ムーティさんのオペラを生で聴くのは初めて。仕事を定時にさっさと切り上げ、桜が残る上野へgo。演目のベルディ<仮面舞踏会>は、ロンドン駐在時の2009年にマウリツィオ・ベニーニの指揮でロイヤルオペラで観劇以来の2回目です。
ムーティの緊張感ほとばしる強い統率のもと、歌手陣、オケ、合唱がそれぞれの個性と実力を発揮して、三位一体の素晴らしい公演でした。
外国人を中心とした主要歌手陣は、抜きんでてサプライズという人は居ませんでしたが安定した歌唱で楽しませてくれました。特に、占い師ウルリカを演じたユリア・マトーチュキナと準主役レナート役のセルバン・ヴァシレとが印象的。第1幕でリッカルドにお告げをするウルリカ役のマトーチュキナは雰囲気も妖しさを漂わせながら、表現豊かな歌唱で、第1幕は彼女を中心に回っていると感じさせる存在感。また、レナート役のヴァシレは第3幕1場でのアリア「おまえであったか、この魂を」が圧巻で、気持ちの入った迫力の歌唱で胸に迫るものがありました。
ちょっと残念だったのは、主役のリッカルド役のアゼル・ザダ。主役としては歌唱・存在感ともに華がない。提督として一番地位が高く、仇から狙われるような人物には見えません。物語の中心軸となれず、周りにお株を奪われた印象でした。
ヤング・オールスターチームともいえる春祭オーケストラですが、ムーティの棒に的確に応えて、レベルの高い演奏でした。私の勝手な印象ですが、昨年よりもメンバーが更に若返ったように見えました。弦のアンサンブルの美しさや、コーラングレ、フルートをはじめとした管楽器のソロは耳にしみ込むような音色、そして迫力の打楽器が場面を大いに盛り上げました。ムーティの音楽は、筋肉質で全く贅肉無し。研ぎ澄まされた音楽の中に、感情が籠っているという不思議な感覚です。
東京オペラシンガーズの合唱もいつもながら素晴らしい。やはりここも年齢制限があるでしょうか?若いメンバーさん方が殆どのように見えました。場面場面に応じた強弱や高低の幅大きく、こちらも聴きごたえ満点。
会場はアリア毎、幕ごとに大きな拍手とブラボーの掛け声がかかり、いよいよビフォーコロナに戻った感覚です。私の隣席のご婦人もブラボー連発で多少飛沫が気になりましたが、やっぱりオペラ公演は黙って拍手だけでは物足りないですね。改めて、会場からの声も劇場体験の大切な一ピースであることを認識しました。
これもどれも、やっぱりムーティあってこそと思わせるその圧倒的な存在感が桁違いですね。オーラが凄い。
ムーティの作品解説やリハーサルも見学できる本イタリア・オペラ・アカデミー企画、素晴らしいです。私はオペラ公演しか参加できてませんが、来年は是非、公演以外のプログラムにも参加してみたいです。来年は何の演目になるのか。楽しみです。
東京・春・音楽祭
イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.3
リッカルド・ムーティ指揮《仮面舞踏会》(演奏会形式/字幕付)
日時・会場
2023年3月30日 [木] 18:30開演(17:30開場)
東京文化会館 大ホール
出演
指揮:リッカルド・ムーティ
リッカルド(テノール):アゼル・ザダ
アメーリア(ソプラノ):ジョイス・エル=コーリー
レナート(バリトン):セルバン・ヴァシレ
ウルリカ(メゾ・ソプラノ):ユリア・マトーチュキナ
オスカル(ソプラノ):ダミアナ・ミッツィ
サムエル(バス・バリトン):山下浩司
トム(バス・バリトン):畠山 茂
シルヴァーノ(バリトン):大西宇宙
判事(テノール):志田雄二
アメーリアの召使い(テノール):塚田堂琉
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:東京オペラシンガーズ
曲目
ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》(全3幕)[試聴]
上演時間:約3時間(休憩1回含む)
Spring Festival in Tokyo
Italian Opera Academy in Tokyo vol.3
Riccardo Muti Conducts "Un ballo in maschera"(Concert Style/With Subtitles)
Date / Place
March 30 [Thu.], 2023 at 18:30(Door Open at 17:30)
Tokyo Bunka Kaikan, Main Hall
Cast
Conductor:Riccardo Muti
Riccardo(Tenor):Azer Zada
Amelia(Soprano):Joyce El-Khoury
Renato(Baritone):Serban Vasile
Ulrica(Mezzo-Soprano):Yulia Matochkina
Oscar(Soprano):Damiana Mizzi
Samuel(Bass-Baritone):Koji Yamashita
Tom(Bass-Baritone):Shigeru Hatakeyama
Silvano(Baritone):Takaoki Onishi
Un Giudice(Tenor):Yuji Shida
Un Servo di Amelia(Tenor):Toru Tsukada
Orchestra:Tokyo-HARUSAI Festival Orchestra
Chorus:Tokyo Opera Singers
Program
Verdi:”Un ballo in maschera”(Concert Style/With Subtitles)