その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

マイ・ラスト・プロムス~ バレンボイム指揮/ ベートーベン・チクルス

2012-08-12 19:55:21 | コンサート (in 欧州)
 私にとっては、今シーズンでプロムスも何と4年目。夕陽に照らされるロイヤル・アルバート・ホールを見ていると、想えば、随分(ロンドンに)居たもんだと、私なりの感慨に浸ってしまいます。

(ロイヤル・アルバート・ホール)


(ホール内正面)


 今シーズン予約したチケットは7月の3枚。いずれも、バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の演奏によるベートーベン・チクルス。21日に3番、4番、23日に5番、6番、27日に9番を聴きました(21日、23日はベートーベンの交響曲の間にピエール・ブーレーズの曲が挟まれています)。ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団は、イスラエルとアラブ諸国出身の若き音楽家達を中心に結成(なかには若くない人もいます)されている楽団で、2年前のプロムスで、同じくバレンボイムの指揮で『フィデリオ』(演奏会方式)を聴きました。

(開演前のチューニング)


(会場は満員)


 3つのコンサートで、一番印象的だったのは、私にとって本当の最後のプロムスでもあり、オリンピックの開会記念となったベートーベン交響曲第9番の演奏会です。演奏はオーソドックスなものでしたが、若い人の集中力を感じる演奏でした。こういう演奏を聴いていると、上手い下手もさることながら、演奏会の感動度は団員さんの気合が、感動度に大きく影響するということが良く分かります。

 加えて、第4楽章のパーペのバリトン独唱で始まる合唱部が素晴らしかったです。あの大きなアルバートホールの隅々に響き、壁にまで染み渡るような美声に背筋が伸びます。そして、National Youth Choir of Great Britainの若い大合唱団のコーラスが圧倒的。若い人らしい爽やかなで張りのある歌唱で、魂が洗われました。私の最後のプロムスとして思い残すことのないコンサートでした。

(独唱陣)


(バレンボイム先生)


(スタンディング・オベーションの聴衆)


(コーラスも素晴らしかった)


 3回の演奏会を通した印象は、バレンボイム先生のリーダーシップ。ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の演奏そのものは、私には、正直、さほど特筆すべきものは無かったように感じられました。(ただ、それはアルバートホールの大ホール故のことかもしれません。)バレンボイム先生が、若い楽団を、ハンカチで大汗を拭きながら、激しく指揮棒を振って音楽を創り上げる姿が目に残りました。


 毎年、夏のロンドンで2か月に渡って毎日、80近くのクラシックコンサートが行われるプロムス。このお祭り雰囲気とプログラムの多彩さ、そして出演のオケの国際性、本当に楽しませてもらいました。心からサンキューと言いたい気分です。 

 

Prom 18: Beethoven Cycle – Symphony No. 9, 'Choral'
Friday 27 July
6.30pm – c. 7.55pm
Royal Albert Hall
Choral music and opera, Classical for starters, Proms on TV

Beethoven
Symphony No. 9 in D minor, 'Choral' (77 mins)

Anna Samuil soprano
Waltraud Meier mezzo-soprano
Michael König Tenor
René Pape bass

National Youth Choir of Great Britain
West–Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim conductor


© BBC/Chris Christodoulou


Prom 12: Beethoven Cycle – Symphonies Nos. 5 & 6
Monday 23 July
7.30pm – c. 9.45pm
Royal Albert Hall
Classical for starters, Proms on TV

Beethoven
Symphony No. 6 in F major 'Pastoral' (40 mins)
Pierre Boulez
Mémoriale ('… explosante-fixe …' Originel) (8 mins)
Pierre Boulez
Messagesquisse (8 mins)
INTERVAL
Beethoven
Symphony No. 5 in C minor (30 mins)

Guy Eshed flute
Hassan Moataz El Molla cello, Proms debut artist
West–Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim conductor


Prom 10: Beethoven Cycle – Symphonies Nos. 3 & 4
Saturday 21 July
7.30pm – c. 9.55pm
Royal Albert Hall
Classical for starters, Proms on TV

Beethoven
Symphony No. 4 in B flat major (35 mins)
Pierre Boulez
Dialogue de l'ombre double (20 mins)
INTERVAL
Beethoven
Symphony No. 3 in E flat major, 'Eroica' (50 mins)

Jussef Eisa clarinet, Proms debut artist
IRCAM live electronics
West–Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim conductor
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フィルハーモニア管弦楽団/ サロネン指揮/ マーラー交響曲第2番「復活」ほか

2012-07-01 22:52:58 | コンサート (in 欧州)
 ※写真を追加しました(2012.7.4)

 私にとって、今シーズン最後のフィルハーモニアの演奏会であり、最後のロイヤルフェスティバルホールでの演奏会でもあります。マーラーの第2番ということで、有終の美を飾るにふさわしい選曲。普段、なるべく買わないようにしているウィークデイの演奏会(仕事の都合で当日キャンセルの可能性があったり、演奏会中に眠りに入る可能性が大なため)でしたが、思わず手が出てしまいました。

 マーラーの第2番の時は、演奏曲はこの1曲だけのコンサートも多いのですが(イギリスにて既に復活は4回聴いていますが、うち3回は復活だけでした)、この日はPhibbsと言う人のロンドン初演作品"To The Sea"という25分程度の交響詩のような作品が演奏されました。残念ながら、私の方は意識があったのは最初の5分。大変失礼ながら、残りは完全に子守唄になってしまいました。というわけで、何も書けません。ゴメンナサイ。

 休憩中、Miklosさんとお会いできて世間話。これで、「復活」にむけて、復活(完全なオヤジダジャレで失礼)です。

 休憩後の「復活」。素晴らしい演奏でした。いつ見ても、サロネンの指揮姿は本当にスマートで格好いいです。そのサロネンは思いっきりオーケストラを煽りつつ、溜めるところはタメ、抑揚をつけるところはかなり明確にアクセントをつけていました。フィルハーモニアもエンジン全開と言う感じで、盛り上げところの音量は物凄かったです。パーカッションの活躍が目立ったのですが、音の炸裂そのもので、爆竹でも鳴らしているような凄まじい爆発でした。アンサンブルも綺麗に揃っていました。不思議なのですが、それでも聞えて来る音楽はとってもさわやかで、サラサラした音楽。指揮者によっては、かなり、重厚長大に演奏する人もいると思いますが、サロネンの復活は、歌を歌っているような軽やかさが感じられました。

 合唱も美しい。この曲の合唱部分は涙が出てきます。独唱はMonica Groopのメゾソプラノが声が良く通り、美しかったです。ソプラノのケイト・ロイヤルはロイヤルオペラで聴いていますが、この日は可も無く不可もなくという感じでした。この人はオペラの方が映えますね。

 今シーズンのフィルハーモニアとRFHの最後を飾るにふさわしい演奏会でした。

Salonen conducts in London
Royal Festival Hall
Thu 28 Jun 2012 7:30pm

Esa-Pekka Salonen: conductor
Kate Royal: soprano
Monica Groop: mezzo-soprano

Philharmonia Chorus

Phibbs Rivers To The Sea (London Première)
Mahler Symphony No. 2, Resurrection

※開演前


※終演後




※ロイヤルフェスティバルホールの4階バルコニーから
(透き通るような青空でした)


(テーブルの模様もオリンピックデザインになっています)


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City of London Festival/ London Symphony Orchestra & Sir Colin Davis

2012-06-30 00:20:53 | コンサート (in 欧州)
 毎夏恒例のシティ・オブ・ロンドン・フェスティバルのコンサート。セントポール寺院にロンドン交響楽団(LSO)、デイヴィス翁指揮のベルリオーズのレクイエムを聴きに行きました。このコンサートはみずほ銀行がスポンサーになっていたせいか、多くの日系企業の偉い方々をお見かけました。

(セントポール寺院 19:35。天気が良ければ、まだ高い太陽から西日が当たって綺麗なんですけど・・・)


 貯まったバービカンホールのクレジットの消化目的でテキトーに買ったチケットだったからか、席は最前列ではあるもの、北側サイドでコーラス部隊の真横でエラク見通しも悪い。デイヴィス翁の顔も姿も全然見えないし、登場でさえ拍手で知るという情けない状態でした。

(開演前)


 演奏の方は如何だったかと言うと、正直、良く分かりませんでした。3年前、このセントポール寺院でのコンサートに初めて行った時も思ったのですが、教会内部の残響がありすぎて、音が良く聞き取れないのです。生音を聴いているのか、反響した音を聴いているのか、またまた反響した音の反響音を聴いているのか、良く分からないのです。ベルリオーズのレクイエムも初めてだったので、掴みどころも分からず仕舞いで、完全なお客様状態でした。

 それでも、教会という場が持つ力は何か特別なものがあります。コーラス席の真横で良かったのは、コーラスやパーカッションの炸裂を生の空気の振動で感じます。心臓パクパク、ドキドキでした。デイヴィス翁の姿も見えないし、弦の音は全体に紛れて、ほとんど聞こえないのですが、言い表しようのない荘厳な雰囲気と、神々しい合唱に心が洗われました。Barry Banksの独唱がテノールが教会一杯に響くさまは、波が砂浜に打ち寄せえるように、音が教会の壁にそって伝わっていくのが分かります。教会の壁画に描かれたキリストらが動き出すような錯覚に襲われ、音楽を含めた空間そのものに打たれた1時間半でした。





 セントポール寺院のコンサートに行く時は、雰囲気を楽しむことに徹したほうがよさそうです。

(帰り道にセントポール寺院後方から)



London Symphony Orchestra & Sir Colin Davis

Berlioz Requiem

Tuesday 26 June
Time: 20:00
St Paul's Cathedral

London Symphony Orchestra
London Symphony Chorus
London Philharmonic Choir
Barry Banks tenor
Sir Colin Davis conductor
コメント (4)
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ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 / サイモン・ラトル指揮 / ブラームス交響曲第3番ほか

2012-06-19 01:08:30 | コンサート (in 欧州)
 在欧3年半だけの経験だが、このオーケストラは本当に面白いオーケストラだと思う。当たり外れが激しいのである。痺れる個性的な演奏を聴かせてくれる時もあれば、本当に腰が抜けた流したような演奏の時もある。幸運にもこれまで4回のウイーンフィルのコンサートに足を運ぶ機会があったが、2010年3月にバービカンで聴いたマゼール指揮のベートーベンの田園は胸が揺さぶられた演奏だった一方で、2009年9月のプロムスのブラームス第4番はがっかりだった。さて、5回目の今日はラトル指揮。どうなるのかとワクワクでバービカンホールへ。

 今回のプログラムはいずれもドイツ、オーストリアの作曲家という以外は趣旨が良く分からない。いきなりブラームスの交響曲第3番から始まって、休憩後にウェーベルンの「6つの小品」とシューマンの交響曲第3番「ライン」。選曲に常に意味合いがある必要は無いと思うが、イギリス公演でのこの選曲にはラトルのどんなメッセージがあるのだろうと興味深かった。バランス的にも、ブラームスとシューマンは入れ替えた方が、落ち着きが良いのではないか?とも思ったりしたが、まあこういう前重の配列も無くは無いので良いか。でもラトルのプログラムだと思うと、きっと何か仕掛けがあるに違いないなどと勘繰ったりしてしまう。

 さて、演奏のほうだが、冒頭のブラームスが凄かった。重層的で波のようにうねる弦の音色が特徴的で、もう第一楽章から痺れっぱなし。管のアクセントも完璧でオーケストラのレベルの高さを伺わせる。ラトルが激しく求め、オーケストラが必死に応える。2009年プロムスの腰抜け演奏とは全然違う腰の入った素晴らしいブラームス。「この緊張感は何なんだ?」と圧倒されつつ、聴きながら「これは格闘技だ」と思った。より機能的で繊細なベルリンフィルやコンセルトヘボウとは明らかに目指すところ、求めるところが違っているような気がする。第4楽章の前半は怒濤の音の塊の爆発。こんな演奏は滅多に聴けるものではない。

 もうこの1曲だけでお腹一杯。もう帰っても良いやと思った休憩時間だった。こりゃ、立ち直るのに時間がかかるぞと思ったら、休憩後のウェーベルンの「6つの小品」は全く趣の異なる20世紀初頭の音楽。初めて聴くのだが、個々の楽器の個性が活かされた曲で、とても楽しめた。特にパーカッションが活躍する第4楽章は、打楽器のうねりが面白かった。

 そして、ラストがシューマンの「ライン」。ここでも、ラトルは思い切りオーケストラをあおる。第1楽章の有名なメロディはただただ美しいし、ケルンの大聖堂を念頭に置いたという第4楽章などは雄大で、濃厚なハーモニー。ただ聴き手の私の集中力がここまで持たず自滅。気合いの入った良い演奏だったとは思うのだが、私には均整が取れていない、バラバラ感がある演奏に聞えてしまった。きっと自分の状態がバラバラだったのだろう。もう音楽を受け止めるエネルギーが途切れてしまったのだ。

 ラインの第一楽章のメロディが渦巻きながら、フラフラになってバービカンセンターを後にした。




Vienna Philharmonic / Rattle
Music by Brahms, Webern and Schumann
17 June 2012 / 19:30
Barbican Hall

Brahms Symphony No 3
Webern Six Pieces for Orchestra
Schumann Symphony No 3, 'Rhenish'

Vienna Philharmonic Orchestra
Sir Simon Rattle conductor
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ロンドン交響楽団/ ハイティンク指揮/ ピレシュ ピアノ

2012-06-15 23:45:16 | コンサート (in 欧州)
 つい2週間前に、ロイヤル・コンセルトヘボウを振ったハイティンク大先生がLSOを振るということでこれまた楽しみだった演奏会です。期待どおりの二重丸でした。

 特に素晴らしかったのは、マリア・ジョアン・ピレシュによるモーツァルトのピアノ協奏曲20番。一つ一つの音の輪郭が明確な上に、連続性があり、とっても優美。完全に自分の曲として自信を持って弾いている感じで、安心して音楽に浸っていられます。

 久しぶりに聴く第2楽章は映画「アマデウス」のエンディングで使われた曲。聴きながら、高校時代、クラブ活動の帰りに地元の名画座に、黒の詰襟を来たまま男友達と2人で見に行った思い出が蘇ってきました。最終日の最終回にかけこんだためか、20名もいないのではと思われるホール内に流れるこのエンディングテーマ。クレジットのすべてが流れ、音楽が終わるまで、誰一人として席を立たないし、扉から新たに入ってくる人も居ない。こんなに最後の最後まで映画を味わいつくしたのは初めてだったし、音楽と言えば、聖子、明菜だった私にクラシック音楽って悪くないなと思った初めての瞬間だったのです。

 そんな高校時代の思い出にも浸りながら、このモーツァルトがずーっとこのままいつまでも続いてほしいと思って聴いていました。ピレシュはとっても小柄ですが、その小柄な体が叩くピアノの音は主張はあるけども、とっても自然体。体に染み入るような音です。ただただ美しく、一つの完成された演奏だと思いました。

 前回のブルックナーの時もハイティンクの指揮は、堅牢で重厚な演奏だったのですが、今回も最初から最後までこのスタイルでした。一曲目のパーセルも2曲目のモーツァルトもスケールの大きい交響学的な演奏だったので、もっと小規模な室内楽的な演奏なのかと勝手に思っていた私には意外でした。

 休憩後のシューベルトの交響曲第9番は、有名な曲のはずなのに、CDも持っていないし、実演もはじめてなので、恥ずかしながらはじめて聴く曲でした。でも、隙がない演奏であることは私にも分かります。弦の重厚な演奏、美しい木管の調べ音が印象的です。悪く言えば癖が無さすぎて、教科書的な印象を感じないわけでもありませんが、この堂々としていて、重心が低く、安定的なびくともしない演奏は、教科書的というよりも王道を行くといったほうが相応しいと思います。ハイティンクの指揮と高い技術を持つLSOの素晴らしいコラボでした。

 スタングオベーションはないものの会場は大きく暖かい拍手に包まれました。演奏を終えた奏者の安堵と満足感の表情に加え、奏者のハイティンクに向ける眼差しや奏者からの拍手からも、ハイティンクがいかに奏者からも慕われ、敬われていることがわかります。

 それにしてもハイティンク大先生は俳優の晩年の志村喬(故人)に似ているなあ~


(マリア・ジョアン・ピレシュ)


(シューベルト終演後のハイティンク大先生)


(楽員から讃えられる大先生)



London Symphony Orchestra / Bernard Haitink
Music by Purcell, Mozart and Schubert
10 June 2012 / 19:30
Barbican Hall

Purcell Chacony in G minor
Mozart Piano Concerto No 20
Schubert Symphony No 9 (‘The Great’)

Bernard Haitink conductor
Maria João Pires piano
London Symphony Orchestra
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ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団/ ハイティンク指揮/ ブルックナー交響曲第5番

2012-05-20 20:50:34 | コンサート (in 欧州)
 ある意味とっても贅沢であり、もったいないことでもあるのだが、最近、一種の感動慣れとでも言うのだろうか、演奏会に出掛けても、以前のように胸が締め付けられるように感動するということが少なくなってきた気がする。きっと、ロンドンには「良い」演奏会があまりにも多すぎるせいなのだろう(間違っても、加齢により感受性が弱くなってきたとは思いたくない)。でも、今日のロイヤル・コンセルトヘボウの演奏会は、「良い」演奏会を遥かに超えた打ちのめされた演奏会だった。

 まずハイティンク大先生がとっても元気な指揮ぶりだったのが嬉しかった。83歳のハイティンク大先生が今日どんな指揮を見せてくれるのかは、実はとっても気になっていた。現在84歳のLSO総裁デイヴィス翁が、昨年ぐらいから随分老いが目立ってきて、椅子に座っての指揮になっているだけに、デイヴィス翁と双璧をなすハイティンク大先生は大丈夫だろうか?と、とっても心配だったのである。でも指揮台に登ったハイティンク大先生は変っていなかった。1時間半のブルックナーの大曲を、最後まで姿勢を崩さず、いつもと同じように、コンパクトな動きで的確に指示を出していた。

 私はハイティンク大先生の虚飾を廃した、質実剛健そのものとも言えるスタイルが大好きである。今日のブルックナー交響曲第5番は、恥かしながら私には全く初めてなので、解釈について語ったり、他の指揮者や楽団との比較はできない。単なる私の印象なのだが、ここでも大先生の指揮は、構造が明確で余計な感情が入らない。かといって冷たい、醒めた演奏では全然ない。音楽そのものに語らせ、あとは聴くものに委ねる、とでも言うような指揮ぶりだ。私は第1楽章から爆発のフィナーレまで痺れっぱなしだった。

 コンセルトヘボウの巧さもさすがだった。私はホルン、オーボエ、フルートの個人技や、金管陣の澄みとおって突き抜けるような演奏に特に感じ入った。今シーズンから外来オーケストラのチケットが値上がりして、かなり逡巡したのだが、良い席を買って本当に良かった。弦、管のバランスの良さも良くわかった。至高の演奏だったと思う。悔しいが、我らのLSOもここまでできないのではないかと思わざる得なかった。

 終演後は、会場はスタンでィングオベーション、ブラボーの嵐で指揮者、オーケストラを讃える。当然だと思った。自分もシャッターを押しつつ、手が痛くなるまで拍手した。

(拍手に応えるハイティンク大先生)


(オーケストラとスタンディングオベーションの聴衆)


(実は、中央のフルートの首席奏者(Emily Beynon(エミリー・バイノン)さん)のファンなのである。この人、20年前の吉永小百合を西洋ケルト風(ウエールズ出身)にした感じで、目茶、妖艶である)


 ※Emily Beynon(エミリー・バイノン)さんのホームページはこちら→


Royal Concertgebouw Orchestra / Haitink
Bruckner Symphony No 5
20 May 2012 / 15:00
Barbican Hall

Bruckner Symphony No 5

Royal Concertgebouw Orchestra
Bernard Haitink conductor



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ロンドン交響楽団/ ゲルギエフ指揮/ ストラヴィンスキー・フェスティバル

2012-05-17 22:48:11 | コンサート (in 欧州)
 ストラヴィンスキー・フェスティバルと銘打ったロンドン交響楽団のシリーズ企画。なんと1週間の間にストラヴィンスキーのコンサートが何と一気に5つも行われます(うち3つはバービカン、1つはトラファルガー広場での野外コンサート、1つはセントルーク)。これまでストラヴィンスキーといえば、私は「春の祭典」「火の鳥」の組曲番、それにオペラの「Rakers’Progress」ぐらいしか聴いたことがないので、3つのコンサートに足を運びました。

 ストラヴィンスキーは「カメレオンとあだ名をつけられるほど創作の分野は多岐にわた」り、「作風を次々に変え続けた」(Wiki)と言われていますが、今回の演奏会を通じて、その作風の大きな違いを身をもって感じることができました。

3つのコンサートで聴いた曲を年代順に並び替えるとこんな感じになります。

1910 The Firebird – complete ballet (火の鳥)
1913 The Rite of Spring (春の祭典)
1916 Renard  (狐)
1918 The Soldier's Tale(兵士の物語)
1927 Oedipus Rex (エディプス王)
1931 Violin Concerto in D major (ヴァイオリン協奏曲)
1944-48 Mass (ミサ曲)

 いわゆる「火の鳥」「春の祭典」は馴染んだ曲で、これぞストラヴィンスキーというべき、変幻自在なリズムや民族調のメロディが織り込まれたりします。一方で、一般に新古典主義期といわれる時期の作品である「エディプス王」や「ミサ曲」に至っては、同じ人が作曲したとは思えないような、正統(?)なクラシック音楽でした。第2次大戦後は更に「セリー主義(十二音技法)時代」と言われるように更に作風が変わるようですが、今回はそこまでは至らず)

 演奏としては、初日の「火の鳥」が緊張感、迫力ともに圧倒的だったと思います。前列3番目に座っていたので、全身で音を浴びまくって、しびれました。日曜日に聴いた"Renard"と"The Soldier's Tale"は其々15名、7名の奏者で、LSO室内アンサンブルによる演奏でした。LSOのトップ演奏家による室内楽で、相互の楽器の個性のぶつかり合いが刺激的で楽しめました。

 ソリストが入る「狐」や「エディプス王」ではマリンスキー劇場から歌手陣が遠征してました。「エディプス王」のタイトルロールを歌ったSergei Semishkur が、綺麗な伸びのあるテノールで印象的でした。

 あと、「兵士の物語」と「エディプス王」でナレーションを勤めたサイモン・キャロウの語りも抑揚が効いた落語のようなリズムで、音楽との相性も全く違和感ないどころかむしろドラマティックに盛り上げて、舞台を楽しませてくれました。

 逆に、席が3階席にランクダウンしたせいか、「春の祭典」は期待して出かけた割には、満足感はいまいち。各楽器の有機的なコンビネーションやシナジーが感じられなかった気がします。(でもTimesのレビューでは4つ★でかなり褒めてましたので、私の聴く力不足だったのでしょう)

 1週間でこんなにストラヴィンスキーばかりを集中して聞く機会というのは、日本ではなかなか難しいと思うのですが、この1週間で、この作曲家がぐっと身近に感じることができるようになりました。


London Symphony Orchestra / Valery Gergiev
Stravinsky Festival


11 May 2012 / 19:30
Barbican Hall

Stravinsky Mass
Stravinsky Violin Concerto in D major
Stravinsky The Firebird – complete ballet

Valery Gergiev conductor
Leonidas Kavakos violin
Maud Millar soprano
Chloë Treharne mezzo soprano
Alessandro Fisher tenor
Matthew Sandy tenor
Oskar Palmbald bass
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

(ヴァイオリン協奏曲のヴァイオリンソロLeonidas Kavakos)



13 May 2012 / 19:30
Barbican Hall

Stravinsky Renard
Stravinsky The Soldier’s Tale

Valery Gergiev conductor
Alexander Timchanko tenor
Dmitry Voropaev tenor
Ilya Bannik bass
Andrey Serov bass
Simon Callow narrator
LSO Chamber Ensemble

(「狐」の歌手陣とLSO室内楽アンサンブル)


15 May 2012 / 19:30
Barbican Hall

Stravinsky The Rite of Spring
Stravinsky Oedipus Rex

Valery Gergiev conductor
Zlata Bulycheva Jocasta
Sergei Semishkur Oedipus
Ilya Bannik Creon
Alexei Tanovitsky Tiresias
Alexander Timchenko Shepherd
Simon Callow narrator
Gentlemen of the London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

(「エディプス王」の歌手陣)


(オーケストラの全容)



※付録 土曜日のトラファルガー広場公演の開始20分前
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ロンドン交響楽団/ ピーター・エトヴェシュ指揮/ クリスチャン・テツラフ ヴァイオリン

2012-05-04 23:03:51 | コンサート (in 欧州)
 週末オペラ、コンサートの3連戦最終日。

 既にMiklosさんが書かれていますが、いつも音楽関係のネタで交流させていただいているブログ仲間の面々(Miklosさん、dognorahさん、Voyage2Artさん、feliz2さん)が、予期せず勢ぞろいという、すごい(?)演奏会となりました。

 皆さん既にレビューをアップされていますので、コンサートの模様は、音楽に造詣の深い皆さまのブログをご覧ください。

 dognorah さんのコンサート評はこちら→

 feliz2 さんのコンサート評はこちら→

 Miklosさんのコンサート評はこちら→
 
 というわけで、1週間近くも出遅れた私は、書くことが無くなったので、手短に。

 多くの人のお目当てだってあろう指揮予定者だったプーレーズは残念ながら数カ月前からキャンセル。それで大量のチケットリターンが出たようで、3階は閉じて、1、2階に詰めての演奏会となりました。

 とにかく、2曲目のシマノフスキのヴァイオリン協奏曲を弾いたテツラフが凄すぎ。テクニックと表現力を併せ持ったこの2枚目ヴァイオリニストの演奏は、シャープな音で、くっきりと音影が浮かび上がり、ただただ驚嘆、脱帽です。年齢的にも私とそんなに変わらないのに、随分若く見えるしな~

(エトヴェシュとテツラフ)


 またプレーズの代役となったエトヴェシュの指揮も良かったです。私ははじめて聞く名前だったのですが、代役とは思えない堂々たる指揮ぶりで、LSOを豪快に鳴らせていました。

3ヶ月ぶりのLSOでしたが、LSOはやっぱり上手いなあと再認識した次第です。

(会場は大きく暖かい拍手に包まれました)




London Symphony Orchestra / Peter Eötvös
Scriabin Symphony No 4 (‘Poem of Ecstasy’)
29 April 2012 / 19:30
Barbican Hall

Peter Eötvös conductor
Christian Tetzlaff violin
Ladies of the London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

Debussy Three Nocturnes
Szymanowski Violin Concerto No 1
Scriabin Symphony No 4 (‘Poem of Ecstasy’)





コメント (2)
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ロンドン・フィルハーモニック/ トルトゥリエ指揮/ チィコフスキー交響曲第4番

2012-05-02 22:33:48 | コンサート (in 欧州)
 土曜日の夜、久しぶりにロンドン・フィルハーモニックのコンサートに行きました。

 一曲目は、メシアンの「忘れられた捧げもの」。メシアンは私には理解不能で苦手なのですが、イエス・キリストを描いたこの作品は、メシアンの中でも初期の作品のためか聴き易い曲でした。
 
 二曲目は、ベートーベンのピアノ協奏曲第一番。実演で聴くのははじめてです。ピアノ独奏は中国人の若手ピア二ストHong Xu(何と読むンかしら?)。ボクトツとした、ちょっと老けた新入社員のような感じの人で、同じ中国出身でもジャニーズみたいなランランとは雰囲気が随分違います。弾きぶりはとっても堅実だけど、音はとっても優しい。曲もベートーベンとは思えないような、モーツァルトを思わせるソフトで室内楽のような曲で、ゆったりと楽しめました。Hong Xu君は、アクの強い個性は感じませんでしたが、ショー的な派手なところがなく、しっかりと落ちついた演奏は好感が持てます。

 今回の指揮者ヤン・パスカル・トルトゥリエという人も初めてです。とっても大柄な初老の指揮者で、大きい上に腕を大きく振り上げたり、膝を曲げて屈みこんで弦に指示をしたりで、体を激しく動かすので随分目立ちます。3曲目のチャイコフスキーの交響曲第4番は、その全身を使って精力的にオケを煽り、オケも必死に応えていました。ロンドン・フィルは、洗練された上手さというより、全体としての勢いやパワーを感じます。金管陣が緊張感のある、気持ちがよいほどの音を響き渡らせてくれました。あと、一つ発見。ファゴットのお姉さんがとても綺麗な人でした。あんな人いたっけなあと思って、プログラムを見たらLola Descoursというゲスト・プリンシパルさんだったようです。
 
 今日は中高校生ぐらいの若い感じの人が随分沢山いました。そのせいか、拍手が楽章ごとに入って多少ずっこけるところもありましたが、とても暖かい良い雰囲気の演奏会でした。チィコフスキーのあとは、スタンディングオベーションの凄い拍手でした。

※いつも通りのピンボケ写真ですが・・・

(Hong Xu君)


(指揮のヤン・パスカル・トルトゥリエ)


(すごいスタンディングオベーション)



28 April 2012 7:30pm

Royal Festival Hall 2011/12

London Philharmonic Orchestra
Messiaen, Beethoven and Tchaikovsky


Messiaen Les Offrandes oubliées
Beethoven Piano Concerto No. 1*
Tchaikovsky Symphony No. 4

Yan Pascal Tortelier conductor
Hong Xu piano

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Barenboim & Staatskapelle Berlin (バレンボイム/シュターツカペレ・ベルリン)

2012-04-20 18:38:45 | コンサート (in 欧州)
 1年前に予約したチケット。最近めっきりコンサートホールに足が遠のいてしまっていたのだが、久しぶりに気合を入れてロイヤルフェスティバルホールへ出撃。何と言ってもバレンボイムと手兵シュターツカペレ・ベルリンのコンサートである。

 しょっぱなは、モーッアルトのピアノ協奏曲24番。バレンボイム自身のピアノ演奏である。バレンボイムのピアノは初めて聞くのだが、この1年はモーッアルトのピアノ協奏曲というと内田光子さんばかり聴いていたので、当たり前の話だが、随分違うもんだと思った。光子さんの素朴ながらも繊細で華がある演奏と比べると、バレンボイムのピアノは同様に素朴なのだけど、もっと太くたくましい感じがする。これは光子さんが女性で、バレンボイムが男性というきわめて、私の思いこみに来ている可能性も否定できないが、少なくともこの日の私はそう感じた。でも、そのバレンボイムの愚直とも聞えたモーツァルトはとっても体にすんなり入ってきて、かみしめながら聴くことができた。



 そして、ブルックナーの交響曲7番。多くの人がそうであろうが、私もブルックナーの交響曲の中ではこの7番が一番好きである。原体験は、ずーっと昔、クラウス・テンシュテットが振ったフィラデルフィア管の演奏を聴いたことで、感受性が強い時期だったということもあるが、自分史の中でもとっても衝撃的な体験だった。今回は バレンボイムとシュターツカペレ・ベルリンが創り出す重厚で雄大な世界に魅せられた。特に、弦の厚みのある演奏は、冒頭のチェロの演奏から痺れっぱなしだった。ベルリン・フィルのような機能的で鋭利な刃物のような隙のない完璧なアンサンブルとは全く趣が異なっているが、ドラマチックで人を気持ちを揺さぶる演奏だ。なんかこの音楽を使って物語を書いたりしてみたくなる。暗譜で振るバレンボイムもかなりオーケストラを煽っていたが、金管もフルパワーで鳴らし、大きなロイヤルフェスティバルホールが揺れているような感覚に陥るほど。今回はバルコニー席だったのだが、これはもっとステージ近くで聴きたかったなあ~。



 終演後は盛大なスタンディングオベーションだった。





Royal Festival Hall

Barenboim & Staatskapelle Berlin
The Bruckner Project
15 April 2012

Wolfgang Amadeus Mozart: Piano Concerto No.24 in C minor, K.491
Interval
Anton Bruckner: Symphony No.7 in E

Staatskapelle Berlin
Daniel Barenboim conductor, piano

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ロンドン・フィルハーモニック/ セガン/ ブルックナー 交響曲第9番ほか

2012-03-24 18:38:02 | コンサート (in 欧州)
 1月半も前の週末に出かけたコンサート。一応、備忘録として。

 数か月ぶりのロイヤルフェスティバルホール。ロンドンフィルとも随分、ご無沙汰。この日は、未完のブルックナー9番とその未完の終楽章をテ・デウムで置き換え(生前のブルックナー自身の発言)、更に冒頭にモテットChristus factus est
を置くという興味深いプログラム。演奏開始前にセガンさんから3曲を休憩なしでひとつの曲として、通して演奏するという説明があった。

 背筋が延びる素晴らしい演奏と合唱。一曲目は合唱のみ。教会にいるかのごとく厳粛な気持ちになる。ブルックナーの9番も、ロマンティックかつダイナミックな演奏で素晴らしい。そして、第4楽章として演奏されたテデウム。少し音が大きすぎるのではないかと思うぐらいのパワフルな合唱。独唱もトビー・スペンスの声が良く通って、聞きごごちよし。メゾは初めて聞く日本人の藤村実穂子さん。非常に繊細で透明感のある美声だったが、ソプラノのヴォリュームが大きくておされぎみ。

 ネゼ・セガンさんのエネルギッシュな指揮ぶりは、いつもながら引きこまれる。今日も気合十分の素晴らしい演奏を引き出してくれた。1時間40分休みなしの演奏後、聴衆もスタンディングオベーションで労っていた。


04 February 2012 7:30pm

Royal Festival Hall 2011/12

Bruckner Christus factus est
Bruckner Symphony No. 9
Bruckner Te Deum

Yannick Nézet-Séguin conductor
Christine Brewer soprano
Mihoko Fujimura mezzo soprano
Toby Spence tenor
Franz-Josef Selig bass
London Philharmonic Choir

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ブダペスト祝祭管/ フィッシャー

2012-03-08 23:55:41 | コンサート (in 欧州)
 昨年初めて聴いた時も思ったのですが、フィシャーとブダペスト祝祭管弦楽団のコンビは、世界トップクラスであることは間違いないでしょうね。ロンドンでは、ラトルとベルリンフィル、ヤンソンスとコンセルトヘボウ、マゼールとウーインフィルなどの世界の至高コンビの演奏を聞く機会に恵まれましたが、このコンビも決してヒケをとらないです。この夜も生オーケストラを聞ける歓びをふんだんに味会わせてくれました。

 とにかくアンサブルのバランスの良い響きと個々のパーツの上手さ、それとフィシャーの細部に至る拘りのコントロールが組み合わされて、大らかで芳醇な音楽空間を作ってくれます。

 もう1曲目から全力疾走で圧倒的。少々重い感じはするものの、豊穣な音の響きで、何かオーケストラの醍醐味って感じに聴こえるんですよね。フィシャーの唸りも聞こえてくる、気合い満点の演奏でした。

 2曲目のスペイン交響曲のカピュソンのヴァイオリンも凄かった。クリアで明確な音で、ヴァイオリンの響きってこんなに美しいということを、存分に味会わせてくれました。

 最後の「シェヘラザード」では、ハープが指揮者を挟んでコンミスの対向に置かれましたが、前回公演の「田園交響曲」のような、ステージに木をおいたり管と弦を混成した配置にしたりというサプライズは無かったです。が、演奏には終始痺れっぱなしで、目の前で繰り広げられる歴史絵巻を堪能しました。フィシャーが思うように自分のオーケストラを操っている様子が手をとるようにわかります。

 今年に入ってから、コンサートに足を運ぶ回数がめっきり減ったのですが、「やっぱりコンサートは良いなあ~」とブツブツ言いながら、テムズ川を渡って帰路に就いた次第です。



Sun, 4th March 2012
Royal Festival Hall
Iván Fischer / Budapest Festival Orchestra
Violin: Renaud Capuçon

Brahms/ Tragic Overture
Lalo/ Symphonie espagnole
Rimsky-Korsakov/ Sheherazade

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ニューヨーク フィルハーモニック/ アラン・ギルバート指揮 ロンドン公演

2012-02-25 21:39:18 | コンサート (in 欧州)
 ロンドンの多くのブロガーの方が既に紹介済ですが、先々週、ニューヨークフィルのロンドン公演が3公演ありました。私は、その土曜日の最終回を聞きに行きました。とても感じの良いコンサートで、帰りの足が軽くなるようなコンサートでした。

 このオケの音楽監督の座について間もない2年前にもロンドン公演がありましたが、私は体調不良で無念の当日キャンセル。今回がこのコンビの演奏を聞くのも観るのも初めてでしたが、この日のギルバートはとっても自信あふれる指揮ぶりで、楽員との息もとってもあっている印象です。日本人とのハーフであるギルバートは何年か前にN響を
振った際に聴いているし、NYフィルは大学生の時に初めて海外旅行に出て初めて外オケを聴いた記念すべきオケなので、このコンビが良い関係にあるようなのは、個人的にもとって嬉しいです(とかくNYフィルは指揮者にうるさい伝統があるとの話も聴きますし)。

 この日持った感想は、クリアで大きなアンサンブルが管弦のバランス良く、とても美しく響く演奏だなあというものでした。演奏されたマグヌス・リンドベルイ、バルトーク、プロコフィエフの曲はいずれも私にはあまりなじみがない曲なのですが、オーケストレーションの面白さとギルバートのスケールが大きく、明確な指揮ぶりで、とっても楽しませてもらいました。あえて言うと、プロコフィエフはちょっと全体に表面的な印象を受けました。ロンドンでは馴染みのゲルギエフとかユロフスキーが振るともって毒のある音楽になるのかなあなどと思ったのですが、これは、ロシア音楽はロシア人が振ると違う、という私の単なる思い込みのせいかもしれません。

 あと、この日は私にとっても初ランラン。ロンドンでは良く出演しているランランですが、何故かこれまで縁がありませんでした。初ランランの印象は、これは人気があるのも分かるわ~という高い納得感です。日本の若手アイドルのような颯爽とした優男で、演奏姿は私には嫌味に見えるほど、軽快で格好いい。そして、そこから発せられる音は、優しく、色彩豊かで、ただただ美しい。人気が出ないわけありませんね。アンコールのラ・カンパネッラなんぞは、これを聴いただけでも、今夜は十分と思わせてくれる程でした。

(大拍手に応えるラン・ラン)


 ラストのプロコフィエフの交響曲第5番の後には、アンコールでキャンディード序曲をやってくれました。もう、この曲をこのこのオケで聴けるなんて、何と言う幸せ。嬉しさ一杯です。

 生まれて初めて行った海外の街、ニューヨーク。今は無い、ワールドトレードセンタで他の観光客に撮ってもらった、8月の真っ青な広い空をバックに摩天楼を見下ろす自身の写真が、私の海外原体験。無性にニューヨークに行きたくなりました。

(ギルバート)



New York Philharmonic / Gilbert
Lang Lang performs Bartok Piano Concerto No 2
18 February 2012 / 19:30
Barbican Hall

Magnus Lindberg Feria
Bartok Piano Concerto No 2
Prokofiev Symphony No 5

New York Philharmonic
Alan Gilbert conductor
Lang Lang piano

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KING'S COLLEGE CHOIR(キングスカレッジ合唱団) クリスマスコンサート

2011-12-27 22:54:10 | コンサート (in 欧州)
 もうクリスマスも終わってしまいましたが、クリスマス前に出かけたクリスマス関連のコンサートを紹介します。

 ロイヤルアルバートホールでケンブリッジのキングスカレッジ合唱団のコンサートを聴きました。私がイギリスに来て間もないころ、クリスマス前に、この合唱団のクリスマスコンサートをTV生中継で見ました。キングスカレッジの聖堂内で行われていたのですが、その舞台設定の厳かな雰囲気、コーラスの歌声の素晴らしさに、大いに感動し、一度ナマを聴きたいと思っていました。このキングスカレッジでのクリスマスコンサートはチケットを入手するのはとてもでないけど難しいという話も後で聴いたので、このロイヤルアルバートホールでのコンサートがあるのを知り、チケットは衝動買いです。

(プロムスの時とはどこか様相が違うアルバートホール)




 このコンサートは、フィルハーモニア管弦楽団、フィルハーモニアコーラスとの共演で、クリスマス関連の曲をとりあげます。ドヴォルザークのTeDeumでは、Anna Patalongさんという若手のsopranoとGary Griffithsというこれまた若手のbaritoneさんも独唱として参加しました。

(久々のフィルハーモニア管のフィオナちゃん)


(左からAnna Patalong、Anna Patalong)


 正直言うと、私としては、キングスカレッジ合唱団に集中したコンサートを期待していたので、ちょっと欲求不満でした。ただ、"O Holy Night"(YouTubeでこの合唱団の歌が聴けます→)などは素晴らしい歌声が大きなアルバートホール一杯に広がっていました。





 面白かったのは、最後の3曲はCAROLS FOR ALLといって、有名なクリスマスキャロル3曲を会場の聴衆も立って全員で歌うというプログラムです。私もメロディは知っている"O come, all ye faithful(賛美歌111番 神の御子は今宵しも)","The First Nowell(賛美歌103番 「牧人 羊を」)"、"Hark! The Herald angels sing(讃美歌98番「天には栄え」)"の3曲で、歌詞は予め椅子の背に置いてありました。舞台の歌い手たちとオーケストラ、そして、ほぼ満員のアルバートホールの全聴衆が歌い、その歌声がアルバートホールに木霊するのは何とも爽快でした。



 そして、最後アンコールで合唱団が歌った「きよしこの夜」の美しいこと。(キングスカレッジ内での模様→

 私にとっては最大のクリスマス体験でした。



RIMSKY – KORSAKOV Christmas Eve Polonaise
DVORAK Te Deum
HANDEL The King Shall Rejoice
MENDELSSOHN Hear My Prayer
MOZART Ave Verum Corpus

and CAROLS FOR ALL
O come, all ye faithful
The First Nowell
Hark! The Herald angels sing

Choir of King’s College, Cambridge
Philharmonia Chorus
Stephen Cleobury conductor
Anna Patalong soprano
Gary Griffiths baritone
Stephen Cleobury conductor
Philharmonia Orchestra

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ロンドン交響楽団のフィオナ嬢は・・・?

2011-12-16 23:59:43 | コンサート (in 欧州)
 私の数少ないブログ友達であるMiklosさんは、筋金入りのフィオナちゃんウォッチャー(フィルハーモニア管第2ヴァイオリニスト。たとえばの記事はこちら→)ですが、今日は、私の独断によるロンドン交響楽団の「フィオナちゃん」をご紹介いたします。

 今シーズンは、週末に沢山演奏会をやってくれるロンドン交響楽団(LSO)のコンサートばかりに足を運んでいるのですが、なぜかLSOのチェロチームにはとっても女性奏者が多いです。名簿によるとチェロ奏者は10名が登録されているのですが、そのうち名前で判断すると7名が女性。実際、コンサートに行っても、やたら女性チェリストが目立ちます。

 その中でも、私の注目はミナ嬢(Minat Lyonsさんなのですが、何と発音するかわからないので、ミナ嬢としておきます)。西洋系の美人タイプには全く関心がない私なのですが、彼女の中東風の端正な容姿にはしびれます。トルコ系の方かなあと思っていたのですが、エルサレム生まれのロンドン育ちとのことです。いつも後ろのほうに座っているので、チェロが右手前方に位置する以外は見えないことも多いのが残念なのですが、いつもステージで見かけるときの、姿勢の良さとたたずまいの清楚な印象は、とっても惹かれます。ソロの演奏を聴いたことが無いので、どんな演奏をするかは分らないのですが、チェロを弾く姿は、姿勢が崩れることなく、姿が美しいので、ついつい目を向けてしまいます。私的にとってもポイント高し。

(開演前の練習中のミナ嬢)


(終演後の内田光子さんに拍手するミナ嬢)


 あと、もう一人をご紹介。デルフィン嬢(Delphine Biron)です。この方は、今シーズンから見かける人なのですが、プログラムの正団員のリストには名前が載っていないので、きっと1年限りの交換団員とか何でしょうか?フランス人のようです。決していわゆる美人ではないですが、いつも気持ちが入った演奏姿にとっても惹かれます。「そこに何が書いてあるの?」と訊きたくなるぐらい、楽譜や指揮者を凄い強い視線で穴の開くほど見つめたり、熱い音楽には情熱的に、楽しいところでは心から音楽を楽しんでいるようで、そして葬送行進曲のようなところでは泣き出さんばかりの表情で、気持ちをチェロにぶつけているように見えます。ミナ嬢のような端正な美しさではないのですが、演奏姿そのものが見るものに訴えます。

(中央がデルフィン嬢)


(終演後。左から2人目)


 いったい、何を見に行っているのかと叱られそうですが、やっぱり演奏に限らず、人が真剣に仕事をしている姿と言うのは、美しかったり、迫力を感じたりするわけで、CDやDVDでなくて、演奏会に行くというのは、そういった空気を丸ごと吸ったり感じたりすることに楽しさがあると、自分では思っています。

 と、最後はちょっとまじめにまとめてみました。

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