の組曲と交響詩の間に、モーツァルトのピアノ協奏曲が挟まれるという、バランス良く魅力的な構成です。

冒頭のフォーレの「ペレアスとメリザンド」組曲。昨年、同じコンビでシューンベルグによる同名の組曲を聴いています。私はフォーレの全曲を生で聴くのは初めてでしたが、繊細で柔らかな第一曲からその美しさに魅了されました。都響の弦陣のアンサンブルや管陣が創り出す世界に浸りました。

2曲目のモーツァルトピアノ協奏曲第21番も音楽の明るさ、伸びやかさが抜群で素晴らしい演奏でした。ピアノ独奏のミシェル・ダルベルトさんは初めて聴くピアニストです。ピアノの音が明瞭で弾けるようで、躍動感が引き立ちます。聴いていて自然と体が動き出しそうになるので抑えるのに一苦労。やっぱりモーツァルトの音楽は人の本能の訴える力があるわ。

アンコールのドビュッシーの〈月の光〉を演奏してくれました。私には夜露の雫が葉っぱから滴り落ちるような繊細で柔らかな演奏で、このおかわりの満足感は凄い。

休憩後はドビュッシーの組曲〈海〉。久し振りに生で聴く気がしますが、小泉さんの〈海〉は楷書体の実に正々堂々とした作りです。第二楽章の波のうねりそのものに感じる音楽の抑揚が印象的。第三楽章のダイナミックな演奏にも圧倒されました。東京文化会館ならではの乾いた響きが、個々の楽器の美音をクリアに届けてくれました。

ホールの入りは8割弱という感じでしたが、終演後は熱い拍手と歓声が舞いました。派手なところは無いですが、シュアにハイレベルな演奏を聴かせてくれるこのコンビさすがです。久し振りのコンサート体験。やっぱり音楽は素晴らしいと再認識してホールを後にしました。

2025年1月24日

 

第1015回定期演奏会Aシリーズ
日時:2025年1月24日(金) 19:00開演(18:00開場)
場所:東京文化会館 

出 演
指揮/小泉和裕
ピアノ/ミシェル・ダルベルト


曲 目
フォーレ:組曲《ペレアスとメリザンド》op.80 
モーツァルト:ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467 
ドビュッシー:交響詩《海》-3つの交響的スケッチ 
【ソリスト・アンコール】(1/24up)
ドビュッシー:月の光
 (ピアノ/ミシェル・ダルベルト)


Subscription Concert No.1015 A Series
This concert is over. Date: Fri. 24. January 2025 19:00 (18:00)
Venue: Tokyo Bunka Kaikan 

Artists
KOIZUMI Kazuhiro 
Kazuhiro KOIZUMI, Conductor
Michel DALBERTO, Piano


Program
Fauré: Pelléas et Mélisande, Suite, op.80 
Mozart: Piano Concerto No.21 in C major, K.467 
Debussy: La mer – Trois esquisses symphoniques 
【Soloist Encore】(1/24up)
Debussy:Clair de lune
 (Michel DALBERTO, Piano)

 

 

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新国立オペラ、モーツァルト〈魔笛〉(指揮:トマーシュ・ネトピル、演出:ウィリアム・ケントリッジ)

2024-12-17 07:17:33 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

今年最後のオペラ観劇は「魔笛」。欧州ではクリスマスシーズンに良く上演される印象のあるモーツァルトの傑作オペラですが、私は実演に接するのは2016年以来で8年ぶり。初日ということと、相当数の若い人がご招待されていたようで、ホワイエは活気ある雰囲気に包まれていました。

図抜けたというわけではなかったですが、歌手陣、オケ、演出と三拍子揃った傷の無い安定した上演で、モーツァルトの世界をしっかりと楽しむことが出来ました。

歌手陣では、タミーノのパヴォル・ブレスリック、ザラストロのマテウス・フランサの2人の外国人歌手陣が安定した実力を発揮。特に、ブレスリックのテノールは滑らかで、演技もこなれた感じで、はまり役という印象です。

日本人歌手陣も負けておらず、九嶋香奈枝の美しいソプラノと容姿はパミーナにぴったりだったし、先月「ウイリアム・テル」に出演したばかりの安井陽子の夜の女王も堂に入ったものでした。パパゲーノの駒田敏章は、歌は良いのですがちょっと演技がおとなしめ。衣装もスコットランドのカントリー風でしたので、演出の意図なのかもしれません。パパゲーノが弾けない「魔笛」は舞台全体の活力が弱かった気はしました。侍女や童子の重唱は美しく、うっとりとさせられます。

トマーシュ・ネトピル指揮の東フィルの演奏は好演。前奏曲からテンポよく、音も四階席迄良く届きます。全幕通して推進力ある演奏を楽しみました。

新国にとっては再演なのですが、私はウィリアム・ケントリッジの演出の〈魔笛〉は初めて。映像を多用した作りで、舞台装置も幻想的な雰囲気をしっかり作っていて、個人的に好きな舞台です。舞台前方に張った透過性のスクリーンに映った星座表を模した映像やスクリーン上で描かれる画はメルヘンチックで魔笛にぴったり。ただ、舞台奥のスクリーンに映った映像は4階席からだと判別できず残念でした。

いわゆる普通に良い公演で、モーツァルトのすぐれた作品を不満なく楽しめるだけで十分です。モーツァルトの音楽、世界を満喫した一夜でした。

2024年12月10日

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
魔笛
Die Zauberflöte / Wolfgang Amadeus Mozart
全2幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉 
文化庁劇場・音楽堂等における子供舞台芸術鑑賞体験支援事業
公演期間:
2024年12月10日[火]~12月15日[日]
予定上演時間:
約3時間(第1幕70分 休憩25分 第2幕85分)

スタッフ

【指 揮】トマーシュ・ネトピル
【演 出】ウィリアム・ケントリッジ
【美 術】ウィリアム・ケントリッジ、ザビーネ・トイニッセン
【衣 裳】グレタ・ゴアリス
【照 明】ジェニファー・ティプトン
【プロジェクション】キャサリン・メイバーグ
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト

【ザラストロ】マテウス・フランサ
【タミーノ】パヴォル・ブレスリック
【弁者・僧侶Ⅰ・武士II】清水宏樹
【僧侶Ⅱ・武士I】秋谷直之
【夜の女王】安井陽子
【パミーナ】九嶋香奈枝
【侍女I】今野沙知恵
【侍女II】宮澤彩子
【侍女III】石井 藍
【童子I】前川依子
【童子II】野田千恵子
【童子III】花房英里子
【パパゲーナ】種谷典子
【パパゲーノ】駒田敏章
【モノスタトス】升島唯博
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
2024/2025 SEASON

Music by Wolfgang Amadeus Mozart
Opera in 2 Acts
Sung in German with English and Japanese surtitles

OPERA PALACE

Supported by the Agency for Cultural Affairs, Government of Japan in the fiscal 2024

10 Dec - 15 Dec, 2024 ( 4 Performances )

 

CREATIVE TEAM & CAST
CREATIVE TEAM

Conductor: Tomáš NETOPIL
Production: William KENTRIDGE
Set Design: William KENTRIDGE, Sabine THEUNISSEN
Costume Design: Greta GOIRIS
Lighting Design: Jennifer TIPTON
Projection Design: Catherine MEYBURGH

CAST

Sarastro: Matheus FRANÇA
Tamino: Pavol BRESLIK
Sprecher / Erster Priester / Zweiter Geharnischter: SHIMIZU Hiroki
Zweiter Priester / Erster Geharnischter: AKITANI Naoyuki
Königin der Nacht: YASUI Yoko
Pamina: KUSHIMA Kanae
Erste Dame: KONNO Sachie
Zweite Dame: MIYAZAWA Ayako
Dritte Dame: ISHI Ai
Erster Knabe: MAEKAWA Yoriko
Zweiter Knabe: NODA Chieko
Dritter Knabe: HANAFUSA Eriko
Papagena: TANETANI Noriko
Papageno: KOMADA Toshiaki
Monostatos: MASUJIMA Tadahiro

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra

 

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シリーズ締めに相応しい上演! ジョナサン・ノット/東響 R.シュトラウス<ばらの騎士> @サントリーホール

2024-12-16 07:21:05 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私には、今年最後の演奏会。ノット/東響による「サロメ」、「エレクトラ」に続くR.シュトラウスとホフマンスタールの三作の結びとなる公演です。過去2つの演奏会も出色でしたが、この演奏会は締めに相応しい過去2回の公演もしのぐほどの素晴らしい演奏会でした。

「サロメ」「エレクトラ」では題名役の歌手が抜きんでた素晴らしさが印象的でしたが、今回は実力と個性を兼ね備えた外国人歌手陣を中心とした歌手達がワールドクラスで、歌の醍醐味を味わえる滅多に聴けないレベルの上演となりました。

とりわけ感銘を受けたのは、元帥夫人役のミア・パーションとオックス男爵役のアルベルト・ペーゼンドルファー。パーションはロンドンで何度が接していますが、その美しいソプラノは変わらずでしたし、今回の大人の女性を演じる演技が何とも気品高く、愁いに満ちていて、ステージで輝いていました。ほぼでずっぱりのオックス男爵は、ペーゼンドルファーの力強い低音と俗物貴族ぶりの演技が存在感抜群で舞台を盛り上げました。

題名役のカトリオーナ・モリソンも若く、真っ直ぐな若者を好演。ゾフィー役のエルザ・ブノワは清明な美しい歌声が強いインパクトを残します。最終幕の最後のパーションを含めた三重唱とモリソンとブノワによる二重唱は至高の美しさでした。ゾフィーの父ファーニナル役のマルクス・アイヒェも活き活きとした演技と良く通るバリトンぶりを発揮。日本人歌手陣も、アンニーナ役の中島郁子らが、しっかりと脇を固めていました。

慣れない前方の席であったためか、もしくは歌手陣に集中しすぎたためか、オーケストラの演奏は細部にまで気が廻らず。前半は硬さを感じたり、オケと歌手陣のバランスがどうかと感じるところもあったのですが、尻上がりに一体感も増し、美しくもありながら、衰退にむかう世情を反映した「ばらの騎士」の世界観を満喫しました。

演奏会方式ですが、サー・トーマス・アレンの演出監修で、ソファーやワインなど簡易なセットもあり、歌手陣の演技も含め場を演出。簡易オペラとして必要十分です。

終演後はノットさん、歌手陣、オケに熱狂的な拍手が寄せられ、何度も呼び戻し。私も含め、観衆のみなさん、公演に集中していたエネルギーを思いっきりリリースしているようでした。

ノット監督も来年度が最終シーズン。更にボルテージも上がるでしょう。楽しみです。

 

 

 

2024年12月13日(金) 
17:00 開演

特別演奏会 R.シュトラウス 「ばらの騎士」(演奏会形式)
サントリーホール

出演
指揮=ジョナサン・ノット
演出監修=サー・トーマス・アレン
元帥夫人=ミア・パーション(ソプラノ)
オクタヴィアン=カトリオーナ・モリソン(メゾソプラノ)
ゾフィー=エルザ・ブノワ(ソプラノ)
オックス男爵=アルベルト・ペーゼンドルファー(バス)
ファーニナル=マルクス・アイヒェ(バリトン)
マリアンネ/帽子屋=渡邊仁美(ソプラノ)
ヴァルツァッキ=澤武紀行(テノール)
アンニーナ=中島郁子(メゾソプラノ)
警部/公証人=河野鉄平(バス)
元帥夫人家執事/料理屋の主人=髙梨英次郎(テノール)
テノール歌手=村上公太(テノール)
動物売り/ファーニナル家執事=下村将太(テノール)

合唱=二期会合唱団

2024.12.13(fri) 17:00 START

Special Concert “Der Rosenkavalier” in concert style

Suntory Hall

Artists
Jonathan Nott, Conductor(Music Director, Tokyo Symphony Orchestra)
Sir Thomas Allen, Direction
Miah Persson, Marschallin(Soprano)
Catriona Morison, Octavian(Mezzo soprano)
Elsa Benoit, Sophie(Soprano)
Albert Pesendorfer, Baron Ochs(Bass)
Markus Eiche, Faninal(Baritone)
Hitomi Watanabe, Marianne & A milliner(Soprano)
Noriyuki Sawabu, Valzacchi(Tenor)
Ikuko Nakajima, Annina(Mezzo soprano)
Teppei Kono, A police commissioner & A notary(Bass)
Eijiro Takanashi, Marschallin’s major-domo & An innkeeper(Tenor)
Kota Murakami, An italian singer(Tenor)
Shota Shimomura, An animal vendor & Faninal’s major-domo(Tenor)

Nikikai Chorus Group
Tokyo Symphony Orchestra

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ルイージお初の「展覧会の絵」: ルイージ/N響 スラブ系プログラム

2024-12-07 07:33:45 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

仕事都合で振替で1日目に変更。私にとっては、今年最後の演奏会であり、サントリーホールであり、N響です。

スタートはスメタナの「売られた花嫁」の序曲。このオペラは、以前、亡きビエロフラーベク指揮のBBCSO(演奏会方式)で聴いたことがありますが、この序曲がすべてを表すような陽気で楽しいオペラ。ウオーミングアップどころか、冒頭からエンジン全開で、キレのある演奏を聴かせてくれました。序曲だけではもったいない。そのままオペラに突入してほしい。そんな思いです。

続いては、ネルソン・ゲルナー独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。丁度、1年前の昨年12月に指揮ルイージ/ピアノ河村尚子で2番を聴いているのですね。ルイージさんにとっては連続性も意識されてるのかしら。

2番に比べると、私が実演に接ししてる機会もずっと少ないので多くは語れないのですが、ゲルナー(一見、年齢不詳な感じ)のピアノは正統派のど真ん中のストレートとでも言うような、奇を衒わない純な音に聴こえました。清らかでとっても瑞々しい。陽が反射して眩しいほどの清流の水面を鮎がピチピチと弾けるように飛び跳ねる印象です。そして、N響も伴奏に徹するというよりは、まさに共創。独奏者との相乗効果が心地よい。とりわけフィナーレの盛り上がりは素晴らしく、悶絶。

後半はムソルグスキーの「展覧会の絵」。N響のポストで知ったのですが、信じられないことにルイージが初めて振る曲とのこと。冒頭の菊本さんのトランペットがホール一杯に鳴り響くと、全曲を通じてN響のメンバーの金管・木管・弦・打楽器の面々の個人技が次から次へと披露されました。ルイージさんの指揮は、とっても劇的ですが、スラブっぽい響きというよりは、純粋にこの楽曲の多彩さ、ラヴェルの編曲の素晴らしさが強く出た作りだったと思います。フィナーレの盛り上がりもまさに大団円で、私の本年最後の演奏会を締めてくれました。

都合で来週のリストの「ファウスト交響曲」を聴けないのはとっても残念ですが、今年も一杯楽しませて貰いました。年明けは、ソヒエフ祭り。期待の演奏会は続きます。

 

定期公演 2024-2025シーズンBプログラム
第2026回 定期公演 Bプログラム
2024年12月5日(木) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]
サントリーホール

曲目
スメタナ/歌劇「売られた花嫁」序曲
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」

[アンコール曲]
12/5:ラフマニノフ/リラの花 作品21-5番
ピアノ:ネルソン・ゲルナー

指揮: ファビオ・ルイージ
ピアノ:ネルソン・ゲルナー

Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2026 Subscription (Program B)
Thursday, December 5, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]

Suntory Hall

Program
Smetana / The Bartered Bride, opera―Overture
Rakhmaninov / Piano Concerto No. 3 D Minor Op. 30
Mussorgsky / Ravel / Pictures at an Exhibition, suite

[Encore]
December 5: Rakhmaninov / Lilacs, Op. 21-5
piano: Nelson Goerner


Conductor: Fabio Luisi
Piano: Nelson Goerner

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日本のオペラ上演史に1ページ追加:新国立オペラ/ロッシーニ「ウイリアム・テル」(指揮:大野和士、演出:ヤニス・コッコス)

2024-12-05 08:58:01 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

遅まきながら「ウイリアム・テル」の感想です。もともとスケジュールがうまく合わなかったことと、5時間の上演時間にも怯んで、半ば観劇を諦めていたのですが、日本初のフランス語での本格上演、しかも好きなロッシーニの滅多に上演されないオペラということで、半日休暇を頂いてマチネ公演に突撃。でも結果として、本当に行っておいて良かった。

歌手陣、合唱、オーケストラ、演出にグランドオペラらしいバレエも加わり、夫々が持ち味を存分に発揮。その上に、その相乗効果が作品としての一体性を高めた名舞台でした。

一番印象に残ったのは、新国立劇場合唱団の合唱。場面、場面で農民、狩人、愛国者、民衆と兵士たちと様々な合唱が多用されますがが、どれもその一体感、迫力、清らかさなど、聞き惚れるものばかり。素晴らしかったです。

歌手陣も、外国人・日本人問わず、しっかり夫々の存在感を示していました。題名役のゲジム・ミシュケタのバリトンは物語の軸を支え、アルノルド・メルクタール役のルネ・バルベラのテノールは伸びやかで、声量たっぷりの美声。劇場に響き渡ります。マティルド役のオルガ・ペレチャッコマティルダは繊細で清らかなソプラノで、とっても気品がある。第2幕の独唱やアルノルドとの二重唱は、劇場が雑音0で一体となって聞き入っていたのが感じ取れるほどでした。日本人歌手でも妻屋秀和の悪役ぶりも堂に入ったもの。ジェミ役の安井陽子の子役ぶりは、溌溂としていて、第4幕の歌唱も美しかったです。

大野和士率いる東フィルも良かった。直前に大野さんが首(?)の治療で12月の演奏会は急遽お休みというアナウンスがされていたので、まさかこの公演シリーズも途中交代?と冷や汗出ましたが、そんな雰囲気は微塵も感じさせないリード振り。序曲のチェロから、物語の世界にぐぐっと引っ張り込んでくれました。4時間半にわたり、ロッシーニの変化に飛んだ名曲群を躍動感や情感たっぷりに聴かせてくれました。時折、もっと畳み込むような勢いがあっても良いかなと感じる場面もあったのですが、初めて聞くオペラだし、楽譜も知らない(まああっても読めない)ので勝手な印象です。

スイスの山村をイメージしたような青基調の舞台も美しいです。ドラマの場を的確に提供していて、下支えしています。自然で無理がない演出の素晴らしさは、先月物議を醸した、演出の自己主張ばかりが鼻についた読替えオペラとの差が顕著でした。フィナーレでステージ奥のスクリーンに現代のウクライナで被弾した建物の映像が投影されているように見えましたが、最上階二列目からでは三分の一ぐらいしか見えず、全体像がつかめず残念。スイス独立を目指す物語であるので強国からの自立闘争としての現代とのつながりを意識したものであるようです。

日本オペラ史に記録されるであろう、この公演に立ち会え、なんとも嬉しいオペラ体験でありました。

2024年11月26日

2024/2025シーズン
ジョアキーノ・ロッシーニ
ウィリアム・テル<新制作>

Guillaume Tell / Gioachino Rossini
全4幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉

公演期間:2024年11月20日[水]~11月30日[土]
予定上演時間:約4時間35分(第1幕75分 休憩30分 第2幕55分 休憩30分 第3・4幕85分)

スタッフ
【指 揮】大野和士
【演出・美術・衣裳】ヤニス・コッコス
【アーティスティック・コラボレーター】アンヌ・ブランカール
【照 明】ヴィニチオ・ケリ
【映 像】エリック・デュラント
【振 付】ナタリー・ヴァン・パリス
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)】ゲジム・ミシュケタ
【アルノルド・メルクタール】ルネ・バルベラ
【ヴァルテル・フュルスト】須藤慎吾
【メルクタール】田中大揮
【ジェミ】安井陽子
【ジェスレル】妻屋秀和
【ロドルフ】村上敏明
【リュオディ】山本康寛
【ルートルド】成田博之
【マティルド】オルガ・ペレチャッコ
【エドヴィージュ】齊藤純子
【狩人】佐藤勝司
【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

2024/2025 SEASON
New Production

Music by Gioachino Rossini
Opera in 4 Acts
Sung in French with English and Japanese surtitles

OPERA PALACE
20 Nov - 30 Nov, 2024 ( 5 Performances )

Running time is approx. 4 hours and 35 mins including intervals.
Tue, 26 November 2024, 14:00

CREATIVE TEAM

Conductor: ONO Kazushi
Production, Set and Costume Design: Yannis KOKKOS
Artistic Collaborator: Anne BLANCARD
Lighting Design: Vinicio CHELI
Video Scenography: Eric DURANTEAU
Choreographer: Natalie VAN PARYS

CAST

Guillaume Tell: Gezim MYSHKETA
Arnold Melchtal: René BARBERA
Walter Furst: SUDO Shingo
Melchtal: TANAKA Taiki
Jemmy: YASUI Yoko
Gesler: TSUMAYA Hidekazu
Rodolphe: MURAKAMI Toshiaki
Ruodi: YAMAMOTO Yasuhiro
Leuthold: NARITA Hiroyuki
Mathilde: Olga PERETYATKO
Hedwige: SAITO Junko
Un chasseur: SATO Shoji

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra

 

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ルイージ/N響 シェーンベルク/交響詩「ペレアスとメリザンド」ほか

2024-12-02 07:29:44 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

今日はワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲と愛の死」とシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」にR.シュトラウスの歌曲が挿まれるという後期ロマン派を集めた垂涎のプログラム。今週は「ウイリアム・テル」に「サイモン・ラトル/バイエルン放送響」があって、フルコースでもうお腹一杯のところに、更に大好物のとんかつ定食が出てきたような感覚です。

冒頭のワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」─「前奏曲と愛の死」はN響らしい精緻で整ったアンサンブルが、この曲の緊張感や危うい雰囲気を余すことなく表現していました。早くこのコンビでオペラやってほしいです。

続いてはR. シュトラウスの愛を歌った短めの歌曲が5作品。クリスティアーネ・カルクさんは初めて聴く方です。清らかで透明感あふれるソプラノはとっても落ち着いていて優しい。声量で圧倒するようなところは微塵も無いですが、自然に会場隅々まで届いていきました。きっと、これらがドイツのリートの美しさの真髄なのだろうと、勝手に感じた次第。

休憩後は、先月20日にサントリーホールで小泉/都響の公演で聴いたばかりのシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」。ルイージさんの運びは、とっても劇的でオペラの場面が走馬灯のようにまぶたに浮かびます。N響も個々のソロから合奏まで、ルイージさんのタクトにしっかりと応えていて、素晴らしいパフォーマンスでした。この11,12月の最大と言っても良い収穫は2回も生で聴きたかったこの曲が聴けたこと。ますますこの曲が好きになって、感謝です。

ちょっと残念だったのはホールの響きかな。多くの方がXでポストしていましたが、確かにN響はこのホールの音の出し方を心得ていて、非常に音が良く飛んできました。ただ、それでも、この「ペレアスとメリザンド」の幻想的で官能的な世界観はサントリーホールのような残響豊かなホールの方が良く表れる気がしました。

今月はCプロは都合で行けないので、次回のBプロが今年最後のルイージさんの演奏会。沈みかかった西日が代々木公園の木々を黄金色に照らす中、年の瀬を感じながらホールを後にしました。

 

定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2025回 定期公演 Aプログラム
2024年12月1日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

曲目
― シェーンベルク生誕150年 ―
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」─「前奏曲と愛の死」
R. シュトラウス/「ばらの花輪」作品36-1*、「なつかしいおもかげ」作品48-1*、「森の喜び」作品49-1*、「心安らかに」作品39-4*、「あすの朝」作品27-4*
シェーンベルク/交響詩「ペレアスとメリザンド」作品5

指揮:ファビオ・ルイージ
ソプラノ:クリスティアーネ・カルク*

【開演前の代々木公園】

Subscription Concerts 2024-2025Program A
No. 2025 Subscription (Program A)
- The 150th Anniversary of Arnold Schönberg’s Birth -

Sunday, December 1, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]
NHK Hall

Wagner / Tristan und Isolde (Tristan and Isolde)—Prelude and Liebestod
R.Strauss / Das Rosenband Op. 36-1 (The Rose Chain)*, Freundliche Vision Op. 48-1 (A Welcome Vision)*, Waldseligkeit Op. 49-1 (Bliss in the Woods)*, Befreit Op. 39-4 (Released)*, Morgen Op. 27-4 (Tomorrow)*
Schönberg / Pelleas und Melisande Op. 5 (Pelléas and Mélisande)

Conductor: Fabio Luisi
Soprano*: Christiane Karg

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年に1度のプレミアリーグ体験: サイモン・ラトル/バイエルン放送響 マーラー交響曲第7番ホ短調「夜の歌」ほか @NHK音楽祭

2024-11-29 12:05:57 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

サイモン・ラトルとバイエルン放送響の来日公演に足を運びました。今年、最初で最後の外オケ演奏会です。

今回はチケット取りでガチャ外れ。N響会員ということで先行販売に申し込んだものの、割り当てられた席は2階の左サイド最深部。奥まって、低い天井が覆いかぶさるこのエリアは、私が最も苦手とするところ。こんなんなら一般販売日に3階席奥でも自ら選んで購入した方が良かったと、購入時は強く後悔しました。当日となったこの日は、気を取り直して席に着きましたが、う~む。2階左サイド前方はまとまった空席がありましたが、会場はほぼ満員。前日のサントリーホールが相当の名演だったようなので、その熱気をそのまま持ち込んでいるのかと思うような、期待感に溢れる雰囲気が感じられました。

冒頭はバートウイッスルの5分程度の小品「サイモンへの贈り物 2018」。管楽器のみの編成で、変化にとんだ現代曲は私の理解を超えていてコメント難しい。

続いて、この日のメインのマーラー交響曲第7番。個人的には、この曲、マーラーの交響曲の中では断トツで聴いてない曲です。捉えどころなく、取っ散らかって、分裂症的な印象がとっつきにくく、定期演奏会のプログラムに入ってない限りは聴いてこなかった音楽。なので、実演経験もジンメルさんとN響定期で一度聴いただけ。

今回の最大の収穫は、ラトルさんとバイエルン放送響のおかけで、この音楽の多彩さやつくりの魅力に気づいたことでした。楽章ごとの詳細なコメントはできないのですが、ラトルさんが紡ぐ音楽は、緻密さと豪快さ、論理性と感情、強さと弱さ、形式と中身などなどをすべてを呑み込んだ仕立てに感じられました。「取っ散らかって」と思っていたのは「こういう形式なんだ」とうなずいたり、金管の爆発的な響きと弦楽器の耳をそばだてる繊細な弱音、構造的な作りの中に感情が一杯に詰め込まれている感覚などなど、表現の幅広さに驚きの連続。一音たりとも聴き逃せない、そんな緊張感が自らに課せられた1時間20分余りでした。

個人的には第4楽章の「夜の歌」の優しく、デリケートさが極上でした。左サイドであったためか、ヴァイオリンの後ろに位置したギターとマンダリンの細い音もしっかりと聞こえてきて、うっとり。ここだけはこの席で良かったと思いました(N響定期の3階席右サイドの定位置では届かなかったんでは)。すべてを洗い流すような第5楽章のオケ総出での盛り上がりは、このオーケストラのパワーが炸裂。地響きが感じられるほど。各プレイヤーの強い自己主張をまとめ上げて、昇華させるラトルさんの剛腕も更に引き立ちます。日本のオケもとっても好きですが、この地力の違いは認めざるを得ず、毎度思うのですが、サッカーのプレミアリーグを生で見た時の、Jリーグとのショッキングな違いと感覚は似ています。

終演後は大きな拍手に包まれましたが、ここでも不満は2階サイド席。精一杯拍手しますが、なんかホール全体の熱狂の隣の別室にいるような感覚で、聴衆の一員としての一体感に置いてきぼりにされている感じ。演奏中は、思いのほか音は飛んできていたものの、う~ん、この疎外感ってことは演奏もやっぱりデグレして聴こえていたのではと疑心暗鬼も募りました。

いずれにしても名演は名演。お財布を気にしながらも、1年に1回はやはり外の世界に触れるべきだなあ~と改めて思った演奏会でした。

NHK音楽祭 バイエルン放送響楽団
Bavarian Radio Symphony Ochestra

2024年11月28日(木) 19:00開演 (18:00開場)
指揮:サイモン・ラトル (Sir Simon Rattle) 

バートウィッスル/サイモンへの贈り物 2018
Harrison Birtwistle: Donum Simon MMXVIII

マーラー/交響曲第7番 ホ短調 「夜の歌」
Gustav Mahler: Symphony No.7 in E minor "Song of the night"

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ディマ・スロボデニューク/N響、ロシア・プログラム @サントリーホール

2024-11-25 07:30:39 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ディマ・スロボデニュークさん指揮のN響B定期に行きました。初めて実演に接するスロボデニュークさん指揮によるロシア・プログラムです。

私的に今回のお目当てはチャイコフスキーのヴィオリン協奏曲。ヴィオリン協奏曲の代表格のような作品で、私もとっても好きな一曲です。なぜかここ数年、生で聴く機会に恵まれず、しかも今回はロシア出身のボリソグレブスキーさんがソリストということも加わり、とっても楽しみにしていました。

ただ、結果としては、お目当ての前半よりも後半の方が印象的な演奏会となりました。ボリソグレブスキーさんは流石の名手という感じで、技巧に富んだ切れ味良い演奏を聴かせてくれたのですが、なぜか私の胸に刺さらず。言葉化する能力に欠けるのが我ながらもどかしい所ですが、歌が感じられなかったという印象で、私の好みにはミートせず、残念。

後半のプロコフィエフとストラヴィンスキーはいずれも初めて聴く曲でしたが、とても楽しめました。プロコフィエフのバレエ音楽「石の花」は、バレエ音楽らしい優雅で美しい音楽。バレエの情景が目に浮かぶようです。

ストラヴィンスキーの「3楽章の交響曲」は「春の祭典」を思い起こさせるようなリズミカルで勇壮な第一楽章、穏やかでうっとりさせる第二楽章、そして強い推進力を感じる第三楽章と、個性に溢れた各楽章をN響の力の籠った演奏で満喫。

スロボデニュークさんも、今回の三曲は得意とするレパートリーのようで、自家薬籠中の楽曲という印象です。ジェスチャー大きく、しかも小気味良い指揮ぶりでした。

また、この日目(耳)を引いたのは、オーボエの首席を務めた吉井瑞穂さん。N響でもおなじみのゲスト首席ですが、彼女のオーボエの音は響きは明らかに一線を画しています。芯が太くて強い音がぐっとオーケストラ全体を底上げします。

11月は3名の「若手」指揮者のそれぞれの個性を味合う、10月のブロムシュテッドさんとはまた違った楽しみに満ちた演奏会でありした。

 

 

定期公演 2024-2025シーズンBプログラム
第2024回 定期公演 Bプログラム
2024年11月22日(金) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]

サントリーホール

PROGRAM

曲目
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
プロコフィエフ/バレエ音楽「石の花」─「銅山の女王」「結婚組曲」
ストラヴィンスキー/3楽章の交響曲

指揮:ディマ・スロボデニューク
ヴァイオリン:ニキータ・ボリソグレブスキー

Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2024 Subscription (Program B)
Friday, November 22, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]

Suntory Hall

Program
Tchaikovsky / Violin Concerto D Major Op. 35
Prokofiev / The Tale of Stone Flower, ballet―The Mistress of the Copper Mountain, Wedding Suite
Stravinsky / Symphony in Three Movements

Conductor Dima Slobodeniouk
Violin Nikita Boriso-Glebsky

【クリスマスモードに入ったサントリーホール】

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小泉和裕/都響、一度聴きたかったシェーンベルク 交響詩《ペレアスとメリザンド》

2024-11-22 07:26:37 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

仕事のスケジュール都合で、都響A定期からB定期に振替えて参加。

ちらしのキャッチコピーをそのまま引用するのは気が引けますが、「モーツァルトの優美。シェーンベルクの耽美」という表現がぴったりの演奏会でした。

前半のモーツァルト「ディヴェルティメント第17番」を全曲通して聴くのは初めて。モーツァルトらしさ満載の音楽でサントリーホールが欧州の宮殿にでもなったかと思わせます。

とりわけ、今回の振返席がRA席で、野球場で言えば右中間センター寄りの席だったこともあり、対向に矢部コンマス率いる1stヴァイオリン隊から飛んでくる音が完全に一つの楽器のように、ダイレクトに直撃し、快感の極致です。楽曲も優雅さの中に、多彩な変化が織り込まれていて、ワクワク感が止まることが無いです。ヴァイオリンだけでなく弦と唯一の管楽器であるホルンが一体となって奏でられた上質の空間と時間でした。

後半のシューンベルグの交響詩《ペレアスとメリザンド》は今回のお目あて。戯曲、ドビュッシーのオペラともども好きで、シェーンベルクの交響詩も一度聴いてみたかったのです。シェーンベルクということで身構えていたのですが、ロマンティックで聴きやすい音楽でした。戯曲の主要人物造形や幻想的、官能的な雰囲気が音楽の中に美しく織り込まれています。物語の情景、人物たちが脳内で再生されていきます。

なんと、小泉さんは暗譜での指揮でした。長く、大編成、しかも滅多に演奏されないこの曲を譜面なしで振るって、凄くないですか。小泉さんの指揮に応えて、オーケストラは各楽器の名手のソロは聴き応えたっぷりでしたし、加えて、大編成オケが一つの生命体のように動き、うねる様には圧倒されます。休みなく音楽がつながっていくこの交響詩、45分近くありますが、あっという間に終わってしまいました。

終演後の会場から大きな拍手に小泉さんも大いに満足の様子でした。この方も今年75歳になられましたが、若いですね~。幸運なことに、シューンベルグの交響詩《ペレアスとメリザンド》は12月にルイージ/N響でも聴きます。聴き比べも楽しみです。

第1011回定期演奏会Bシリーズ
日時:2024年11月20日(水) 19:00開演(18:00開場)
場所:サントリーホール 

【シェーンベルク生誕150年記念】

指揮/小泉和裕

曲 目
モーツァルト:ディヴェルティメント第17番 ニ長調 K.334 (320b)
シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》op.5

 

 

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レギュラー入り希望! N響11月C定期、指揮 アンドレス・オロスコ・エストラーダ、ショスタコーヴィッチ交響曲第5番

2024-11-18 07:30:20 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ヤマカズさんに続いて11月定期はエストラーダさん。N響とは初共演とのことですが、Youtubeでhr管を指揮しているのを視聴したことあるので初めての気はしません。プログラムによると、欧州で広く活躍中のようです。私も高い期待度を持って、NHKホールへ到着。聴衆は前週よりも若干少なく、7割強の入りという感じでした。

ちょっとスロー過ぎやしないかと思ったところもありましたが、スケール感一杯の「タンホイザー」に続いては、ヴァインベルクのトランペット協奏曲。ソロ奏者のラインホルト・フリードリヒさんは、今年66歳ということですが、大きな体に小さなトランペットをもって、余裕の態で飄々とステージに現れます。既にオーラがすごい。

楽曲は初めて聴くものですが、曲風や曲想に変化の多いなかなかの曲者な音楽です。私の理解の範疇を超えるものでしたが、フリードリヒさんの突き抜けるようなトランペットの音色に耳を奪われます。指揮者、オケを見回し、音楽を一緒に楽しもうという雰囲気が満載で、視覚的にも楽しいです。

アンコールは日本の「さくらさくら」。しんみりと、聴かせて頂きました。

後半のショスタコーヴィッチの交響曲第5番は、エストラーダさんとN響の持ち味が炸裂した名演でした。エストラーダさんの指揮は、強弱のメリハリが明確で、柔と剛を使い分ける二刀流。そして、パーヴォさんを想い起すような機能的な指揮の一方で、情と熱量もたっぷり。オケをドライブする力が強烈で、N響からいつも以上の力の籠った音を引き出していました。

N響も、透明感一杯で一糸乱れぬ弦陣のアンサンブル、各木管楽器の美しいソロ、そしてフリードリヒさんの熱量が乗り移ったのではないかと思うような金管の咆哮。更に、盛り上げ処をしっかり抑える打楽器陣。非の打ちどころない演奏でした。

終演後の拍手も前週を上回るほど。しかも、この演奏会がN響団員としては最後となるというファゴットの菅原恵子さんへの花束贈呈もあり(なんと、フリードリヒさんも花束贈呈に参加)、暖かい拍手に満ち溢れたNHKホールでした。

エストラーダさんの名前が来年の定期演奏会には無いのは残念ですが、今後も定期的に招聘し、複数のプログラムを振ってほしいと強く希望します。

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2023回 定期公演 Cプログラム
2024年11月16日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
ヴァインベルク/トランペット協奏曲 変ロ長調 作品94
ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番 ニ短調 作品47

指揮:アンドレス・オロスコ・エストラーダ
トランペット:ラインホルト・フリードリヒ

 

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2023 Subscription (Program C)
Saturday, November 16, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Wagner / Tannhäuser, opera―Overture
Weinberg / Trumpet Concerto B-flat Major Op. 94
Shostakovich / Symphony No. 5 D Minor Op. 47

Conductor: Andrés Orozco-Estrada
Trumpet: Reinhold Friedrich

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祭のあとの・・・N響11月Aプロ、指揮:山田和樹、ドビュッシー/管弦楽のための「映像」─「イベリア」ほか

2024-11-13 07:30:39 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

10月のブロム翁祭りに加え、NHK音楽祭でのデュトワさんの復帰演奏会と、お祭り続きもやっと一息という11月定期演奏会。例年に比べ、代々木公園の紅葉は相当遅れている印象で、この日も生温かさを感じる気候の中、NHKホールを訪れました。この日は、山田和樹さん(以下、親しみもってヤマカズ)によるフランスもの中心のプログラム。私もホールは10月のような売り切れ満員とまでは行きませんでしたが、ぱっと見8割近くは埋まっており、なかなかの集客で嬉しい限り。

冒頭のルーセルのバレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」は、初めて聴く楽曲で、バレエを観たことがありませんが、バレエの様子が目に浮かぶようなドラマティックな音楽。ヤマカズさんの伸びやかな指揮ともマッチして、とっても聴き応えありました。

結果としてこの日一番に刺さったのは、続いてのピエモンテ―ジのピアノ独奏によるバルトークのピアノ協奏曲第3番。ピエモンテ―ジさんは2013年10月にN響との共演でベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を聴いていますが、あれから10年以上経過しています。その時の印象と変わらず、彼のピアノは澄んで、力強い音に魅せられます。第1楽章の冒頭から、輝くような音も素晴らしかったし、第2楽章の静かで沈思的な音楽も強い吸引力があります。N響の演奏も伴奏に留まらず、能動的にピアノに絡んでいく感じです。バルトークって、ちょっととっつきにくさを感じるのですが、この曲は、これがバルトーク?と思うほど、初めてにもかかわらず、体に違和感なく吸い込まれる体感でした。

アンコールのシューベルトは優しく、穏やかな美音が続きます。体の不純物が洗い流されている感覚でした。

休憩後の2曲もヤマカズさんとN響が、情感と色彩豊かな演奏を聴かせてくれました。ヤマカズさんの柔らかくて、しなやかで、大らかな指揮ぶりは、見ている者もとってもリラックスした気持ちにさせてくれます。ブロム翁やデュトワさんから感じる老巨人的なオーラから来る緊迫感とは明らかに違います。楽曲もブロム翁のドイツ・オーストリアものの謹厳さとは異なる、地中海系の暖かさを感じます。もちろん、オーケストラのメンバーは、個々の見せ場も多く、リラックスして演奏するという気分はこれっぽっちも無いでしょうが、それでも先月ののしかかるような独特のプレッシャーとは違う感じはします。そんな違いを感じたり、想像しながら、ラヴェル「優雅で感傷的なワルツ」とドビュッシーの「管弦楽のための「映像」─「イベリア」」と二曲の名曲を堪能しました。

ヤマカズさんはその溌溂として開放的な感じが良いですね。海外で活躍する日本人指揮者としてこれからも応援したいです。

 

 

定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2022回 定期公演 Aプログラム

2024年11月10日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

曲目
ルーセル/バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」作品43─組曲 第1番
バルトーク/ピアノ協奏曲 第3番
ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ
ドビュッシー/管弦楽のための「映像」─「イベリア」

[アンコール曲]
*11/10:シューベルト/即興曲 変ト長調 作品90-3

指揮:山田和樹
ピアノ: フランチェスコ・ピエモンテージ*

Subscription Concerts 2024-2025Program A
No. 2022 Subscription (Program A)
Sunday, November 10, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Roussel / Bacchus et Ariane, ballet Op. 43—Suite No. 1 (Bacchus and Ariadne)
Bartók / Piano Concerto No. 3
Ravel / Valses nobles et sentimentales (Noble and Sentimental Waltzes)
Debussy / Images for Orchestra—Iberia

Conductor: Kazuki Yamada
Piano: Francesco Piemontesi

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快心のデュトア、N響復帰演奏会 @NHK音楽祭 

2024-11-02 10:59:19 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

セクハラ疑惑でN響から遠ざかっていたデュトワさんだが、7年ぶりに登場。多くのファンが待望した演奏会で、土曜日の定期演奏会に続いてチケットは完売。

定期公演ではないので、今回割り当てられた席は3階のセンター4列目のやや左側。定演での席のランクは同じだが、慣れないので落ち着かないのとステージが随分遠く見える。

いきなり冷や水を浴びせるようなコメントで恐縮なのだが、私自身は、疑惑報道以降N響がデュトワのポストは維持したまま起用をストップしていたのは事実なので、再起用にあたっては何らかの説明が要るんではないかと思っていたのだが、日本らしいというか、特にそうした説明は無かった。いわゆる大人の対応というのだろう。私は、疑惑発生当時は、氏のN響への貢献には大きく感謝しつつも、その疑惑とされた行為は批判をした記憶があるが、もうあの騒ぎから6年が経過し、勝手ながら「時効」と言って良いのだろうという私なりの折り合いをつけて演奏会に出かけた。当時はツイッター上ではN響に限らず世界のメジャーオーケストラの起用止めについては賛否両論だったが、今回、X上で特に「疑惑」との整理について言及される方を殆ど見かけなかった。メジャーオケではまだ復帰という話は聞いたことないものの、こんな話を今更持ち出す私がナイーブ過ぎて、皆さん大人ということなのだろうか。

まあ、そうしたことは少々頭の片隅にはあったのだが、久しぶりのデュトワとN響コンビである。しかも、プログラムもデュトワ色満載。期待しないわけがない。そして、その期待に見事にこたえ、聴衆を唸らせるパフォーマンスを見せてくれた演奏会で合った。

スタートはラヴェルの組曲「マ・メール・ロワ」。冒頭からその抑えながらも色彩感ある美しい響きが、おー、デュトアと唸らせる。ただ、その繊細なアンサンブルはちょっと3階センターからは味わうのには遠すぎたのと、夢見るような音楽が、着席間もない私の眠気を猛烈に刺激し3曲目あたりで撃沈。幸い、終曲には我に返ったが、ちょっと堪能したとは言い難く、自分が悪いのだが、とっても自己嫌悪。

気を取り直して、2曲目に。ニコライ・ルガンスキー独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。これは眠気から覚醒した後でもあり、集中力マックスで聴けたが、独奏・オケともに素晴らしい演奏だった。ルガンスキーのピアノは奇を衒うことのない演奏で、端正さと優美さを兼ね備えた絶妙の調和を感じた。安定感も抜群で、素直に楽曲に没頭できる。N響の演奏もピアノ独奏の支え役に徹することなく、ダイナミックかつロマンティックな合奏を聞かせてくれた。ピアノ独奏とオケの素晴らしいコラボでラフマニノフの世界を満喫。

そして、後半の「春の祭典」。デュトワの得意中の得意のレパートリーであり、デュトア、N響の力を見せつけてくれた演奏だった。リズム感、音の強弱、合奏、あらゆる面で唸らせられるハルサイだ。ただ、演奏の素晴らしさは堪能しつつも、個人的には、あまりにも整って、スマートすぎる印象があって、この曲の土臭さのようなものがあまり感じられなかった気がしたのは残念だった。会場や席の違いもあるかもしれないが、今年2月に聴いたチョン・ミョンフンと東フィル(オペラシティ、1階のA席だった)の方が衝撃を受けたのが正直なところ。

それにしても、デュトワは今年で88歳というが、ブロム翁の97歳に負けず劣らずの驚きの元気、溌溂さである。姿勢は良いし、堂々と雄然とした指揮姿はオーラ出まくりで、3階席迄まで感じられる。とても88歳には見えない。N響が必死に食らいつく様子も、ついこないだまでブロム翁との熱とはまた違うピリピリさが伝わった。定演とは客層の違いもこの日の特徴であったが、終演後は変わらない大拍手に包まれた。

N響でブロム翁、デュトワと続けざまに素晴らしい演奏会を堪能できるこの幸運の余韻を噛みしめて、帰路についた。

2024年10月30日(水) 19:00開演 (18:00開場)

指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:ニコライ・ルガンスキー

ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番 ハ短調作品18
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

 

NHK Music Festival 2024
Wednesday, October 30, 2024 7:00p.m. [Doors Open 6:00p.m.]

NHK Hall

Program
Ravel / Ma mère l’Oye, suite (Mother Goose)
Rakhmaninov / Piano Concerto No. 2 C Minor Op. 18
Stravinsky / The Rite of Spring

Conductor:Charles Dutoit
Piano: Nikolai Lugansky

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ブロムシュテット祭 最終日: N響10月Cプロ、指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット、シューベルト交響曲第7番/第8番

2024-10-29 07:30:24 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

10月のブロムシュテット祭もいよいよ最終プログラム。この1カ月、トラブル無く完走頂いたことに感謝の気持ちで一杯だ。もっとも団員さんのポストだと、「団員は厳しいリハーサルに疲労困憊になっていく一方で、マエストロは日増しに元気になっていく」、ということらしいので、どういうメンタルとフィジカルを持ったかたなのだろう。ドジャースの大谷翔平くんも翁には叶わない。

Cプログラムはシューベルトの交響曲7番〈未完成〉と8番<ザ・グレート>のカップリング。私の音楽を聴く力と筆力では、書けば書くほど原体験が損なわれるので、多くは書けないが、今回の「祭」の最終を飾るに相応しいプログラムであり、演奏であった。2曲とも、音楽ってこんなに純粋で、美しく、深遠なんだと、感じさせてくれた。感情と構造の調和、一音一音に籠められた意思が現れる力強さ、そして紡がれる音楽の若々しさ。道を究めて、悟りを開きながらも、更に高みを目指す。そんな姿勢も見て取れる。

N響の演奏も憑かれたような集中力を示していた。川崎コンマスの力強いリードとともに、弦陣のアンサンブルはただ美しいとか、揃っているとかとは別物の一体感あって、有機的で前向きな動きを感じた。8番での吉村さんのオーボエソロを始め、管陣の音色も音の中に自らが溶けこんでいくような感覚になる。弦・管・打それぞれが嚙み合って音楽が流れて行く交響楽の醍醐味だった。

〈ザ・グレート〉の第4楽章はフィナーレに向かう翁とオケの気合が最高潮に達して、異次元の空間が生まれる。聴いている者にもこみ上げるものがある。繰り返しは、ずーっと何度も繰り返してほしい。この幸せな時間が終わってほしくない、そんな気持ちだった。

満員のNHKホールは、満員とは思えない静まりの中でステージを見つめ、耳を傾ける。これだけステージと聴衆が一体となった空間は本当に素晴らしい。終演後の拍手は演奏への感動以上に、感謝の気持ちが一杯につまったもので、翁にとっても、旅の思い出としてしっかり持って帰って頂けるのではと思った。

来年のプログラムにも既に翁の名前は記されている。健康第一で。その次で良いので、来年の再会を心から待ち望みたい。

 

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2021回 定期公演 Cプログラム
2024年10月26日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

PROGRAM 曲目
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D. 759「未完成」
シューベルト/交響曲 第8番 ハ長調 D. 944「ザ・グレート」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2021 Subscription (Program C)
Saturday, October 26, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Schubert / Symphony No. 7 B Minor D. 759, Unvollendete (Unifinished Symphony)
Schubert / Symphony No. 8 C Major D. 944, Große (The Great)

Conductor
Herbert Blomstedt

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