鈴木優人さんをプロデューサーに迎えて今年で3回目となる調布音楽祭。一昨年は音楽祭のフィナーレを飾るバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏会に行きましたが、昨年は都合で訪れることができませんでした。今年も別の予定が入っていて残念に思っていたのですが、前日からの雨で予定していたイベントが中止になり、幸運にも足を運ぶことができました。
あまり音楽祭なるものを知らない私が言うのも何ですが、この東京都下で行われる音楽祭、一流の音楽家を集めつつ地元の手作り感も満載で、なかなか素敵です。「今年も「バッハの演奏」「アートとの連携」「次世代への継承」という3つのコンセプトを元に」(調布音楽祭HP)、BCJの演奏会やファミリー・子供向けの体験企画、地元音楽家の無料演奏会など4日間様々な企画が展開されました。
私が今年特に感心したのは、私自身初めての鑑賞となった無料公演。「たづくり」という市民センタ(図書館、貸会議室、ホールとかが入った市の複合ビル)のエントランスに設けられたオープンステージでは、オーディションで選ばれた市民音楽家による公開演奏が土日の2日間開催されます。さらに、同じ建物内の小ホールでは、同市にある桐朋学園大学音楽科の在学生・卒業生が演奏する無料の音楽喫茶があります(飲み物・食べ物は有料ですが、持ち込みも可!)。それぞれ25分づつの公演で、2つの会場で時間をずらして行われるので、30m程度の移動で、一日中生演奏に浸っていることができます。しかも、レベルが十分高い!私は、計4つほどの公演を聴きましたが、どれも良かった。中でも、アメリカの曲を集めた打楽器アンサンブルは、マリンバと様々なパーカッションを組み合わせて、アンダーソンの「タイプライター」、ミュージカル〈キャッツ〉のメモリー、バーンスタインの〈ウエストサイド物語〉のアメリカなど、様々な音楽、音色を楽しませてくれました。
地元のボランティアの方が大勢、イベントを支えていたのも印象的でした。正直、慣れているとはとても言えないような司会の方もいらっしゃいましたが、むしろそれも手作り感満載で、地域に根差した音楽祭を作って行こうとする雰囲気が好ましかったです。会場で配布されていたプログラムのデザインも暖かく、音楽祭の雰囲気を形作っていました。
今年はロシア・ナショナル管弦楽団という海外オーケストラの公演も目玉の一つでした。ただ、この公演については、前エントリーでご紹介したように演奏そのものは楽しめたものの、空席が目立った残念な演奏会になっていた気がします。この地元のリソースをフル活用した音楽祭に、果たして海外オケが必要なのか?とは正直思った次第です。BCJの演奏会があるんだから、十分にワールドクラスの演奏を楽しむ機会は与えられているわけですし・・・。限られた予算を使うなら、BCJのプログラムは声楽を入れるなど、他のやり方を考えた方が更に音楽祭が盛り上がる気がします。
毎年進化を見せている調布音楽祭。今年は日曜日は新国立劇場のオペラを入れていたため土曜日のみの参加になってしまいましたが、来年は見逃し、聴き逃しの無い様、6月の最終週末は空けておかなくては。まだの人も是非。
【以下、オープンステージ、ミュージックカフェの様子】
《Symphonic Quartetのみなさん @オープンステージ》
《打楽器アンサンブル @ミュージックカフェ》
《Trio Fiore @オープンステージ》
Symphonic Quartet
我妻里実(エスクラリネット、クラリネット)
藤本 湊(クラリネット)
林 彩香(クラリネット、バセットホルン)
宮崎 蕗(バスクラリネット)
バーンスタイン:『キャンディード』序曲
フランセ:小四重奏曲
モーツァルト:歌劇『魔笛』より
ガーシュウィン:3つの前奏曲より
アメリカ (打楽器アンサンブル)
横内 奏(マリンバ)、岡 瑞恵(パーカッション)、東大路憲太(ピアノ)
バーンスタイン:『ウエスト・サイド・ストーリー』より「アメリカ」 ほか
Trio Fiore
小池彩夏(ヴァイオリン)
野村杏奈(チェロ)
山西 遼(ピアノ)
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 第1楽章
ピアソラ:『ブエノスアイレスの四季』より 「冬」「春」
〈学生主催企画〉 ドイツ (ピアノ五重奏)
「知られざるドイツ・ロマン派の響き」-ブルッフ ピアノ五重奏曲-
宮川莉奈、小平怜奈(ヴァイオリン)、村田晃歌(ヴィオラ)、
岡本梨紗子(チェロ)、八島伸晃(ピアノ)
ブルッフ:ピアノ五重奏曲