「自分の意見を持つ」という現代社会を生きていくうえで必要な姿勢、考え方、スキルを説いた優れた自己啓発本。中学・高校生のうちから学んでほしい内容なので、練習編の練習課題をもう少し易しい内容にして中高生向け版を作ってもらうことを提案したい。(筆者にしてみれば、十分中高生でも読める内容と言うだろうが、学校関係者の家族によると「とてもこのレベルは無理」とのことであった)
本書は、多数の「反応」に囲まれるネット社会において、「正解のない問題(そして重要な問題は正解がないことが多い)」に自分の意見を持つことが如何に大切であるかを説き、どうすれば意見が持てるようになるかを解説する。
私自身、「反応」と「意見」の区別の仕方など、気づきが多い1冊だった。何気なく感じていたことが、言語化、論理化される気持ちよさもあった。以下、いくつか抜粋するが、神は抜粋より抜粋の前後のロジック・考え方にあるので、要注意。
(備忘メモ)
・「重要な問題」にはほぼ正解がない。なぜなら、「どんな人生が最も良い人生なのか」に正解がないから(pp33‐34)
・「反応」(他者の否定や質問)ばかりしていても、自分の意見は明確にならない。意見の表明者からみれば、議論の価値が無い人になってしまう。(p48)
・ネット時代は1億総反応時代。自分の頭を使って考えないと、単に反応するだけの人になってしまう。(pp63-64)
・リアル社会でやらないことはネット社会でもやらない(p111)
・リーダーシップの最初の1歩は自分の意見を持つこと。自分が所属するコミュニティの問題を自分事として捉えて、自分の意見を明確にし、他のメンバーに伝え、議論することこそ「仲間」として認められるための条件(pp184-185)
・正解のない問題についていくら勉強しても正解は見つからない。自分の意見を幅広い分野に持つ努力が大切。日本は「専門外の分野に意見を言うな!」という風潮が強いが、縦割り組織の発想。(pp190‐193)
・「知識が無いから意見が言えない」と考える日本企業と「正解が言えないのは知識が無いからだが、意見が言えないのは思考してないから」と考える外資企業(pp211-212)
・自分のオリジナルの人生を持つには自分の意見を持つことが大切 (p228)
・SNSは「意見表明の場」としては優れているが、「議論の場」としては上手く機能しない。議論はリアル社会の仲間としよう(pp245‐246)
第2章 「反応」だけではダメな理由
ポジションがわかれば「意見」
まずは「とりうる立ち位置」を確認する
ポジションが明確なら「意見」
区別には練習と振り返りが必要
1億総“反応”時代
考えることが必要な「意見」
SNSが総反応時代を加速
多用される「かっこいい反応」
意見にしか価値はない
インフルエンサーになるのも意見を言える人だけ
不安を克服しよう
反論されることへの不安
リスクをとりたくない気持ち
それは本当に自分の意見?
第3章 SNS時代に「自分」を創る
SNS時代の新たな格差
肥大化する承認欲求
自分という人間を伝える発信
重要性を増す「ネット人格」
学歴は「落とすための基準」だった
面接時の発言より日頃の発信
急速に進む人事分野でのAI活用
ネット人格が履歴書にとってかわる
ありのままの自分を発信!
お互いの利益となる「本当の姿」の開示
発信は自分のホームベースで
リアル社会と同じ行動を!
懸賞やアンケートにも気をつけて
自分の表現方法を見つけよう
発信は完成物でなくてもいい
第4章 生きづらさから脱却しよう
学校的価値観という呪縛
「正しい人生」というプレッシャー
学校的価値観のさまざまな弊害
人生に答え合わせは要らない
自分の感想に自信がもてない人
答え合わせに時間を浪費するのはやめよう!
「強い他者」への依存リスク
意見こそ多様性の源
意見の言えない子供はどう見える?
全員が意見を言うのは、ギスギスした社会?
「絶対」と言えるまで考え尽くそう!
承認欲求と意見
自分はどんな人間?
外形情報と内面情報
ファンは「キャラクター」につく
「ちきりん」という人格
内面情報だけで承認される人格
「意見の束」が人格を創る
自我と他者からの認知の乖離
最初に必要なのは自我の確立
第5章 リーダーシップの最初の一歩
本当の仲間と認められるために
仲間に求められるのは「意見」
求められるのは作業ではない
日常生活における「リーダーシップ」
関係ないことこそ、考える価値がある
突然求められる意見
練習に最適な「関係のないこと」
社会人として一人前と認められる条件
縦割り発想の弊害
“反応しかできない人”からの脱皮
反応だけの人の会議
ポジションがわかれば意見
「議論」には複数の意見が必要
「賢そうに見える」ネガティブな反応
「一概には言えない」「例外もある」といった言葉の空しさ
常に「意見」を求められた職場
必ず評価される「意見を言う人」
第6章 オリジナルの人生へ
18歳から始まった人生
鍵は「自己決定」
習わない「考えて答えを出す」方法
時代の変化と意見の価値
1 オペレーションからイノベーションへ
2 同質社会から多様なグローバル環境へ
3 男性中心の年功社会からフラットな平等社会へ
4 低成長な高齢化社会へ
5 圧倒的に選択肢が多様な時代へ
6 生き方プレッシャーが増大するSNS時代へ
7 「意見」にこそ価値のあるAI時代へ
リアル社会の仲間と議論しよう!
練習編 「意見」をもてるようになる4つのステップ
ステップ1:レベルをチェックする
正しい情報の調べ方
調べる項目を最初に列挙する
調べる時間をあらかじめ決めておく
必要な箇所のみ読む
「調べる」ことに逃げない
「正確だが無意味な情報」の存在を知る
ステップ2:ムリにでも意見を言い切る
ステップ3:自分で自分に突っ込む
中立信仰に陥るな!
ステップ4:言語化する
まとめ
おわりに