その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

垣谷美雨「定年オヤジ改造計画」(祥伝社文庫、2020)

2022-09-28 07:34:25 | 

定年間近の先輩の紹介で図書館で借りてみた。

バリバリに仕事第一で働いてきた昭和のサラリーマンが定年を迎え、家族から見放されつつも、自らの価値観を見つめなおし再生に臨む物語。私は全然認識してなかったが、今年7月にNHKでドラマ化された(主演は郷ひろみ)らしい。

私自身は定年まではもう少し時間がある(と思っていても、あっという間なのだろうが)が、先輩にとっては他人事で無いようだ。

ホントにこんな人いるのか?と感じるほど、主人公がステレオタイプ化された昭和のオヤジサラリーマンとして描かれる。なので、ちょっと意地の悪い意図が見え見えで白けるところもある。それでも自分自身に思い当たるところが全くないわけではないのが悔しくもある。笑うに笑えない自分が残念。

先輩が何故紹介してくれたのか謎だが、対岸の火事としないようという、親心なのだろうか?

 

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N響定期Bプロ/ファビオ・ルイージ首席指揮者就任記念/ベートーヴェン&ブラームス プログラム @サントリーホール

2022-09-23 09:52:36 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ルイージの首席指揮者就任披露演奏会第3弾。Bプログラムの2日目を聴いた。NHKホールでのAプロ、Cプロに続く、3つ目のプログラムのためか、ルイージが登場しても、サントリーホールの聴衆は新首席熱烈歓迎の拍手というよりも、既に定位置にしっかりと落ち着いた感のある首席に対するお迎えの拍手という感じがしたのは、気のせいだろうか。

この日はベートーヴェン、ブラームスというドイツ音楽の直球ど真ん中プログラム。これまでベルディ、R.シュトラウスとルイージらしい華のあるプログラムで魅了させてくれた彼がどんな剛速球を投げ込むのか、A,Cとは全く異なる期待を抱かせてくれる編成だ。

2曲とも特筆すべき演奏だったが、個人的には前半のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が圧巻だった。エーネスさんを聴くのは2回目だが、端正で濁りのない音色に息をのみっぱなしの45分だった。とっても優美なのだけど、精緻さと緊張感を漂わせる、実に表情が豊かな音で、聞き惚れるとしか言いようがない。オケとのバランスも申し分なく、こんなベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴いたのはいつ以来だろう。

本当に完成度の高い演奏だったのだが、個人的な好みの問題で、特に第2楽章のテンポはスローで私のストライクゾーンから鋭く外に曲がる高速スライダーを打ちに行く感じがしたのは残念だった。

後半のブラームスの交響曲第2番。硬派で熱のこもった演奏だった。弦の厚いアンサンブルの美しさ。ホルンも良くなってたし、第3楽章の吉村さんのオーボエにもうっとりだった。個人技とチーム力がかけ合わさった充実感たっぷりの横綱演奏だった。

終演後はほぼ満員の会場から熱い拍手が送られた。楽員からも気持ちのこもった拍手を受けるルイージ。すでにしっかりと信頼関係が築かれているように見える。本当にこれからが楽しみだ。


<花束贈呈を受けるルイージさん>


<ピンぼけですが、ソロカーテンコールのルイージさん>

 

第1964回 定期公演 Bプログラム
ファビオ・ルイージ首席指揮者就任記念

2022年9月22日(木)開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]
サントリーホール

出演者
指揮 ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン ジェームズ・エーネス

曲目
ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
ブラームス/交響曲 第2番 ニ長調 作品73

No. 1964 Subscription (Program B)
Chief Conductor Fabio Luisi Inauguration Concert

Thursday, September 22, 2022 7:00pm [ 6:20pm ]
Suntory Hall

Artists

Conductor: Fabio Luisi
Violin: James Ehnes

Program

Beethoven / Violin Concerto D Major Op. 61
Brahms / Symphony No. 2 D Major Op. 73

 

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池谷裕二『できない脳ほど自信過剰 パテカトルの万脳薬』(朝日新聞出版、2017)

2022-09-22 13:56:46 | 

昔の職場の先輩のご紹介で図書館で借りてみた。薬学博士で東大の薬学部教授である筆者による、脳についてのエッセイ集。週刊朝日への連載記事をまとめたものなので、手軽に肩ひじ張らず読める。

個人的に興味を引いたのは・・・(→は個人的つぶやき)

・能力が低い人は、能力が低いゆえに、自分がいかに能力が低いかを理解できない。他人のスキルも正しく評価できない、だから自分を過大評価する傾向がある。(ダニング=クルーガー効果)でも、能力の低い人も訓練を積めば、スキルの不足に気づき、自省できる。成長の余地はある。(pp.21-23)
 →職場のあるあるだよね~

・自制心や意志力は有限のリソース。何かを頑張った後は疲弊して、「自我消耗」に陥る。克服にはブドウ糖の補給が良い。(pp.42-44)
 →これも仕事で感じるところ。有限だから無駄使いせず、うまく使っていかないと。

・おとり効果:某雑誌の購読実験:「ウエブのみの購読」$59、「冊子のみ」$125、「冊子&ウエブ」$125で価格設定して、顧客に選んでもらったら、84%が冊子&ウエブを選択。冊子のみの選択肢を無くすと、冊子&ウエブは32%しか選択せず。「冊子のみ」はおとり選択肢)(pp.53-56)
 →よくあるといえばある価格戦術ではあるが、改めて振り返ると結構自分も囮につられてるようなあ~

自分だけでは読まない類の本なので、人のおススメを参考にするのは大事ですね。

 

  • 目次

    1 脳のクセを知る
    2 記憶とは何か
    3 ヒトをヒトたらしめるもの
    4 「気持ちいい」を科学する
    5 見えない世界
    6 未来を考える
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N響定期9月Cプロ、F.ルイージ首席指揮者就任記念演奏会、R.シュトラウスプログラム

2022-09-18 10:05:29 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

先週末に続き、F.ルイージのN響主任指揮者就任演奏会。Cプロ1日目に振替。前週のヴェルディ〈レクイエム〉とは全く趣きを変え、R.シュトラウスの作品から3曲を選んだプログラム。

3曲それぞれで、ルイージの指揮の元、N響の個人技や合奏力が発揮された演奏を楽しみました。

1曲目のドン・ファン。スケール大きく、管弦楽の魅力をふんだんに放出させる音楽です。冒頭からフル回転のN響の演奏でした。とりわけ、ホルン隊の合奏がひと際、耳を引きました。2曲目のオーボエ協奏曲では、独奏のエヴァ・スタイナーさんの濁りない純なオーボエの音色に魅かれました。

「ばらの騎士」組曲は、煌びやかで、美しく、薫るような演奏でした。オペラのシーンが目に浮かんでは消えていきます。この音楽、聴くたびに強烈に引きつけられます。N響はオーボエやヴァイオリンの個人技に加え、強弱のレンジ広く、全体としてバランスの取れた合奏も唸らせるもの。あっという間に終わってしまったのが何とも残念でしたが、幸福感一杯の20分でした。

この日のコンマスは郷古さん。他の奏者も含め、更にステージが若くなった印象がありました。客席も若い人がいつもよりも多い感じ。満員とまでは行きませんでしたが、改修前のNHKホールの定期演奏会とは違った空気が感じられ、喜ばしい限りです。新しい首席指揮者のもと、オケ、ファンがセットで新しい時代を切り開きたいですね。

 

第1963回 定期公演 Cプログラム

2022年9月16日 (金) 開演 7:30pm(休憩なし)
NHKホール
曲目
シュトラウス/交響詩「ドン・フアン」作品20
シュトラウス/オーボエ協奏曲 ニ長
シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲

指揮 : ファビオ・ルイージ
オーボエ : エヴァ・スタイナー

 

Subscription Concerts 2022-2023Program C
No. 1963 Subscription (Program C)
Chief Conductor Fabio Luisi Inauguration Concert

Friday, September 16, 2022 7:30pm
NHK Hall

Artists
Conductor: Fabio Luisi
Oboe: Eva Steinaa

Program

  1. Strauss / Don Juan, symphonic poem Op. 20
  2. Strauss / Oboe Concerto D Major
  3. Strauss / Suite from the Opera Der Rosenkavalier
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開米 瑞浩『60分でわかる! 暗号資産超入門』(技術評論社、2022)

2022-09-16 09:18:31 | 

暗号資産についてはネット記事や新聞などで散発的に情報には触れているものの、自分の中ではとっちらかったまま。系統的に理解しておきたいと思い、簡単に読めそうな本書を手に取った。

(タイトル通りの60分では読めなかったが)90分ぐらいで、概略をつかめることができる。見開き構成で左ページに文章解説、右ページにそのチャートや図解という構成で、とってもわかりやすい。ただ、この手のデジタル系の新技術・コンセプトは、本当に自分がどこまでわかっているのかがわからないもどかしさは残る。

学んだことを備忘として書き留めると、

・NFTの実体は「デジタル化されたコンテンツへのアクセス情報」であること
・暗号資産のベースとなるブロックチェーンは「台帳」と考える
・NFT自体はブロックチェーン上に記録されるので消滅したりコピーはしにくいが、NFTに紐づいたコンテンツ本体は改ざん、消滅、コピーがありうる
・1取引で日本の平均的一人暮らし家庭の半年分の電気量を消費する

などなど。

暗号資産のポジティブ面とネガティブ面をバランスよく記載されていると思った。本テーマは、技術、実用、ビジョンの3者がそれぞれに絡み合って、話がややこしくなっているようだ。反中央集権的な思想(技術に内在する考え方)、反エコといった状況を考えると、一般用途への普及にはまだまだ時間がかかる気がした。

私自身、お恥ずかしい話だが、本書を読んでも、いまだ、暗号資産の発射台ともいえるマイニングというのが実感もってわからないままだ。

 

(目次)

Part1 ビットコインの枠を超える
~投機から実用へ!暗号資産の最前線

  • 001 1BTC=700万円越えの衝撃
  • 002 エルサルバドルがビットコインを法定通貨に加えた理由とは
  • 003 コロナ禍が加速したチェコのデジタル通貨プロジェクト
  • 004 中国人民元など世界各国中銀がデジタル通貨発行を計画
  • 005 運用残高10兆円を越えた分散型金融「DeFi」とは
  • 006 デジタル・コンテンツ取引に使われるNFTとは
  • 007 暗号資産のムーブメントが生まれた背景とは①
  • 008 暗号資産のムーブメントが生まれた背景とは②
  • 009 「仮想通貨」が「暗号資産」に変わったのはなぜ?
  • 010 無数の暗号資産が乱立するのはなぜ?
  • 011 高額落札が続出するNFTはバブルなのか?
  • 012 投資・投機対象としての暗号資産・NFT
  • 013 ビジネス実務を回す手段としての暗号資産・NFT
  • 014 ブームの陰で拡大する副作用・悪用への警戒
  • Column 高額NFTはポトラッチ?

Part2 ブームを超えて注目される理由
~暗号資産を読み解く7つの視点

  • 015 モノとしての価値がなくても「資産」は成り立つ
  • 016 暗号資産なら銀行に頼らず金融取引ができる?
  • 017 暗号資産を成り立たせているブロックチェーン技術とは
  • 018 ブロックチェーンの本当の意味は「分散台帳による低コストな情報共有」
  • 019 暗号資産とブロックチェーンが社会を変える,その理由とは
  • 020 暗号資産の拡大がもたらす新たな問題とは
  • 021 暗号資産を管理統制しようとする動きとは
  • Column テクノロジーは人を救う?

Part3 お金の成り立ちから探る
~暗号資産は「通貨」となるのか

  • 022 「通貨」がお金として通用する理由とは?
  • 023 通貨には裏付け資産が必要なのか?
  • 024 現代の通貨はすべてある種の仮想通貨である
  • 025 通貨には「尺度」「交換」「貯蔵」の機能がある
  • 026 デジタル通貨,電子マネーと暗号資産の違いとは
  • 027 デジタル通貨にはトークン型と口座型がある
  • 028 暗号技術によってデジタル通貨のしくみが作れるワケ
  • 029 暗号資産の取引は経済統計に表われない
  • Column この木切れがお金です?

Part4 マーケットでの売買のしくみ
~暗号資産の取引方法を知ろう

  • 030 暗号資産取引に使う秘密鍵・公開鍵・アドレスとは?
  • 031 暗号資産取引にはウォレットが必要
  • 032 ウォレットを作る方法にはどんなものがある?
  • 033 「取引所」の利用者同士で売買する
  • 034 「販売所」を通じて暗号資産交換業者との間で売買する
  • 035 注文方式を理解して売買をする
  • 036 暗号資産の価格動向に気を配る
  • 037 ウォレットを管理するために注意すべきことは
  • 038 取引方針を決めて運用する
  • Column 利食い急いで損伸ばす?

Part5 デジタル・コンテンツの流通を変える
~暗号資産/NFT技術とはなにか?

  • 039 「トークン」は何らかの価値の「印(証拠)」となるもの
  • 040 IDつきリソースにひもづけられたトークンは非代替性
  • 041 NFTの「複製不可」性をどう担保する?
  • 042 買ったはずのNFTがなくなってしまうことはある?
  • 043 NFTマーケットプレイスの役割とは?
  • 044 NFTはクリエイターにとって有利なしくみ?
  • 045 メタバースの展開に役立つNFT
  • 046 投機的マーケットと持続的マーケットは別物と理解しよう
  • Column バズワードで投資をあおる奴は無視しよう

Part6 暗号資産の枠を超えて広がる
~ブロックチェーンが社会を変える

  • 047 国際送金がとても面倒くさいそのワケは
  • 048 リップル:迅速・安価な国際送金ソリューション
  • 049 暗号資産のしくみは地域通貨と相性が良い
  • 050 美術品情報を登録して不正取引を防止
  • 051 キャラクタを育成し販売できるNFTゲーム
  • 052 物流網の偽造品対策への応用
  • 053 食品トレーサビリティシステムへの応用
  • 054 電気自動車(EV)バッテリー再利用を促進
  • 055 サプライチェーンの拡大・高効率化
  • 056 行政手続きのプラットフォームになる
  • 057 電子契約のプラットフォームになる
  • 058 IoTのプラットフォームになる
  • 059 エンタープライズ・ブロックチェーンへの展開
  • Column ブロックチェーンの用途,広すぎない?

Part7 リスクと将来性を正しく理解する
~暗号資産の課題と未来

  • 060 暗号資産の裏側にあるさまざまなリスクとは
  • 061 裏付けのない資産の長期保有は価格変動に注意
  • 062 ハッキングや事故・災害によるウォレット盗難・消失に注意
  • 063 決済プラットフォームとしての弱点とは
  • 064 そのNFTは本当に価値あるもの?
  • 065 法規制の強化は成長の証拠
  • 066 グリーン経済の流れに逆行するエネルギー消費への批判
  • 067 暗号資産決済が広まっても銀行はなくならない
  • 068 マネーロンダリング対策は国際的な義務
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記憶に残る就任披露演奏会: F・ルイージ指揮、N響、ヴェルディ/レクイエム

2022-09-12 07:30:06 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

この日は、定期演奏会の新シーズン開幕であり、ルイージさんの首席指揮者就任披露演奏会であり、(私には)改装NHKホールのオープニングでもある。色んな記念に相応しい、記憶に残る素晴らしいヴェルディのレクイエムだった。

NHKホールは正直どこがどう改装されたのか全く分からなかったが、1年半ぶりに座る3階右サイドのマイシートはやっぱり落ち着く。ファンからはいろいろ文句も出やすいホールではあるが、やっぱりN響のホームグランドはここだよね、という感じ。ルイージ就任記念もあってか、会場はほぼ満員。このホールが満員になると、その熱気だけでも高揚した気分になる。

そして、演奏はハイレベルなオケ、独唱陣、合唱がルイージの指揮の元、見事なコラボで胸揺さぶられた公演だった。

弱音で始まった第1曲レクイエムとキリエから痺れっぱなしだった。静かな浜辺にさざ波が寄せては引くような繊細なオーケストラと合唱にいきなり心臓を握りしめられた。第2曲でも怒涛の<怒りの日>に鳥肌立つ一方で、〈RECORDARE‗思い出せたまえ〉でのソプラノのヒブラ・ゲルズマーワとメゾ・ソプラノのオレシア・ペトロヴァの独唱・重唱は、心身が浄化される。男声陣も含めて独唱陣はそれぞれの持ち味を発揮し劇的であり、宗教的であるこの曲の素晴らしさを存分に味あわせてくれた。

新国立劇場合唱団の実力はもう今更だが、今回も美しく、バランスよく安定し、かつ迫力満点の合唱だった。

マロさんと郷古さんの二人のコンマスが舞台に上がったN響も相当気合入っているのが手に取るように分かる。NHKホールの器の大きさを全く感じさせないアンサンブル。

自分自身、1時間半近く自然と前のめりになった。心拍数がぐーっと急上昇したり、すう―っと引いて落ち着いたり、高低の振れ幅が半端ない。手に汗握る音楽体験だった。それは、熱烈なカーテンコールを送った会場の皆さんも同じだったよう。大成功の首席指揮者就任記念演奏会と断言できる。

あと、今月はあと2回もこのコンビで聴けるかと思うと、楽しみ過ぎる。


<今回から終演後の撮影OK。これは素晴らしい改革>


〈ルイージと独唱陣〉


<一般参賀にはダブル・コンマスと一緒に登場>

第1962回 定期公演 Aプログラム
2022年9月11日 (日) 開演 2:00pm(休憩なし)
NHKホール

曲目
ヴェルディ/レクイエム

指揮 : ファビオ・ルイージ

ソプラノ : ヒブラ・ゲルズマーワ
メゾ・ソプラノ : オレシア・ペトロヴァ
テノール : ルネ・バルベラ
バス : ヨン・グァンチョル

合唱 : 新国立劇場合唱団

 

No. 1962 Subscription (Program A)

Chief Conductor Fabio Luisi Inauguration Concert

 

Sunday, September 11, 2022 2:00pm [ 1:00pm ]

NHK Hall

Artists
Conductor : Fabio Luisi

Soprano: Hibla Gerzmava
Mezzo soprano: Olesya Petrova
Tenor: René Barbera:
Bass : Kwangchul Youn:

Chorus: New National Theatre Chorus:

Program
Verdi / Messa da requiem

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甲府90分観光 @サドヤ・ワイナリー

2022-09-11 07:41:45 | 旅行 日本

個人的所要で山梨県甲府市に出かけた(初めて身延線なるものに乗った!)帰路、予約した列車にまだ時間があったので、駅から徒歩5分ほどのところにあるサドヤ・ワイナリーを訪れた。


〈ワイナリー入り口。甲府駅から徒歩5分ほどです>

敷地内は綺麗に整備され、ワインセラー、レストラン、チャペルなどが配置され、リトル・ヨーロッパのようである。お目当ては、40分ほどの地下ワインセラー見学。駅から電話したら直近の回にまだ空きがある(定員10名)ということだったので、そこに混ぜてもらった(1000円。私は気づかなかったが、駅の観光案内で割引券を配布しているらしいので要チェック)。


<結婚式用のチャペル。丁度、結婚式やってました>

創業(大正6年)から使っているという地下セラー、とっても歴史の重みを感じる空間で楽しめる。いくつもの部屋に分かれた相当大きな地下空間で、昔使っていた機械、樽熟庫、コルクの作成過程などを、案内人の解説付きで巡る。


<貯蔵庫>

そして、地下セラー巡りが終わると、グラス1杯の試飲が供される。セラーを見た後の、一杯は味も一味違って感じられるのが不思議だ。ツアーは1杯の試飲で終わりだが、その後もグラスワインを別売で頼めるので、2杯ほど違った種類を楽しんだ。


<歴史を感じる試飲エリア>

甲府観光の一行程に入れるのも良し、時間調整で活用するのも良し。用事で訪れた甲府であったが、ちょっとした観光気分を味わえて、想定外のイベントに大満足だった。


<身延線。東海道線の富士駅まで伸びてます。完全ワンマン運行>


<山に囲まれた甲府ですが、昼食で食べたお寿司は美味しかった。@若鮨、甲府駅南口徒歩3分>

2022年8月20日

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太田肇『日本人の承認欲求―テレワークがさらした深層―』(新潮新書、2022)

2022-09-09 07:30:27 | 

コロナで余儀なくされたテレワークにより現れた日本人の特異な承認欲求を解説した一冊。

発刊間もないころに図書館で予約したが、既に予約が2桁入っていて、借りるのに数か月待った。なので、期待して手に取ったのだが、理論と実務のどちらにも寄らない「帯に長し、襷に短し」感が拭えなかったというのが正直な感想。筆者自身、原因は承認欲求だけではないとは認めつつも、様々な事象がすべからく承認欲求によるものとこじつけられてる論法に読めてしまうところも気になった。

エッセイと思って読めばいいのだが、一般化、類型化された(ように感じられる)単語や文章が目についたのも、読んでいて落ち着かない。20年、30年前ならいざ知らず、今や日本企業といえども相当多様化しているので、一概に「日本企業」/「欧米企業」といった比較や、「管理職」といった言葉で括るのは、相当無理がある。「この日本人って誰?」「この日本企業ってどこ?」平均化されたワードにはリアリティが感じられないのが残念だ。大雑把な議論で、「まあ、そんな会社組織やそんな管理者もまだ少なくはないのかもなあ~」ぐらいの感想しか持てなかった。

もちろん、納得感ある箇所もある。若者のチラ見せびらかし文化や、今後は、「コスモポリタン」型の社員(組織への忠誠心は引きが、専門的技術に対するコミットメントが高く、準拠集団は所属組織の外にある社員)が増えていくであろうことなぞは、肌感覚ともあったところだ。

Amazonのレビューでは一定の評価も受けているようなので、私の趣味の問題だろうが、全体的には私には欲求不満が残った1冊となった。

 

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藤原彰『中国戦線従軍記 歴史家の体験した戦場』岩波現代文庫、2019

2022-09-07 07:30:36 | 

岩波新書の中でも有数のロングセラーと思われる『昭和史』の共著者である筆者は、19歳で陸軍少尉に任官し、終戦までの4年間中国大陸の前線で戦った。本書は著者が最晩年にまとめた従軍記である。

現場に居あわせた者のみが叙述できる具体的描写に溢れた戦史であり、筆者の戦争論、軍事論である。戦地を生き抜いた筆者の経験談の迫力にはどんな出来の良いフィクションも敵わない。ページをめくる手が止まらなかった。

戦争末期には将校不足から超短期養成で若い将校が任官していったこと、将校ですら戦時国際法について全く教えてられなかったこと、補給などの兵站が顧みられない作戦が当たり前のように遂行されていたこと、参謀が現場の状況を理解していなかったこと、などなど日本軍の敗戦分析論で聞いた話もあるが、経験談が伴うとリアリティの厚みが伴う。

戦争は暴戻志那を膺懲するためで、中国の民衆を天皇の仁慈に属させるためという大義を信じていた筆者が、中国での前線の現実の中で「部落を焼いたり、農民を殺したり、およそ民衆の愛護とか天皇の仁慈とかいう美辞麗句とは縁遠いものばかりで、何かおかしいと、しだいに感じ始めていた」(p34)という感性も、共感できる。

自らの中隊の大半の兵を失いつつも、生き残った筆者。よく、生き抜いてこうした記録を残してくれたと感謝した。

今なお、世界で戦争が続いている。暴力で命を奪われるのは、兵士だけでなく、武器を持たない一般の人びとであるということは、今も昔も変わっていない。

【目次】

はじめに
序節 士官学校へ入るまで

Ⅰ 華北警備の小・中隊長
 陸士を出て中国へ
 景和鎮の駐屯地
 討伐戦と民衆
 チフスで死にかかる
 劉窩分屯隊長
 冀東へ移駐
 聯隊旗手の日々
 中隊長となる
 中隊の軍紀風紀
 関東軍へ移る
 一号作戦参加命令

Ⅱ 大陸打通作戦黄河を渡る
 郾城の戦闘
 長台関の悲劇
 湘桂作戦はじまる
 中隊の単独行動
 茶陵西側高地の夜襲
 陣地の攻防
 黎明攻撃と負傷
 野戦病院にて
 関舗西側高地の攻撃
 茶陵の滞陣
 次期作戦の準備

Ⅲ 遂贛作戦遂贛作戦の開始
 遂川挺進隊
 飛行場から県城へ
 贛州から新城へ

Ⅳ 中国戦線から本土決戦師団へ
 歩兵学校への転勤命令
 決戦師団の大隊長
 敗戦を迎える

終節 歴史家をめざす

【付録】
ある現代史家の回想
 一 史学科の学生として
 二 現代史に取組む
 三 『昭和史』のころ
 四 軍事史を専門に
 五 一橋大学へ
 六 現代史を組織する
 七 『天皇制と軍隊』について

解 説……………吉田 裕  

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成田龍一『 歴史像を伝える 「歴史叙述」と「歴史実践」 シリーズ歴史総合を学ぶ②』(岩波新書、2022)

2022-09-05 07:26:33 | 

シリーズ「歴史総合を学ぶ」の第2巻。歴史を学ぶ過程を、歴史像を描く「歴史叙述」と歴史像を伝える「歴史実践」として分けて、夫々の営みを通じて歴史を学ぶことがどういうことなのかを考察する。前半は理論編とも言えるような「歴史叙述」と「歴史実践」のアプローチについて説明がされ、「ジェンダー史」を例にとって具体的に「叙述」と「実践」について解説される。中盤以降は、明治維新、近代化、大衆化、グローバル化の4つのテーマについて、それぞれの具体的な歴史叙述や歴史実践の営みの紹介を通じてそれぞれの歴史像に迫る内容となっている。

第1巻につづき、本書も歴史像を具体化する難しさと面白さが、様々なテーマにおける具体例で示され、知的に十分エキサイティングだ。例えば、明治維新について、「戦後歴史学」「民衆史研究」「社会史研究」という歴史学の夫々の方法論での叙述が紹介されるが、同じ明治維新でも見えてくる世界は大きく異なる(第1章)。より多様な視点で出来事を見ることの面白さや重要性に気づかされる。

本書で分析されたり解説されている事項は、歴史学を学ぶ上で基本として押さえておくべきメソッドだとは思うが、内容の理解は簡単ではない。シリーズ第1巻と同様、ターゲットの読者は誰なのだろうか?が気になった。本シリーズが高校での歴史総合のカリキュラムスタートがきっかけになっているとはいえ、難易度から見て、高校生が主たる読者にはなりえないし、大人でもかなり難しいと感じた。歴史学を専攻する学生の最初のテキストレベルなのかなあ。

私個人的には、特に第3章の「大衆化」や第4章「グローバル化」は社会学的なテーマとも被り、歴史として何をどう捉えるのか、議論の枠組みがわかりにくかった。ジェンダー、メディア(総合雑誌『キング』、ラジオ、映画)などが取り上げられるが、良くも悪くも細部に至る解説で、何を論点に本書を読んでいるのか、道に迷った。

第4章のグローバル化も難しい。後半(pp291-p323)で30ページを超えるページを割いて、村上春樹を材料にグローバル化について議論される。主に「ねじまき鳥クロニクル」を用いて、村上春樹の物語における「家族」や「戦争」、村上自身の「戦争観」などが分析される。『ねじまき鳥クロニクル』における3つの物語が引用され、『ねじまき鳥・・・』における歴史は、1)「グローバル化における記憶と「グローバル化」との関係の模索」と2)「戦争の記憶の検証」という2つの問題系が議論されていると結論付ける。村上作品はほとんど読んでいるので興味深く読んだが、グローバル化という枠組みや個々の議論は、概念的で私の理解の範囲を超えていて、書かれていることは殆ど腹落ちしなかったというのが本音である。

筆者の真摯で高い熱量は十二分に感じ取れるだけに、そこにこたえきれない読者としての自分の不甲斐なさが残念ともいえる。また、やっぱり歴史を学ぶということは並大抵のことではできないということでもあるのだろう。

 

【目次】

はじめに――三つの「手」
「歴史像」の伝達/「私たち」と「私」

■Ⅰ 「歴史叙述」と「歴史実践」

序章 歴史像を伝える
 1 歴史の学び方
 2 ジェンダー史から/で学ぶ
 3 ジェンダー史の「歴史実践」

第一章 明治維新の「歴史像」
 1 明治維新の「歴史叙述」
 2 明治維新の「歴史実践」

■Ⅱ 「歴史総合」の歴史像を伝える

第二章 「近代化」の歴史像
福沢諭吉の三つの顔/男性啓蒙家たちの女性論/「女工たち」への視線/国民国家と帝国主義/森鷗外の戦争経験

第三章 「大衆化」の歴史像
新しい青年と、「民衆」=「大衆」の登場/イプセン『人形の家』をめぐって/「身の上相談」のジェンダー/「大衆社会」とメディア/『キング』とラジオ/小津安二郎とハリウッド/男性普選の実現と婦選の主張/市川房枝の「デモクラシー」と「総力戦」

第四章 「グローバル化」の歴史像
R「グローバル化」とは/「高度経済成長」のなかの女性/マクドナルド化する社会/村上春樹、および『ねじまき鳥クロニクル』

むすびにかえて――「戦後歴史教育」の軌跡のなかで

あとがき
「歴史総合」に役立つブックリスト

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小川 幸司(編)、成田 龍一(編)『世界史の考え方―シリーズ歴史総合を学ぶ〈1〉』(岩波新書、2022)

2022-09-03 08:00:01 | 

今年度から高校教育で、近現代の世界・日本の歴史を統合的に学ぶ「歴史総合」が必修化されたらしい。本書は、この機会を捉え「近現代史の名著を題材に、歴史研究の最前線や歴史像の形成過程、概念に基づく比較、問いや対話による歴史総合の実践」(出版社紹介)が示される。「これまでの歴史学が、どのような問いをもって事実や歴史解釈を導き出し、その「問い」の変化によって、焦点となる事実と歴史解釈、歴史叙述の方法をどのように刷新してきたかが鳥瞰的に考察される」(viiページ)。取り上げられるテーマは「近代」「帝国主義」「2つの世界大戦」「グローバル化」ら。近現代史の本流の出来事・概念である。

知的刺激に満ちた本であり、読み応え十分だ。学生時代や社会人になってから読んだ本がテキストとして多く取り上げられており、個人的に懐かしい思いもあった。363ページのボリュームも新書として重厚で、編者や出版社の熱意を感じる。そして、実績ある歴史学者による対話形式で進められる議論は、論点が明確に提示されるので、迷うこともない。歴史の見方の複雑さ、むずかしさ、楽しさを示してくれている。

ただ、読者のメインターゲットが誰なのかがよくわからない。基礎的な歴史の知識や概念の理解があることが前提条件になっている本なので、標準的な高校生が教科書のサブテキストとして本書を読み込めるとは到底思えない。大人でも歴史だけでなく、歴史へのアプローチ手法に興味がないと、とても読み切れないと思う。

非常によくまとまっていて、勉強になる本であるが故に、歴史を学ぶことの意義を改めて考えさせられた。今のロシア・ウクライナ戦争、中国の台頭、グローバル資本主義の行き詰まり、こう言った事象に対しての解決に歴史学の知見がどう活かされるのか?までは見えないからである。そういった点にまで踏み込めれば、今の高校生にも多少なり関心が出る気がするが、そこまでの記載はない(というか、そもそもイシューの設定が違うので、無いものねだり)。私を含めて、歴史好きの人は、単なる自己満足に終わらないように注意しなくてはいけない。

 

  • 目次

    刊行にあたって(小川幸司、成田龍一)

    はじめに(小川幸司)

    Ⅰ 近代化の歴史像
    第一章 近世から近代への移行
    1 近代世界の捉え方
    2 中国史(岸本美緒)から見ると
    3 岸本美緒との対話

    第二章 近代の構造・近代の展開
    1 国民国家の捉え方
    2 イギリス史(長谷川貴彦)から見ると
    3 長谷川貴彦との対話

    Ⅱ 国際秩序の変化と大衆化の歴史像
    第三章 帝国主義の展開
    1 ナショナリズムの捉え方
    2 アメリカ史(貴堂嘉之)から見ると
    3 貴堂嘉之との対話

    第四章 二〇世紀と二つの世界大戦
    1 総力戦の捉え方
    2 アフリカ史(永原陽子)から見ると
    3 永原陽子との対話

    Ⅲ グローバル化の歴史像
    第五章 現代世界と私たち
    1 グローバル化の捉え方
    2 中東史(臼杵陽)から見ると
    3 臼杵陽との対話

    あとがき(成田龍一)
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