【スタートまで】
前夜の天気予報は午前中から午後にかけて雨。朝、5時15分に起床して、恐る恐る雨戸を開けると夜明け前の暗い中、軒からポッツン、ポッツンという音が聞こえ、濡れた車のボディに居間の灯が反射するのが見えた。「やっぱり、雨か・・・」と肩を落とし、ため息をつきながらも、気を取り直して、洗面・着替え・トイレ・朝食を予定通り済ませる。朝食は、餅を3つ焼いて味噌汁に入れた味噌餅に、バナナも一本食べて、エネルギー充填。「この3カ月間、この日のためにやるべきことはやった。あとは雨が降ろうと、風が吹こうとやり抜くだけ」と気合を入れ、小雨の中7時10分に家を出る。
乗った電車の車両にランナーらしき人が一人も居なかったので、もしかして時間を間違えたかと心配になったが、初台駅で降りると、ランナーたちが続々とホームに降り会場のゲートに向かう姿が目に止まり、少し安心。今大会は、テロへの警戒から、スタートエリアに入るにも空港並みの持ち物検査とセキュリティゲートがある。ゲートをくぐると、まだスタートまでは1時間以上もあるというのに、エリアはランナーで溢れていた。
《入口でセキュリティゲート待ち》
《さすが東京マラソン。かわいい女子アナがTV取材中》
荷物をトラックに預け、最後のトイレを済ませる。アミノバイタル・ゼリーを吸い飲み、バナナを一本頬張って、いよいよスタートエリアに突撃。まだスタートまで30分近くあるので、体を冷やさないようにストレッチをしながら時間がたつのを待つ。すると、突然、後ろから話しかけてくる人がいた。「この時は強い風と雨だったよな~」、英語だったので誰に話しかけているのか一瞬分からなかったが、どうやら相手の目は私のTシャツに向かっている。私が着ていた2009年のアテネクラシックマラソンのTシャツを見ながら、にこやかにスペイン系の顔付をした人が私に話しかけてきていた。「そうそう、ひどい天気だった。貴方もあの時に走ったの?」と返して始まった会話は、お互いのマラソン大会経験を語る思ってもみない会話に発展した。フランスのトゥールーズから来たという、見たとこ40歳位のフランス人の彼は、既に世界5大陸のマラソンを走破しているとのこと。
そんな話をしていたら、更にベルギーから来たという女性も会話に加わってきた。「私は6大陸走っているわ」と。「世界、色んな所に行ったけど、東京の清潔さは驚いたわ(Amazing!)。人もとっても親切で、日本大好きになったわよ。でも、この大会の運営はまだまだ工夫の余地があるわ。トイレが込み過ぎ。運営はニューヨーク・シティ・マラソンが素晴らしいのよ。」だそうである。前日の朝日新聞の夕刊に、東京マラソンがずいぶん国際化したという記事があったが、まさか、こんなところで30分近くも英会話をするとは思ってみなかった。でも、おかけで退屈なスタート前の時間をリラックスして、楽しく過ごせた。空には雲が相変わらず立ち込めているけど、気持ち雨を含んだ暗い雲ではなくなってきた気がする。
《スタート25分前》
《スタート20分前》
【スタート~10キロ地点】
車いすの部に続いて、いよいよ9時10分にスタートの号砲がなる。東京マラソンのスタートの演出は素晴らしい。男性合唱団のコーラスが流れる中、桜吹雪が一面に舞う。青空ならもっと美しいのだろうけど、曇り空でも十分に情緒的だ。さあ、4時間前後の自分との闘いの幕開けだ。「3か月の練習の成果をしっかり出して、石にかじりついてもサブ4達成!」と誓って、スタートのマットを力を込めて蹴った。ダービーを走る競走馬もゲートが開いたときにはこんなことを思っているに違いない。都庁通りを出て、新宿駅のガード下を通って、靖国通りに出る。左右前後から飛び交う歓声で、改めて自分が東京マラソンを走っているんだとの実感をしみじみと感じる。
《スタート!》
《新宿駅横を走り抜ける》
どんなマラソン大会でもスタート直後というのはランナー渋滞で自分のペースがつかめずイライラするものだが、東京マラソンは違った。靖国通りを上下車線を通行止めにして、道路いっぱいでランナーが走れるようになっている。何とも壮観だ。1キロ地点のラップは5分35秒と目標の5分20~30秒に若干遅れたが、気にするほどではない。最初の5キロは緩い下りが続く。ここで調子の乗ってスピードを上げないことが大事。靖国通りから外堀通りに出て、飯田橋の手前で5k地点を過ぎる。手持ちの時計で27分30秒、計算通りだ。
開放的で気持ちが良い外堀通りから、飯田橋駅を右に曲がり、靖国通りを横切って竹橋を通過。マイケルジャクソンが走っていて、思わずカメラを向けた。皇居の周回通りに出る。テストランの時は吹きさらしで、体が戻されるぐらいの強風に難儀したが、この日は全くの無風。雲にこそ覆われているが、何とラッキーなことだろうか。祝田橋に突き当たり、日比谷公園に出る。10キロ地点で、54分35秒。早すぎず、遅すぎず、最初の10キロはパーフェクト。早いかもしれないけど、最初のブドウ糖飴をウエスト・ポーチから取り出し口に入れた。
《この会話が耳に入ってきて、走りながら大笑い。
マイケル「yeah!」
隣のオレンジの親父「あんた、ちょっと目立ちすぎだよ。お蔭で俺が全然目立たないじゃないか」
マイケル「yeah!」》
《皇居横》
【10キロ~20キロ地点】
次の10キロとなる日比谷から品川までの日比谷通り、第一京浜を走る往復は結構退屈だが、一定のペースを維持することだけを考えて、淡々と走った。この辺りは、オフィスも多いせいか、会社で集団で応援しているグループが多く目に入る。途中、なんと昨秋、NHK趣味Do楽 「3か月でフルマラソン めざせ!サブ4」で金先生のトレーニング生として出演されていた元プロボクシング世界チャンピョン内藤大助さんが居た。この間、揖斐川マラソン走ってたのに、またフルマラソン。すごい。
《中央が内藤さん》
増上寺、芝公園を通過し、田町駅、泉岳寺を通って、15キロ地点通過。タイムは1時間22分台。よしよし好調持続。品川駅手前で最初の折り返し。給水所を何度か通るが、ここのお姉さんやお兄さんたちの明るい笑顔にはホント癒されるし、元気が出る。次の目標は20キロ地点。そこには家族がいる筈なので、まあ余裕綽綽のところを見せられるように走ろう。それにしても、外国人ランナーが多いわ。
《品川駅横、15キロちょっとの地点》
《ウオーター エンジェルズ》
(つづく)