その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

これは毎年行くべし  2015調布音楽祭 (特に、オープンステージ&ミュージックカフェ)

2015-06-29 21:41:58 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 鈴木優人さんをプロデューサーに迎えて今年で3回目となる調布音楽祭。一昨年は音楽祭のフィナーレを飾るバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の演奏会に行きましたが、昨年は都合で訪れることができませんでした。今年も別の予定が入っていて残念に思っていたのですが、前日からの雨で予定していたイベントが中止になり、幸運にも足を運ぶことができました。

 あまり音楽祭なるものを知らない私が言うのも何ですが、この東京都下で行われる音楽祭、一流の音楽家を集めつつ地元の手作り感も満載で、なかなか素敵です。「今年も「バッハの演奏」「アートとの連携」「次世代への継承」という3つのコンセプトを元に」(調布音楽祭HP)、BCJの演奏会やファミリー・子供向けの体験企画、地元音楽家の無料演奏会など4日間様々な企画が展開されました。

 私が今年特に感心したのは、私自身初めての鑑賞となった無料公演。「たづくり」という市民センタ(図書館、貸会議室、ホールとかが入った市の複合ビル)のエントランスに設けられたオープンステージでは、オーディションで選ばれた市民音楽家による公開演奏が土日の2日間開催されます。さらに、同じ建物内の小ホールでは、同市にある桐朋学園大学音楽科の在学生・卒業生が演奏する無料の音楽喫茶があります(飲み物・食べ物は有料ですが、持ち込みも可!)。それぞれ25分づつの公演で、2つの会場で時間をずらして行われるので、30m程度の移動で、一日中生演奏に浸っていることができます。しかも、レベルが十分高い!私は、計4つほどの公演を聴きましたが、どれも良かった。中でも、アメリカの曲を集めた打楽器アンサンブルは、マリンバと様々なパーカッションを組み合わせて、アンダーソンの「タイプライター」、ミュージカル〈キャッツ〉のメモリー、バーンスタインの〈ウエストサイド物語〉のアメリカなど、様々な音楽、音色を楽しませてくれました。

 地元のボランティアの方が大勢、イベントを支えていたのも印象的でした。正直、慣れているとはとても言えないような司会の方もいらっしゃいましたが、むしろそれも手作り感満載で、地域に根差した音楽祭を作って行こうとする雰囲気が好ましかったです。会場で配布されていたプログラムのデザインも暖かく、音楽祭の雰囲気を形作っていました。

 今年はロシア・ナショナル管弦楽団という海外オーケストラの公演も目玉の一つでした。ただ、この公演については、前エントリーでご紹介したように演奏そのものは楽しめたものの、空席が目立った残念な演奏会になっていた気がします。この地元のリソースをフル活用した音楽祭に、果たして海外オケが必要なのか?とは正直思った次第です。BCJの演奏会があるんだから、十分にワールドクラスの演奏を楽しむ機会は与えられているわけですし・・・。限られた予算を使うなら、BCJのプログラムは声楽を入れるなど、他のやり方を考えた方が更に音楽祭が盛り上がる気がします。

 毎年進化を見せている調布音楽祭。今年は日曜日は新国立劇場のオペラを入れていたため土曜日のみの参加になってしまいましたが、来年は見逃し、聴き逃しの無い様、6月の最終週末は空けておかなくては。まだの人も是非。


【以下、オープンステージ、ミュージックカフェの様子】


《Symphonic Quartetのみなさん @オープンステージ》


《打楽器アンサンブル @ミュージックカフェ》


《Trio Fiore @オープンステージ》


Symphonic Quartet
我妻里実(エスクラリネット、クラリネット)
藤本 湊(クラリネット)
林 彩香(クラリネット、バセットホルン)
宮崎 蕗(バスクラリネット)
バーンスタイン:『キャンディード』序曲
フランセ:小四重奏曲
モーツァルト:歌劇『魔笛』より
ガーシュウィン:3つの前奏曲より

アメリカ (打楽器アンサンブル)
横内 奏(マリンバ)、岡 瑞恵(パーカッション)、東大路憲太(ピアノ)
バーンスタイン:『ウエスト・サイド・ストーリー』より「アメリカ」 ほか

Trio Fiore
小池彩夏(ヴァイオリン)
野村杏奈(チェロ)
山西 遼(ピアノ)
ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調 第1楽章
ピアソラ:『ブエノスアイレスの四季』より 「冬」「春」

〈学生主催企画〉 ドイツ (ピアノ五重奏)
「知られざるドイツ・ロマン派の響き」-ブルッフ ピアノ五重奏曲-
宮川莉奈、小平怜奈(ヴァイオリン)、村田晃歌(ヴィオラ)、
岡本梨紗子(チェロ)、八島伸晃(ピアノ)
ブルッフ:ピアノ五重奏曲
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ロシア・ナショナル管弦楽団 ミハイル・プレトニョフ 指揮/ピアノ @調布音楽祭

2015-06-28 20:10:16 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


調布音楽祭の特別公演として招聘されたロシア・ナショナル管弦楽団の演奏会に足を運びました(調布音楽祭については、また別のエントリーでご紹介したいと思います)。ロシア・ナショナル管弦楽団は、生で聴くのはもちろんのこと、名前すら聞いたのも全くの初めてでしたが、ミハイル・プレトニョフ(現芸術監督)が創設したロシア史上初めての民間オーケストラです。

今回、モーツァルトのピアノ協奏曲ではピアノ独奏、チャイコフスキーの交響曲では指揮したミハイル・プレトニョフさんも恥ずかしながら私には初めて。ここ数年ピアノ演奏は控えていたそうですが、才能ある有名なピアニストとのことです。

その前評判通り、ミハイル・プレトニョフさんのピアノは素晴らしいものでした。余計な装飾を省いた、ただただ美しいモーツァルト。プレトニョフさんは、昔のソビエトを思い起こさせる愛想が良いとは言えない、近寄りがたい雰囲気なのですが、ピアノから発せられる音楽は聴き手の心にスーッと入って来ます。大きな拍手に応えて、アンコールではモーツァルトのロンドニ長調K.485を演奏してくれました。

そして、休憩後のチャイコフスキー交響曲第5番は爆演。国際化が進んだ現代のオーケストラには、昔のようなステレオタイプな音の特徴というのは無くなってきていると思うのですが、ロシア・ナショナル管弦楽団の音色は、いかにもの大陸的、ロシア的響きに聴こえました。決して繊細なアンサンブルではないのですが、骨太で重厚。そして音が大きい。昭和的な市民会館の面影を残し、中規模で残響殆ど「0」のホールには不釣り合いぐらいの大きな生音が炸裂してました。この音圧は、在京オケではなかなか味わえないものです。ステージ後方に肩をすぼめるように並んだ大男揃いの金管陣が何とも可笑しかった。アンコールでは、ハチャトリアンの仮面舞踏会よりワルツを演奏してくれて、大団円のなか終演となりました。

唯一、残念だったのは、目立った空席の多さ。私が座った二階席は3割程度の入り。正直、来日オケでこれまでの空席は見たことありません。調布という立地の問題か、ロシア・ナショナル管弦楽団の知名度なのか、プロモーション不足なのか、原因は分かりませんが、遠路はるばるロシアから遠征してくれたオーケストラにも申し訳ない。そして、何より音楽祭の目玉公演の一つとしてはあまりにも寂しく感じました。ただ、客席の寂しさとは全く無関係に、オーケストラはとっても熱い演奏で、観衆の拍手も演奏に負けない大きなものであったのが救いでした。




ロシア・ナショナル管弦楽団
ミハイル・プレトニョフ 指揮/ピアノ
調布音楽祭特別公演

6月27日(土)14:00~

フェスティバルホール(グリーンホール 大ホール)

出演
ミハイル・プレトニョフ(指揮、ピアノ*)
ヴァディスラフ・ラヴリック(指揮*)
ロシア・ナショナル管弦楽団(管弦楽)

曲目
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番*
アンコール モーツァルト:ロンドニ長調K.485
チャイコフスキー:交響曲第5番
アンコール ハチャトリアン:仮面舞踏会よりワルツ
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遠藤周作 『沈黙』 新潮文庫

2015-06-26 21:50:32 | 


 学生時代に読んで以来の再読。今週末に新国立劇場でこのオペラを見るので、久しぶりに原作に当たってみた。学生時代に大きな感動を覚えた一冊だったが、あれから数十年経ち、ストーリーはすっかり忘れていたが、小説から受ける感銘は変わらず深いものだった。

 キリシタン禁教の地、日本に渡ったポルトガルのポルトガル人司祭ロドリゴが、日本での案内人を務めたキチジローに裏切られ、役人に捕縛される。井上筑後守により棄教の「説得」を受けるロドリコ。信仰のため、弾圧され苦しむ日本人信者たちに沈黙する神に疑問を持ちつつ、自身の信仰についても自らに問いかけ、悩む。そして、最後には踏み絵を踏む。実在の人物をベースにして作られた物語。

 平易で読みやすい文章であるが、その情景描写は現実的で、読者の想像力を具体的に刺激するし、心理描写はこちらの胸が痛むほどだ。重厚なテーマによるところもあるだろうが、平明な言葉がこれほどの重みを持つというのは驚かざるえない。

 キリスト教信者でない私には、信仰の持つ意味合いについてどこまで理解できているのかは不明だが、主人公の葛藤の厳しさは一定の想像はつく。「日本人にはキリスト教は根付かない」「日本人は沼だ」など日本人論にもなっている。ここで言われる「日本人」の信性は現代になってさほど変わっているとは思えない。

 改めて読んでみると、ロドリコが踏み絵を踏む決断に至るプロセスの描写は意外と短かくあっけなかった。映画ならきっと拷問シーンとかも入れ込んで物語を盛り上げるのだろうが、この小説にはそういう演出は無く、淡々としている。踏み絵を踏んだ後の科白で、踏み絵を踏んだ意味合いは分かるものの、作品のハイライトであろうところがあっさりとしているのは、劇性という意味では物足りないかもしれないが、逆に主人公の内面に踏み込む隙間を読み手に与えてくれるともいえる。

 時代を超えて読み継がれるべき一冊であろうことは間違いない。この原作が、オペラでどう表現されるのか、音楽、演出ともに楽しみである。
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大英博物館展 ー100のモノが語る世界の歴史 @東京都美術館 (再訪)

2015-06-23 23:14:39 | 美術展(2012.8~)


会期終了1週間前となった日曜日、大英博物館展に2回目の訪問。閉館2時間前の15時半に入館。ある程度の混雑は想定していたものの、会場は家族づれ、カップル、愛好家で押せ押せの一杯で、会期前半の金曜夜にでかけたスキスキの会場とは、混み具合も客層も全く違っていた。

人を掻き分けながら進んだのだけど、2回目なので気持ちの余裕をもって見られる。100点の出展だから、1点1分でも1時間40分もかかる計算になる。どれもお値打ち展示品なので、1分では短いぐらいだ。

前回は、大英博物館で展示されていたオリジナルの100点との違いに気を取られすぎた感があったものの、今回はオリジナルかどうかは無関係に一点一点をじっくりと鑑賞した。世界の津々浦々から、紀元前5000年前から現代まで、まさに時空を超えて世界史鷲掴みといった展示内容だ。

改めて感じたのは展示の仕方も非常に良く出来ていること。特に、感心したのは、一つ一つのモノに付けられているキャッチフレーズ。「古代の給与記録、対価はビール」(楔形文字を刻んだ粘土板)、「エジプト名君のイメージ戦略」(ラムセス2世像)、「中世ヨーロッパのスマホ的存在」(へプライ語が書かれたアストロラーベ)など、歴史的品々を上手く現代に結び付けて、見る視点を与えてくれる。

どれも見どころ満載だが、前回紹介以外での個人的なお勧めは、精巧で人が岩から今にも飛び出してきそうな「アッシリアの戦士たちのリリーフ」、カワウソがとっても可愛い「アメリカ先住民のパイプ(カワウソ)」、神秘的な「ミトラス神像」など。


《アメリカ先住民のパイプ(カワウソ) 紀元前200~後100》

東京会場では今週末で終了。その後、福岡、神戸を回るようだが、近隣の方は是非、足を運んでほしい展覧会だ。
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ドーデー 『アルルの女』 (岩波文庫)

2015-06-20 00:04:50 | 


 ビゼーの組曲《アルルの女》は大好きな音楽の一つですが、その台本となった戯曲は未読で、演奏会のプログラム記載されているあらすじを読んだ程度でした。先日、近所のブックオフをうろついていたら、100円コーナーにその戯曲を発見。気軽に読めそうな薄さだったので、買ってみました。
 
 南フランスの農家の息子フレデリが、恋した女性(アルルの女)と婚約までしたのに、その女性がある男の愛人だったことを知ってしまい、思いつめ自死を選ぶという悲劇です。でも、組曲《アルルの女》がとてもそんな悲劇の音楽に聴こえないのと同様に、戯曲を読んでイメージされる世界は素朴で明るい農村の絵姿です。とても不思議な読感です。

 フランスの作家ドーデーの傑作とされているらしい本作ですが、正直、私にはあまり響くところはありませんでした。ビゼーの音楽と物語の情景のマッチングは素晴らしいと思いましたが、ストーリーとしてはこれといった特徴はなく、作者からのメッセージを感じるわけでもない。本人は一度も登場しないにもかかわらず、表題のアルルの女が発する個性は強烈ですが、無粋な私には、それがどうしたという感じ。

 この物語にあんな音楽を付けたビゼーが凄いと改めて感心した次第ですが、その原作の良さは結局わからずじまいでした。
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都響 「作曲家の肖像」シリーズ Vol.103〈アメリカ〉 /アンドリュー・リットン 指揮・ピアノ

2015-06-16 21:34:52 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 一週間以上も前になってしまった演奏会の感想です。私の感想録も大新聞の「批評」並の重役投稿になってきたかも。

 N響定期Aプロと重なってしまった6月の都響《作曲家の肖像シリーズ》。N響がフランスものプログラムだったのに対して、都響はアメリカンプログラム。迷った挙句、渋谷には母に行ってもらい、私は池袋に出かけました。似たようなバッティング組がいたのか、この日の3階席は結構空席が目立ちました。

 指揮とピアノ独奏はアンドリュー・リットンさん。N響にも何度か登壇しているはずですが、私は初めてです。バーバーの序曲《悪口学校》に続いての、ガーシュウィンのピアノ協奏曲では、大柄でやや太めの体格とは真反対の、軽快で切れの良い演奏を聴かせてくれました。タブレット端末上の楽譜によるピアノ演奏を見たのは、ツイッタ—などで聞いたことはあったものの、私は初めて。小さくて見にくいんではないかと余計な心配をしてしまいます。

 休憩後は、コープランドの《静かな都会》とバーンスタインの《ディヴェルティメント》。《静かな都会》は高橋 敦さんのトランペット独奏が突き抜けるように響き、《ディヴェルティメント》は都響の華やかなアンサンブルがホール一杯に膨らむ気持ちの良い音楽でした。

 残念だったのは自分自身の体調。この日は朝から風邪っぽくて、体の節々が痛む上に、宙に浮いたようで、集中力も欠いた状態でした。何とかこの日の楽しいプログラムの雰囲気に紛らわすことができたものの、ふらふらしながら帰路となりました。




「作曲家の肖像」シリーズVol.103〈アメリカ〉
日時:2015年6月7日(日)14:00開演(13:20開場)
場所:東京芸術劇場コンサートホールホール

出演者

指揮・ピアノ/アンドリュー・リットン

曲目
バーバー:序曲《悪口学校》 op.5
ガーシュウィン:ピアノ協奏曲 へ調
コープランド:静かな都会
(トランペット/高橋 敦、イングリッシュホルン/南方総子)
バーンスタイン:ディヴェルティメント (1980)


"Portrait of Composers" Series Vol.103

Date: Sun. 7. June 2015, 14:00 (13:20)
Hall: Tokyo Metropolitan Theatreseat

Artists
Andrew LITTON, Conductor & Piano

Program
Barber: Overture to “The School for Scandal”, op.5
Gershwin: Piano Concerto in F
Copland: Quiet City
(TAKAHASHI Osamu, Trumpet NAMPO Fusako, English horn)
Bernstein: Divertimento (1980)
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ピーター・ティール (著)ほか 『ゼロ・トゥ・ワン ~君はゼロから何を生み出せるか~』 NHK出版

2015-06-14 08:23:06 | 


 シリコンバレーの有名な起業家であり、投資家であるピーター・ティールによる起業論。(スタンフォード大学で起業について講義したものがベースになっている。)講義録ベースのためか、系統的で理論的な経営書よりよりはかなりエッセイに近いつくりであり読みやすい。

 筆者は、2000年のハイテクバブルの反省から教訓となったような以下のことは誤っていると言う。
 1.少しずつ段階的に前進すること
 2.無駄なく柔軟であること(リーン・スタートアップ)
 3.ライバルのモノを改良すること(既存顧客のいる市場から始める)
 4.販売ではなくプロダクトに集中すること

 むしろ、筆者が説く原則はこうだ。
 1.小さな違いを追いかけるよりは大胆に賭ける
 2.出来の悪い計画でもないよりは良い
 3.競争激しい市場では収益が消失する(だから独占を狙う)
 4.販売はプロダクトと同じくらい大切である

 また、筆者が強く主張するのは、「賛成する人がほとんどいない大切な真実は何か?」という問いで「隠れた真実」をみつけビジネスに結び付けることの大切さである。

 仕事柄、私にとって面白かったのは組織・人に関する考察だ。スタートアップにかかわる人間はフルタイムで、四六時中同じ場所で働くべきとか、スタートアップ時のCEOの年収は15万ドルを超えてはいけないといった主張だ。「高額報酬は現状維持のインセンティブになるだけで、社員と協力して積極的に問題を表に出して解決していく動機にはならない。逆に、現金報酬の少ない経営者は企業全体の価値を上げることに力を注ぐ」(p156)。その通りだと思う。

 ただ正直なことを言えば、パーツパーツでは首肯できるところも多いのだが、全体として筆者の言いたいことが素直に頭に入ってきたかというとそうでもなかった。自分自身、文字面では追えていても、筆者の言いたいことを十分には理解できていないような気がする。ピンと来てないのである。今更ではあるが、私にはベンチャーは向かないということなのかもしれない。


目次

日本語版序文 瀧本哲史
はじめに

1.僕たちは未来を創ることができるか
2.一九九九年のお祭り騒ぎ
3.幸福な企業はみなそれぞれに違う
4.イデオロギーとしての競争
5.終盤を制する―ラストムーバー・アドバンテージ
6.人生は宝クジじゃない
7.カネの流れを追え
8.隠れた真実
9.ティールの法則
10.マフィアの力学
11.それを作れば、みんなやってくる?
12.人間と機械
13.エネルギー2.0
14.創業者のパラドックス

終わりに―停滞かシンギュラリティか
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マグリット展 @国立新美術館

2015-06-08 08:54:23 | 美術展(2012.8~)


 ベルギー王立美術館付属の「マグリット美術館」の全面的協力を得て開催されるという今回のマグリット展。なので、多くがベルギー王立美術館から来るものと勝手に思い込んでいたのですが、国内外の幅広い美術館や個人から集められていました。NYの近代美術館からの「光の帝国 II」など懐かしいものもありましたが、初めて見る作品がほとんどで新鮮でした。

 作品は年代順に並べられていて、時代時代の作風が楽しめます。100を超える作品が集められていますので、マグリット好きにはたまらないでしょう。

 マグリットの絵は、いろんな見方ができるので良いですね。イラスト、デザインとして楽しんだり、神秘的なイメージにただ自分を浸らせたり、またその意味を考えたりで、飽きることがありません。金曜日の夕刻に職場帰りに立ち寄ったら、前半でついつい時間を費やしすぎて、後半は駆け足になってしまいました。2時間くらいかけたかったな。

 今月29日までです。
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