その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

2022年感想書き漏れの本(備忘メモ)

2022-12-31 13:55:03 | 

続いて、本を3冊。

遠藤実『現場力の教科書』(光文社新書、2012)

現場力(=オペレーション力)の重要性を説いた一冊。「教科書」とある通り、広く浅くではあるが系統立てて整理してくれているので、入門にはもってこい。現場のビビッドさは伝わってこないが、現場のマネジメントを担う人、経営企画の人は基本として目を通しておくべき一冊。

 

柳井正『経営者になるためのノート』(PHP、2015)

本書が出たばかりのころ一度読んで以来の再読。現場と経営の双方を肌感覚で掴み、論理的にも整理でき、それを実行に移す推進力もある稀有な経営者である筆者らしい迫力の一冊だ。簡潔な言葉で語られるが、実行は並大抵の覚悟ではできない。

 

沢木耕太郎『深夜特急(1) 香港・マカオ』(新潮文庫、1995)

香港のチョンキンマンションを舞台にしたルポ『チョンキンマンションのボスは知っている』は今年の読書の収穫の1つであった。文化人類学の学者のフィールドワークから派生した、豆腐の作成過程で生まれる「おから」のような栄養価満点の作品だった。確か『深夜特急』のスタートも香港だったと思い出し、再読してみた。学生時代に興奮して読んだ記憶が残っていたが、私が歳を重ねたせいか、今読むとどこに熱中していたのか思い出せない程、今の私には刺さらなかった。これは自身の成長なのか、老化なのか、悩ましい。

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2022年感想書き漏れの映画(備忘メモ)

2022-12-30 08:00:30 | 映画

読んだり見たりした本や映画は記事にアップするようしているのですが、ずるずると放置しているものもあるので、記録のため簡単にメモを書き残しておきます。まずは映画から。

1度も映画館に足を運んでないという近年まれにみる1年でした。DVDやAmazonでも鑑賞機会少なく、なんか余裕ない年でした。そんな中で、Amazonで観て、記事エントリーできてなかったのは3本。

「東京物語」(監督:小津安二郎、1952年)

  言わずと知れた小津安二郎の代表作の一つ。10年以上前に観た切りだったので再視聴。家族、人生を真正面から捉えたテーマは今も色あせない。朴訥な台詞回しやのんびり流れる映像が時代を感じさせるが、情報量が豊かで味わい深い。

 

「お茶漬けの味」(監督:小津安二郎、1953年)

  初見。昭和の上流階級の人たちの生態の知識も理解も無いので、上流階級での有閑マダムってこんな感じなのか~と、あまり投入できず。主演男優の佐分利信が演じた佐竹茂吉の大きな心は見習いたい。

 

「天気の子」(監督:新海誠)

  初見。新海監督のヒット作品の一つ。大人や社会との葛藤、異性への愛を通じた少年の成長物語。雨が降り続く東京が舞台で、未来のディストピア的な要素も含む。私自身はあまり深読みしてないが、色んな隠れメッセージがありそう。エンターテイメント作品としても楽しめた。

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大阪つまみ食い: 大阪マラソン下見/黒門市場など

2022-12-29 14:22:02 | 旅行 日本

先週末、私用で大阪へ。メインの用件に便乗して、来年2月に出走予定の大阪マラソンのコース下見もしてきました。全体の3/4程度を走りましたが、大阪のエリア毎の変化を楽しめそうなコースです。今まで、点でしか経験してなかった大阪の街が線、面でつながり、ずいぶん大阪の街が分かってきた感覚で、大会本番に向けモチベーション高まります。


<天王寺前を走ります>


<大阪ビジネスパークエリア 残り1キロぐらいのとこ>


<ゴール地点の大阪城公園>

あまり深い考えなく取ったビジネスホテルが日本橋の中心部のロケで、徒歩圏内で裏難波エリアや黒門市場があり、ちょっとした観光気分も味わえました。黒門市場は初めて訪れるスポットで、通称「大阪の台所」と呼ばれるアーケード市場です。海鮮、肉、総菜などなどの食材を取り扱う小さなお店が立ち並び、活気があって、いかにも大阪チックな雰囲気に足を踏み入れた途端ワクワク感がいっぱい広がります。土曜午前に訪れたのですが既に結構な人が出てました。「料理人や主婦で賑わう「ミナミの台所」的市場」(じゃらん)らしいのですが、訪問タイミングの問題か、ぱっと見8割以上はアジアからの観光客でした。店員さん(韓国人かな?)からも韓国語で話かけられたりして、いったいここはどこや?という不思議な感覚。










そぞろ歩きしているだけで食欲がむらむらと湧いてくるので、ホテルで朝食を食べたばかりでしたが、おでんやうなぎを日本酒と一緒に頂きました。食肉屋さんの店頭で買った鶏のから揚げも美味で、大阪が持つ魅力に久しぶりに少しばかり触れることができた週末でした。また2月の再訪が楽しみです。


<お好み焼き @千房本店>


<やきそば>

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古川武士『書く瞑想』(ダイヤモンド社、2022)

2022-12-26 07:24:16 | 

「書く」ことで頭と心を整え、自分らしい人生をシンプルに送るための方法を紹介した本です。その書くためのメソッド体系を筆者は「感情ジャーナル」と呼んでいます(個人的には「感情日記」で良い気もしますが)。

「感情ジャーナル」には3つのステップがあります。Step1は「書く瞑想」として、今感じているマイナス、プラスの感情にフォーカスして書くだけ(1日15分)。Step2は「書く片付け」として日々のログを客観的に振り返り、整理し、深層にある価値観に気づく(月1回1時間)。そして、Step3では内省と行動を循環させて進化させる(3月に1度)。

そして夫々のステップでの書き方の案内やスタイル・枠組みなどが紹介されます。例えば、Step1では「放電/充電ログ」「セルフトーク」、Step2では「インパクト図」「価値観マップ」「理想のビジョン」「行動プラン」「習慣化プラン」、Step3では3カ月を振り返ってのGood/Problem/Solutionを書く「クオータージャーナル」などです。

私自身の本書の最大の収穫は、「感情」に着目して書くという視点が得られたことです。20年以上、簡単なメモ程度の日記をつけていることは以前のエントリーで紹介したことがありますが、私が書いていることは事実が75%、その事実に対する思考が25%と言ったところです。筆者は、「感情」をすくい上げることで、自分への理解が進み、人としての感性が回復されると言います。マイナス感情にこそ問題のサインがあり、人生の大切なメッセージが隠れているというのです。目から鱗が落ちるようなメッセージでした。

人は「思考(頭)」「感情(心)」「身体(腹)」の3つの自分が存在していて、巷の自己分析は思考に寄る傾向がある。感情ジャーナルでスルーさせている感情的自己、身体的自己を取り戻す。自己分析では無くて自己感受。「考えるな、感じろ!」が大事だというのです。スピリチュアルな香りがしなくもないですが、私にはとっても腹落ちする指摘です。

方法論自体もかなりしっかり作り込んである印象ですが、正直、これを実践するには、しっかりと時間と空間を準備する必要があって、多くの人が実行するにはハードルが高い印象です(もちろん、できる人はしっかりやればそれだけリターンも大きいと思います)。私にとっては、この感情に着目して書くということを得ただけで十分なので、まずはさっそくやってみようと思います。

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オペラ〈ドン・ジョヴァンニ〉 @新国立劇場

2022-12-25 08:21:32 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

初日に観劇したのにいつの間にか3週間が過ぎていしました。

優れた定番オペラを、優れたスタッフ、キャストで聴くと、やっぱり鉄板なのだなと改めて気づかされた公演でした。

私が「ジョン・ジョヴァンニ」を舞台付きで鑑賞するのは、2010年3月のバイエルン国(州)立歌劇場以来。楽しみに待っていた甲斐ある舞台でした。

まずは、題名役アルベルギーニを始め、レポレッロ役のレナート・ドルチーニ、ドン・オッターヴィオ役のレオナルド・コルテッラッツィ、ドンナ・エルヴィーラ役のセレーナ・マルフィなど外国人歌手陣の高いレベルで安定したパフォーマンスが印象的です。加えてチェルリーナ役の石橋栄実さんの潤いある美声に聞き惚れました。

パオロ・オルミ指揮の東フィルの演奏も、前半はやや乗り切れない感じもしたのですが、尻上がりに調子あげていました。

アサガロフの演出は、新国では何度かやっているようです。11月に観た〈ボリス・ゴドゥノフ〉のように演出意図の読み下しに悩むことなく至って分かりやすく安心。舞台美術も美しく、お見事。

「みんなブラボー!」の今年のオペラ納めでした。

 

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ドン・ジョヴァンニ
Don Giovanni / Wolfgang Amadeus Mozart
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

2022年12月6日[火]
予定上演時間:約3時間25分(第1幕95分 休憩25分 第2幕85分)

スタッフ
【指 揮】パオロ・オルミ
【演 出】グリシャ・アサガロフ
【美術・衣裳】ルイジ・ペーレゴ
【照 明】マーティン・ゲプハルト
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】斉藤美穂

キャスト

【ドン・ジョヴァンニ】シモーネ・アルベルギーニ
【騎士長】河野鉄平
【レポレッロ】レナート・ドルチーニ
【ドンナ・アンナ】ミルト・パパタナシュ
【ドン・オッターヴィオ】レオナルド・コルテッラッツィ
【ドンナ・エルヴィーラ】セレーナ・マルフィ
【マゼット】近藤 圭
【ツェルリーナ】石橋栄実

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

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秦正樹『陰謀論 民主主義を揺るがすメカニズム』 (中公新書、2022)

2022-12-20 07:42:26 | 

『陰謀論』について知り、自分が巻き込まれないようになるため手に取りました。

サーベイ実験をもとに陰謀論の信じやすさと様々な因子との相関や因果関係を統計的に分析・考察することで、(主に日本における)陰謀論についての理解を深める内容になっています。「リサーチメソッド」については学生時代に結構叩き込まれたので、調査方法や統計処理そのものにも関心はあるのですが、今回は結果・考察部分に集中して読みました。

私としての学びは2つ。

一つ目は、基本的なところで、「陰謀論」を考える上での枠組みの整理ができました。例えば、陰謀論とフェイクニュースの違いは「検証可能性」にある(p7)ということ。また、陰謀論者には、本人の社会的・人間関係的な問題と結びついた思想信条による「政治的動機」にもとづくものと、陰謀論サイトを運営して広告収入等を得ることを目的とする「経済的動機」を区分して考える必要があるということ。言われてみれば当たり前の話ですが、結構ごっちゃにして新聞記事とか読んでますね。

もう一つの学びは、このサーベイ実験での知見の数々です。そのいくつかを抜粋します。

・ヤフコメ・民放の報道番組は陰謀論的信念の高さと関連するメディアであり、NHKや新聞、ツイッターの利用頻度の高さは陰謀論的信念の低さと関連している。(P64)
・SNS悪玉論の一方で、ツイッターの利用はむしろ、陰謀論的信念の低さと関連している (p81)
・SNSが陰謀論の温床というのは、第三者効果による私たちの思い込み(「私は陰謀論に騙されやすくはないが、多くの人は陰謀論に騙されやすいように感じる」)という心理傾向によるものである可能性が高い(p214)
・保守・右寄りの人だけでなく、リバラル派も陰謀論とは無縁ではない。近年選挙で負け続けていて、自身の望む政治的目標が達成されないことに対するフラストレーションが陰謀論を引き押せている可能性が高い。 (p162)
・政治や社会などの公共的な関心の高い人の方が陰謀論に陥りやすく、自分の生活中心で、政治・社会に関心を持たない人の方が陰謀論を信じにくい傾向にある。政治に関心があったり、知識を深めたりすることは、陰謀論を引き寄せる効果を発揮する

陰謀論的信念の高さと因子との因果については、その因果のプロセスについての分析は物足りない所はありましたが、導かれた知見は「へえ~」というものがあったのがよかったです。

筆者は、陰謀論は誰にでも巻き込まれる可能性があり、それを防ぐには、政治、政党に対する適度な距離、バランス感覚をもった付き合い方、自分だけの正しさを求めすぎない社会を創るなどが大切と説きます。筆者自身が、学生時代が「ネトウヨ」だったというだけに、説得力もひときわです。私自身、陰謀論を信じる人は「トンデモ」人扱いしてみる癖がありますが、少し冷静かつ客観的にみることができるようになりそうです。自分自身も気を付けないとね。

目次

第1章 「陰謀論」の定義―検証可能性の視点から
第2章 陰謀論とソーシャルメディア
第3章 「保守」の陰謀論―「普通の日本人」というレトリック
第4章 「リベラル」の陰謀論―政治的少数派がもたらす誤認識
第5章 「政治に詳しい人」と陰謀論―「政治をよく知ること」は防波堤となるか?
終章 民主主義は「陰謀論」に耐えられるのか?

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大河・紅葉・見仏 ~鎌倉日帰り旅(3)~

2022-12-19 07:19:54 | 旅行 日本

3つ目のテーマは見仏。鎌倉の仏さまは鎌倉・室町期の仏像の宝庫。国宝や重文やらのお墨付き無くとも、どれも魅力的です。

【円覚寺】

北鎌倉駅横に位置する円覚寺。鎌倉時代後期に創建され、鎌倉五山第二位の禅宗寺院。いかにも禅宗のお寺らしい境内の落ち着いた雰囲気が好きです。目的の仏さまは仏殿に。足を踏み入れると中央に堂々と宝冠釈迦如来坐像。安心して心身を委ねたくなる威厳と落ち着き。日常の雑事がすーっと抜けていく感覚に浸れます。

 

【円応寺】

円覚寺から鶴岡八幡宮に向かって10分ほど歩いて円応寺へ。閻魔大王を本尊として智覚禅師により建長二年(1250年)に創建されたお寺です。小さなお寺ですが、なかなかユニークで好きなお寺です。お堂の中心に閻魔大王が座し、その周りを十王(亡者が冥界で出会う10人の王)が囲みます。閻魔大王の厳しい顔ももちろんですが、十王の表情がなんとも可愛い。背筋が冷えるのと同時に思わず微笑みたくなるような不思議な雰囲気の空間です。

 

 

【鎌倉国宝館】

以前から行きたかったのですが実現せず、今回初めて訪れました。非常によくできていて、落ち着いて仏像鑑賞できるミュージアムです。入って右側は平常展示「鎌倉の仏像」の展示エリア。中央に薬師三尊が立ち、その周りを十二神将が取り囲みます。2体の阿弥陀如来像も良かったなあ。

会場左半分は、シリーズで展示されている特別展「北条氏展」が開催中でした。vol4として「北条義時の子どもたちー鎌倉時代を築いた一門―」とのタイトルで御成敗式目、無学祖元像(重文)などが展示されてました。写真撮影が一切禁止なのが悲しい・・・

 

【覚園寺】

前回/前々回のポストで紹介済みですが、敷地奥に位置する歴史感じる薬師堂の空間は格別です。中央に本尊薬師如来、左右に月光菩薩、日光菩薩。廻りに十二神将が配され、実に神々しい。お寺の方の解説もついています。

 

【杉本寺】

この日の2つめの初訪問地は杉本寺。鎌倉最古仏地というのが売りです.。天平 六年(734年)建立とのこと。ここが予想外の見仏冥利に尽きるお寺でした。

入口には運慶作と伝わる仁王像が力強く立っています。石段を登って、県重要文化財の本堂に中に、見所満載の仏さま達が鎮座されてます。本尊の十一面観音は奥まった小さなお堂に入っているので、遠く小さくしかわかりませんが、前立の十一面観音や脇立ちの不動明王、毘沙門天王が手に触れる距離でリアルな仏さまが拝めます。運慶作の地蔵菩薩や快慶作の地蔵菩薩もいらっしゃいます。仏好きにはたまらない空間です。

 

まだまだ廻れていないお寺、仏様が鎌倉にはまだまだあります。来年また見仏ツアーを計画したいと思います。

2022年12月2日

(おわり)

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大河・紅葉・見仏 ~鎌倉日帰り旅(2)~

2022-12-17 10:52:43 | 旅行 日本

鎌倉訪問の2つめのテーマ紅葉狩り。あいにく、曇りの天気で青空に映える紅葉には程遠いものでしたが、寺社内の風情ある紅葉を満喫しました。

 

【円覚寺】
遠足の小中学生たちと一緒になりましたが(とってもお行儀は宜しい)、「ここは15分だよ~」、「あと5分!」とかの声が仕切り無しに聞こえ、とっても時間を気にして駆け足参観しているのが、微笑ましくも、そんなに急がなくても良いのに~と勿体なくもありました。

 

【鶴岡八幡宮境内 国宝館の前】
鶴岡八幡宮の境内の東側に位置する国宝館の前の紅葉も美しいです。この時間帯だけ、時折、陽が差し、葉が燦燦と輝く瞬間がありました。

 

【鎌倉宮(大塔宮)】
後醍醐天皇 皇子の 護良親王 を主祭神とする鎌倉宮。覚園寺に行く途中に訪れました。

 

【覚園寺】
前エントリーで、義時所縁のお寺としてご紹介しましたが、ここは紅葉も素晴らしい。落ち着いた境内との組み合わせが絶妙で、東京から1時間でこんな空間があるのが信じられないですね。



我ながら写真で現場の感動を表せないのが残念で情けないですねえ。写真の撮り方とか学びたいですが、とてもそんな時間はなく。定年後のTo Doリストに取っておくことにします。

2022年12月2日

(つづく)

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N響/ルイージの名曲プログラム ドヴォルザーク交響曲第9番ほか

2022-12-16 07:28:38 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

来週の東響オペラシティ定期の第九が演奏会締めのはずだったのですが、出張が入ってしまい、本演奏会が今年最後となりました。ラフマニノフのピアノ協奏曲2番とドヴォルザーク交響曲第9番「新世界から」を揃えた名曲プログラムです。

初めて聴くグリンカ/歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲で、豪華で威勢の良く始まります。序曲に続いて演奏されたラフマニノフのピアノ協奏曲第2番のソリストは河村尚子さん。私には2017年6月のパーヴォ/N響との共演でのサンサーンス以来。5年ぶりに拝見する河村さんでしたが、落ち着いて堂々とし貫禄すら感じるステージ姿は、以前の記憶と異なった印象でした。

演奏については、私自身ステージ奥P席からのピアノ協奏曲の聴き方が未だ慣れず、どうしても間接的に音を追いかけている感じが抜けないので、何ともコメント難しいのですが、全般に重めのしっとりした演奏に聴こえました。近くにいるオケの演奏の方がダイレクトに聴こえてくるのですが、管弦楽の厚いハーモニーの素晴らしさが印象的で、逆にピアノとのバランスとかはちょっと判断つかずです。

後半のドヴォルザーク。交響曲を代表するような有名曲ですが、ルイージ、N響のコンビで聴くこの曲はまた一味違って聴こえます。各パートの聴かせるソロと美しく迫力の合奏が相まって、聞き惚れるというのが相応しい。第2楽章のコーラングレのソロが池田さんで無かったのは少々がっかりでしたが、十二分に美しい調べですし、至る所で現れる金管陣の勢いある咆哮はP席からも痺れます。改めて、良い曲だなと再認識した次第です。民族色は抑えて音楽性を前面に出したルイージさんの熱い指揮とそれに応えたN響奏者に「ブラボー」です。このところ仕事上で思うようにいかないことが連発し沈んでいたのですが、一杯の元気を貰いました。

今年最後の演奏会をしっかり〆て頂き感謝です。ルイージさんとN響、来年も大いに期待しましょう。

 

第1973回 定期公演 Bプログラム
2022年12月15日 (木) 開演 7:00pm
サントリーホール

グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミーラ」序曲
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
ドヴォルザーク/交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」

指揮 : ファビオ・ルイージ
ピアノ : 河村尚子

Subscription Concerts 2022-2023Program B
No. 1973 Subscription (Program B)

Thursday, December 15, 2022 7:00pm [ 6:20pm ]
Suntory Hall

Program

Glinka / Ruslan and Lyudmila, opera – Overture
Rakhmaninov / Piano Concerto No. 2 C Minor Op. 18
Dvořák / Symphony No. 9 E Minor Op. 95, From the New World

Artists
Conductor:Fabio Luisi
Piano:Hisako Kawamura

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大河・紅葉・見仏 ~鎌倉日帰り旅(1)~

2022-12-15 07:29:18 | 旅行 日本

昨年の「青天を衝け」に続いて、今年も大河ドラマが面白かった(あと最終回を残すのみ)。劇としても三谷幸喜らしい笑いがふんだんに入っている一方で、鎌倉時代前期があれほどまでに凄まじい権力闘争の時代だったことを学べたのも有意義でした。「鎌倉殿の13人」が終わる前にということで、大河・紅葉・見仏をテーマに鎌倉を訪れました。まずは巡った大河ドラマ縁の地をご紹介します。

【大河ドラマ館】
鶴岡八幡宮の境内の鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムにて開催中の「大河ドラマ館」へ。歴史を知るというよりも、ドラマ制作の裏側を覗けるのが面白いです。展示は、ドラマ紹介、御所の撮影セットを再現したジオラマや衣装や小道具の展示など。


(源氏将軍揃い踏み)


(ドラマで使われた梶原景時を訴える連判状)

私が一番ひかれたのはシアター映像のコーナー。4kスクリーンに出演者や制作者のインタビューを交えた10分程度のビデオが日替わりで3種類づつ流されています。私には、音楽、演出、時代考証の方々が、ドラマ制作でのポイントをお話しされていたのが興味深いものでした。テーマ曲を作曲にあたって、脚本の三谷氏から出されたお題は「どろどろ」だったとか。

また、演出での裏話を聞いて、あのシーンはこういう意図だったのねというのも分かります。他には、北条家の女性を演じた宮沢りえ、宮澤エマ、小池栄子3名が夫々の演じた人物の見立てのインタビューなど。登場人物と役者との距離感や、役者さんの演技に対する姿勢が分かり、これも興味深いものでした。

出演者と言い、仕掛けと言い、大河ドラマは人・モノ・金のリソースをふんだんにかけているだけあって、ドラマとしてのレベルが高いので、こうした裏舞台覗きも大河ならではであります。1月9日まで開催されているので、ドラマをご覧になっている方にはお勧めします。

【「鎌倉殿の13人」縁の地】

・鶴岡八幡宮
鎌倉のへそ。この日は、曇り時々晴れという天気でしたが、神前結婚式を挙げる新郎新婦などもいらして、華やかな雰囲気に包まれていました。源実朝暗殺時に公暁が隠れていたという大銀杏は数年前の台風で無くなりましたが、その痕から新しい芽が噴き出しているとのこと。


(左の銀杏の手前が台風で倒れた公暁が隠れていたとされる伝説の大銀杏跡)


(境内の神殿で結婚式が行われてました)

・大倉幕府
鶴岡八幡宮のすぐ東側は頼朝や北条家の執務屋敷(御所)があったところ。今では民家や学校があるのですが、碑が建てられてあります。


(大倉幕府の東門跡地に立つ石碑)

・頼朝、北条義時、大江広元の墓
 小山の中腹にあり、ちょっと不気味な雰囲気。

 


(頼朝の墓)


(義時の墓所跡)

・覚園寺
 本土の薬師堂は、1218年に北条義時が作った大倉薬師堂が前身で、現在のお堂は1354年に再建されたもの。お堂の周辺は祈りの場として草木も含めて撮影禁止なので写真は無いのですが、この薬師堂と中の薬師如来、と右の菩薩、左の月光菩薩、そしてそれらを守る十二神将が立ち、その厳粛な雰囲気は、鎌倉の寺の中でももっと好きな空間の一つです。

境内の紅葉もお見事でした。

 徳川慶喜の大政奉還まで700年近く続く武家政権発祥の地としては、驚くほどこじんまりしている土地ですが、鎌倉は独特の魅力を持ってますね。

(続く)

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伊藤羊一『1行書くだけ日記』(SBクリエイティブ、2021)

2022-12-13 07:54:45 | 

2000年に市販の「3年卓上日誌」なるものを購入して書き始め、2006年から「5年卓上日誌」に変えて、かれこれ23年も卓上日誌を続けている。日に数行(枠は6行)書くのだが、週末にまとめて書くときや、空白の日もある。基本、起こったことを書き留めているだけだが、それでも読み返したりすると、いろんな気づきがあるので、これは我ながら良き習慣と思って続けている。

本書はたまたま地元の図書館の返却本コーナーにあったのを見つけた。せっかく続けているルーティンなので、更に上手い方法はないものか。1つでも活かせるところがあればと思い、手に取った。

筆者は本書で「毎日1行書いて振り返る」ことをお勧めする。書くのは「やったこと」で良い。振り返りは、書かなくても良いので、「自分にとってどんな意味がある?(So what?)」、「そうか!(気づいたこと)」、「やってみよう」のステップで実施しすると、1行日記のやり方をシンプルに分かりやすく、多くの例示も含めて解説してくれる。

書いてあることは大きく同意するところばかりで、むしろ自分の中で言語化されていなかったことが、しっかり言語化してもらっていて、ありがとうございます。という感覚だった。

私にとっての新しいお土産は、日記を持って「一人合宿」をして「振り返り」するということ。日常から離れて、毎日の仕事から切り離した時間と場所をつくるというのは素晴らしいと思った。是非、やってみたい。

「自分を変えたい、成長したいと思ったら、一発逆転の方法はありません。自分を信じて、過去を振り返り、自分を理解して、未来を考える時間をつくる。その繰り返しの時間こそが大事です。」(p174)。その通りだと思う。

 

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N響、12月C定期、ファビオ・ルイージ/ メンデルソーン 交響曲第3番「スコットランド」

2022-12-11 08:39:14 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

この日はW杯サッカー準々決勝のアルゼンチン対オランダ観戦のため、早朝4時前に起床。朝からこれぞW杯と言える激闘を満喫。午後の演奏会に備え、ゲーム後眠ろうとしましたが、興奮冷めやらず眠れないまま。ぼーっとしながら、NHKホールへ参上することとなりました。

ルイージさんとの12月Cプログラムは、モーツァルトとメンデルスゾーンの交響曲の組み合わせ。予想通り、モーツァルト交響曲第36番リンツは睡魔との激闘となりました。モーツァルトの長調の音楽らしい明るく美しい曲を、夢心地の中で。ごめんなさいです。

2曲目には立ち直り、しっかり聴きました。メンデルスゾーンの交響曲第3番<スコットランド>の実演に接するのは久しぶり。こんなに変化に富んだ楽曲であったのを改めて認識し、新鮮でした。スコットランドの変わりやすい天気のように、陰陽や明暗な音楽が美しく流れ、様々な表情を見せてくれます。ルイージさんの指揮は、各パートからの音が明瞭でありながら、全体としての統一感がクリアです。オーケストラもとっても熱の籠った演奏でした。

今日で今年の私のNHKホールは納め。NHKホール改修中に週末の演奏会開始時間が14:00に変更になったのと、Cプロは休憩なしのプログラムで15:30には退出するので、17:00からの「青の洞窟」は見学叶わず。紅葉もほぼほぼ終了し、すっかり冬模様になってきた代々木公園を通って、帰路につきました。

第1972回 定期公演 Cプログラム
2022年12月9日 (金) 開演 7:30pm(休憩なし)
NHKホール

曲目
モーツァルト/交響曲 第36番 ハ長調 K. 425「リンツ」
メンデルスゾーン/交響曲 第3番 イ短調 作品56「スコットランド」

指揮 : ファビオ・ルイージ

Subscription Concerts 2022-2023Program C
No. 1972 Subscription (Program C)
Saturday, December 10, 2022 2:00pm [ 1:00pm ]

NHK Hall

Mozart / Symphony No. 36 C Major K. 425, Linz
Mendelssohn / Symphony No. 3 A Minor Op. 56, Scottish

Conductor: Fabio Luisi

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質実剛健な演奏会 N響定演12月A定期 ファビオ・ルイージ/ブルックナー 交響曲第2番ほか

2022-12-05 10:07:43 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

9月に続いて、ルイージさんの登場。きっちりと各季に登場していただくのは、首席指揮者としてとっても大事なことだと思うので、ルイージさんの真面目さというか、真剣さが伝わってきて、とっても好感持てます。

この日の2曲は私は初めて聞く曲です。

一曲目のワーグナーの<ウェーゼンドンクの5つの詩>はソロの藤村さんの歌唱が圧倒的でした。スーッと清らかで透明感ある美声がホールを貫きます。かといって、無色透明ではなくて、仄かな暖かさや色艶があり、熱い情熱も籠っている。名人による奥儀の接しているような感覚でした。感嘆。

後半のブルックナーは初稿ということで70分ほどの大曲。いかにもブルックナーを感じる音楽のつくりでありながら、発展途上を見るような初々しさも残っている曲の印象でした。冒頭から、弦、とりわけチェロチームの気迫入った合奏が耳に留まります。そして、弦と絶妙なバランスを保ちつつしっかり自己主張する管楽器、とりわけホルン隊が良かった。そして、第3楽章アダージョの美しいこと。第4楽章は、私的にはちょっと長くて途中でやや聴き疲れがあったのですが、最後のフィナーレは盛り上がりました。

今日の2曲はさほど演奏会で取り上げられる曲でないと思いますが、しっかりした名曲で、それを高いレベルで聞かせてくれた、いぶし銀で質実剛健な演奏会でした。ルイージさん、さすがやな、と満足感一杯で夕暮れに包まれるNHKホールを後にしました。

第1971回 定期公演 Aプログラム
2022年12月4日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]
NHKホール

ワーグナー/ウェーゼンドンクの5つの詩
ブルックナー/交響曲 第2番 ハ短調(初稿/1872年)

指揮 ファビオ・ルイージ
メゾ・ソプラノ 藤村実穂子

 

No. 1971 Subscription (Program A)
Sunday, December 4, 2022 2:00pm [ 1:00pm ]
NHK Hall

Program
Wagner / Wesendonck Lieder
Bruckner / Symphony No. 2 C Minor (First Version / 1872)

Fabio Luisi  Conductor
Mezzo soprano Mihoko Fujimura

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眼福の至り: 「国宝 東京国立博物館の全て」

2022-12-04 09:43:59 | 美術展(2012.8~)

先月、国宝展に脚を運びました。前半が東博所有の国宝展示、後半が創立150周年を記念した東博の歴史を辿り未来を見据える展示です。国の宝と言うだけあって、見どころ満載の品々がこれでもかというほど展示され、眼福の至りです。

前半は絵画、書跡、刀剣等が中心。私は特に絵画に魅かれました。「一遍聖絵」(法眼円伊筆)、「花下遊楽図屏風」(狩野長信筆)、「納涼図屏風」(久隅守景筆)など、当時の風俗が伺われ、かつ人々が今そこに居るような空気を醸し出している絵が好みです。

書跡や刀剣については、真価が分かるほどの眼を全く持っていないので我ながら残念です。ただ、太刀 銘三条(名物 三日月宗近)は素人目に見ても、その品格、風格、美しさは別次元で、薄い刀身を見ていると霊気というか冷気がすっと体を通り過ぎる感覚は、怖いぐらいでした。

後半の展示では、未来の国宝である「風神雷神図屛風」(尾形光琳)が圧巻でした。風神雷神図屛風と言えば俵屋宗達という日本史一問一答が染みついているため、恥ずかしながら、光琳が模写をした絵があるのは初めて知りました。模写とは思えない、見えない、精巧かつ迫力満点の図屏風で暫し立ちすくみ。

[撮影okな金剛力士像]

日時完全予約制のため、混雑も許容範囲内でしっかりと鑑賞。2時間近く滞在し、お腹一杯。展示も入れ替わるので、できれば2回、3回と訪れたいのですが、スケジュール上難しそうです。博物館敷地や上野公園の紅葉も見事でした。

2022.11.11

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美味しい仙台

2022-12-02 07:27:02 | 日記 (2012.8~)

先週、お客様訪問、東北オフィスメンバーとの打ち合わせで仙台出張。いつもながら、Off時間無しの弾丸出張ですが、お口だけは豊かでしたのでその記録を。


<新幹線の車窓から>

前夜の雨があがり、車窓からのみちのく路は空気が澄んで透明感に溢れていました。大きな虹の一部ができていました。


仙台の街は、銀杏の紅葉が最終ステージ。秋の青空とのコントラストが美しい。


お客様訪問後に取った昼食。久しぶりの盛岡冷麺でした。焼肉丼もうまい。

夜はお客様とセリ鍋。写真は無しです。


<かき揚げそば @そばの神田>

前夜に食べ過ぎたので、翌日のお昼は軽く立ち食いソバ。仙台の同僚が連れて行ってくれたのは、仙台の名店という「そばの神田」。だし汁は東京より薄味で、細めの茹で上げ麺がしっかりなじんでとってもお上品な美味。かき揚げもさらっとあがっていて、ベタツキ感ゼロ。お店の人には元気なおばさん揃いで、てきぱき対応が小気味よく、注文を歌う声のリズム感が、食事を引き立てます。



 

夜は、仙台の同僚と駅近の海鮮居酒屋、花祭り。東北の地酒と一緒に食する刺身は最高。写真にないですが、石巻直送の生ガキが新鮮で、うっとり。

仙台出張は美味しい。

2022年11月24-25日

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