その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

新国立劇場 モーツァルト オペラ「魔笛」 @新国立劇場オペラパレス

2016-01-31 12:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

《新国立劇場ホームページより拝借》

 3年前に同じプロダクションで鑑賞しているけど、「魔笛」は音楽が大好きなので再訪。今回もキャストは日本人で固めています。

 このプロダクションは取り立て奇をてらったところは無くオーソドックスなものなので、今回は音楽に集中しました。指揮のパーテルノストロさんは初めて聴く方ですが、全幕を通じて東響の透明感のある音が印象的で、モーツァルトの音楽の素晴らしさを十分堪能させてもらいました。

 歌手陣は、ザラストロ役の妻屋さんの安定感ある歌いっぷりは別格。舞台全体が引き締まります。タミーノの鈴木さん、パミーナの増田さんのお二人の歌声も、声量はさほど大きくはないけど美しく、私的には十分満足。隠れた主役パパゲーノも楽しかったし、3名の侍女、3名の童子たち、合唱陣のコーラスもきれいなハーモニーでした。夜の女王は、会場からの拍手は大きかったけど、私的にはもう少し望みたいところだったかな。

 全般的に図抜けた公演というほどでは無かったですが、十分満足できるものでした。ただ、ちょっと気になったのは、「魔笛」特有のウキウキ感、躍動感が足りなかった気がしたこと。どうしてだかはよくわかりません。ペースがスローだった気がしましたが、そのせいかな?まあ、それでもモーツァルトのオペラは最高です。


(余談)
 この日、会場に出かけて、初めて来シーズンのラインナップが発表されているのを知りました。「どらどら、どんな感じなの・・・」と眺めていたら、大ショック。正直、「なんじゃこれ・・・」と口に出てしまった程、保守的なラインナップ。飯守さんのワーグナー2本は既定としても、残るプログラムの殆どが定番ものばかり。来年20周年を迎えるというのに、まるでオープンしたての劇場のラインナップのよう。毎年あった日本ものの演目も無くなっているし、劇場のビジョンやチャレンジの意欲が全くと言っていいほどみられない。これは、かなり残念。これだけの超定番ばかりを集めないと観客が入らないほど、経営が苦しいのでしょうか?この劇場、自分たちのアイデンティティや将来をどう考えているのだろうか?
 「魔笛」を前に、ウキウキ気分が一気に冷めさせられた一件でした。


2015/2016シーズン
オペラ「魔笛」/ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
Die Zauberflöte/Wolfgang Amadeus Mozart
全2幕〈ドイツ語上演/字幕付〉
オペラパレス

スタッフ
【指揮】ロベルト・パーテルノストロ
【演出】ミヒャエル・ハンペ
【美術・衣裳】ヘニング・フォン・ギールケ
【照明】高沢立生
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】斉藤美穂

(指揮)ロベルト・パーテルノストロ
(演出)ミヒャエル・ハンペ

キャスト
【ザラストロ】妻屋秀和
【タミーノ】鈴木 准
【弁者】町 英和
【僧侶】大野光彦
【夜の女王】佐藤美枝子
【パミーナ】増田のり子
【侍女I】横山恵子
【侍女II】小林由佳
【侍女III】小野美咲
【童子Ⅰ】前川依子
【童子Ⅱ】直野容子
【童子Ⅲ】松浦 麗
【パパゲーナ】鷲尾麻衣
【パパゲーノ】萩原 潤
【モノスタトス】晴 雅彦
【武士Ⅰ】秋谷直之
【武士Ⅱ】大塚博章


【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団
【芸術監督】飯守泰次郎

2015/2016 Season

Music by Wolfgang Amadeus MOZART
Opera in 2 acts
Sung in German with Japanese supertitles
Opera Palace

Staff
Conductor Roberto PATERNOSTRO
Production Michael HAMPE
Set, Projection and Costume Design Henning von GIERKE
Lighting Design TAKAZAWA Tatsuo
Revival Director SAWADA Yasuko
Stage Manager SAITO Miho

Cast

Sarastro TSUMAYA Hidekazu
Tamino SUZUKI Jun
Sprecher MACHI Hidekazu
Eingeweihter ONO Mitsuhiko
Königin der Nacht SATO Mieko
Pamina MASUDA Noriko
Erste Dame YOKOYAMA Keiko
Zweite Dame KOBAYASHI Yuka
Dritte Dame ONO Misaki
Erster Knabe  MAEKAWA Yoriko
Zweiter Knabe  NAONO Yoko
Dritter Knabe MATSUURA Rei
Papagena WASHIO Mai
Papageno HAGIWARA Jun
Monostatos HARE Masahiko
Erster Geharnischter AKITANI Naoyuki
Zweiter Geharnischter OTSUKA Hiroaki

Chorus Muster MISAWA Hirofumi
Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Symphony Orchestra
Artistic Director IIMORI Taijiro
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室井 雅博, 譲原 雅一 『企業変革のためのIT戦略』 (東洋経済、2015)

2016-01-30 08:51:16 | 


 ITに悩んでいる経営者向けに書かれたIT戦略についての本。私の仕事に関係するので、参考になればと思い手に取ってみた。

 まえがきでも触れられているが、海外企業に比べ、日系企業はITの活用が上手いとは言えず、それが国際競争力の差となって表れてきているのは事実だと思う。いまだ、業務効率化、コスト削減の視点でITを使う発想が主で、「攻めのIT」として事業の競争力の源泉やビジネスモデルの中心に置く企業は稀だ。そんな現状に一石を投じる本書の問題意識には大いに賛同できる。

 その一方で、本書のコンテンツについては物足りなさが残った。事例研究も短くまとめた分、分析が深いとは言えず、処方箋も具体的というには及ばない。なんとも、切れの悪い、後味の良くない一冊になってしまっている。現場の生々しさ、ホントに苦労しているところや悩んでいるところに触れられてない。コンサル会社がまとめるとこうなってしまうのかなあという思いが残ってしまう。

 書かれていることは極めてまっとうだし、考え方の整理、枠組みの設定には有用だ。読まれるかどうかは、ご自身で手に取り、パラパラめくって判断されてほしい。


第1章 IT化による製品・サービスのイノベーション
第2章 業務プロセスとビジネスモデルのイノベーション
第3章 日本企業が乗り越えるべき壁
第4章 実証実験のすすめ
第5章 イノベーションを創発する創造空間
第6章 「攻めのIT戦略」の実現に向けて
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映画 「第三の男」 (監督:キャロル・リード、1949年)

2016-01-27 22:42:09 | 映画


 イギリス映画史に名を残す古典映画といってよいと思うが、観るのは初めて。戦後のウィーンを舞台に、旧友の死亡事故の謎を巡って繰り広げられるサスペンス映画。

 白黒映画のためか光と影の陰影が美しくかつ効果的。ショットも観覧車での対決シーンや下水道での追跡など、印象的な場面が多く見ごたえがある。

 また全編を流れるアントン・カラスの音楽も印象的。映画のサイコ・サスペンス的な雰囲気とは必ずしもマッチしていないところが、映像の緊張感を緩め、この映画に独特の趣を加えている。音楽を重々しいものにして、より心理的に圧迫感のあるヘビーな作品にすることもできたと思うが、音楽がこの映画に映像やストーリーとは違ったインパクトを視聴者に与えて、個性的な作品になっている。

 名作といわれるのも頷ける映画だった。


スタッフ

監督:キャロル・リード
原作:グレアム・グリーン
脚本:グレアム・グリーン
音楽:アントン・カラス

出演:
ジョセフ・コットン
オーソン・ウェルズ
アリダ・ヴァリ
トレヴァー・ハワード
バーナード・リー
ジェフリー・キーン
エルンスト・ドイッチュ
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有馬 哲夫 『CIAと戦後日本 保守合同・北方領土・再軍備』 (平凡社新書 2010)

2016-01-24 12:00:00 | 


 著者による『原発・正力・CIA』を読んで、さらに戦後史の裏側を除いてみたく、本書を手に取った。こちらも前掲書同様に、米国の中央情報局(CIA)の文書をもとに、CIAが戦後日本の政局や政策決定にいかに関わってきたかを、明らかにしている。戦後日本がいかにCIAの情報戦略に組み込まれていたかが理解できる。

 筆者は学者さんであるが、文章の書きっぷりはアカデミックというよりも、どちらかと言うとジャーナリスティックな文体。前掲書は正力松太郎に焦点を絞っていたが、本書は重光葵、野村吉三郎、緒方竹虎等の人物を捉えている。戦後政治については教科書レベルの知識がしか持ち合わせてない私には、個々の事件のディテールに踏み込んだ本書の記述に、木は見ているものの森が見えない感じがして、やや消化不良の感は残った。

 それにしても、こうしたアメリカの情報機関は、きっと形やテーマこそ変えても、現代の日本にも大きな影響を及ぼしているに違いない。
 

目次

序章 記録から歴史の舞台裏を探る
第1章 CIA文書は何を語るのか
第2章 重光葵はなぜ日ソ交渉で失脚したのか
第3章 野村吉三郎と「日本海軍」再建計画
第4章 CIAはなぜ日本テレビ放送網建設支援を中止したか
第5章 緒方竹虎がCIAに送った政治リポート
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冬の金沢 (2日目) ~暮れの週末弾丸旅行~

2016-01-23 07:35:43 | 旅行 日本
 冬の金沢2日目。

【兼六園】
 翌日は朝から小雨模様。雨の中、兼六園へ。気温が下がり、雨がみぞれ模様になる中、園内を歩き始めましたが、風もあって散策を楽しむという環境ではありません。早々に切り上げました。寒いならいっそのこと、雪が積もってくれれば風情もあるのでしょうけど、残念な訪問となってしました。


《暖冬のため、冬の兼六園名物雪吊りを施された樹木も寂しい感じ》

【いしかわ赤レンガミュージアム 石川県歴史博物館】
 そこで向かったのが、兼六園の目と鼻の先にある石川県歴史博物館。設立は1986年ですが、この年(2015年)にリニューアルオープンしたばかりです。そのせいかガイドブックや観光サイトにもほとんど触れられていません。建物は、戦前陸軍の兵器倉庫として使われていたということで、歴史を感じる外観です。


《3棟がつながっていて、まるごと博物館になってます》

 これが、私のツボにはまる実に興味深いものでした。外装は歴史的建物ですが、内装は現代的です。古代から現代にいたるまでの石川県の歴史を歴史的遺物を通じて解説されますが、映像や模型などをふんだんに取り入れた展示は実に上手にできていて、興味をそそるものになってました。音声ガイドが無料で借りられるのもうれしい。

 私的には加賀の日本史といえば、前田の殿様よりも加賀の一向宗。この一向宗の発展の歴史についても、非常にわかりやすいビデオが用意されてあって面白かった。



 また、展示の最後に石川県の様々な祭りが疑似体験できるミニシアターがあります。これが迫力満点。全部見ると1時間近くかかるので私は加賀の「火祭り」を紹介する映像を見ただけですが、映像と音が凄い迫力で、これは一度直接訪れて、生で観たいと思わせるものでした。

 リニューアルしたてで、それほど名前が売れていないせいか、空いていたのも落ち着きます。第2棟は無料で入館できる「いしかわウエルカムラウンジ」も面白いアトラクションがあります。ガラス張りのおしゃれな休憩所もあったりして、結局3時間近くも滞在しました。こんな素晴らしい博物館が、この入りでは勿体ない。歴史に興味のある人には、金沢でぜひ訪れてほしいスポットです。金沢市ももっと宣伝した方がいいんじゃないかな。

【武家屋敷】
 昼食は、香林坊で金沢おでんの老舗といわれる赤玉本店を訪れましたが、案の定、ここも1時間待ちということで、残り時間も少ないため断念。その足で、武家屋敷を訪れました。江戸時代の風情を残す落ち着いたエリアです。





 あとは、近江町市場に寄って、時間切れ。金沢駅で、金沢人のソールフードと呼ばれているらしい笹寿司を社内での夕食用に買って帰りの新幹線に乗り込みました。


《近江町市場。カニが一杯売っていたのは流石、金沢》

 やっぱり1泊2日ではせわしないですね。結局、 有名なひがし茶屋街や忍者寺も訪れることなく、後にしました。まあ、次回の楽しみに取っておきます。駆け足でしたが、一年を締めくくる、記憶に残る旅行となりました。


《帰りの新幹線》
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冬の金沢 ~暮れの週末弾丸旅行~

2016-01-19 22:53:52 | 旅行 日本
 昨年暮れの週末に、北陸新幹線に乗って金沢へ1泊2日旅行に行ってきました。いや~、ほんとに近くなりましたね。高校生の時の初・金沢は、新幹線で米原まで行き、在来線特急に乗り換えて、半日以上かけて到着。社会人になってからは飛行機で数回出張しましたが、列車好きの私は絶対新幹線派。


《冨山湾を見ながら》

 8年ぶりの金沢の印象は、いろんなものが新しく生まれ変わっているのと、新幹線効果だと思いますが、観光客の多さに驚かされました。いくつか、訪問先をご紹介します。

【回転寿司】
 朝、東京発8時半過ぎの「かがやき」に乗って、11時10分過ぎに金沢到着。まず、最初に向かったのは金沢の駅ビル食堂街の中にある、回転寿司「もりもり寿司」。11時開店だから余裕で入店かと思いきや、周りのレストランが開店したてでまだお客さんも入っていないのに、ここだけはもう既に長蛇の行列。たまげました。まだ時間も早いので番号札を取って、さっさと駅近くにあるホテルに荷物を降ろしました。結局50分後に、ようやく入店。店の中はとっても落ち着いた雰囲気で食事ができます。お寿司も金沢名物のど黒など地物の新鮮なネタを中心に、とってもおいしく頂きました。幸先よし。


《11時20分の時点でこの行列》


《注文したお皿が新幹線に載って到着》


【金沢駅】
 金沢駅前の門のスケールの大きさも驚きです。確か、前回私が出張で訪れた時は建設中でした。デザインといい、この壮大な駅の顔は立派なランドマーク。



【21世紀美術館】
 生憎の雨風模様だったので、屋内施設をということで、まだ行ったことのない21世紀美術館を訪れました。観光客が皆、避難してきたのかここもチケット売り場に30メートルほどの列ができていました。「ここでも待ちか・・・」と一瞬怯みましたが、捌きはよくて10分ぐらいで入場。


《市民ギャラリー。加賀友禅から柄の壁画。着物姿で来館の女性がとってもマッチ》

 館内も混みあっていましたが(正直、金沢の美術館にこんなに人がいるとは全く想定外でした)、期待以上に楽しめました。現代美術には詳しくありませんが、不思議な作品、考えさせられる作品、美しい作品・・・、様々な体験型の提示であり、普段の美術展とは違った脳が刺激される感じ。結局、2時間ほど滞在しました。


《ブルー・プラネット・スカイ。天井が開口してあり、光の変化を感じることができます。マグリットの絵のよう。》

【ふ】
 金沢の繁華街である香林坊エリアの喫茶店で一服し、お土産を探しに近江町市場近くの加賀麩のお店「不室屋」に。このお店に来て、初めて伝統的イメージの金沢に出会えました。



【丸奄(まるえん)】
 ホテルに戻って、部屋に入って少し休憩し、夕食に出撃。ここで、金沢を訪れる人へアドバイス。夕食の予約は、金沢行きが決まったら、すぐにやりましょう。訪問時期が悪かったのかもしれませんが、金沢在住の友人のおすすめリストに基づき、3週間前に電話したところ、ことごとく「満席です」の回答。冬の夜の金沢で夕食を求めて路頭に迷うのかとまで思ったほどです。行きたいお店には、早めに電話するのが必須のようです。

 友人お勧めリストの7件目でやっと予約がとれたのが、この「丸奄」。ガイドブックに載るような観光客向けのお店でなく、正真正銘の地元の居酒屋。実に落ち着いた雰囲気の良いお店でした。腕のいい親父さんが、家庭料理風の心温まるお料理を出してくれます。これが地元の日本酒とマッチして美味しかった。旅の印象は半分は食事に左右されるというのが、私の経験則ですが、金沢最高です。


《代表的加賀料理の治部煮》


《金沢駅から徒歩3分ほど》

(つづく)
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N響 1月定期Cプロ/ 指揮:トゥガン・ソヒエフ/ ベルリオーズ 幻想交響曲 他 ~私的に次期主任指揮者候補~

2016-01-17 12:08:36 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
 先週の山田和樹さんに続きいて若手指揮者の登場です。今回は、三十代半ばにして、ベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者、ボリショイ劇場の音楽監督などの主要ポストを務めるソヒエフさん。一昨年初めて聴いた時、とても印象的で今回も楽しみにしていました。颯爽と現れたソヒエフさんは、若手ながらも既に風格を感じさせるものです。

 一曲目のブラームスの協奏曲は、(きっと)生で聴くのは初めて。チェロの優美な音が耳に心地よいです。ただ、恐れていた通り、その音色とともに、私は一週間の疲れがどっと吹き出し、舟漕ぎ状態。「いかん、いかん」と思いつつも逆らえず、第2楽章以下は朦朧とした意識の中のBGMにしてしまいました。ごめんなさいです。

 二曲目はN響で何度も聴いているベルリオーズの幻想交響曲。ずっと前、デュトアさんの指揮で聴いて、なんと色彩豊かな美しい音楽なのかと感嘆しましたが、今回の演奏もまた違った意味で印象深いものでした。

 ソヒエフさんは、オペラも精力的に振っておられるせいか、音楽がドラマチックというか、描写的というか、鮮明に音楽が描く情景が瞼に浮かんできます。まるでオペラを見ているかのよう。ただ、その表現は決して、必要以上にアクセントをつけたりとか、盛り上げたりしているという風ではなく、自然体。

 また、比較的スローなテンポに感じましたが、そのせいか、各パートの聞かせどころや隠し味的なところが、明確に浮き出ていて、聴いていてとても面白い。そして、その各パートが合わさって音楽を奏でることで、この曲のオーケストレーションの素晴らしさも自然と感じさせてくれるものでした。

 N響の演奏もソヒエフさんの思いにしっかり応えてました。いつも思いますが、N響は、幻想交響曲には非常に自信を持っていて演奏している印象を受けます。その土台の上に、指揮者が料理を加えていく、そんな感じです。

 終演後の拍手に応えるソヒエフさんのふるまいも、きびきびしていて気持ちが良いです。ちょっとネゼ=セガンさんに似て感じかな。私的には、気が早いですが、5年後か10年後かわかりませんが、ポスト・パーヴォの次期主任指揮者候補として、強く推薦したいなあ。



第1827回 定期公演 Cプログラム
2016年1月16日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

ブラームス/ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14

指揮:トゥガン・ソヒエフ
ヴァイオリン:フォルクハルト・シュトイデ
チェロ:ペーテル・ソモダリ


No.1827 Subscription (Program C)
Saturday, January 16, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Brahms / Double Concerto for Violin and Cello a minor op.102
Berlioz / Symphonie fantastique op.14

Tugan Sokhiev, conductor

Volkhard Steude, violin
Péter Somodari, cello
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パロアルト 弾丸出張 

2016-01-15 08:49:28 | 日記 (2012.8~)

≪唯一の写真記録が、帰国便搭乗前にサンフランシスコ国際空港で飲んだ地ビール≫

 長い間、サラリーマンやっているとこんな出張にも出くわします。

 仕事を夜9時近くまでこなして、そのまま羽田空港へ。0時5分発のJAL便でサンフランシスコに向け離陸。日付け変更線をまたいで、当日の3時30分頃着陸(飛行時間は8時間ちょっと)。入国やレンタカーなど借りて、目的地のシリコンバレーの一角パロアルトのホテルへ。午後6時到着。荷物(といっても小型のキャスターバック1つ)を降ろして、ホテル近くのレストランで9時過ぎまで夕食を兼ねて、ボスと翌日の作戦会議。部屋に戻ってからも、日本からのメール対応。

 翌日は早々にチェックアウトした後、現地のパートナー会社にて9時から夜の8時半までタフなミーティング(昼食は出前のカレー)。夜9時からの短いディナーの後、空港へ急いでバック。0時45分発の飛行機で羽田へ。羽田には朝5時到着。とりあえず、シャワーを浴びに自宅に戻って、その後、定時にオフィスに出勤して、通常勤務に戻る。

 新年早々、この3日間の労働時間半端なし。なんか、大変な1年になりそうな予感。

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N響 1月定期Aプロ/ 指揮:山田和樹/ ストラヴィンスキー 「ペトルーシカ」 他 ~演奏会初めは初ヤマカズ~

2016-01-10 22:23:54 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
 

 昨今話題の「世界のヤマカズ」こと山田和樹さん。私にとっては、初・ヤマカズでもあり、期待一杯で2016年コンサート初めに。

 まずプログラムがユニークですね。3曲ともにおもちゃの人形がネタ。新春に相応しいファンタジックな選曲(ペトルーシカなどはストーリーはグロテスクですが・・・)です。三連休の中日ということもあってか、聴衆は8割ほどの入り。

 初めて見たヤマカズさんは比較的小柄なかたでした。年齢は30代半ばのようですが、童顔顔っぽいので若くみえますね。初めて知ったのですが、2010-2012年の間、N響の副指揮者も務めておられたようで、そのためかN響にも随分、馴染んでいるようにお見受けしました。

 冒頭のビゼーの組曲は、初めて聴く曲ですが、さらっと流れる軽快な音楽でした。2曲目は、こちらも初めてのドビュッシーのバレエ音楽「おもちゃ箱」。 今日のもう一つの楽しみの女優の松嶋菜々子さんが語りで登場します。すらりとした長身の美人で、ホント舞台映えする方です(脚長の椅子に腰をかけての語りですが・・・)。持参のオペラグラスが釘付け。ヤマカズさん、N響には大変申し訳ないのですが、音楽そっちのけで、松嶋さんを眺めておりました。ごめんなさい。ただ、自分を棚に上げるわけではありませんが、演奏後ヤマカズ氏が、松嶋さんに目じりを下げてデレデレ風の喜び(?)を表しているのを見て、同じ男性としてわかる気がしたのと同時に、ちょっと情けなさを感じてしまったのも事実。まあ、天唾ですがね。

 一転して、休憩後の「ペトルーシカ」は、きっとこれがヤマカズ氏の真骨頂なのだろうと思わせてくれる熱演でした。変化に富んだこの曲を、バランスよくオーケストラをまとめ、実にクリアに聞かせてくれます。まるでバレエの場面場面が目に浮かぶうよう。N響も、弦、管それぞれイキイキ、はつらつとした演奏で応えてました。この音楽、ストラヴィンスキーっぽくて大好き。

 正直、「あっ」と言うようなサプライズはありませんでしたが、普段、ベテラン・重鎮指揮者が大いN響定演の中に合って、ヤマカズさんのような若手が振ること自体が非常に新鮮で、違う空気がNHKホールに流れるようです。来週末も同じく若手のソヒエフさん。楽しみです。


第1826回 定期公演 Aプログラム


2016年1月10日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

ビゼー/小組曲「こどもの遊び」作品22
ドビュッシー(カプレ編)/バレエ音楽「おもちゃ箱」*
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「ペトルーシカ」(1911年版)

指揮:山田和樹
語り*:松嶋菜々子(女優)


No.1826 Subscription (Program A)

Sunday, January 10, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Bizet / “Jeux d’enfants”, petite suite d’orchestre op.22
Debussy / Caplet / “La boîte à joujoux”, ballet*
Stravinsky / “Pétrouchka”, burlesque (1911 edition)

Kazuki Yamada, conductor
Nanako Matsushima, narrator*
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映画 「マエストロ!」  (監督 小林聖太郎、2015年)

2016-01-07 21:00:00 | 映画


 映画のエントリーが続きますが、こちらも年末年始にDVDで視聴したもの。

 資金難で一度解散したプロオーケストラの再生に向けて、無名だが只者ではない指揮者天道徹三郎(西田敏行)とメンバーたちが織り成すヒューマンドラマ。

 私の好きなクラシック音楽がテーマということで、借りてみたのだけど、気軽に楽しめる良品だった。指揮者とオーケストラのメンバーという、時にリーダーとフォロアーの関係であり、場合によっては敵対関係にもなりうるデリケートな関係をうまく描写している。また、指揮者とメンバーをつなぐコンサートマスターの役割や、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」やシューベルトの「未完成」交響曲のポイントをさりげなく紹介してくれるなど、クラシック音楽入門にもなりうり、クラシック音楽ファンでも、ファンでなくてもは楽しめる(クラシックおたくの人には物足りないだろうが・・・)。

 西田敏行という俳優さんは個性が強すぎるという意味で、ドラマの印象がすべて西田敏行になってしまう可能性があって、なかなか難しい男優さんだと思うのだけど、本作ではその個性がうまく生かされていた。流石の貫録という感じ。今売り出し中の松坂桃李が、才能あるコンサートマスターを演じたが、落ち着いた演技でまずまず。船の上で暮らす、アマチュアフルーティストの橘あまねを演じるmiwaがはつらつとして、比較的地味な映像に色彩を添えていた。

 クラシック音楽がテーマであるけども、肩肘張らずに楽しめるので、いろんな人にお勧めしたい。


スタッフ
監督 小林聖太郎
原作 さそうあきら
脚本 奥寺佐渡子
エグゼクティブプロデューサー 豊島雅郎、小西真人

キャスト
松坂桃李 香坂真一
miwa   橘あまね
西田敏行 天道徹三郎
古館寛治 阿久津健太朗
大石吾朗 村上伊佐夫
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映画 「コーラス・ライン」 (監督 リチャード・アッテンボロー、1985年)

2016-01-05 21:30:00 | 映画


 学生時代に観たはずの映画なのだが、全くと言っていいほど覚えてなかった。当時はミュージカルには、全く興味が無かったから。友人に誘われて付き合ったものの、「ふ~ん」としか言いようが無かったことだけは覚えてる。あれから何年も過ぎて、一応、私も世界が広がって、こんな映画も楽しめるようになった。

 ブロードウエイ・ミュージカルに出演するダンサーを決めるオーディション。出演といっても、コーラスチームであって、スポットライトを浴びるような役柄ではない。ステージ上のコーラスのための一線(=コーラスライン)は越えられない役割だ。それでも、将来のスターの卵たちがしのぎを削る中での人間模様が描かれる。一応、演出家ザック(マイケル・ダグラス)の昔の恋人で、スターダンサーだったキャシー(アリソン・リード)が仕事欲しさにコーラスのオーディションに参加する中での、ザックとキャシーの関係も織り交ぜてはあるものの、主役はあくまでも、オーディションに参加している無名の若者たちである。

 アメリカらしさにあふれている。東欧、中南米、アフリカ、アジア系など、ダイバシティ満載のオーディション参加者たち。厳しい競争社会。そして、自己PR・主張なしには理解されない。今のアメリカは良くも悪くもこの時から変化を遂げていると思うが、アメリカ社会のエネルギーの源を見るようである。オーディションの過程で明らかにされる、参加者個々の人生の多様性が特に興味深い。

 画像は随分古めかしく暗く見えたけど、音楽、ダンス、ストーリーなどいろんな楽しみ方ができる映画だ。
 


監督:リチャード・アッテンボロー
脚本:アーノルド・シュルマン
製作:サイ・フュアー
アーネスト・H・マーティン
製作総指揮:ゴードン・スタルバーグ

キャスト:
ザック: マイケル・ダグラス
キャシー: アリソン・リード
ラリー: テレンス・マン
リッチー: グレッグ・バージ
マーク: マイケル・ブレヴィンス
ダイアナ: ヤミール・ボージェス
ポール: キャメロン・イングリッシュ
アル: トニー・フィールズ
クリスティン: ニコール・フォッシー
シーラ: ヴィッキー・フレデリック
コニー:  ジャン・ガン・ボイド
ビビ: ミシェル・ジョンストン
ジュディ: ジャネット・ジョーンズ
マギー: パム・クリンガー
ヴァル: オードリー・ランダース
マイク: チャールズ・マクゴアン
グレッグ: ジャスティン・ロス
ドン: ブレイン・サヴェージ
ボビー: マット・ウエスト
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映画 「幕が上がる」  (監督 本広克行、 2015)  ~期待を大きく上回る佳作~

2016-01-02 19:44:54 | 映画


 年末にDVDで視聴。とある演劇部の高校生たちの成長物語。平田オリザさんの原作ということと、ももクロが主演ということで、期待半分、不安半分で借りてみたのだが、私のツボにはまる傑作だった。アイドル映画どころか、演劇をテーマにしたスポ根映画である。

 主演のももいろクローバーZは、私が3年前に帰国した時はグループ名すら知らず、職場の同僚たちからは恐竜を見るような目で見られたのだが、いまだ個々のメンバーは全くわからない。が、本映画での各人の自然で伸び伸びとした演技にはとっても好感が持てた。いまどきの女子高校生があんな感じなのかどうかは知らないけど、演技になんら違和感はないし、はつらつとして良かった。

 映像を引きしめていたのは、新任の高校教師役で彼女たちを指導することになる吉岡先生役の黒木華。CFで見たことあるぐらいだったが、存在感のあるいい女優さんですね。若きころの田中裕子に面影が似ていて、派手な容姿ではないのだが、演技や台詞回しの一つ一つに重みがある。これから追いかけてみたい女優さん。

 演劇がどう成り立っているのかという「演劇入門」の映画版でもある。脚本、演出、俳優・・・それぞれの役割が、結集されて一つの舞台を作っていく。高校の演劇コンクールを舞台として、いくつかの高校生演劇のショットが流れるが、それらも演劇表現の多様性を表し、また映画のリアリティを高めていた。

 大泣きすることはないのだが、場面場面で涙線が緩むこと数多し。自信を持ってお勧めしたい。

スタッフ
監督 本広克行
原作 平田オリザ
脚本 喜安浩平
音楽 菅野祐悟

キャスト
百田夏菜子 高橋さおり(さおり)
玉井詩織 橋爪裕子(ユッコ)
高城れに 西条美紀(がるる)
有安杏果 中西悦子(中西さん)
佐々木彩夏 加藤明美(明美ちゃん)
黒木華 吉岡美佐子(吉岡先生)
ムロツヨシ 溝口先生
清水ミチコ さおりの母
志賀廣太郎 滝田先生
コメント
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