その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

映画「Winny」(監督:松本優作、2023)

2023-11-29 07:30:59 | 映画

飛行機の中で視聴。

2002年に端を発したWinny事件(P2P技術を活用したファイル共有ソフトを開発した金子勇氏が著作権侵害行為幇助の疑いで逮捕されるなどした)扱ったノンフィクション。事件とその一審裁判の過程が、プログラム開発者金子勇氏とその弁護団視点で描かれる。メディアで断片的な知識はあったものの、事件の背景や性格が理解できる社会派ドラマ。

派手さはないが俳優陣が好演。特に主人公の金子勇を演じる東出昌大は、天才的なプログラミングセンス、スキルを持つものの、世間一般常識には乏しい主人公を、人間味あふれる人物として好演。ラストに当時のリアル映像が流されるが、そこに登場する金子勇氏本人と雰囲気を含めてそっくりで感服した。

実際の事件を扱っているだけに綺麗な整理、物語ありきではない。警察・検察の「結論ありき」捜査、金子氏個人のテクノロジーへの情熱と葛藤、法廷での検察と弁護団との対決、法秩序の維持者であるはず警察自身の組織内不正、技術開発の促進と責任の境界など、様々なテーマが入り交じっている。なので、映画としては焦点がわかりにくいところはあるものの、見応えある作品だった。

 

スタッフ・キャスト

監督:松本優作
原案:渡辺淳基
脚本:松本優作、 岸建太朗

東出昌大:金子勇
三浦貴大:壇俊光
皆川猿時
和田正人

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新国立オペラ、ヴェルディ<シモン・ボッカネグラ>、指揮:大野和士

2023-11-27 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

もともと個人的スケジュールの都合で、今回のヴェルディ〈シモン・ボッカネグラ〉の観劇は諦めていたのですが、急遽23日が空き、チケットを前々日に急ぎゲットしました。新国立オペラの初演目で、私自身も初見オペラです。

主要男性歌手陣のシモン役・ロベルト・フロンターリ、フィエスコ役・リッカルド・ザネッラート、パオロ役のシモーネ・アルベルギーニはいずれも日本で聴いていて、強い印象を残した歌手陣でもありましたし、初日の評判も上々だったようなので、期待大でした。

そして、公演は、期待通りの充実の外国人歌手によるハイレベルな歌唱を始め、東フィルの演奏、充実の合唱が揃った、穴なく満足度高いものでした。

フロンターリは題名役に相応しいバリトンで安定した歌唱でしたが、より印象的だったのはザネッラートのテノール。伸びやかで、声量もたっぷりで、うっとりでした。

紅一点と言えるアメーリア役のイリーナ・ルングは初めて聴きました。声量的には特筆する感じではありませんでしたが、美しいソプラノに加えて、舞台での振る舞いが凛として存在感を放っていました。

歌唱陣もさることながら、とても印象的だったのは、大野さんが指揮する東フィルの引き締まった演奏。弦の美しい合奏、柔らかい木管の美音、金管の咆哮。聴きごたえ満点でした。

合唱は多くの出番があるわけではありませんが、合唱の美しさにもうっとり。耳福の限りです。

演出は赤と黒を基調に、舞台上にはジェノバの地図?や島のオブジェを置いたような比較的シンプルなもの。空中から岩のようなものも釣られていましたが、4階席からは良く分かりませんでした。ただ、特に奇を衒った演出では無いので、音楽に集中することができて、演出家には申し訳ないですがグッドです。

ほぼ満員のオペラパレスからは、熱気の籠ったブラボーと大拍手。私も4階席から激しく拍手を送りました。

ヴェルディのオペラはいくつも見てきましたが、今回初めての〈シモン・ボッカネグラ〉はドラマ性も音楽的にも傑作ですね。上演少ないですが、また観たい作品です。

 

ジュゼッペ・ヴェルディ
シモン・ボッカネグラ<新制作>
Simon Boccanegra / Giuseppe Verdi
プロローグ付き全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

公演期間:2023年11月15日[水]~11月26日[日]
予定上演時間:約2時間50分(プロローグ・第1幕85分 休憩25分 第2・3幕60分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【指 揮】大野和士
【演 出】ピエール・オーディ
【美 術】アニッシュ・カプーア
【衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照 明】ジャン・カルマン
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【シモン・ボッカネグラ】ロベルト・フロンターリ
【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】イリーナ・ルング
【ヤコポ・フィエスコ】リッカルド・ザネッラート
【ガブリエーレ・アドルノ】ルチアーノ・ガンチ
【パオロ・アルビアーニ】シモーネ・アルベルギーニ
【ピエトロ】須藤慎吾
【隊長】村上敏明
【侍女】鈴木涼子

【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

共同制作:フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル

Co-production with Finnish National Opera and Ballet, Teatro Real Madrid
New Production

Presented by New National Theatre Foundation, Japan Arts Council, Agency for Cultural Affairs, Government of Japan

Music by Giuseppe Verdi
Opera in 3 Acts with a Prologue
Sung in Italian with English and Japanese surtitles

OPERA PALACE
15 Nov - 26 Nov, 2023 ( 5 Performances )

CREATIVE TEAM
Conductor: ONO Kazushi
Production: Pierre AUDI
Set Design: Anish KAPOOR
Costume Design: Wojciech DZIEDZIC
Lighting Design: Jean KALMAN

CAST
Simon Boccanegra: Roberto FRONTALI
Amelia (Maria Boccanegra): Irina LUNGU
Jacopo Fiesco: Riccardo ZANELLATO
Gabriele Adorno: Luciano GANCI
Paolo Albiani: Simone ALBERGHINI
Pietro: SUDO Shingo
Un capitano dei balestrieri: MURAKAMI Toshiaki
Un'ancella di Amelia: SUZUKI Ryoko

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra

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W.シェイクスピア/演出:鵜山 仁「終わりよければすべてよし」 @新国立劇場中劇場

2023-11-26 07:28:22 | ミュージカル、演劇

 (もう1月前の記録です。アップし忘れて、公演期間も終了してますが・・・)

「尺には尺を」に続けて、「終わりよければすべてよし」を観劇。

この2作品、ともにシェイクスピアの中でも単純なハッピーエンドでは終わらないダークコメディである点、女性が主人公である点、男性とベッドをともにする女性が入れ替わるというベッドトリックを使っている点など、共通点が多い。今回の企画は、それを交互に演じることで、類似性と相違性があぶりだし、作品理解を深めようとするもの。かなり凝っている。

前日に「尺には尺を」を演じた役者さんたちが、全く違う役柄で、違う芝居をやっている。そのキャパシティ/ケイパビリティ、切り替えにプロフェッショナルを感じ、驚嘆した。

キャスティングは前日の「尺」よりも、この日の「終わり」の方が、よりピッタリはまっていて、舞台がとっても安定しているように感じられた(前日が不安定だったわけではなく、相対的な話である)。主人公ともいえるヘレナを演じる中嶋朋子はさすがのベテラン。猪突猛進、思い込んだら一途に行動するヘレナを好演。若き処女の役柄との年齢差も感じさせず、自然で違和感ない。大したものだと感心した。

個人的には、軽薄男ぺーローレスを演じた亀田佳明も笑わせてもらった。こういう奴って、いる・いる。また、シェイクスピア劇のどの作品でも重要な「道化」であるラヴァッチを吉村直が軽妙に演じていたのも印象的だった。全体的に舞台を落ち着いて感じさせてくれたのは、フランス王の岡本健一、ラフューの立川三貴、ルシヨン伯爵夫人の那須佐代子らも堅実な立ち回りによるところも大きいだろう。

舞台造形は、舞台前方の草や池は「尺」とそのまま同じものが使われていたようだ。舞台中央には、大きなテントのような幕が吊られ、幕の形の変化や照明で、場の設定替えや舞台効果が演出される。舞台に集中出来る必要十分な演出で好感度高い。

「尺」と同じダークコメディなのだが、「終わり」は「尺」に比較すると「ダーク」度は薄い。戯曲を読んで不思議ちゃんと感じたヘレナも思いを遂げて結婚でき、この結婚相手が、正直、男としてどうかよと思うバートラムではあるものの、本願成就である。この結婚がうまくいくかどうかはわからないが、「尺」が罰としてのアンジェロとマリアナの結婚や謎の侯爵からイザベラへの求婚で終わったのと比較すると、後味もずっと軽やかだ。

この2作品、とっても良かったので、できれば期間中にもう一度観てみたい。

10月19日(木)



2023/2024シーズン
シェイクスピア、ダークコメディ交互上演

尺には尺を
Measure for Measure

終わりよければすべてよし
All's Well That Ends Well

公演期間:2023年10月18日[水]~11月19日[日]

予定上演時間:
『尺には尺を』約2時間55分(第1幕95分 休憩20分 第2幕60分)
『終わりよければすべてよし』約3時間10分(第1幕85分 休憩20分 第2幕85分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】小田島雄志
【演出】鵜山 仁
【美術】乘峯雅寛
【照明】服部 基
【音響】上田好生
【衣裳】前田文子
【ヘアメイク】馮 啓孝
【演出助手】中嶋彩乃
【舞台監督】北条 孝

キャスト (役名:『尺には尺を』(左)/『終わりよければすべてよし』(右))
岡本健一:アンジェロ/フランス王
浦井健治:クローディオ/バートラム
中嶋朋子:マリアナ/ヘレナ
ソニン:イザベラ/ダイアナ 
立川三貴:典獄/ラフュー
吉村 直:バーナーダイン/紳士1、ラヴァッチ
木下浩之:ヴィンセンシオ/フィレンツェ公爵
那須佐代子:オーヴァーダン/ルシヨン伯爵夫人
勝部演之:判事/リナルドー
小長谷勝彦:ポンピー/兵士2
下総源太朗:エスカラス/デュメーン兄 
藤木久美子:フランシスカ/キャピレット
川辺邦弘:エルボー・紳士2/兵士1
亀田佳明:フロス・アブホーソン/ぺーローレス
永田江里:ジュリエット/マリアナ
内藤裕志:ピーター/紳士
須藤瑞己:召使い/従者
福士永大:使者/小姓
宮津侑生:ルーシオ/デュメーン弟 

 

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米国東海岸旅行(結):最終日最後は、MSGでカレッジバスケットボールを観る

2023-11-24 07:30:25 | 旅行 海外

帰国便は深夜発。マンハッタンは21時過ぎに出ればよいので、それまでをどう過ごすか。月曜日は夜のエンタメもお休み多く、エンパイアステートビルにでも昇ってマンハッタンの夜景でも見ようかとも思ったのですが、偶然、それ以上に魅かれるイベントを発見。なんとマディソンスクエアガーデン(MSG)でカレッジバスケットボールのプレシーズンゲームが行われるのです。しかもカードが、地元のニューヨークのSt.Jones’大対Michigan大。ミシガン大は私の母校のライバル校なので、アウエイでニューヨークまで遠征してくるなら、応援してあげなくては。

閉館時間の17時までメトロポリタン美術館で過ごしたのち、バスでマディソンスクウェアガーデンに突撃しました。試合開始は18時半。前回、MSGには学生時(1987年)にプロレスを見に来ました。3階席からでレスラーは芥子粒のようにしか見えませんでしたが、当時日本でも活躍中だったハルク・ホーガンが出ていて超興奮したのを今でも鮮明に覚えています。

BOXOfficeで当日券を購入し、ウキウキ気分で会場入り。カレッジバスケットボールの雰囲気は全然変わってませんね。とにかく地元チームのサポーターたちのハイな状態がヤバいです。この人たち、酒飲みに来ているのか、バスケっと見に来てるのか、全然わかりませんから。


(赤が地元St.Jones’大のスクールカラー(愛称はRed SRed Storm)
(ビール缶片手に歓談中)


(私も負けじと1缶。750ccぐらいある缶でした)

最近でこそ、日本でもBリーグで派手なゲーム演出は一般的になってきましたが、やはり本場アメリカ。カレッジと言えども、その華やかさは独特です。チアリーダーが応援を盛り上げ、ブラスバンドも音ならしまくります。試合前の国歌斉唱もアメリカですね。応援は9割がたがホームの応援で、3ポイントシュートが入った時の盛り上がりは耳をふさぎたくなるほど。ミシガンのサポーターも思いのほかいましたが多勢に無勢。ニューヨークに来て、一番アメリカを感じたかも。


(選手入場時だったけな?)

試合は地力に勝るミシガンが徐々に差を広げ、後半10分ごろ(カレッジは20分のハーフ制)には15点以上の差がついて勝負あった感じ。最後まで居たかったですが、空港までの移動でトラブルあると嫌なので、余裕をもって10分ほど残して、20時頃に会場を出ました。

ホテルにスーツケースを取りに戻りがてら、そう言えばまだ行って無かった、タイムズスクエアに立ち寄り。何があるわけではありませんが、やっぱりニューヨークのヘソ。電光掲示板のネオンが眩しい。昔は、SONY、SANYO、TOSHIBA・・・日本メーカーのネオンが輝いていた覚えがありますが、ネオンの量はさらに増えた感がありましたが、そこに浮かび上がる企業名は時代の流れを感じるものでした。


(タイムズスクエア前)

ということで、9時過ぎにホテルからUberでJFK国際空港へ。空港では、時代のせいか、ターミナル事情か、時間のせいかわかりませんが、免税店ら土産物屋も寂しいもので、買物意欲も湧かず。バスケットに夢中で、夕食も取ってませんでしたので、アメリカ最後の食を、ここでもハンバーガーとビールを注文し、この1週間弱の旅をしんみり振り返りました。


(ハンバーガーも食べ納め)

前半の個人イベント、後半のいわゆる観光、双方をフルフルで楽しみました。プライベートな米国旅行は20数年ぶりということもあってか、今のアメリカに触れ、新たな発見・経験・気づきというよりは、昔に触れる思い出旅行的になってしまったのはちょっと反省点ではあります。

円安、インフレもあってそれなりの出費ではあったものの、それでもPricelessな旅となりました。果たして、次回の米国東海岸の旅はあるのか?あるとしたらいつなのか?ナイーブですが、段々と今までは考えもしなかったようなことを考え始める年齢になってきた自分に戸惑います。また、日本で暮らし自然に内向き傾向を強めている自分にも気づきました。まだまだ人生、チャレンジとストレッチだ、との気持ちは、外に出ると強くなりますね。様々な思いを思いやげに帰国便に乗り込みました。

(終わり)

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米国東海岸旅行(8):最終日はニューヨーク公共図書館とメトロポリタン美術館

2023-11-23 07:54:07 | 旅行 海外

駆け足ニューヨーク滞在もいよいよ最終日、この日の深夜便で帰国です。最終日のメインは午後のメトロポリタン美術館訪問の予定です。

午前中は、荷物をまとめ、深夜のJFK国際空港までの足確認のため、ホテル最寄りのグランドセントラルターミナルへ下見。iPhone Mapのルート検索だと、ここからローカル列車+Air Train利用が安くて、早そうでした。ただ、グランドセントラルターミナルに着いてみると、駅の規模はでかすぎだし、構造も複雑すぎ。一応、駅ガイドの人に確認にし、理解はしたものの、夜分に重いスーツケース持ち歩いて、もしアクシデントがあったら臨機応変な対応は相当難しそう。ここはコストは張るが安全策で、Uber使うしかないかなと列車利用は断念することとしました。


(グランドセントラルターミナルのメインホール)

駅を出て、ダウンタウンのSohoやグリニッジヴィレッジ界隈でも行ってみようかと思いバスに乗ってみたのですが、窓からニューヨーク・パブリック・ライブラリーの立派な建物が見えて、これはちょっと見てみたいと衝動的に下車。入ったことないし、ニューヨークの図書館ってどんな感じなのか、興味津々です。

【New York Public Library】


(ニューヨーク公共図書館)

館内見学は無料。パブリックというのは「公立」と言うことではなくて、NPO運営による「公共」という意味だそうです(Wiki)。ニューヨーク在住在勤者は利用も無料です。

20世紀初頭に竣工した建物の内に入ると、その壮厳さにのまれます。人類の文化財産としての書籍の重みを「場」が自然と伝えるような感じです。リファレンス室、閲覧室、廊下にかかる書物の歴史を語るような絵・・・、映画にでも出てきそう。ここで1日読書すれば、さぞかし頭にしっかりインプットされる気がします。


(3階の豪華なホール)


(閲覧室)


(閲覧室)

加えて、楽しかったのはここのお土産屋さん。図書館のマスコットのライオン(最初はライオンキングかと思った)をデザインしたグッズや、図書館やニューヨーク関連の品々が並んでいます。どれも、デザインやキャッチフレーズがユニークで面白い。家族や親しい人へのお土産として、ちょっと知的な香りが漂うものが買えます。普段、お土産の買い物は最小限の時間しか使わない私も、かなり時間を費やしました。ここ、土産購入場所としてもおすすめです。

結局、想定外に2時間ほど滞在してしまったため、昼食はファーストフード(日本でも食べれますが、私の好きなウエンディーズで)で済ませ、午後からは念願のメトロポリタン美術館へ。こちらは、初めてNYを訪れた時以来だから、30年以上ぶりです。

 

【Metropolitan Musuem】

入場券購入に10分ほど並びましたので、急ぎの人は事前購入のほうがいいかもしれません。入館料が30ドルというのはぶったまげましたが(大英博物館やナショナルギャラリーが無料なのは、ホント、イギリス凄い、太っ腹)、その展示の幅と深みに、改めて感激。大英博物館とナショナルギャラリーを足して2で割ったようなスケール、ヴァラエティです。

ショックだったのは一番楽しみにしていた1250-1800年西洋美術のエリアが完全封鎖されていたこと。フェルメール・ラリーにスタンプ押せると思っていたのが梯子を外され、茫然としてしまいました。それでも気を取り直し、近代西洋美術、中世美術、エジプト文化のエリアを回っていきました。

フィラデルフィア美術館でも思いましたが、年齢相当分の知識や経験を積んでいる部分、凄いコレクションの一つ一つにいちいち足が止まってしまうので、いくら時間があっても足りません。そして、鑑賞にも膨大なエネルギーがいるので、どんどん疲労が蓄積。途中、カフェテリアで休憩したら、バナナ一本が1.8ドル・・・

近代絵画では、私の好きなミレイ、クリムト、ロバート・リーマン・ウイングでイタリア・ルネサンスではボッティチェリ「受胎告知」、北方ルネッサンスやドイツルネッサンスのクラナッハがあったのは嬉しかった。さらにエジプトコーナーは大英博物館以上ではと思わせるほどの充実度。世界の覇権国としての意地を感じます。


(J.Eミレイ The Escape of a Heretic, 1559)


(クリムト Mäda Primavesi)


(ボッティチェリ、The Annunciation)

結局、閉館時間の5時まで、たっぷり美術館を満喫。退館した時には、周囲はすっかり薄暗くなっていました。



2023年11月13日

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米国東海岸旅行(7):ニューヨーク・フィル×ニコライ・ズナイダーでベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を聴く

2023-11-22 07:29:00 | 旅行 海外

セントラルパークを走って、ビール飲んでハンバーガーを食した後は、昨夜に続きリンカーンセンターへ。予約済みのニューヨークフィルのコンサートへ突撃しました。

昔はエイブリー・フィッシャー・ホールという名だったと思うのですが、今はディヴィッド・ゲフィン・ホール、ウー・ツァイ・シアター(Wu Tsai Theater)と名を変えて、全面新装されたようです。随分、ダウンサイズした印象がありましたが、その分ステージが近く、奏者が身近に感じられます。


(ディヴィッド・ゲフィン・ホール)


(次期音楽監督のグスターボ・ドゥダメル)

今回の目玉は、私にとってはロンドン、東京、ザルツブルグで聴いたニコライ・ズナイダー君ソロのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。指揮はN響でも何度か聴いているステファン・ドゥネーヴさん。

冒頭のCarlos SimonのFate Now Conquersという小品はとっても刺激的な曲でした。1815年のベートーヴェンの日記の一節にインスパイアされたという曲は、緊張感に溢れて、畳み込むような音楽。全く初めてで、意表を突かれました。1曲目から会場も大きく沸き、作曲者カルロス・サイモンさんも登壇されました。

続く、本命のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。相変わらず、ズナイダーさんのヴァイオリンの音色は美しいです。透明で済んでいて濁りが無い。それでいて優しく、豊かで滋味がある。この日も、シミ一つないヴァイオリン協奏曲を聴かせてくれました。

ドゥネーヴさんとNYPの演奏は、ズナイダーさんにしっかり寄り添い、目立たず、かと言って伴奏に徹するわけでもない。絶妙なバランス感で、ソロ・ヴァイオリンを盛り立てていました。

会場は、演奏が終わるや否やスタンディングオベーションの大拍手。隣席の常連と思しきご婦人も「彼はパーフェクトね!」と超ご満悦の様子でした。拍手に応えて、アンコールはバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタの中の一曲。こちらも味わい深いものでした。

後半は、サン=サーンスの交響曲第3番 (オルガン付き)。確か、実演体験はデュトア/N響で一度きりです。

が・・・、前半戦が終わった安堵感と午前中のランとお昼のビールによる疲れが一気に押し寄せ、せっかくの後半は意識朦朧の中での鑑賞。ドゥネーヴさんの見事なオケ捌きと海外オーケストラならでは重層的で重厚な音色は実感できましたが、それ以上は感覚麻痺で自分に残念な結果となりました。

会場は、終演後大拍手。隣のご婦人も「彼(ドゥネーヴさん)のことは良く知らなかったけど、良いじゃない~。あなた知っていた?」と喜んでいました。録に聴けてない私でしたが、「ええ、日本にもたまに来てくれるんですよ」と答えておきました。こんな、会話が自然と発生するのもなんか海外っぽいですね。

SUN, 12 NOV 2023
2:00 PM

Carlos Simon, Fate Now Conquers
Beethoven, Violin Concerto
Saint-Saëns, Symphony No. 3, Organ

Artists
Stéphane Denève, Conductor
Nikolaj Szeps-Znaider, Violin
Kent Tritle, Organ

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米国東海岸旅行(6):旅ラン_念願のセントラルパーク・ジョギング

2023-11-21 07:25:57 | 旅行 海外

私にとって、このニューヨーク訪問でのMust Doイベント、セントラルパークでのジョギングを決行する時がやってきました。数々の米国映画やTVドラマのロケ地としてセントラルパークは登場し、そこをランニングする人々を見てきました。特に、秋の紅葉シーンの美しさは格別で、是非、そんな中を私も走ってみたいと思っていたのですが、ついにその日が。かなりハイな状態で、日曜日の朝、ホテルを飛び出します。

バスに乗って、公園到着。真っ青な青空の中、太陽がゆっくりと上がり始める最高の天気とタイミング。気温は5℃で、空気は冷たいですが、ジョギングには丁度いい感じです。走り出す前に少し歩くと、最盛期はやや過ぎた感じですが、紅葉が期待通り美しい。ニューヨークの喧騒が一瞬で消えて無くなくなり、違う場所に来たような静けさです。少し行くと、園内に既にスケートリンクが営業を開始していて、まだ9時前だというのに子供たちがスケートに夢中で歓声を上げているのが聞こえてきました。


(まだ太陽は低く、公園は殆ど影)


(朝日に照らされる紅葉が見事です)


(ビルとスケート場の組み合わせが、なんかニューヨーク)

この日のために日本からランニングウオッチGarminも持参。「さあ、走るぞ~」と、Garminのスタートボタンを押し、走り始めます。紅葉に染まった木々の下でのランニングは、ロンドン駐在時のハイドパークでのランニングを思い出されます。

公園内にはランニング・サイクリング用の周回コースが整備されていて、一周10キロという丁度良い距離です。適度なアップダウンもあってアクセント豊か。私のように一人で走る人、パートナーと一緒に走る人、犬を連れて走る人、友達とグループで走る人、様々なランナーが居ます。ランナーとすれ違うことはほとんどないので、皇居ランのように左回りが基本のようですね。


(段々と公園の光が増してきます)


(まだランナーはまばら)


(観光馬車も営業開始。馬車と競い合うランナーグループ)


(セントラルパークの北側を占める貯水池)


(ワンちゃんと一緒に走る。私も一緒に5kほどお供しました)

皇居ランのように凄い飛ばして走る人は少なく、ゆっくりマイペースで走って人が多い感じがします。旅先でのランでは、体力さえあればいつまでも走っていたいと思えるようなコースに出会うことがたまにありますが、セントラルパークは間違いなくその一つです。旅行者ならでははしゃいだ気持ちでのジョギングは、夢の中で走っているような感覚でした。


(一周後ゴール近く。一瞬、井の頭公園とも言えなくもない)


(Garminのランの軌跡)

 

うっすら汗を搔いた頃、1周10キロを55分で完走。実に気持ちのよい汗です。

ラン後にはコースでは通らない公園の内側の散歩道をウオーキングしました。10時過ぎると、訪れる人がどんどん増えてきましたし、露店や似顔絵屋さんが次々とオープン。公園はまた違った表情となってきます。印象派の絵に出てきそうな、休日の公園でした。


(モールと呼ばれるセントラルパークのメインストリート)



(絵画商も開店)


(小さな子供も楽しそう)


(W.シェイクスピアの像)


(われらが楽聖ベートーヴェン)


(アメリカに星条旗は欠かせません)



結局、11時頃まで、日曜朝のセントラルパークを満喫しました。

 

(付録)

ランニング後の腹ペコの状態でのランチ。これは凄かった。

 

2023年11月12日(日)

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米国東海岸旅行(5):メトロポリタン歌劇場で「X: The Life and Times of Malcolm X」を観る

2023-11-20 07:35:45 | 旅行 海外

今回のニューヨーク滞在の目玉の一つが、メトロポリタンオペラ歌劇場(Met Opera)でのオペラ鑑賞。この時期、「仮面舞踏会」「ラボエーム」も上演されているようでしたが、スケジュールの都合で現代アメリカ生まれのオペラ「X: The Life and Times of Malcolm X (X:マルコムXの人生と時代)」(作曲:アンソニー・デイヴィス)を観劇しました。演目的に日本で上演されることはないでしょうから、アメリカならではのオペラ体験で、これはこれで楽しみでした。

約30年ぶりのMet Opera、相変わらず豪華絢爛です。ただ、もっと大きな箱の記憶があったのですが、肌感覚的にはロイヤルオペラやウィーン国立歌劇場の方が大きいのではないかなという印象でした。演目が黒人の人権・自立運動のリーダーであったマルコムXの物語で、黒人系の出演者が殆どのためか、着飾った黒人系の聴衆が多い印象で、これも劇場の華やかさを増しているようでした。

物語はマルコムXの子供時代から暗殺されるまでの一生を追いかけます。音楽にはJazzやアフリカの民族音楽っぽい音楽が織り込まれるなど多彩。舞台装置はマルコムXの人生ステージごとにセットも変わり、その変化も楽しめます。ストーリー展開も早く、マルコムXの人生を追いかける洗練されたミュージカルのようでした。

(↓以下3枚の写真はメトロポリタンオペラホームページより)





終演後は多くの観衆がスタンディングオベーションの大拍手。ブラボーはもちろんのこと、口笛も飛び交い、反応も派手。アメリカっぽいというか、NYっぽいというか、日本には無い雰囲気ですね。



劇場を出たのは23時40分。地下鉄使って帰りましたが、初めてNYに足を踏み入れた80年代後半の深夜のNY地下鉄とは全然違って安全です。

2023年11月11日

 

Saturday
Nov 11 at 8:00 PM

Music by Anthony Davis, libretto by Thulani Davis, story by Christopher Davis
A co-production of the Metropolitan Opera, Detroit Opera, Lyric Opera of Chicago, Opera Omaha, and Seattle Opera

SUNG IN ENGLISH
3 HRS 20 MINS

Premiere: New York City Opera, 1986

CAST

CONDUCTOR: Kazem Abdullah:
LOUISE/BETTY: Leah Hawkins
ELLA: Raehann Bryce-Davis
ELIJAH/ STREET: Victor Ryan Robertson
MALCOLM: Will Liverman
REGINALD: Michael Sumuel

PRODUCTION

PRODUCTION: Robert O’Hara
SET DESIGNER: Clint Ramos
COSTUME DESIGNER: Dede Ayite
LIGHTING DESIGNER: Alex Jainchill
PROJECTION DESIGNER: Yee Eun Nam
WIG DESIGNER: Mia Neal
CHOREOGRAPHER: Rickey Tripp
STORY: Christopher Davis

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米国東海岸旅行(4):ここは行くべき! フリック・コレクションは仮設会場で開館中 @ニューヨーク

2023-11-19 07:25:41 | 旅行 海外

ちょうど正午頃に、デラウエア州ニューアークから旅後半の滞在先であるニューヨーク到着。ニューヨークも約30年ぶりです。

ペンシルバニア駅からホテルまで、タクシーに乗ったのですが町じゅうが工事中や交通規制でひどい渋滞。駅から2キロ程度の距離にも拘わらず、30分近くかかり、料金はなんと37ドル。こんなんなら頑張ってスーツケース引いて歩けばよかったと少々後悔。

それにしても、行きかう人々の歩く速さ、車のクラクションなどの絶え間ない音、高く立ちそびえるビル群に接し、「おー、ニューヨーク」と気持ちが引き締まります。

 

【フリック・コレクション】

この日の訪問先は、フリック・コレクション。フリック・コレクションは、マンハッタンのアッパーイーストサイドにある実業家のヘンリー・クレイ・フリックの豪邸に、彼の個人コレクションを展示した美術館です。現在はその邸宅がリノベーション中で、美術館自体も閉鎖中と聞いていたのですが、近くの別の会場で(945 Madison Avenue at 75th St.)展示をしていることを知りました(2024年3月3日まで)


(仮展示場は外観は普通のビル)

フェルメールの作品を3点も保有しているとは聞いていたのですが、中に入ってそのコレクションの質と量に圧倒されました。ルネッサンス期から20世紀初頭に至るまでの西洋絵画を中心とした傑作が惜しみなく展示されています。


(これより中は撮影一切禁止です)

個人的に嬉しかったのは、ティツィアーノやベリーニと言ったイタリア・ルネッサンス、ベラスケスやゴヤなどのスペイン系、ヴァン・ダイク、レンブラント、フェルメールといったフランドル、オランダ系の絵画が素晴らしく充実していたこと。しかも、展示される小部屋は主に時代・国区分や画家ごとに仕切られて、少数の質の高い作品が実に見やすく展示されています。(フィラデルフィア美術館のような大美術館のように、展示数に圧倒され、目移りして集中できないということがありません。)

Giovanni Bellini (ca. 1424/35–1516), St. Francis in the Desert, ca. 1475–80
Oil on panel, Panel: 49 1/16 x 55 7/8 in. (124.6 x 142 cm), Image: 48 7/8 × 55 5/16 in. (124.1 × 140.5 cm)

特別展として、”Barkley L. Hendricks: Portraits at the Frick”という企画で、米国の黒人系画家であるバークレー・ヘンドリックス(1945-2017)の肖像画の作品展が開催されていました。鮮やかな色彩を使って、デザイン性が強い肖像画は非常に印象的で、中世・近代絵画とはまた違った魅力を放っていました。ただ、この特別展のため、本来あるべきイギリス絵画コーナーが相当縮小されていたのは残念でした。


Barkley L. Hendricks (American, 1945–2017), Lawdy Mama, 1969. Oil and gold leaf on canvas, 53 3/4 x 36 1/4 in. (136.5 x 92.1 cm).

週末ということもあってか、館内にはそれなりの訪問客がいました。話し声が耳に入ってきますが、専門的なコメントをしている方が多く、普段から絵を見慣れている方が多い印象です。そのためか、館内の雰囲気もすこぶる落ち着いた大人の雰囲気が漂っています。

軽い気持ちで、夜のオペラ迄の繋ぎぐらいの心持で出かけましたが、期待を遥かに上回る美術館でした。本来の会場である大邸宅での鑑賞(2024年後半開館予定)はお預けとなりましたが、その宿題返しも含めて、次回のニューヨーク訪問時にも必ず訪れたいと思います。

2023年11月11日

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米国東海岸旅行(3):美しい大学町 デラウエア州ニューアーク

2023-11-18 07:27:37 | 旅行 海外

旅行前半は、プライベートなイベントで、デラウエア州ニューアークに滞在しました。デラウエア州と聞いてもご存じな方は少ないと思いますが、アメリカ合衆国憲法を最初に批准した州で、車のナンバープレートには「First State」と誇らしげに書かれています。特筆すべきは、何故か買い物に付加価値税(消費税)がかからない。なので、近隣のペンシルベニア州やメリーランド州からわざわざ買い物に来る人も多いとか。

ニューアークはその中でも、アメリカによくある大学町で、州立のデラウエア大学を中心に形成されています。緑の芝生に煉瓦つくりの校舎が立ち並ぶ風景はいかにもアメリカの大学キャンパス。この時期は、紅葉の色がキャンパスにマッチして、町全体が紅葉に包まれているかのようでした。最初の2日間は、曇り・雨模様だったのは残念でしたが、湿った落ち葉とキャンパスもしっとりと落ち着いた良さがあります。


(最初の2日は曇り、雨だったのは残念)



(朝のキャンパス内の通り)

(校舎に侵入して、中から1枚)


(完全ピンボケですが、アメリカのキャンパスには必ずいるリス)

2日目夕刻からようやく雨が上がりました。瑞々しい空気の中の町は一段と美しさを増します。



(滞在2日目の夕刻からようやく雲が切れ始めました)


(夕暮れ時のキャンパスが美しい)


(街のメインストリート)


(もうクリスマスの装飾が始まっています)

丁度、退役軍人記念日を跨いでいたので、キャンパスや街のメインストリートには、記念の飾りがしてありました。TVでも戦争で国に命をささげた軍人さんたちの追悼イベントが報道されていて、至る所で「健全な」リスペクトの精神を感じます。戦争そのものへの屈折した記憶から軍隊・軍人に対する複雑な思いが残る日本との違いを感じます。


(キャンパスのメインの庭ではセレモニーが行われるようです)


(戦争犠牲者を悼んで星条旗の小旗が刺されていました)



(電柱に吊るされているのは町出身の戦争犠牲者たち。写真を撮っていたら、「貴方の知り合いなの?」と聞かれました)

 

初日の夜はキャンパス隣接のパブの一室が会合の会食会場だったのですが、週末近くとあってホールの方は若者で一杯。凄い騒ぎになってました。


(若さが羨ましい・・・)

 

3日目にしてようやく朝から青天。Amtrakに載って後半戦のニューヨークに向かいます。


(昔の駅舎?)


(長距離列車は1日2本のみ)

2022年11月9~11日

 

(つづく)

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米国東海岸旅行(2): やっぱり凄い、フィラデルフィア美術館!

2023-11-17 07:45:44 | 旅行 海外

駅から30分弱歩いて、フィラデルフィア美術館の前庭到着。相変わらず、圧倒的な威圧感です。


(美術館前ロータリーから)

 

【ロッキー像】

もしかしたらフィラデルフィア美術館はこっちのほうが有名かも。ここは、不屈のアメリカ映画のシリーズ「ロッキー」のロケ地であり聖地です。ロッキー(シルベスター・スターローン)がトレーニング、ランニングしていた場所がここなのです。美術館に横には映画を記念してロッキー像が立っています(像はスターローンとは似ても似つかぬ風貌です。また、あやふやな記憶では、私の滞在当時はここでは無くて、フィリーズのスタジアムの前にあった覚えがありますが・・・)


(ロッキーランというランニングイベントが開催されていた様子)

周囲は、ロッキー像との記念撮影や映画のシーンにあった美術館の階段を上って吠えるロッキーをそのまま自己再現するロッキーフリークたちで盛り上がっていました。楽しいよね、こういうの。





(吠えるロッキー)

 

【美術館】

35年ぶりの再訪。建物の外観、内部ともに当時と全く変わらずに堂々と厳かに佇んでいます。しかし、私の鑑賞体験は当時とは桁違いに衝撃的なものでした。

とにかくコレクションが膨大。中世から現代に至るまでの西洋美術、現代アメリカ美術からアジア美術までが広い建物中に一杯に展示が去れています。とても半日、1日では廻り切れないボリューム、かつ質も高い作品がゴロゴロ転がっている。30年を経て、下手に知識と鑑賞経験だけは積み重ねた私はもう目移りするばかりで、集中できない。貧乏根性丸出しで「勿体ない、勿体ない」と呟いていました。

それでも、好きなルネッサンス系、17世紀オランダ絵画、イギリスのホガースやコンスタブルの絵はじっくり見ました。建物中央の吹き抜けのホールの壁には、ベルギーのタペストリーも連なって吊ってあります。日本ではなかなかお目にかかれない量です。


ボッティチェリ<若者の肖像画>1465-1470


ボス?

ホンモノ議論が進行中のフェルメール<ギターを弾く女>(完成度高いホンモノ確実はロンドンのケンウッドハウス蔵)


1958-65 Jan Steen

 


1822-1824 ジョン・コンスタブル 

館内のいくつかの部屋は、所有者だった西洋人の部屋を模した作りになっているのも、落ち着いた鑑賞環境を提供してくれて良いです。個人名を付したギャラリーと名のつく部屋が多いのも、こうした絵を買い漁った富豪たちの富の力を見せつけられているようでアメリカチック。




そして、なにより空いています。こんな名画に囲まれているのに、だれかと一緒に見ることは全くなく、完全独占鑑賞。なんとも贅沢な空間と時間でした。

それでも、スケジュールの都合で滞在時間3時間半、廻ったのは半分程度で涙の退館となりました。

フィラデルフィア美術館。絵画好きの人はニューヨーク、ワシントンDCから無理してでも訪れてほしいところです。


(正面はフィラデルフィアのへそとも言える市庁舎)

2023年11月9日

(つづく)

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米国東海岸旅行(1): 30th. Station駅からスクーキル川沿いを歩く @フィラデルフィア

2023-11-15 18:21:19 | 旅行 海外

私的なとっても大切な用事があり、休暇を取って米国東海岸を訪れました。用事そのものはフィラデルフィア近郊の町での2日に渡る会合への参加だったのですが、家族・職場の理解を貰い、NY滞在を加えて現地5日間の一人旅となりました。イベントそのものの大切さはもちろんのこと、コロナ禍以降初めての海外ですし、プライベートでの米国訪問は約20年ぶりということで、興奮の旅となりました。

記録もかねて、観光で訪れたところを順次ご紹介したいと思います。

まずはフィラデルフィア。この町を訪れるのは約30年ぶり。独立宣言を採択し、ワシントンDCの前は首都でもあった歴史的都市であり、伝統を感じる名所が多くあります。今回は、半日の限られた時間であったので、訪問先はフィラデルフィア美術館に絞りました。

【30th St. Station】

滞在先からフィラデルフィアのダウンタウンへはローカル列車で1時間弱。30th St. Stationがフィラデルフィアの中心駅で、長距離列車Amtrakも停まる主要駅です。ニューヨーク、ワシントンDCからも2時間以内で来ることができます。

30年以上前に来ているはずですが、改めて駅の大きさにびっくり。おー、アメリカと口に出てしまいます。ギリシャ神殿のような作りとスケールに圧倒されます。駅舎内には立派な彫刻や駅の歴史をたどった展示などがあり、駅を見て廻るだけでも楽しい観光になります。


(駅舎外観)


(駅舎内のホール)


(1941-1945(第2次世界対戦中)の間に倒れたペンシルベニア鉄道社員の記念碑)


("Sprit of Tranportation" 彫刻家Karl Bitterにより1895年制作)


(プラットフォームに降りて、AMTRAKの車両を撮らせてもらいました)

【リバーサイドウオーク】
30th St. Stationから美術館までは2㎞ほど。いろんなルートが取れますが、私は最短距離で行けるスクーキル川沿いの歩道を歩きました。

ピークは過ぎていましたが、紅葉が目に染みる美しさです。曇り空なのは残念でしたが、ジョギングや散歩をする人たちで行きかい、落ち着いた時間が流れています。ペンシルベニア大学のスエットシャツを着て走っている人たちも数名見かけましたが、学生さんでしょうか。


(対岸にさっきの駅舎)


(紅葉が見事)

ニューヨーク、ワシントンDCを観光される方でフィラデルフィアまで脚を延ばす人は少ないかとは思いますが、両都市とはまた違った雰囲気が感じ取れるので、日帰りでも行ってみる価値はあるかと思います。

(つづく)

2023年11月9日

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深井龍之介『歴史思考 世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する』(ダイヤモンド、2022)

2023-11-08 07:30:12 | 

著者の深井さんのことは、あるオンラインの教養プログラムで、東大史料編纂所の本郷教授との日本史についての対談で知った。起業家であり、イケメン。さわやかな語り口で、日本史を含む世界史を縦横無尽に語る姿がなんとも印象的だった。偶然、地元の図書館の返却本の書棚に本書を見つけ、手に取ってみた。

過去の偉人たちの生き様を辿りながら、そこから現代を生きる我々にとっての歴史を学ぶことの意味合いを引き出すつくり。とっても平易な記載なので、読み手の対象は中高生かもしれないが、大人にとっても有意義な内容になっている。取り上げられる人物は、チンギス・カン、イエス・キリスト、孔子、マハトマ・ガンディー、カーネル・サンダース、アン・サリヴァン、武則天、アリストテレス、ゴータマ・シッダールタらである。

例えば、イエス・キリストと孔子の人生から、後世に多大な影響を残した二人だが、個人の人生としては上手くいかなかったこと、世間に迎合しなかったという2つの共通項がある。出来事の良し悪しはその時代では評価できないのだ。

個人的には第3章のケンタッキー・フライド・チキンの創始者カーネル・サンダースのジェットコースター人生に元気を貰った。人生のクライマックスは終盤に現れるのだ。

未来のことは誰にもわからないし、歴史を通じて時代の社会認知/価値観を知る。そうすれば今の当たり前も決して将来の当たり前でないことを知ることができる。「悩んでいる人がたくさんいる現代ですが、そういう人に足りないのは、自分自身に距離を置いて眺めるメタ認知です」(p193)と言い、メタ認知のための比較対象として歴史を学ぶ意義があると伝える。

2時間あれば読める。タイトルから、新しい思考技術や掘り下げた内容を期待すると拍子抜けするかもしれない。私も期待値が高かっただけに、主張を否定することはないが、思いのほかシンプルなメッセージだなあとの感想はあった。それでも、歴史を学ぶ意義について、著者のストレートな見解が提示されているので、学生さんだけでなく、「教養」を身に着けたいと考える若手社会人にも入門本としてお勧めできる。


【目次】
プロローグ 僕たちの「当たり前」を疑え——チンギス・カン
第1章 スーパースターも凡人だった——イエス・キリスト、孔子
第2章 100%完璧な人間なんていない——マハトマ・ガンディー
第3章 人生のクライマックスは終盤に現れる——カーネル・サンダース
第4章 奇跡を起こすのは誰だ——アン・サリヴァン
第5章 千年後のことなんて誰も分からない——武則天
第6章 僕らの「当たり前」は非常識——性、お金、命
第7章 悩みの答えは古典にある——アリストテレス、ゴータマ・シッダールタ
エピローグ——今こそ教養が必要なワケ

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インディアンサマー in 忍野・山中湖

2023-11-06 07:29:43 | 旅行 日本

マイ毎年恒例、この時期の山中湖の紅葉狩り。9月まで続いた夏の猛暑の名残のような、落ち着かない程、暑いぐらいの暖かい気候です。何十年も前に米国に居住していた際、このような晩秋から初冬に空けての汗ばむような天候をインディアンサマーと言うのだと教わりました。(日本語だと「小春日和」という言い方がありますが、勝手な私の感覚では、この日は小春日和というよりずっと暖かく/暑く、「春」でなく「夏」であるインディアンサマーでした)。

そんなの好天の中、紅葉を目一杯楽しみました。


昼食を頂いた忍野の定食屋「車や」さんに隣接した湧き水の池。ちょっとした散策ができるようになっています。

夕刻は山中湖紅葉祭りを訪れます。夕暮れ時の富士山、湖面、ライトアップされた紅葉が美しいです。

翌日は朝から自転車借りて、湖畔を一周。汗ばむほどの陽気です。





<山中湖の鎮守さま 山中浅間神社の境内>

目の覚めるような色の祭典。心のお洗濯にぴったりです。

2023年11月3-4日

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これは必見!:特別展「やまと絵-受け継がれる王朝の美-」 @東京国立博物館

2023-11-03 07:49:59 | 美術展(2012.8~)

東京国立博物館で開催中の特別展「やまと絵」。金曜日終業後に夜間開館時間帯に訪れた。

平安時代から室町期の逸品を揃えた質・量ともに充実の日本美術の展示である。何度でも足を運びたくなる素晴らしさだった。

屏風はややガラス窓で隔てた奥に設置されているので細部を見るには単眼鏡が欲しくなるが、絵巻系はすぐ手に取れるような距離で細部まで鑑賞できる。鑑賞者の流れを堰き止めては周囲に迷惑なのだが、どうしても見入ってしまう。

個人的には、当時の市井の人々や生活が描かれている画が好みなので、一遍聖絵、信貴山縁起絵巻、餓鬼草子、法然上人絵伝らは特に時間をかけた。当時の人々の様子や動きが生き生きと伝わってくる。ざわめきや歓声、話し声までが聞こえてくるようである。丁度、読みかけ中の網野善彦「日本の歴史をよみなおす」で、<一遍聖絵>を参照し、当時の賎視されていた乞食や犬神人が詳細に説明されていたのだが、展示されていた巻第七にはまさにそうした人々が描かれていた。今にも動き出すんではと思う程である。書籍の理解度もあがる収穫付きだった。

また、「風俗画」とは異なるが、日本の肖像画のキングともいえる絵に初お目見えしたのは感激だった。神護寺三像として「伝源頼朝像」「伝平重盛像」「伝藤原光能像」がそろい踏みしている展示は、鳥肌が立つほどのオーラ。各像とも横幅1メートルを超し、ほぼ等身大。歴史学的には、描かれた人物は源頼朝でないというのが今の定説らしいが、ここに描かれている人物の威容は只者ではないことは誰にでもわかる。歴史の教科書や資料集に載っている絵写真では到底伝わらない迫力が重くのしかかってくる。「これは凄いわ~」と思わず、唸ってしまう。

好きなものだけじっくり見ているだけであっという間に2時間経過し、閉館時間となってしまった。展示期間ごとにかなり展示が変わるようだし、まだまだじっくり見たい品も多い。再訪を期したいが、会期末に向けて益々込み合うこと必至だろうなあ。

(余談)

偶然にも、ミュージアムコンサートが閉館後に開催されるということで、残って聴いてきた。心地よい、秋の夜。本館前の特設ステージで、吉田兄弟による津軽三味線の演奏。初めて生で聴く津軽三味線だ。民謡だけでなく、オリジナルの現代曲、ロック調だったり、バラード調だったりで、テクニック、音の切れ、響き、激しさがとっても新鮮だった。なんか海外に観光に来ているよう。とっても幸運の金曜日夜であった。

2023年10月27日 訪問

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