その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ゴールデンウイーク 奈良・見仏ツアー(最終回):東大寺・元興寺

2019-05-31 07:30:00 | 旅行 日本

(だらだらと綴ってきましたが、今回が最終回)

  最終日は早朝から活動。混雑激しい奈良公園近辺は朝に限るということで、東大寺の開門7:30に合わせてホテルを出発。人気の少ない朝の寺院は気持ちがいい。東大寺はいつも「何回か行っているし、今回はパスかな」と思いつつも、来ると必ず感嘆する。歴史の重さを感じる南大門も、大仏殿も大仏もでかく、その威容はさすが。やっぱり、キング・オブ・奈良だね。


<南大門>


<大仏殿>


<奈良の大仏とは俺のことだ~と言わんばかり>

 大仏の後は、この日の目玉の三月堂(法華堂)に。『見仏記』のみうらさんが絶賛の見仏どころである。隣接する念仏堂では、月に一度のお坊さんが集まっての勤行が行われていて、雰囲気が高まる。中に入ると、おーと思わず声をあげたくなる宇宙が存在していた。

 本尊不空羂索観音菩薩を中心に梵天、帝釈天、金剛力士(阿吽)、四天王らが配置されている。この物言わぬ仏たちの威圧感や迫力はなんなんだろう。気が付いたのは、法華堂の仏像の迫力の一つはその配置にあると感じた。他のお堂とどう違うのかは分からないが、ただ並んで置いてあるというよりも、芝居途中にストップがかかったような、躍動感・立体感を感じる置き方になっている。私が思い出したのは、『マクベス』の第3幕。マクベスが暗殺したバンクォーの亡霊が、将来の王家をなす彼の子孫たちが行列するさまをマクベスに見せるシーンだった。東大寺ミュージアムができるまでは、ここには日光菩薩像、月光菩薩像ら6体があり計16体の陣容だったいう。今でさえ、この迫力なのだからさぞかし壮観だったろう。

 堂内に拝観用に畳み仕様で腰掛用の小上がりがあった。ああ、ここか、みうらさんが寝っ転がって拝仏すると書いてあったところはと、納得した。そしたら、その小上がりには「寝ないでください」との注意書きのボードがあって笑った。「見仏記」の読者がみうらさんの真似をしているに違いない。


<本尊の不空羂索観音:胸の前の手の間には水晶玉が挟まれているらしいが良く見えない

 三月堂を出て、朝食を奈良公園バスターミナル内にオープンしたてのスターバックスでとった後、市内の至る所に貼ってあって気になっていた「ヨルク・シュマイサー 終わりなき旅 」の県立美術館がすぐ裏にあることを知り、立ち寄る。ここがまた素晴らしかったのだが、これは別のエントリーで紹介したい。

 いったん、ホテルに戻ってチェックアウト。そして、最後の見仏に、「古都奈良の文化財」の一つとして世界文化遺産に登録されている元興寺(がんごうじ)へ。ここは、「世界文化遺産・日本最初の本格的伽藍である法興寺(飛鳥寺)が平城遷都にともなって、蘇我氏寺から官大寺に性格を変え、新築移転された」お寺である(元興寺HP)

 興福寺や東大寺に比べるとマイナーなおかげか、奈良中心部の割には観光客はさほどでもなく、素朴で落ち着いたお寺らしい雰囲気を醸し出していて良い。国宝の本堂のなかは、風が通って涼しく、外の日差しと暑さを忘れさせてくれる。日本の建築というのは冬のことは考えてなくて、いかに夏を凌ぐかを考えて作ってあるというのはその通りだろう。ブツ(仏)的には国宝クラスはないのだが、スタンダードで落ちついた阿弥陀如来坐像や聖徳太子立像などの重要文化財らにも癒された。


〈国宝 極楽堂(本堂)〉 


国宝 禅室〉

 以上で今回の奈良・見仏ツアーは終了。見仏は当分いいやと思うほど十二分に楽しんだが、それでも東大寺のミュージアムや戒壇堂、興福寺の中金堂や南円堂には行けてない。奈良見仏の奥深さをいやというほど思い知らされる。「まだまだ行くとこあるし、また戻って来ないと」思いながら、眩しすぎる初夏の陽ざしを3日間浴び続けた火照った体を引きづりながら、東に向けて帰路についた。


<しかまろくん、さようなら~ @JR奈良駅>

2019年5月3日~5月5日

(おわり)

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演劇/串田和美 演出 「K.テンペスト2019」 @芸劇シアターイースト

2019-05-28 07:30:00 | ミュージカル、演劇

 「テンペスト」の観劇は初めて。串田和美さんという演出家も名前は存じ上げていたが、作品を観るのは初めて。そして、その演劇手法も初めて経験するもので、驚き・笑いの連続だった。

 まずはシアターイースト内に入ったらびっくり。舞台が中心に置かれそれを取り囲むように観客席が配置されているのは珍しくないが、加えて、舞台自体が舞「台」では無くて平土間で、その平土間にも観劇用のいすがいくつも置いてある。どっからどこまでがステージで、どこが座席なのかわからない。既に多くの人が平土間席に座っているが、役者っぽい人とおしゃべりしてる。この観客衆も実は役者のサクラ観衆なのかと勘繰ったが、どうも違うようだった。さらに、私は平土間でなく観客席の最前列に陣取ったが、開演前に役者さんが話しかけてくるのである。「大航海時代はスパイスがヨーロッパ人にはお宝だったのは有名ですが、一握りのスパイスと交換できるのは何だか知ってますか~」なんて感じである。引っ込み思案な私はもじもじしてたが、周囲のお客さんを含めとっても馴染んだ雰囲気になった。

 そしてそんなおしゃべりがいつの間にかテンペストの場になり劇が始まっていた。他の「テンペスト」を知らないので比較はできないが、多少の場面の組み換えが施され、とっても分かりやすい展開になっていた。加えて、ユニークなのは所々で、劇に関連するような、関連が無いような役者さんの小話が挿入される。(中動態(古代ギリシャ語あった受動態でも能動態でもない話法)や「小学校の給食で隣の男の子からもらったカレーのにんじんの重さの話とか・・・と書いても意味わからないだろうけど)。いわゆる正統派シェイクピア劇とは全然違うのだろうけど、肩ひじ張らず楽しめるのが嬉しい。

 役者さんたちも熱演である。主役フロスペローの串田さんは別格として、個人的にはキャリバンの武居さんの体当たり演技が受けた。この役、この劇の中でもかなり重要パートだと思うのだが、知能は高くない収奪された側の原住民の哀楽をうまく表現していたと思う。

 この作品、音楽の使い方が特色の一つでもある。尾引浩志さんという倍音音楽家(こういう呼び名があるのも初めて知った)が、民族楽器や「口琴」などを使って、不思議な世界を演出する。そして、妖精たちを中心とした静かで清いコーラスも場を盛り立てる。

 上演時間の2時間ちょっと、アットホームで暖かい、串田一座とでも呼びたくなるような家族的雰囲気に浸かり切って、とっても幸せな気分にさせてもらった。この演劇、この後セルビアとルーマニアにて海外公演を行うという。今日のノリが、どれだけ海外にも受け入れられるのかは分からないけど、是非、成功を収めてほしい。

 

5月26日(日)13:00
シアターイースト
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出・潤色・美術:串田和美
出演:串田和美 藤木孝 大森博史 松村武 湯川ひな 近藤隼 武居卓 細川貴司 草光純太  深沢豊 坂本慶介 飯塚直 尾引浩志 万里紗 下地尚子

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セバスティアン・ヴァイグレ/読響 ベートーヴェン:交響曲第3番ほか

2019-05-27 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

 今シーズンから読響の常任指揮者に就いたセバスティアン・ヴァイグレの演奏会に当日券で乱入。2年前の二期会の「ばらの騎士」で素晴らしい音楽を聴かせてくれたこのコンビこれから期待大です。ドイツもので固めたプログラムにも引き寄せられました。

 冒頭の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲は、今後の任期やこの演奏会への前奏曲と思えるような、スケール大きくかつ堅固に構築されたファンファーレでした。これからやってくれるんでは・・・と皆が期待したでしょう。

 2曲目のシューマンのチェロ協奏曲。独奏のユリア・ハーゲンは、紺のドレスに身を包み、とっても可愛らしい女性チェリスト。音色はとっても落ちついて安定感あふれるものでした。ただ、そのおかげか、一週間の疲れがどっと吹き出し、あっちの世界行き。ごめんなさいでした。

 期待感一杯で向かえた休憩後のベートーヴェンの「英雄」は驚きや感心が入り混じった聴きごたえたっぷりの演奏でした。まず舞台の1/3程が空きスペースになっている小編成。第一楽章は、テキパキと小気味よく進みます。サントリーホールならではの室内楽的な響きがホールを包みます。続く第二楽章から段々熱が上がってきた感じ。この楽章、私の葬式で使いたいかどうかが、好みの演奏かどうかの判断基準という目茶、主観的判断なのですが、今回は〇。理性と感情のバランスが良くとれた、単なるお涙頂戴の演奏でないところが好みです。そして、第3,4楽章は怒涛の一気の演奏でした。面白いと思ったのは、室内楽的な響きとまるで大編成オケのようなスケール感を持たせるところが上手く使い分けられていて、実に多彩な音の組み合わせが展開されていたところです。ただ、それも小手先で表面上の変化を持たせるというよりも、しっかりした基礎の上にちょっと応用を入れましたという感じで、こういう聴かせ方があるんだと大いに感心しました。

 読響は万全だったとは言えない(特にホルン)と思うのですが、緊張感や集中力は優れたもので、気合が2階席奥の私まではっきりとわかりました。こういう時は、ちょっとした傷とかは全く気にならないです。小編成のためか、弦の一人一人の音までが個別に聴きとれているような感覚でした。終演後の満足度はとっても高く、大きな拍手を送りました。

 それにしても、パーヴォ・N響、ノット・東響、大野・都響などなど強力な東京オケ合戦に、ヴァイグレ・読響がこれからどういう風を吹かせるのか。目が離せません。ほんと、時間とカネという有限の資源をどう使うかが悩ましいです。

 

622回名曲シリーズ

2019 5.24 19:00  サントリーホール
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
チェロ=ユリア・ハーゲン 

ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
シューマン:チェロ協奏曲 イ短調 作品129
ベートーヴェン:交響曲第3 変ホ長調 作品55「英雄」 

Popular Series No. 622

Friday, 24 May 2019, 19:00 Suntory Hall

Conductor = SEBASTIAN WEIGLE
Cello = JULIA HAGEN

WAGNER: "Die Meistersinger von Nürnberg" Prelude to Act I
SCHUMANN: Cello Concerto in A minor, op. 129
BEETHOVEN: Symphony No. 3 in E flat major, op. 55 "Eroica

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演劇 天野天街「1001」 少年王者舘 @新国立劇場 小劇場

2019-05-25 08:00:00 | ミュージカル、演劇

 全く新しいものを観た。2月に下北沢で見た芝居で井村昂さんという役者が目を引いて、その時貰ったチラシで次回は新国立劇場で所属の少年王者舘なる劇団で登場するというのでチケットを購入していたのだが、言葉にできない衝撃的な世界だった。

 少年王者舘というの団体は、演出家・天野天街が率いる名古屋の劇団だそうなのだが、新国立劇場演劇部門芸術監督の小川絵梨子氏もファンだという。東京では、下北沢のスズナリとか、いわゆる小劇場で活動しているようだ。

 2時間15分ぶっ通しの演劇(丁度真ん中ぐらいで1分ぐらいの間は置かれる)は筋があるようで明確なストーリーはない。アラビアンナイトを想像させるテント小屋や建物のセットが置かれるが、時間や空間は曖昧。演劇は、短めの台詞が役者たちがユニゾンし、リフレインされて展開する。台詞はシェークスピアのように、少しずらされたり、同音異義でつながれたり、多彩な活用が施される。そして、照明や映像効果(プロジェクションマッピング)を最大限活用され、役者と観衆ともども現実と非現実的の間をさまよう。後半には幻想的な群舞も入り、その意味・場所・時間不明な世界は最高潮に達する。

 登場人物も多いこと、明確な主役・脇役というのも存在せず、いくつかのエピソードが自然と連携し流れていくので、個々の役者さんは見分けがつきにくい。井村さんの存在は明確に分かったが、いくまでも全体の中の一パーツに徹していた。終わってみると、自分はこの演劇で何を観たのかと問われても、できないもどかしさもある。その観劇体験の不思議さはこれまでの経験には無かったものだったが、間違いなく私好みの世界だった。

 また行かねばならない劇団が一つ増えた。

(2019年2月19日)

2018/2019シーズン
演劇「1001」
少年王者舘

スタッフ

作・演出: 天野天街
美術: 田岡一遠
美術製作: 小森祐美加 岡田 保
映像: 浜嶋将裕
照明: 小木曽千倉
音響: 岩野直人
振付: 夕沈 池田 遼
音楽:珠水
衣裳:雪港
小道具:る
演出助手山田 翠
舞台監督:大垣敏朗

キャスト

珠水 夕沈 中村榮美子 山本亜手子 雪港 小林夢二 宮璃アリ
池田遼 る 岩本苑子 近藤樺楊 カシワナオミ 月宵水
井村 昂
寺十 吾 廻 飛呂男 海上学彦 石橋和也 飯塚克之
青根智紗 石津ゆり 今井美帆 大竹このみ 奥野彩夏 小野寺絢香 小島優花
小宮山佳奈 五月女侑希 相馬陽一郎 朝長愛 中村ましろ 新田周子 一楽
野中雄志 長谷川真愛 坂東木葉木 人とゆめ 深澤寿美子

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ゴールデンウィーク 奈良・見仏ツアー(3)長谷寺

2019-05-23 07:30:00 | 旅行 日本
 次の目的地は長谷寺。ゴールデンウィーク中ということで、室生寺ー長谷寺間を直通で結ぶ臨時バスが出ていたので、こちらを利用。観光バス仕様のデラックスバスは、らくちんかつ便利で、助かった(奈良交通のバス・パス(2日間コース)は、この臨時バスは適用範囲外なので注意要)。
 
<仁王門>
 
 時刻もお昼を廻ったためか、長谷寺は室生寺の何倍も混みあっていて、かなりざわついた気分。長谷寺名物の牡丹祭りの最中だったのだが、陽射しが強すぎて牡丹もお疲れ気味であった。
 
<牡丹畑>
 
 399段あるという登廊を上り、本堂へ。舞台が山から突き出るように建築された本堂は、京都の清水寺を思い起こさせる。
 
 
登廊>
 
<本堂(国宝):徳川幕府による大規模な造営として代表的な寺院本堂>
 
 長谷寺の見仏と言えば、本尊の十一面観世音菩薩立像(重要文化財)。室町時代の作で、木造で像高10メートルもある。日本で最も高い木造仏だそうだ。ちょうど、特別拝観期間中ということで「追加料金1000円でご本尊様とご縁が結べます」と入口で売り込んでいたので、迷わず200円割引となる拝観料とのセット券を購入していた。期待感一杯で、本堂の中に入ってみると、確かに10メートルの木造の菩薩さまはでかかった。見上げて、ご尊顔を仰ぎ見る感じ。ただ、少々がっかりだったのは、ご縁が結べるというのは単にお足に触れるというだけだった。参拝者が触ってピカピカに光ったお足を私も撫でて、仏像を一周しておしまい。本堂の外側からもこの菩薩さまは見ることができるので、「う~ん、わざわざ特別拝観料払うほどでもなかったか」とつぶやきかけたが、せっかく結んだご縁がなくなるどころか、バチがあたっては嫌なので、やめておいた。
 
<HP「奈良・桜井の歴史と社会 」から引用 https://koza5555.exblog.jp/20467884/>
 
 
 舞台に立って周りの山を見渡し、視線を下にやって村々を見下ろすのは実に壮観だ。秋になると、この緑が一面、紅葉するという。どんな様なのか、一度見に来てみたい。
 
 <本堂の舞台からの眺めが素晴らしい>
 <本堂の舞台から五重塔を望む>
 
 
 その後、五重塔など広い寺院敷地内を散策し、帰路についた。 奈良に戻ったのは夕方5:00前後。手元のスマフォによると、この日は23617歩、19.7km, 60階段分を動いたことになっている。疲れたわけだ。
 ホテルで夕食をとったら、前夜行った「なら泉勇齋」に再び繰り出す気まんまんだったが、バタンと19:00過ぎには寝てしまった。
 
<首都圏では珍しくなった扇風機付きの車両 @桜井線>
 
 (つづく)
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ゴールデンウィーク 奈良・見仏ツアー (2)平城京跡・室生寺

2019-05-21 07:44:45 | 旅行 日本

 2日目は、恒例の朝の観光ランニングからスタート。今回は6:15にホテルを出発し、平城京跡を目指した。日中は平城京天平祭なるイベントを開催中だったようだが、7時前の平城京跡は散歩のお年寄りたちと私のようなランナー以外は人影はなく、広々とした都跡をほぼ独占できた。真っ青の朝空とまだひんやりする朝の空気の中、鳥の鳴き声が響く都跡はとっても長閑だ。広い空間をジョギングしながら、大いに賑わっていたであろう1200年前の都の様子を想像するのは楽しい。


<朱雀門>


<大極殿:天皇の即位式や外国使節との面会など、国のもっとも重要な儀式のために使われていたとのこと>


<周囲はこんな感じ>

  朝食後、この日の予定は奈良市から南へ遠征なので、まずは室生寺へ向かう。奈良駅からJR桜井線(9:35)に乗り、桜井駅で乗り換え、近鉄名古屋線の室生口大野駅まで行き、そこから路線バスに乗って11:00にやっと到着。この日は、女人高野とも呼ばれるこの素朴な山寺を訪れるには最高の季節、気候、天気だった。初夏を思い起こさせるような太陽の光と新緑が目に沁みる。

 

 丁度、室生寺名物の石楠花が満開だった。「石楠花の淡い色あいを楽しむにはやや陽が強すぎる感があり残念」なんて言ったら罰があたるかもしれないほど贅沢なことだが、美しい石楠花を愛でるには曇りや雨の天気のが相応しいかもなんて思わせるほど、午前中から日差しが強かった。

 階段を上るとすぐに金堂が目に入る。平安時代初期の建物がそのまま残っている。中に入るとその仏像群が圧巻で息を飲む。本尊の釈迦如来立像を中心に、薬師如来、地蔵菩薩、文殊菩薩、十一面観音などが脇を抑える。そして、如来や菩薩の前には十二神将が並び立つ。ここにあるべきものがここにある、その完璧な空間に立ちすくんだ。平安時代から世が変わっても、天変地異があっても、ここにあったこの仏たち。その奇跡に言葉が出ない。仏像としては、特に、左端の十一面観世音の神々しさに打たれる。


<金堂>


<こちらは以下の奈良県公式観光サイトから転載した金堂内>
https://yamatoji.nara-kankou.or.jp/01shaji/02tera/03east_area/muroji/event/s01huervmg/

30分弱ぼーっと見とれていたが、気を取り直して次のお堂、灌頂堂(本堂)を訪れる。これは鎌倉時代の建築でこちらも国宝。中には、本尊如意輪観音菩薩像が安置されている。


灌頂堂(本堂)


<石楠花が美しい>

 そして、さらに奥の院を目指して約400段と言われる石段を上りはじめる。その入り口には日本最小の屋外の五重塔がある。平安時代の初期に建築された国宝なのだが、どうも新しくってそれっぽくない。平成10年(1998年)の台風で大損傷となり、その後修復したためらしい。(帰り道のお寺のショップで損傷を受けた五重塔の写真があったが何とも痛々しかった。)


<五重塔>

ふ~ふう言いながら登る。昔、山形の山寺(童謡の「山寺の和尚さん」の舞台)の石段を上ったのを思い出した。途中、蛇やトカゲを見かけた。みなさん、「いよいよ俺らの季節だぜ~っ」て感じで、あらゆる生き物が動き始めている感じだ。


<結構勾配もきついです>

 
<奥の院>

 
<奥の院から室生の里を見下ろす>

 奥の院自身はこれと行った見ものは乏しく、こんなに頑張ってのぼったのにと少々拍子抜けのところはあったが、木の葉の隙間から村を見下ろすのは自分の頑張りを褒めるのに十分だ。

 自然と一体になったこの寺は、四季それぞれで楽しめるだろう。次はまた違った季節に訪れたい。


<移動を優先し、昼飯は蓬入り回転焼で凌ぐ>

(つづく)

 

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N響5月C定期 指揮:ネーメ・ヤルヴィ/ブラームス交響曲第4番ほか

2019-05-19 09:46:34 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

先週に続き、N響定期演奏会に。代々木公園の緑もあっという間に色が濃くなっていく。今日はヤルヴィ・パパ(以下、パパ)の登場だ。パパは90年代中頃私がミシガン州に滞在していた時に、デトロイト交響楽団の音楽監督を務めていたので、個人的にも親近感がある。いかつい風貌は前と変わらないが、コンサートマスターの伊藤さんと並ぶと優に倍はあると思われる巨体を動かすのはちょっとしんどくなってきた感じ。

1曲目はシベリウスのアンダンテ・フェスティーヴォ20142月に尾高・N響で聴いて以来だが、今回もN響らしい弦の美しいアンサンブルが素晴らしく、5分程度の楽曲だが感銘はひときわだった。1曲目とは思えない大きな拍手が聴衆の満足度を語っていた。

続いて、ヤルヴィ家の母国エストニアの作曲家トゥビンの交響曲 5。私は全く初めての曲。この作曲家、パパが世に広めた貢献者の1人らしい。曲は緊張感と優しさが両立するもので興味深く聴いた。特にパーカッションの強打が印象的。なかなか聴けるものではないパパならではの選曲が嬉しかった。
(蛇足だが、プログラムによるとこの曲はN響では始めて取り上げるそうだが、むか~しのプログラムには、世界初演、日本初演とかN響初演とかが曲目次についていた記憶があるのだが、いつの間にかそういう記載はなくなったのだろうか。) 

後半はブラームス交響曲第4番。前回は17年にルイージ、N響で聴いている。パパのブラームスは、ブラームス特有のくどさが抑えられ、さらっと流れるもので意外な展開だった。かなり前のめりで聴く準備をしていた私には、肩透かしにあったような感じ。特に、第1楽章はかなりハイペースで、「おいおい・・・」って感じで戸惑った。演奏自体は非常にまとまって、熱演であったとは思うのだが、個人的にはもっと重厚長大系の演奏の方が好み。が、満員とまではいかないまでもかなり埋まっていた客席からは、ブラボー含め大きな拍手が送られ、パパも満足の様子であった。

 

1913 定期公演 Cプログラム
2019518日(土) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール

シベリウス/アンダンテ・フェスティーヴォ
トゥビン/交響曲 5 ロ短調(1946
ブラームス/交響曲 4 ホ短調 作品98 

指揮:ネーメ・ヤルヴィ

 

No.1913 Subscription (Program C)
Saturday, May 18, 2019  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall 

Sibelius / Andante festivo
Tubin / Symphony No.5 b minor (1946)
Brahms / Symphony No.4 e minor op.98  

Neeme Järvi, conductor


<もうすっかり、初夏の様相>

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ゴールデンウイーク 奈良 見仏ツアー(1)奈良酒最高!

2019-05-17 07:00:00 | 旅行 日本

 GW前半は出張と被ったが、後半は奈良に2泊3日の見仏ツアーに出かけた。奈良へは2年前の秋に薬師寺と唐招提寺、そして法隆寺ら斑鳩界隈を廻ったので、今回は奈良の本丸とも言える東大寺、興福寺とともに、中心部から離れた室生寺、長谷寺へ遠征した。 

 初日、お昼過ぎに奈良に到着したところ、ここはラッシュアワー時の新宿かと思わせる人込みでいきなり出鼻を挫かれた。前回、9月第1週の週末に訪れた際は、駅前も閑散とした感じだった(夕方、皇太子(現天皇陛下)が来られたので夕刻は混みあっていたが)が、まるで別世界である。飲食店の前には行列ができ、昼食はコンビニおにぎりを覚悟させられるほど。連休後半は、古都奈良でゆっくり見仏というのは妄想だったかと、自分の旅行計画を早々に反省。


<うどん屋さんも15分待ち>

 とは思いつつ、15分待って入ったうどん屋さんは関西風出汁のとっても美味しいうどんだったので、機嫌も取り直した。食後、ホテルで荷を下ろし、まだ初日でエネルギーもあるのでさっそく散策。まずは、奈良公園、興福寺へ突撃。


<鹿せんべいに見向きもせず、人間をなめ切った態度の鹿たち。全然可愛くない>

 《興福寺》
 大混雑の三条通を抜けて到着したら、中金堂前庭にて藤原不比等公1300年御遠忌法要なるものが開催中で、奈良の要人らが招かれ盛大な式典をやっていた。(参列資格もないので)素通りして、まずは東金堂へ入る。本尊薬師如来像、日光・月光菩薩像(いずれも重要文化財)、文殊菩薩像と維摩居士像、四天王像、十二神将像(以上いずれも国宝)が、所狭しとなら並んでおり実に壮観。個人的には、四天王と十二神将の迫力に圧倒された。昨年読んだ伊藤せいこうとみうらじゅんの『見仏記』シリーズの影響で、ついつい邪鬼に目が行くのだが、邪鬼がとっても可愛くしっかり踏まれていた。よしよし。


藤原不比等公1300年御遠忌法要>


<興福寺東金堂>

 続いて、国宝館へ。見るもの見るもの殆どが国宝、重要文化財だから、ここはホント凄い。ただ、やっぱりここは阿修羅像がぴかいち。この均整の取れた見事なバランスは文句なし。仏教の守護神であるはずなのに、意味ありげな複雑な少年の表情も空想を掻き立てる。

 《新薬師寺》
 興福寺の仏像パワーと奈良公園の人の洪水にやられて、かなりエネルギーを吸い取られた。この喧騒から離れたく、奈良公園中心部は離れ、新薬師寺に足を向けた。ここまでくると奈良公園界隈の喧騒とは全く別世界。2年前は朝ランニングで通ったが、開館前で拝観はできなかったので初の訪問となる。『見仏記』では確か観光客へのマーケティングの上手さが記述されていた記憶があるが、あまりそうした雰囲気は感じなかった。お堂に入ると、薬師如来を中心に十二神将が取り囲む、独特の宇宙があった。この配置は、見せ方は独特だ。十二神将は1時間前に観た興福寺東金堂のそれらよりも随分と優しく穏やかに見えた。全体的に白っぽくなっている。調べたら、新薬師寺の十二神将は奈良時代、興福寺の十二神将は鎌倉時代の作。そんな時代の違いもあるのかもしれない。

《夜の部》
 初日の観光はこれまでだが、夜に想定外の「あたり」があった。夜はJR奈良駅近くのスタイリッシュな焼き鳥屋さんで、奈良の地酒を3種類頂き、いい気分に。

 その後、ほろ酔い気分でフラフラと奈良まちを歩いていると暗がりに輝く立ち飲み屋さんのようなお店。吸い込まれるように入ると、そこでは、奈良のお酒のみを扱い、県内29の酒蔵で醸造された120種類以上の地酒をすべて、おちょこ単位で有料で試飲できるというのだ。またお店のおじさんがうまい。「さっき、焼き鳥屋でこれとこれを飲んだら美味しかった」と言ったら、「じゃあこれも好きに違いですよ」と進めてくれる一献は、確かに好み。勧められるままに杯が進み、またたく間に奈良のお酒のファンに。お土産に一本購入して、すっかりお店に乗せられた形だが、満足度は十分で、奈良まで来てよかったと幸せ気分一杯でホテルに戻った。このお店「なら泉勇斎」というので、奈良にいったら是非、足を運んでほしい。


≪外見もGood≫


≪奈良のお酒だけ扱ってます!全部試飲できますよ。ハイ≫

<立ち飲み客がたくさん。直ぐ友達になれます> 

 (つづく)

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N響5月A定期 エド・デ・ワールト指揮/ジョン・アダムズ〈ハルモニーレーレ〉ほか

2019-05-14 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


<この時期恒例のタイフェスタ>

5月のA定期には、N響には何度か出演しているベテラン指揮者のデ・ワールトが登場。私もこれまで2回ほど聞いているけど、余計な装飾がなく、愚直に音楽を音楽そのままに語らせるというアプローチはとっても好感が持てる。

前半のベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番<皇帝>を聞くのは随分久しぶりだった。ピアニストのロナルド・ブラウティハムは全く初めての人だったが、端正で真摯な演奏が良い。第1楽章はやや教科書的すぎるかなあと思ったりしたところもあったのだが、第2楽章の美しさは格別だった。まるで昨年末に聴いたヤノフスキのベートヴェンの第九交響曲の第3楽章を思い出させるような、柔らかで優しく、絹地に頬を当てた時のようなピアノの音色で、思わず涙がこぼれるほど。<皇帝>の第2楽章ってこんなんだったんだという再発見とともに、これが聞けただけでも今日来てよかったと思った。アンコールはエリーゼのために。

後半のアダムズの「ハルモニーレーレ」は全く初めて聴く曲。現代曲でもあり、ついていけるかどうか不安だったが、私の音楽体験に新たな1ページを加えてくれる貴重な経験となった。正直、この曲の全容や内容をどこまで把握できているのかは全く自信がないが、ステージの後方いっぱいに広がった打楽器の数々をはじめとして、大規模オケが繰り広げる音の饗宴はすさまじく、圧倒された。

この曲の初演をサンフランシスコ響で振ったというデ・ワールトは、すべてを心得たとでもいうような棒さばきでN響を導く。そして、N響は個々の音の組み合わせが極めて複雑に聞こえるこの音楽を、N響ならではの精緻でバランスの取れた演奏で、デ・ワールトの棒にしっかりとこたえる。指揮者、オケ、どちらかが少しでも崩れたら全くこの曲の演奏は成り立たなくなるだろうと思わせるところを、パーフェクトに聴かせてくれた。オペラグラスから覗いた打楽器陣の緊張した面持ちや、都度都度ハンカチで手をぬぐう姿が、この曲の難しさを表しているようだった。 

正直、客席は空席が目立つ寂しいものだったが、終演後に暖かく大きな拍手が会場一杯に響いたのが、何よりも聴衆の満足感を示したと思う。私も、手が痛くなるほどの拍手を送った。

2019年5月12日(日)
開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール  

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
ジョン・アダムズ/ハルモニーレーレ(1985)

指揮:エド・デ・ワールト
ピアノ:ロナルド・ブラウティハム

No.1912 Subscription (Program A)
Sunday, May 12, 2019  3:00p.m.
NHK Hall   

Beethoven / Piano Concerto No.5 E-flat major op.73 “Emperor”
John Adams / Harmonielehre (1985)  

Edo de Waart, conductor
Ronald Brautigam, piano

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13年連続ロングステイ希望国第一位の国マレーシアを訪れる

2019-05-12 08:00:00 | 日記 (2012.8~)

 インドに続いてマレーシア・クアラルンプールを訪れたが、あまりの違いに愕然とした。インドで、駐在員が茶化し半分と自虐半分で「あいつら(マレーシアの駐在社員)、楽してますからね~」と言っているのが微笑ましかったが、その意味が良く分かった。街が整然としていて、静かで、きれいで、人もマイルド。何もかもがインドとは逆で、海外勤務先としては全く不足ない。どっかの協会が毎年やっているアンケートで、13年連続でロングステイ希望国第一位に選ばれているというのもわかる。 

 24時間未満の滞在だったので、ビジネス以外は殆ど時間が無かったが、夜の風景と朝のジョギングで採った写真だけ残しておきたい。

 まずはクアラルンプールの近代化を象徴する建物ペトロナス・ツイン・タワー。高さ452m。まるで近未来映画を観るようなライトアップになっていた。息を飲むような威厳ある美しさである。


<ペトロナス・ツイン・タワー>

 インドでは現地駐在者から「安全管理上、夜一人で勝手にぶらつかないでくださいね」と釘を刺されていたのだが、クアラルンプールでは自由に行動できる。ビジネス・ディナーが終わった後、ホテルの周りをぷらぷら。屋台の串屋さんに出くわす。屋台街では無く、この屋台だけぽつんとあったのだが、人が絶えることなく訪れていた。現地通貨を持ってないので残念ながら試食はできず。

 

 翌朝、チェックアウトまでの時間を使ってホテルの周囲を1時間ほどジョギングした。
華僑系が四分の一を占めるマレーシアらしく、中国系の仏教のお寺があった。お堂の中には立派な観音菩薩の仏像があり、仏像ファンとしては嬉しい。


<金ぴかの観音菩薩。最近は日本の古い仏像ばかり見ているので、金ぴか仏像を観るのは個人的にはまれ。本来、仏像とはこういう金ぴかなものなんだけどね>

しばらく行くと、丁度5月1日だったためか、メーデーを記念したジョギング・ウオーキング大会が開催されていて、私も途中までジョイン。イスラムの国らしく、女性はみんなヒジャブを被っている。マレーシアにおけるメーデーの位置づけは良く分からないが、皆さん仲良く楽しそうに、友達や家族とおしゃべりしながら、走ったり歩いたりしている。

 行進団を離れ、KLタワーを目指して、昔はジャングルだったのだろうかと思わせる林の中を進んだら、「危険生物に注意」の看板があり、ちょっと肝が冷えた。サソリとかがいるらしい。


<この写真見ただけで鳥肌立つ>

 なんとかKLタワーのふもと迄到着。錐のような独特の形をした通信タワーである。まだ朝早いので展望台(276m)までは上がれなかった。

 前日の夜に眺めたペトロナス・ツイン・タワー前に今一度。高いわ。



段々と雲が切れて青空がのぞいてきた。実に綺麗な青空で、この青空はスモッグにまみれたインドではなかなか拝めないだろう。


<さわやかな青空>

 観たところが限られてるのでほんの一面をかすっただけなのだが、なんかアジアっぽくないクアラルンプールの近代都市ぶりが、初マレーシアの私にはとっても驚きだった。中華街や市場とか行けばまた違った一面もあるのだろうが、アジア的な喧騒、エネルギーというよりも、秩序ある整備された国という印象だ。もう少し掘り下げてみたいなあと、後ろ髪惹かれる思いで、帰国の途についた。

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躍進するインドを初体験(3):バンガロール1時間観光

2019-05-11 08:30:00 | 日記 (2012.8~)

 バンガロールは市の中心部は殆ど通らず、周縁のビジネスエリアを廻ったに過ぎなかったけど、ムンバイと雰囲気が全く違っていて、絶望的貧困を垣間見ることは殆どなかった(とはいっても滞在時間1日半だが)。標高900Ⅿの高地であることもあって、暑くても、爽やかで気持ちがいい。 都会特有の忙しさ、緊張感を感じたムンバイに比べて、バンガロールは人もソフトで丁寧で優しい印象。

 次の訪問地であるマレーシアへの飛行機が夜中の出発だったので、夕方少し市内をご案内頂いた。

【バンガロール宮殿】
 植民地時代、イギリス人の提督のために作られた宮殿。チューダー朝とムガール様式の折衷。入場料ケチって、宮殿内の写真は撮れなかった(写真撮影可能な入場料を払えば写真も撮れる)が、建物内もイギリスで訪れた古城と雰囲気が似ていた。ルネッサンス期やラファエロ前派の模写の絵があった。宮殿前にも西洋風の庭園があるが、暑くてとても散策という気分にはならなかった。


<立派なお屋敷である>


<宮殿前の庭園>

【ブル寺院】
牛の神様を祭ったヒンズー教の寺院。バンガロールの創立者であるケンペ・ゴウダ1世が創建。バンコクのワット・アルンのような入り口の塔にはヒンズー教の神様の彫像が並び、見ごたえがある。神殿に祀られた牛は一枚の岩から作られたとのこと。

 


<これぞ黄昏時の神々>



<一枚岩からできたご本尊の牛>

隣にもヒンズーの寺院があったので覗き見たら、丁度、法要(?)をやっていた。ローカルの人たちがひっきりなしにお参りに訪れて、ブル寺院がどちらかと言えば信仰の場というよりも歴史的名所という位置づけに感じたが、こちらはより庶民の生活の場としてよりリアル感を感じた寺院であった。

【カレー】
インドで最後となった夕食はやはりカレーで締め。こと食事に関しては、スパイス好きの私にはインドはたまらなかった。どんなカレーも日本にはない強烈な個性を自己主張していた。


〈結局4日間続いたインドのカレー食でナンは一度も出てこなかった〉

 その日の夜行便で、計5日間サプライズばかりのインドを離れ、マレーシア・クアラルンプールに向かった。かなり気を付けていたお蔭ではあるとは思うが、お腹を初め、体調を全く崩すことなかったのは良かった、良かった・・・。

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躍進するインドを初体験(2):ムンバイー2時間観光

2019-05-09 07:30:00 | 日記 (2012.8~)

 今回の出張はGW期間中にまで食い込んだということもあり、日本からの連絡が殆どなかったので、出張用件に集中でき時間的・精神的にも普段の出張に比べると余裕あるものとなった。土日も挟まっため、日曜日の半日、駐在員の方にムンバイ―市内をご案内頂いた。当地の歴史や文化を知るのもビジネスを進めるにはとっても大事なことである・・・(と言い訳)。

【インド門】
英国王でありインド皇帝であったジョージ5世のインド訪問を祈念して1911年に建てられた植民地主義のシンボルである(「地球の歩き方」)。海に面して建ち、ムンバイーの入り口となっている。ローマやパリの凱旋門のような権威を感じる大門だ。ムンバイ―を代表する観光スポットであるだけに、インド人、外国人を問わず大勢の観光客で凄い賑わい。知らない間に私の写真を撮って手持ちのプリンターでその場で印刷し、「こんなあなたの格好いい写真が撮れているから買わないか?」という怪しげな写真屋さんから何度も声をかけられる。インド人の訪問者は地元の人か旅行者なのかはわからないが、みんな楽しそう。


<インド門と前の広場>

 
<インドの英雄 チャトラパティ・シヴァージー。17世紀、イスラムのムガール帝国からヒンズーの国家を打ち立てた。駅の名前も、国際空港の名前もチャトラパティ・シヴァージーだからどんだけ英雄なのかが分かる>


<インド門周辺。とっても賑ってます>

【タージ・マハール・ホテル】
 インド門の向かいにはタージ・マハル・ホテルが建っている。1903年に建てられたインドで有数のホテル。インドの民族主義のシンボル(「地球の歩き方」)らしい。2008年のムンバイの同時多発テロの際にはテロリストに占拠された場所でもある。中に入っているみたが、評判通り格式の高さを感じるホテルだった。


<西洋的な建築様式とインド的な様式が絶妙にミックス> 

チャトラパティ・シヴァージー・ターミナス駅

世界遺産にも登録されている駅舎である。一見、欧州のゴシック調の教会のようでもあるが、インド的な要素も感じる不思議な建築物。外見も良いが、駅舎内も一部の切符売り場は教会を思わせる建築様式である。


<世界遺産にも登録> 


<駅舎内> 


<柱の根に掘られた動物>

  ただこれが、駅ホームやホーム近辺になると様子が一変する。まさにインドなのである。列車を待つ人々が座ったり、寝転んだり、本当に寝ていたり、凄い喧騒。そして列車はエアコンなどもちろんない中に人が目一杯乗っている。
 もううん十年も前だが、学生時代、中国大陸を桂林から昆明まで(たしか計36時間ぐらいかかった記憶)、硬座車(いわゆる2等車)に乗り込み、席を確保できないまま、360度、人と荷物で一杯の車両で押しつぶされるような姿勢で、匂いと熱気にやられながら、理解できない中国語を大音量でまくしたてる中国人に囲まれ、俺はこのまま列車の中で息絶えるんではないかと覚悟した学生時代のバックパック旅行の記憶がフラッシュバックした。


<列車を待つ人々>

 


<出発を待つ列車の2等車。窓に鉄格子がはめられていて囚人列車のようである。駐在者によると「あれは窓から降りたり、乗ったりさせないためですよ」とのことだが、本当だろうか?>

こんな2時間弱の市内周遊で十分すぎるぐらいのインドを感じることができた。

余談だが、この時期、インドは大統領選挙の真っ最中。順番に選挙区ごとに投票が行われるらしく、選挙に1ヶ月ほどかけるらしい。丁度、ムンバイを離れる日の翌日が投票日ということで、その2日前の夕刻からアルコール飲料の販売がレストラン・ホテル等の場所を問わず禁止された。駐在員さんの説明によると、酔った勢いで暴動等になるのを避けるためらしい。このアルコール禁止日をDry Dayと呼んでいた。

(つづく)

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躍進するインドを初体験(1):成長と貧困の両端

2019-05-06 07:30:00 | 日記 (2012.8~)

出張で人生初のインド・マレーシアの訪問の機会を得た。仕事以外のインド・マレーシア体験の印象を書き留めておきたい。

インドで訪れたのはムンバイーとベンガル―ル(バンガロール)。いずれもインドのIT産業を牽引する大都市である。

ムンバイーは、半分は私のステレオタイプのインドに近かった。蒸し暑く、人・車で一杯で、エネルギーに満ち溢れている。三輪タクシーが道路を縦横無尽に走り渡り、鳴りやまない車・オートバーィのクラクションは耳をふさぎたくなるほど。車線を思いっきり逆走してくる車、オートバイは当たりまえ。路上で横になって寝ている人が居ると思えば、車が止まれば車の窓越しに物を売りに来る子供たち。車窓から、新宿のホームレスの段ボールハウスの住宅街のようなバラックが立ち並ぶのが見える。現在の世界にも確固と存在する貧困の現実に、学生時代に途上国援助と経済成長について勉強し、多少はこの道に通じているほうと思っていた自分にも、久しぶりの衝撃だった。


<どこも車・車で街中が渋滞:ムンバイー>


<三輪タクシー この写真では見えないが6名が乗ってます:ベンガル―ル(バンガロール)>

 
<街中ではさほどは見かけませんでしたが牛も。ちょっと郊外に出るとあちらこちらにいます:ムンバイ>


<ムンバイーの野外洗濯場ドービー・ガート>

一方で、私の想像をはるかに上回るインドの成長の力強さも感じた。ムンバイー、ベンガル―ル(バンガロール)とも建築中の高層複合ビルやマンションであふれている。街中で地下鉄や高架鉄道の建設が進む。道路が一日中渋滞しているわけである。エリアによっては先進国と全く同じブランド店やスーパーマーケットが並び、そこでは中産階級以上のインド人が買い物をしている。道路は凸凹だが、車もスズキ、トヨタ、ベンツ、TATAなど世界中の車が走っている。新聞には、いろんな学校がIT、ビジネスのプログラムを宣伝していた。


<いたる所で高層オフィスビルやマンションが建設中:ムンバイ―>


<車窓からはいたるとことにIT企業のビルやエレクトロニック・キャンパスやビジネスセンターが見えます:バンガロール>

 
<日本にもあったスーパーSPAR ベンガル―ル>

仕事では、パートナーリングをしている企業や顧客企業を訪問し、市場や今後のビジネスについてディスカッションしたが、どのビジネスパーソンも、確固たるビジョンでロジカルに戦略を主張する。中でも、インドのITを牽引するベンガル―ル(バンガロール)で訪れた某IT企業のキャンパスはこれが企業の敷地かと思うような、アメリカの大学のキャンパスとビーチリゾートホテルを折衷したような一大キャンパスで、私が持っている「職場」の概念がひっくり返った。


<訪問企業が入っていたオフィスビル ムンバイー>

今さら実感しているようでは一周、二周遅れなのだろうが、この国、50年後はどうなっているのだろうか?この人口・マーケットとインフラと教育が活き割ったら、とてつもないパワーを発揮するに違いない。躍進するインドのパワーに押しつぶされそうになった数日間の滞在経験であった。

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特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 @東京国立博物館

2019-05-02 12:01:40 | 美術展(2012.8~)

 

ひと月ほど前になってしまったが、東寺展に行ってきた。これは超お勧め。何といっても、あの講堂にある21体の立体曼陀羅のうち16体が勢ぞろいしているのである。この会期中に東寺に行った人はさぞかしがっかりするに違いない。

彫刻、絵画、書跡、工芸など密教美術のあらゆるものが展示されているが、一番の見せ場は立体曼陀羅コーナーだろう。現場に行っても距離を置いてしか拝めない仏像たちが間近に配することができるのが何とも嬉しい。個人的には『見仏記』の影響で、邪鬼に目が行ってしまう。確かに、良い踏まれっぷりだ。邪鬼ってふんどし巻いているのね。

〈唯一撮影可の展示 国宝 帝釈天騎象像 平安時代・承和6年(839) 東寺蔵〉

展示品の多くが国宝、重要文化財なのも驚きだ。空海の直筆、風信帖もある(個人的には、3大名筆の空海の字がどう美しいのかはよくわからない)。

展示の入れ替えも含め6月2日まで。くどいですが、お勧めです。

《桜が満開でした》

〈構成〉
第1章 空海と後七日御修法(ごしちにちみしほ) 
第2章 真言密教の至宝
第3章 東寺の信仰と歴史
第4章 曼荼羅の世界

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